異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
『おおっ!サンキュー、セメントス!大変長らくお待たせしました!たった今、闘技場の修復が終わったぜ!腹一杯だとは言わせねえぜ!?最終種目はまだ始まったばかりなんだからよ!』
プレゼントマイクの待ってました、と言わんばかりに嬉々とした声が響き渡る。
出久達が心操を引き連れて観戦席に戻ってからというものの、5分も経たないうちに闘技場の修復が完了した。先見の明と言うべきか……。リカバリーガールが観戦席に戻るようにと促したのは、完璧なタイミングだった。
プレゼントマイクのアナウンスを受け、口々に心操を称賛していたA組のクラスメート達は、即座に切り替えてそれぞれの席に着いた。
――そんなクラスメート達の息ぴったりさに、すっかり雰囲気の変わった轟が「お」と薄いリアクションをしながら驚いていたのは余談である――
心操と轟の試合に続く第三試合は、塩崎と骨抜の試合。昼休みの時間の会話のおかげもあって拳藤から聞いたのだが、塩崎は実技入試で5位の実力者であり、一方で骨抜は轟や八百万、夜嵐と同じように推薦入学の合格者だそうだ。実力者同士の激突。勝負の見応えという意味でもそうだが、彼らの''個性''や戦い方を知れるという意味でも楽しみな試合だった。
結論から言うと、心操達のように試合の時間が長かったという訳ではない。それでも、十分に練られた互いの戦略がぶつかり合った試合で、見応えがあった。
試合開始直後、先に仕掛けたのは塩崎の方だった。彼女が伸縮自在の蔓の髪の毛を切り離すとそれが獲物を狩り尽くす意思を持った獣の如く骨抜に迫った。――どうやら、彼女の髪は切り離しても自在にコントロールが可能らしい――
しかし、蔓の迫った先に骨抜は居なかった。塩崎が蔓を展開した速度も相当のもの。それに、闘技場の上に多くの逃げ場がある訳でもない。''個性''から考えても、骨抜が空を飛べる訳はない。ならば、彼はどこに行ったのか。その答えは――
『おおっと!?骨抜、まさかの地面の中にいやがったのか!お前はモグラか!?』
――地面の中であった。闘技場の床から巣穴から顔を出す野うさぎのようにしてひょこっと顔を出し、再び闘技場の床を踏みしめる彼を見て、観客達は一斉に湧き上がる。
骨抜は己の''個性''である''柔化''を使用して地面を柔らかくし、そこに潜伏したのだ。そして、頭の突起だけを覗かせて獲物を待ち受けるチョウチンアンコウのようにして機会を
骨抜が地面を柔らかくすればそこは沼のような状態になる。そのため、沈んで潜伏出来るのも道理に合っている。
塩崎の速攻を掻い潜った骨抜であったが、決着は早かった。
骨抜の''柔化''を発動するトリガーは手で対象物に触れることである。当然ながら、クラスメートの塩崎はそれを把握しており……。蔓に触れられて柔らかくされるのを警戒したのだろうか。彼を無力化することが出来ていないと知ると、先程切り離した蔓を再びコントロールし、彼の腕に向けてそれを振るう。大蛇の如くうねり、鞭のような速度で迫る蔓はあっという間に骨抜の両腕に巻きつき、彼を''個性''が使えないも同然な状況へと追い詰めたのであった。
更にその後、津波のように襲ってきた大質量の蔓の群れが骨抜の全身に巻きついて彼を拘束。全く身動きを取れなくなった彼が潔く降参したことによって勝負が決し、塩崎が三回戦の切符を勝ち取ったのであった。
「いやあ……強いな、塩崎さん……」
出久は、礼儀正しく一礼してから闘技場を後にする塩崎を見ながら呟き、長年愛用している分析ノートに鉛筆を走らせた。
「ありゃまさしく数の暴力ならぬ、量の暴力だな」
