異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake   作:白華虚

4 / 40
3話 巡り巡る異世界(後編)

出久が出会いを果たした6人目の人物は……。

 

「おう、お前が出久か。俺はポートガス・D・エース、元海賊だ。よろしくな!」

 

元海賊で、好漢と言うべきにこやかな笑顔が特徴である男、ポートガス・D・エースだった。

 

エースは、彼の生きてきた世界にて"海賊王"としてその歴史に名を刻んだゴール・D・ロジャーを父親に持ち、その生を授かった。

 

当初は己の父親の悪評を聞いて育てられ、父親の存在の大きさ故もあって疎外感を感じていたことが原因で、触れるもの全てに暴力を振るうような性格の悪ガキだったエースだが、後に義理の弟となるモンキー・D・ルフィとの出会いや、白ひげ海賊団に加入して、彼が"父親"だと慕っていた大海賊の白ひげとの出会いを通して彼はみるみる内に性格の良い優しい男となっていった。

 

そんな経緯を経て、やっと今の彼の性格になったのである。仲間思いであるエースは、内心で"愛する者"を失うことを極度に恐れており、敵から逃げれば自分にとって大切なものが失われるかもしれないという恐怖を衝動的に覚えていた。

 

故に、彼はどんな敵が相手でも決して逃げなかった。それは、初めて白ひげにあった日も然り、白ひげを裏切って逃走した黒ひげを相手に戦った時も然りである。

 

エースは"海賊"であったものの、ヒーローに相応しい男だと出久は思った。"愛する者"を守る為に、己を顧みずに敵前逃亡することなく戦い抜く姿は、まさにヒーローに不可欠なもの。ヒーローたる姿だった。それだけではなく、彼の優しい性格もまたヒーローには必要なものだろう。

 

それだけではない。多少問題行動はあるものの、彼は出久の想像していた海賊とは違う海賊であった。実際に、旅の最中に流れ着いた"ワノ国"にてとある村に滞在させてもらった際、彼はそこの村に住む人々の為になることをしていたし、他の場面でも恩義を大事にする男でもあったのだ。なんとなく善い海賊と悪い海賊とがあることを察した出久は、善い海賊として振る舞った彼を尊敬した。

 

__かと言って問題行動が無かったわけでも無かったのだが__

 

それに、己の人生に悔いを残すことなく生きたエースのことをかっこいいと思った。

 

彼は弟であるルフィを身を挺して庇ったことにより息を引き取ったが、「悔いはない」と語っていた。

 

「出久、お前も男に生まれたんなら悔いのないように生きようぜ。俺達と一緒に、お前の目指す最高のヒーローとやらになってやろうぜ」

 

「!はいっ、僕は諦めません。悔いの残らないように頑張りますよ。そして、最期まで悔いを残さなかったエースさんみたいにかっこいい生き方がしたいです」

 

「よーし、それでいい。俺も応援してやるぜ。俺からは、俺も食った悪魔の実のメラメラの実。その能力を渡そうと思う。ま、実際に実を食ったのとは訳が違うから泳げなくなる心配はねェぞ。それと、三種類ある覇気の使い方もな」

 

「ありがとうございます!」

 

「おいおい、そんな余所余所しいのはよしてくれよ!俺の人生を一緒に体験してくれた以上、お前も弟みてェなもんさ」

 

「……!うん、分かったよ。エース兄さん」

 

「おう!」

 

エースと出久は互いに笑い合って、色々なことを語り合った。出久にとっても、兄という存在は持ったことがなかった故、その温かみは嬉しいものがあった。

 

「それにしても、正義って色々価値観があるんだね……。僕らの思う正義と、海軍の人達が思う正義とでは訳が違ったもの」

 

「そうだな。俺にゃ、正義のどうこうってのは分からねェけどよ……"これが絶対正義だ"ってのはないと思う。聞いてる限り、お前達にとってのヒーローってのは、俺達のところで言う海軍共とは違って人を殺しはしねェんだろ?」

 

「うん。僕らにとってのヒーローは、困っている人を救ける存在だから。どんな敵が相手でも、殺すことはしない。……僕もそれが自分にとっての正義だって思ってる。考え出したらキリがないけどね」

