異世界を巡った少年のヒーローアカデミア:Remake 作:白華虚
更に季節が流れて冬空の元。冷え込んだ空気、白い吐息。そんな冬らしい様子を見せる今日の日付は、2月26日。
今日は来たるべき日、雄英高校の入学試験の当日だ。午前中に筆記試験を行った後、午後からは実技試験がある。
どちらもこれ以上ない程に対策をした故、出久に不安はない。そんな彼は今、幼馴染の爆豪と共に雄英高校の校門前に立っていた。
「ここが雄英……。実物でっかいなあ……!」
「おうよォ、俺らの中学が豆に見えるくらいだ」
「豆はちょっと言い過ぎじゃないかな、かっちゃん」
この2人は、どちらも万全の対策をしている自信がある為、過度に緊張していない。現に、こうやって気軽に会話する余裕もある。
「かっちゃん」
「なんだ」
「絶対取ろうね、ツートップ」
「たりめェだ。オールマイトにも言われたことだしな、『君達が来たということを知らしめてほしい』って」
つい今朝早くに会ってオールマイトに言われた一言を思い出しながら、2人はニッと笑い合って拳を合わせる。
そんな2人を、周りの生徒達は興味津々に見守っていた。勿論それは、彼らの有名さ故だ。
「見ろよ!ヘドロの時の爆豪だぞ」
「おいおい……!その隣にいるのって、緑谷じゃねえか……!爆豪、知り合いだったのかよ……!?」
「緑谷……?」
「は!?知らねーの!?動画見たことねえのかよ!?ヒーロー達が束になっても倒せなかった
「噂じゃ、オールマイトよりも強いんじゃないかって話も出てるよな」
2人のことをヒソヒソと噂する者もいれば……。
「「「きゃー!緑谷君、こっち向いてー!」」」
動画を通してすっかり出久のファンとなってしまった者もいる。
ファン達に微笑みを見せて手を振りながら、
__いやあ、情報社会って怖いなあ__
と出久は内心で苦笑していたのだった。
「ケッ、出久はいい意味で有名で羨ましいこったな」
「あはは……やっぱりかっちゃん、気にしてるんだね……。ヘドロ事件のことで有名になったの」
「気にするに決まってんだろ、今やあんなん黒歴史だわ」
「それもそうか……。でもさ、よく聞いてみてよ、かっちゃん」
「あ?」
出久に言われ、爆豪が耳を澄ましてみると。こんな会話が聞こえた。
「待て待て。確かに爆豪はヘドロで有名だけど、デパートでの事件あったろ?あそこでの活躍忘れてやるなよ」
「あれか!見たぜ!またヒーローが棒立ちな中で、1人立ち向かってたもんな」
「俺、生で見たんだけど半端なかった。戦闘センスがヤバすぎる。応援してえ」
……どうやら、彼が活躍した場面を見てくれている者もいるらしい。
「!」
「ね?君だってちゃんといい意味で有名だよ」
「みてェだな。一安心だわ」
会話を交わしながら雄英の敷地内に足を踏み入れる最中、出久は視線の端で転びそうになっている少年を捉えた。
即座に彼は、少年を支える為に動き出すも、彼が駆けつける前にショートボブにした茶髪の朗らかな雰囲気の少女が、"個性"を使って少年を救けた。
そんな他人に対して世話を焼ける彼女を、出久は素直に尊敬する。
そして、あの子も受かってくれるといいな、と祈って笑みを浮かべながら校舎内に向かったのであった。
★
午前中の筆記試験が終了した。結論から言えば、出久は満点を取った自信があった。まあ、彼の学習能力や記憶力にその頭脳を鑑みれば当然の結果だろう。爆豪もまた、彼と同じように満点の自信があるようだ。
そして、昼食を終えた彼らは、今実技試験の説明を行う会場に集まっている。
そんな会場にて……
『今日は俺のライヴにようこそー!エヴィバディセイヘイ!』
先程から試験の概要を説明しているプロヒーロー、"プレゼントマイク"の声が虚しく響き渡っている訳だが……彼の不遇__出久と爆豪は、その不遇に対して、内心で「ドンマイ」と言いながら合掌した__は置いておくとして。
実技試験、その概要は……仮想
「……プリントに記載された
「意味なくこんなもん置かねェだろ」
「うん、僕もそう思う」
プリントには、今のところ説明にない0Pの仮想
すると。
「質問宜しいでしょうか!」
眼鏡をかけた七三分けの少年が挙手をして0Pについて質問した。
質問をした彼の勇気に、出久は内心でグッジョブを送りながらプレゼントマイクの説明に耳を傾けた。
『受験番号7111君、ナイスなお便りサンキュー!皆は、レトロゲーのスー○ーマ○オブラザーズやったことあるか!?あれで言うドッ○ンみたいなもんさ。各会場に一体、所狭しと暴れ回る"ギミック"よ!リスナー諸君には、避けて通ることをオススメするぜ!』
「へえ……」