爆豪も腕を組み、自分ならどう突破するかを考えながらも出久に言う。そして出久も、頷きながら次の言葉を口にした。
「あの量を突破するのもそうだけど、問題は拘束を如何に解くか……。やっぱり、蔓を燃焼系の''個性''で焼き切る?それとも、無理矢理引きちぎるか……」
「植物系の''個性''だしな。燃焼系の奴は弱点になり得るが、切り離せる」
「ああ、成る程。まあ切り離して当然だけども……。切り離してもコントロール出来るのは強いな」
「だな。それに引きちぎるにしても、腕や足を縛られる。対策張って当然だからな、誰だってそうするわ。引きちぎるんならオールマイトやお前くらいのパワーや技術はいるだろ」
「いやいや……パワーって面じゃ……」
「嘘つけェ。気っつーの爆発させりゃ何とでもなるだろうが。それにキメラアントの怪力もあんだろ。南斗水鳥拳もな」
「バレたか」
出久の言葉に続いてツラツラと言葉を並べる爆豪。そのまま二人は、淡々と塩崎の''個性''の分析を深めていく。その様は、一つの物事の追求にとことん勤しむ哲学者のようである。分析を続ける彼らはすっかり自分達の世界に入り込んでいる様子であり、周りのクラスメート達を唖然とさせた。
最も――
(爆豪……。あんたが仕込んでたんだね)
こうして苦笑している耳郎には見慣れた光景らしいが。
余談にはなるが、以前の出久には深く考える際に顎に手を当ててブツブツと呟く癖があった。それも周囲がそれを不気味だと思い、彼と関わるのを避けたくなる程に。
勿論、精神世界から戻った後もその癖は残っていたのだが……それが残ったままなのは勿体ないと思った爆豪は、彼の癖の矯正を試みた。
何故、彼が呟きが漏れる程考えること――主に分析――に没頭するのか。それは、何もかも自分一人で考えようとするからだ、と爆豪は考えた。
そこで、爆豪は自分も彼の分析に加わるようになり、出久と会話を交わしながらの対話形式でそれを行うようにしたのだ。
出久の呟きに対して、爆豪が会話を投げかける。それによって会話相手がいることを認識させて自然と対話形式に相手を導くのだ。その結果、分析のみならず会話の方にも出久の意識が向き、彼のブツブツ呟く癖はいつの間にか影も形も無くなっていた。
閑話休題。耳郎も出久の分析癖は知っているし、以前にブツブツ呟く癖があったことも彼自身から聞いていた。実際、暇さえあればヒーローの動画を見直して''個性''の分析を繰り返す出久に頼まれ、彼の分析に付き合ったこともある。まあ……彼女自身、分析力はまだまだ
因みにだが、彼らの行う分析には精神世界にいる英雄達も毎回参加している。
(因みに皆さん、どうします?)
出久が尋ねると、彼らそれぞれのやり方というものが見えてきた。
『余ならば、引きちぎるか飛ぶ……だな』
呑気にも、コムギと軍儀を打ちながらメルエムが言う。
『うーん……僕も引きちぎるになるかな……?それか、蔓を鷲掴み。ああでも……相手が女の子だし、引きちぎるのは却下。精々波紋を纏った状態の手刀で切断、かな』
発言した後に、地面に波紋を伝わせる手もあるかなと付け加えて軍儀を打つ二人を微笑ましく見守りながらジョナサンが言う。
『死ぬ気の炎を放出しての高速移動ですかね……』
『漆ノ型の朧で翻弄してから本体を叩くかな』
無一郎の趣味である紙飛行機作りに付き合いながら綱吉が言い、出来た紙飛行機を実際に飛ばして出来栄えを評価しながら無一郎は言った。
『舞空術で飛ぶ……かな。やろうと思えば勿論斬れるけれど、女の子の髪を斬るっていうのはちょっとね……』
『拘束されるよりも前に真空波で切り刻むのみだ。無論、彼女の髪を過度に痛めつけることはないようにしてな』
組手を交わしていたトランクスとレイが片や苦笑、片や口の端を微かに吊り上げて不敵な笑みを浮かべながら答える。