 

「そうか……。いい正義じゃねえか。俺は出久の信じる正義を信じる。それも兄貴としての立派な役目だ」

 

「やっぱりエース兄さんはかっこいいや。僕の世界にいたら、きっといいヒーローになってるよ」

 

「はは、嬉しいこと言ってくれるじゃねェか!」

 

次のゲートが開くその時まで、彼らは仲を深め合っていたのであった。

 

 

エースもまた精神世界に同化した後。ゲートを潜った出久は、7人目の人物との出会いを果たす。

 

7人目の彼は、他の人物とは少し立場が違った。

 

「……お主が緑谷出久か。余の名はメルエム。お主にも、お前の精神世界に住まう者達にも余を名前で呼ぶことを許そう」

 

「よ、宜しくお願いします、メルエムさん」

 

(なんか、凄い上から目線だな……。きっと立場が上の人なんだろうな。……ん?人?)

 

その人物の名はメルエム。そもそも姿形が出久達人間のそれとは違う為、彼は何者なんだろうかと出久は疑問符を浮かべると共に興味津々になった。

 

彼に対する謎も、彼の人生を経験したことで明らかになった。メルエムは、キメラアントと呼ばれる貪欲で凶暴な昆虫__アント、即ち蟻のことだ__の王であったのだ。

 

そんな種族の王として生まれた自負を持ち得る彼は、己以外の生物全てを"餌"として認識しており、異種族だろうが同族だろうが平然と殺して喰らっていた。それに彼は非常にプライドが高く、自身の発言・命令への拒否、偽り、誤魔化しを一切許さない。その振る舞いは、傲慢なる非情な王そのものであった。

 

善悪どちらかと言われれば悪の立場に立つであろう彼に、価値観の変化が訪れる。

 

念能力者の"選別"が終わるまでの余興として様々な盤上競技の名人と対局していた彼は、軍儀打ちの少女コムギと出会った。

 

彼女は覚悟と精神においても、競技上の実力においても遥かなる高みにいた。彼女と対局を続けていくうち、メルエムの中に生じた価値観の変化。

 

それにより、彼はいつしか己の力を暴力による抑圧ではなく、現在の不平等な社会を破壊し、弱者を庇護することで理不尽な格差のない世界を築き上げる為に使うことを決意したのであった。

 

初め、彼が何故己が出会う8人の中に選ばれたのが疑問に思っていた出久だったが、彼が選ばれた理由はこの理想なのだと勘付いた。

 

"不平等な社会を破壊"することによって成そうとした理想であったものの、弱者を守るその姿勢はヒーローにも必要なものである。敵相手にただ蹂躙されるしかない市民達、それを守るのもヒーローのやるべきことなのだから。

 

彼らキメラアントを討伐する為に結成された討伐隊の襲撃の際も、彼はその時の初手の攻撃によって重傷を負わされたコムギを抱えて慈愛に溢れる振る舞いをしていたし、討伐隊のある男と一対一になっても己の理想を語った上で話し合おうとしていた。

 

最終的にそのとある男とは戦闘を繰り広げた訳だが、彼が最後の手段として発動させた爆弾が撒き散らす、遅効性の毒にメルエムは侵されることとなる。

 

その事実を知って、己の命が長くないことを悟ったメルエムは最期の時をコムギと過ごすことを決意したのであった。

 

メルエムは語る。

 

「余は最期のあの瞬間、コムギと添い遂げる為に生まれてきたのだと確信した。コムギが居なくば、今の余は存在しておらぬし、ここにも来ておらぬだろう」

 

そう語る彼の顔は優しい笑顔に満ちていて。出久もまた、心が暖かくなるのを感じた。

 

「……お好きなんですね、コムギさんのこと」

 

「好きどころではない、愛しておるのだ」

 

「わあっ、思ったよりも情熱的」

 

「まあなんだ、お主もいずれそういう相手に出会う日が来る。それは置いておくとして、余からは単純な強さとキメラアントとしての耐久力と生命力、加えて念能力を与えよう」

 