その説明を以て、出久の確信が深まった。そして、この0Pはヒーローの"本質"を見る為の物だとなんとなく察しがついた。
__まあ、察したこととは違っても、0Pが周りに被害を与えるレベルのデカさなら破壊しておこうかな__
そして出久は、0Pを破壊することを1人決意したのであった。
説明を終えた後、プレゼントマイクは激励を込めて、雄英高校の校訓を受験生達にプレゼントした。
「更に向こうへ……か。やってやろうじゃない」
「出久、絶対受かんぞ」
「言われなくともそのつもりだよ」
出久は、再び爆豪と拳を合わせて互いの健闘を祈りあった後、自分の受験会場へと向かうバスへと足を進めていくのであった。
★
「はあ……試験会場も広いなあ……」
己の試験会場に着いた出久は、準備運動をしながら周囲を見渡し、感嘆の声を漏らした。
「試験にも多大な資金を使うとは、流石雄英」
呟きながら、自分のライバル達はどんな人物達なんだろうかと見回してみると……朝の人助けをした茶髪ショートボブの少女と、件の眼鏡少年もいた。
__勿論君達にも受かってほしいけれど、トップは譲らないよ__
内心で吐露しながら出久が目を閉じ、精神統一していると……。
「はい、スタートォ!」
突如響くスタートの合図。
瞬間、出久は誰よりも速く反射的に地面を蹴って飛び出した。
『ブッコ……フギャ!?』
彼が向かってくることにセンサーで反応したのか、1Pの
「あれ、意外と脆い。まあいいや」
その脆さに驚きながらも、出久は次の段階に移る。念能力、その基本の応用である"円"__それも、数キロに渡り、この試験会場全てを覆い尽くせる程のものだ__を一瞬で展開する。
その範囲内にいる仮想
また、彼が展開する"円"はメルエムのように光子のような物質を拡散する。それを円内にいる受験生達や仮想
「……これで準備完了。さて、暴れますか」
"円"を収束させた出久は、闘志に満ち満ちた笑みを浮かべて呟いた......。
★
__うわあっ、凄い無双っぷり__
雄英敷地内のとある一室。そこには雄英の教師且つプロヒーローである者達が集まっており、モニターで試験の様子を見守っていた。
そこには、春から雄英に勤めることになって、黄色いスーツに身を包んだトゥルーフォームの姿のオールマイトもいた。
先述した内心での言葉は、オールマイトのそれである。
教師達もその多くが口をあんぐりとさせて、画面に映し出されている様子に唖然としていた。彼らが注目しているのは、2人の少年の姿だ。
『シャオラァッ!』
1人は橙色の火花を纏いながら、目にも止まらぬ速さで仮想
そしてもう1人は……。
『火拳ッ!』
炎の拳で仮想
『スタープラチナ・ザ・ワールド!』
ある時は、背後から守護神のような姿の何かを出しながらそう宣言すれば、次の瞬間には対峙していたはずの仮想
『魔閃光!』
ある時は、黄色いエネルギー波で仮想
『死ぬ気の零地点突破・
ある時は、ノッキングするような不規則な炎を放出しては、それを冷気に変換して仮想
『南斗水鳥拳奥義、
ある時は、湖面を軽やかに泳ぐ水鳥の如く華麗な足捌きで、真空波を巻き起こしながら仮想
『霞の呼吸・伍ノ型
ある時は、3Pの攻撃を掻い潜りながら高速で繰り出した連撃でそれらを叩き壊し、
『!怪我したんだね、少し待ってて』
またある時は、バリバリと電撃のようなものを発生させたかと思えば、怪我をした受験生の傷を治していた。
「何これ……。2人程、プロヒーロー並みの子がいるじゃないの……!」
SMマスクをつけた、露出度の高い格好をしている女性のプロヒーロー、"ミッドナイト"が「きっとここまで一生懸命特訓してきたのね……!青いわ!」と呟きながら発言する。
「……どちらも戦い慣れし過ぎている。多彩な能力を扱いながら無双している方……緑谷出久だったか。そっちならまだ分かるが、もう1人の爆豪の方は……」
ほんの少しの迷いもない、戦い慣れし過ぎた2人の動きを見て、黒いヒーロースーツに身を包んで、首元に布のようなものを巻き付けた無精髭の男、抹消ヒーロー"イレイザーヘッド"こと相澤消太が言う。
「緑谷君は、件の動画で
『!?』
相澤の発言を受け、鼠のような姿をした男で、この雄英高校の校長である根津が言った。
彼の言葉に、オールマイトは驚愕しながらツッコむ。
「こ、校長先生!?その話は内密にするということで通したはずでは……!?」
「いやあ……ごめんよ、オールマイト。この強さだと余りにも隠しようがないなあ、と思ってね」
「……確かに」
根津から、爆豪の強さを指摘されればオールマイトも納得せざるを得ず、言葉を呑み込むのであった。
(君達はいつも私の想像の遥か先を行ってくれるな!流石十代、若いっていいね!)