『まあ俺なら単純明快。炎で燃やす、だな。俺自身が炎に変化して透かすことも出来るが』
片膝を立てながら座っていたエースが、指先に炎を灯しながら白い歯を見せ、ニッと笑いながら答える。
『……
現在進行形で読んでいた海洋生物に関する書物をパタンと閉じた後、帽子の下から若かりし頃を思わせる徹底的に磨がれた刀の刃のように鋭い瞳を覗かせながら、承太郎が答えた。
本当に彼らそれぞれの個性が出たやり方だな、と改めて思いながら出久は彼らの意見を聞く。そうして出した1番の対策は……「先手必勝。相手が動く前に己が動く」であった。
出久が鉛筆をノートに走らせて記したその文章を見ながら、爆豪も同じことを考え、一人頷いて納得していた。
相手に何かされる前に自分の得意を押し付ける――戦闘では当然の行為である。
★
その後も試合は続いていく。
四試合目の切島と鉄哲の''個性''駄々被り対決は、真正面からの殴り合い。お見事と言わざるを得ないくらいの綺麗な引き分けとなり、二人が意識を取り戻した後に腕相撲などの簡単な勝負で二回戦進出者を決めることになった。
諸なオタクから隠れヒーローオタクへとジョブチェンジした出久は、主審のミッドナイトは青臭いことが大好きなことも知っており、彼らの試合を見ながら彼女が悶えているのを見てミッドナイト先生らしいな、と苦笑していた。
続く五試合目、泡瀬と尾白の戦い。泡瀬も泡瀬で己の''個性''が戦闘向きでないのを自覚してか多少の格闘術を会得していたものの、尾白のそれとは年季が違いすぎた。
''尻尾''という一見地味な''個性''を持つ彼は、幼き頃からその''個性''でヒーローを目指すべく鍛錬を積み、雄英にまで這い上がってきたのだ。''尻尾''を併用しながらの格闘術によって泡瀬は追い詰められ、尾白の筋肉の塊と言っても過言ではない強靭な尻尾で呆気なく場外に弾き出されてしまった。こうして尾白は、二回戦の切符を勝ち取ったのだった。恐らくだが、泡瀬が動画などで会得した見様見真似のものであるのに対し、尾白の方は格闘術の専門家の元で直に教わって経験を積み、練習を重ねて得たものだ。それによって経験値に差が出たと思われる。習うより慣れろ、とはこのことだろう。
六試合目、常闇対八百万。推薦入学者であり、戦闘訓練初日から優れた分析力や実力を見せつけた八百万と現状で言えばその''個性''は無敵を誇る常闇。大変興味深い対戦カード。果たして、勝利を掴むのはどちらになるのか……。A組の生徒達は熱い議論を交わしていた。
試合開始早々……常闇は伸縮自在の影のモンスター、
その最中に次の一手を考えようとする八百万であったが、常闇の速攻は彼女に考える暇すらも与えてくれない。そして、幾度となく振るわれる漆黒の爪によって彼女はみるみる押し出されていき――彼女自身も気が付かないうちに場外に追いやられ、八百万は敗北を喫してしまったのであった。
常闇の''
つまり、彼女はどうしても咄嗟の判断力という点で一歩劣ってしまう。ある意味、彼女の本領発揮は
それを鑑みると、中距離戦かつ速攻が得意な常闇は彼女にとって相性の悪い相手だと言える。
落ち込んだ様子の八百万を見ながら、出久は彼女のことを記したページに「課題は咄嗟の判断力。相手によっては予め用意した手札をどんどん切るべき」と書き加え、更に常闇のページに「得意なのは中距離戦。その速攻は脅威になり得るが、懐に潜られると脆い」と書き加えた。
★
そして、いよいよやってきた第七試合。瀬呂対麗日。出久としても、共に特訓をしてきた爆豪らとしても楽しみな試合だ。
腕の筋肉をほぐすかのように伸びをする瀬呂と一流の格闘家のように堂々とした立ち姿で深呼吸を行う麗日。観戦するプロヒーローの中には、試合前の立ち振る舞いから生徒達の実力を窺っている者もおり、誰もが二人の振る舞いに注目していた。