そんな相手、現れるのかなあ?と考えながらも、出久はメルエムの念能力の方にも興味を示した。

 

「念能力……。メルエムさんの場合は、対象のオーラを喰べることで自分のものにするんでしたっけ?」

 

「うむ。お主には、余が扱えるようになった能力をも扱えるようにしておこう。恐らくお主の世界になると"オーラ"の概念が広まっていない故、捕食対象が個性因子に変わるであろう。捕食量は、相手に影響のない程に微量で構わん。それと、お主は自在に念能力を扱えるから安心せよ。念能力の基本については余が教える。いつでも聞いてくれ」

 

「はい、ありがとうございます!……あの、これを聞くのはあれですけれどコムギさんがいなくて寂しくないですか?」

 

「問題無い。コムギも余と共にお主の精神世界に入れるよう、余にお主のことを伝達してきた奴に頼んでおいた」

 

「ふぁっ!?」

 

「連れてくる故、同化するのは暫し待つがよい」

 

「りょ、了解です」

 

結果、コムギと共に戻ってきたメルエムと同化することとなり、出久の精神世界の住人がまた1人増えるのであった。

 

「……予定外に増えちゃったけど、賑やかなのは嬉しいし、まあいいか!」

 

『メルエム様共々、よろすくお願いします!』

 

『出久よ、余で7人目のようだな』

 

『あっ、それなら次が最後じゃないですか』

 

『メルエムから急に強さが跳ね上がってるわ、人間離れしてるわって感じだからさ、次もただの人間ではなさそうだね』

 

『そうかもしれないな。でも、僕は楽しみだよ。次に出会えるのがどんな人か』

 

『長かったようで短かったな。ここに来るまでよ』

 

『ああ……。そしてここまで、出久も見違える程に成長した』

 

『よっしゃ、出久!いよいよ最後だ、張り切って行こうぜ!』

 

「そうだね、エース兄さん。それに皆も。ここまで一緒に来てくれてありがとう。そして、これからもよろしく!」

 

ここまで己に経験と力をくれた仲間達全員にお礼を言うと、出久は意気揚々と次のゲートの中に飛び込んでいった。

 

 

「来たんだね、緑谷出久君。その様子だとオレが最後みたいだね。オレの名前はトランクス。よろしくね」

 

「よろしくお願いします!」

 

そして、最後に出会った人物の名はトランクス。彼こそが、出久と剣戟を繰り広げていた銀髪ツーブロックの青年である。

 

彼は戦闘民族サイヤ人、その生き残りであり且つその王子である男、ベジータとごく普通の地球人、ブルマとの間に生を授かった男だ。

 

彼自身もだが……彼の戦った相手もまた今までとは次元が違った。"強さ"のベクトルが他と比べて明らかに大差があるのである。

 

何せ、彼の生きた世界はとある科学者の開発した人造人間17号、18号によって絶望に包まれていたことがあった。トランクス以外にも、彼の父親や彼の師匠を含めて2人と闘う戦士がいたが、いずれも殺されてしまい、人類は絶滅の危機に追い込まれていた。

 

それだけに飽き足らず、そんな未来を変えようとタイムトラベルして向かった過去では、2人を吸収することを目的として生み出された究極の人造人間、セルとの戦いを繰り広げた。実のところで言えば、トランクスは8人のメンツの中で1番の強さを誇るのだが、そんな彼でも自爆から復活して力を増したセルによって一撃で殺されてしまっている。相手の強さはそれ程のレベルなのだ。

 

そして、その戦いから10年以上が経った時には、過去にいる己の父親ベジータと、そのライバル孫悟空の助力を得ながらも、正義を謳って"人間ゼロ計画"とやらを目論んだゴクウブラックとザマスという神々を相手に戦い抜いた。

 

無一郎が相手取った異形の化け物、鬼ですら出久にとっては恐ろしい程の強さであったというのに、今度はそれがちっぽけに思える存在である神が相手ときた。出久はただただ息を飲み、そんな相手と戦い抜いたトランクスに尊敬の眼差しを向けていた。

 

彼は、自分の生まれた世界において強い使命感を背負って生きてきた為、誠実で真面目な性格をしており、残された最後の戦士、最後の希望として世界を守り抜いてきた。

 