オールマイトは、2人の勇姿を見届けながら喜ばしそうに笑っている。
そして……。
__さあ、少年達。君達のヒーローとしての本質を見せてくれたまえ!期待してるぜ!__
祈りを込めながら、0Pの起動ボタンを押したのであった。
★
『オラァッ!』
「これで150P」
承太郎から受け継いだスタープラチナで仮想
ここまで出久は、順調にポイントを稼いでいる。己の受け継いだ力で出来ることを見せながら、ある時は
"ヒーロー志望なら、試験中だろうが世話を焼いて当然だ"という信念の元に、彼は他の受験生に対しても世話を焼いていたのであった。
「妥協したくないしな……。もう少しポイントを稼いで……ッ!?」
別の場所へと移動しようとした出久は、巨大な振動を感じた。
「……タイミングばっちり。動き出したか」
彼はこの振動を起こす物の正体を、見聞色の覇気による未来視で知っている。
"それ"が一体どれ程の物なのか、出久は空を飛び、様子を窺うことにした。
「いや……デカいな……!?」
その振動を起こす物の正体……0P
「ありゃ間違いなく怪我人出るぞ。さっさと破壊しないと……!」
元々決めていたことだ。迷うまでもなく、出久は地面に降り立ち、多くの生徒達が逃げていく中、1人だけ正々堂々と0Pの方へと歩み寄っていく。
__!この気は!__
その最中。朝にも感じたことのある気を、彼は感じ取った。
「朝の茶髪の女の子の……!気が動きだす様子がないってことは……怪我か何かしてるのか!?」
こうなれば、のんびりしている暇などない。出久は、その気を感じる場所まで走った。
「痛っ……」
いざ来てみれば、その少女は瓦礫に足を挟まれているではないか。
彼女は、出久が自分の方に向かってくることに気づくと声を上げた。
「わ、私のことはいいから逃げて!このままじゃ、君も怪我しちゃう!」
「自分が怪我してるってのに、他人の心配なんて君は優しいな......。でも、ここで君を放っておくなんてことしたら、ヒーロー失格だよ。大丈夫、君のことは俺が救けるから」
かつて耳郎にやったように、出久はにこやかに笑った。
「!」
「さてと、さっさとぶっ壊しますか……ねっ!」
次の瞬間、出久は空へと飛び上がり......
「かぁぁぁっ!」
「うわっ!?」
激しく逆立つ金髪と碧眼を持ち、淡い水色に輝く火花を撒き散らす金色のオーラを纏った姿……トランクスから受け継いだ超サイヤ人2の姿に変身した。
そして、溢れ出すオーラを膨大に増長させながら出久は必殺技の準備をする。
その眩しいばかりの輝きに、少女は顔を覆い、0Pは出久へと標的を移した。
「はは、標的がこっちに移ったか。丁度いい!」
それを見た出久は嬉々として笑うと……。
「つぁっ!!」
集中させた気を維持したままに懐に潜り込み、0Pを空中に投げ飛ばした。
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
遠くからそれを見守っていた受験生達からも、驚きの声がする。
それを他所に、出久は無防備にも空中に投げ飛ばされた0Pに標準を向け、両腕を上空に向けて
__技、借りますよ。トランクスさん!__
「ヒートドームアタックッ!!!!!」
次の瞬間。出久を起点にして、眩しく輝く金色の閃光が解き放たれた。
それは一直線に突き進み……0Pの身体全てを跡形もなく消しとばして、爆ぜさせる。
「試験……終了!」
同時に試験終了の合図が会場中に響き渡り……
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』
受験生達は、驚愕と歓喜とが入り混じった声を上げたのであった。
今日はここまでにしておきます!
本当に些細な変化なのですが、勝己君の活躍した動画を見た生徒達の反応的なものを追加しております。
また、ご指摘頂き、最後のファイナルフラッシュをヒートドームアタックへと変更しました。
では、また次回!