『第七試合!レディィィ……スタートッ!!!』
プレゼントマイクの高らかな声を合図に試合開始。試合が始まった瞬間、麗日は体勢を低くしたまま猪やラグビーのプレイヤーを彷彿とさせる勢いで闘技場を駆け、瀬呂に接近する。
接近する彼女に対し、瀬呂はその両肘部分からテープを射出した。ノーモーションかつ、大きく振るわれた竜の尾のように、それ以上のスピードを発揮しながらテープが迫る。
それを目にした瞬間、麗日は自分の体を浮かせてテープを避けられる最小限の高さまで跳躍した。
テープを避けられたのを見た瀬呂は、射出したそれを巻き取ろうとする。射出したテープが鞭のように手で握れるものなら射出したままでも構わないだろう。しかし、肘から射出したものである為、射出した後の長いままで振るったところでスピードは出せない。瀬呂のテープ射出が中々のスピードを誇るのは、肘から射出する瞬間を伴ってこそだ。本来、腕全体を扱って投げるボールを、肘だけを使って投げて十分なスピードが出るだろうか?きっと出ないであろう。それと同じことだ。
瀬呂の行動を予測した麗日は、自身の無重力状態を解除。着地の衝撃を殺すようにして足を折り曲げながら地面に着地すると同時に腹式呼吸で十分な空気を肺に送り込んだ。
そして。
「ふっ!」
大気が爆ぜるかのように鋭く息を吐き出しながら――地面を蹴って瀬呂に迫る。
「いっ!?」
瀬呂が猛然と迫ってきた麗日に驚き、ひん剥くように目を見開いている間に、麗日は彼の懐にまであっという間に到達。弧を描くようにして右腕を振るった。
瀬呂は、自分の懐に入られたことによって麗日に向けてテープを射出しようにもそれが出来ず、後退しようにも麗日の攻撃が先に到達するという状況で万事休すの状況に陥っていた。もう駄目だと彼が確信したその時。
――パチンッ!
平手打ちで頬をぶった時のような音が聞こえた。
何度も瞬きをして目をパチクリさせ、何が起こったか把握出来ない様子の瀬呂の前には……いたずらっぽい笑みを浮かべて両掌を合わせている麗日の姿がある。
そして、瀬呂が怯んでいる隙に――
「とりゃあっ!!!!!」
「あがっ!?」
麗日は武闘家のように勇ましい掛け声と共に瀬呂の顎目掛けてアッパーカットを叩き込む。
元来から格闘センスの高かったらしい麗日のアッパーカットは、呆気なく瀬呂の意識を刈り取る。風に乗って舞う一枚の葉のようにして空中に打ち上げられた瀬呂は、意識を失ったまま地面に落下する。こうして、麗日が三回戦進出の切符を勝ち取ったのであった。
『猫騙しからのアッパーカット!綺麗に瀬呂の顎に入ったな、おい!やるじゃねえか麗日!渾身のアッパーカットを見せつけてくれた麗日にクラップユアハンズ!』
湧き上がる歓声と一切の音の乱れもなく一斉に送られる拍手。それら二つを豪雨のように浴びながら、麗日は満面の笑みを浮かべてガッツポーズを取っている。
(本当成長したな、麗日さん。確か自分を一度でも浮かせたら、一気に酔って吐き気が押し寄せてくるって話だったのに)
ガッツポーズを取ってぴょんぴょんと跳ねながらも、気絶した瀬呂を見てどこか申し訳なさそうな顔をする彼女を見ながら、出久は彼女の成長を実感する。
事実、麗日から自分自身を浮かせた場合だと短時間使用でも嘔吐してしまう程の負担があるということを聞いていた。それ故、自分を浮かせることは「負担の大きい超必殺」だと彼女も自称していた訳だが……。
試合の中で自分を浮かせたにも関わらず、彼女は平然としている。もしや使い慣れることで負担を減らせるのではないか、と出久は察した。
それと同時に彼女が積んだであろう壮絶な特訓のことを想像し、同情を抱くのだった。