本人は「オレはヒーローなんて大したものじゃない。守りたいから守っただけだよ」と謙虚な姿勢を見せていたものの、当時から世界に生きていた人々にとってはヒーローであるに違いない。出久のいた世界のNo.1ヒーロー、オールマイトのように。

 

ザマス達との戦いを終えた後、彼は二度も過去に渡って歴史を改変した罪を償う為、時の界王神のもとで宇宙の歴史と時空を守る為のタイムパトローラーとして大変貢献した。その戦いの中で己もまた真に神の領域に辿り着いて強さを増し、その名前は後任のタイムパトローラー達の間で延々と語り継がれている。

 

「トランクスさんは凄いです。こんなとんでもない相手と何度も闘ってきたなんて。1人で何人もの巨悪と闘わなきゃいけなかったから、その重圧は到底想像がつきませんけれど……」

 

「!ありがとう。まあ、結局父さんを超えるっていう目標は達成出来なかったけれどね。オレが強くなっても、父さんは悟空さんの背中を追って常に先に行ってしまう。やっぱり、オレの父さんは凄い人だよ」

 

「はい。それに、ぶっきら棒に見えるし素直じゃないけれど、本当は凄く優しい方なんですね。トランクスさんがセルにやられた後、激昂して飛び出していったところも、ザマスとの戦いの為に過去に行った時に送られたお叱りからも、なんとなく分かりました」

 

誇り高い戦闘民族の王子で、素晴らしい父親像でもある男、ベジータを思い出しながら出久は言った。

 

「オレもヤムチャさんに、セルに殺されたオレを見て父さんが飛び出していったっていうのを聞いたのは嬉しかったよ。オレも愛されてたんだな、って。出久君、オレからは単純な強さもそうだけれど、気の操り方と超サイヤ人も託そうと思う。神の領域である超サイヤ人ゴッド……。そこまで辿り着くには遠い道のりだけれど、出久君だってきっと辿り着けるさ。オレと一緒に、オレの人生を見てきたんだから」

 

「はい!」

 

己のことを信頼してくれるトランクス。彼の態度が出久はとても嬉しく、そして彼の期待に応えるためにも一生懸命励もうと決めた出久であった。

 

 

こうして8人との邂逅を終えた出久だった訳だが、精神世界に滞在して鍛練を積み重ねることが出来るということが分かり、遅れを取り戻す……否。周りを追い抜く意気込みで日々鍛練を積み重ねているという訳である。

 

その中で彼の身体は鍛え上げられ、無一郎の使っていた全集中の呼吸その"常中"に、彼が扱っていたそれらの流派の一つ、霞の呼吸を彼以上に精度を上げて仕上げることが出来た上、反復動作も習得した。無論、これが扱えるということは、ジョナサンの波紋の呼吸も必然的に扱えることになる。

 

加え、レイの南斗水鳥拳や綱吉の死ぬ気の炎に直感力。エースのメラメラの実の能力に、彼から教えてもらった覇王色、武装色、見聞色の三つの覇気、承太郎から受け継いだスタープラチナ、メルエムの念能力とその基本。様々な力を扱えるようになった。

 

トランクスから与えられた力に関しては、気の操り方を完全にマスターしたものの、超サイヤ人については、未だ普通の超サイヤ人……そのフルパワー段階までしか変身出来ない。しかし、いつしか出久は更なる強さの高みに辿り着くことであろう。

 

「はは、出久君は凄いな。オレも羨ましいくらいの成長速度だよ。やっぱり、元からキミには潜在能力があったんだね」

 

「いえいえ、僕はまだまだですよ。貴方やメルエムさんを相手にしても、もっと楽に戦えるように強くならなくちゃ」

 

「うん……その向上心は大事だ。いつか必ずキミの救けになるよ。さて、もう一戦いくかい?」

 

「喜んで!是非お願いします!」

 

こうして出久は、今日もまた鍛練に励む。一番近くにいた凄い人であった幼馴染に追いつく為に、オールマイトに自分の夢を肯定してもらえるようになる為に。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。