さて。その後、もう一つの注目すべき飯田の試合がやってきたのだが……はっきり言って、これは試合とは呼べなかった。そうなった原因は、言わずもがな対戦相手の発目にある。
飯田の対戦相手、発目明はサポート科に在籍する少女である。桃色の髪に発明者らしいゴーグルやジェットパックに特殊なブーツなど己の大事な発明品フル装備といった見た目で戦いに望んだ彼女は、対等に戦いたいということを口実にして彼にサポートアイテムを手渡したのだ。
……端的に言ってしまおう。発目は、飯田のクソ真面目さを利用したのである。そして、飯田は見事に騙されてしまった。
その結果――
「うおおっ!?な、なんなんだ、これはぁっ!」
『おおっ!飯田君、鮮やかな方向転換!これも私が作ったオートバランサーあってこその動きです!タイムラグの心配は全くありません!オートバランサーは32軸のジャイロセンサーを搭載!着用者の意図しない転倒を確実に防いでくれます!』
飯田は己の実力を発揮し切ることなく、発目の制作したサポートアイテムを披露する為の実験台とされている。
正々堂々とした試合というより、発目の独壇場であるサポートアイテム披露会。これには流石のプレゼントマイクも言葉が出ない様子でドン引きしており、相澤は額に手を当てながら発目の売り込み根性に呆れ8割、感心2割を抱いていた。
膝当てのようなものに太腿部分と足首部分に巻きつけたバンド。そして膝当てのようなものを通して上下のバンドを繋げるバーが組み合わさったレッグパーツに、飛行機の羽のような見た目で方向が自在に変えられる小さな噴出口が付いた、件のオートバランサーを装着した飯田は翻弄されっぱなしである。
それの転倒を防ぐ機能で竜巻の如く回転して目を回しかけている飯田を見ながら、クラスメート達は全員飯田に対して同情した。出久も発目の発明者に相応しい好奇心と欲に感心するところがありつつも苦笑を浮かべていたし、爆豪も眉をピクピクと動かしながら見事に顔を引き攣らせていた。
――強いて言うなら、轟だけが何が起こっているのか分かっていない様子で小首を傾げるわ、純粋にサポートアイテムに対して感心しているわで空気感が違う。爆豪が顔を引き攣らせているのは、「こいつやべェ。何も分かってねえ」という意味でドン引きしているのもあるかもしれないが――
その後も、飯田は全方位センサーを搭載した油圧式アタッチメントバーで攻撃を回避されるわ、5発の捕縛用ネットを発射出来る対
……そして、約10分後。発目はマラソンを完走した走者のように爽やかな笑顔を浮かべ、額の汗を拭いながら自ら場外へと降り立った。それによって、飯田は望まぬ勝利を手にすることになってしまったのである。
超サイヤ人のような勢いで髪を逆立てる飯田の様子は、まさしく怒髪天を衝くである。憤怒の炎が彼の背後でメラメラと燃え盛っているようだとさえ錯覚させながら、「嫌いだ君〜っ!」とカクカクした動きで発目に向けて叫んでいる。
そんな彼に対し、A組の生徒達は事前に打ち合わせしたのかというくらいに息ぴったりに「ご愁傷様です」と呟きながら合掌した。
――それに対しても、轟が「お」と薄いリアクションをしていたのは余談だが――
こうして一回戦の試合が全て終わったのだが、二回戦が始まる前に切島と鉄哲の腕相撲勝負が挟まれた。結果は、鉄哲が"個性"のデメリットである金属疲労によって限界がきたことにより、切島の勝利となった。
この腕相撲においても二人は真正面からぶつかり合っており、先程の試合とは言えない試合を見た後の微妙な空気感を吹き飛ばしてくれ、ある意味いい口直しになったことだろう。
そして始まる二回戦。再び巡ってきた自分の出番に、出久は口の端を微かに吊り上げながら不敵な笑みを浮かべて臨むのだった……!