44番目の悪魔   作:ミネラルいろはす

1 / 2
前々から考えていた構想。
ちょくちょく更新できたらいいなぁ


比企谷八幡

セブンスターズ幻の第8席、そんな噂を耳にしたことはないか?

そもそもセブンスターズとはその名の指す通り、ギャラルホルンにおける七つの名家のことを表す言葉であり、最高決定機関である。

つまり、ギャラルホルンで一番偉い人たちというわけだ。

それを決めたのは300年も昔厄祭戦での戦果によって決められたもので現代において、そこに入り込むことはおろか、成り替わることなどほとんど不可能に近い。

だが、ギャラルホルン内では実しやかに噂されているのだ。幻の第8席のセブンスターズについて、曰く、賄賂を積んで権利を買った、曰く、現当主を脅して奪った、曰く、セブンスターズ全員の弱みを握っている、曰く、MAを倒した功績だなど、様々な憶測が飛び交っているが誰も本当のことを知らない。

しかも、誰もその人物を見たことがなく、噂のみが四方に飛び交っているのだ。

そんなわけで、今ではただの噂だったのではないかと思っている人がほとんどだ。

 

 

だが、それは単なる噂ではない。

確かにセブンスターズの幻の第8席は存在する。

複雑な事情が絡みに絡まり合って表には出せないため、一般には公開されておらず、一部の特権階級のみが知っているその人物。

 

それこそが、44番目の悪魔の名を冠するガンダムフレーム、ガンダムシャクスに乗る男比企谷八幡。

彼は、特権階級の貴族でもなければ、栄誉ある家柄のものでもない。

元々は宇宙ネズミなんて呼ばれるゴミカス同然の身分だった男だ。

それが、なんの因果かガンダムと巡り合い、そして、天使の名を冠するMAと出会い、それを単独で撃破という有り得ない戦果を上げてしまったのだ。

 

そう有り得ないのだ、いくら300年前の遺産とはいえ、厄祭戦の原因となった悪しきもの。それをたった一人の少年が一人で倒すなど、しかも機体は300年前のままの機体、更に戦闘用ではなく主に偵察を目的とする機体ときた。

 

それはほんの少し前に起きた、とある街の惨劇の話。

ある日突然一つの街が炎に包まれた。

原因不明の機体が暴れていると通報があり複数の隊が出動した。

モビルスーツを数機と、モビルワーカーを数十機。

現代では原因不明の機体とは言え過剰すぎる戦力、送り出した奴らも出動した隊員達もすぐに終わると思っていた。

 

しかし、先遣部隊から応援の連絡があってから、現場に向かったギャラルホルンの部隊は恐怖した。

半壊する街、燃え盛る家、ところかしこで火の手が上がっている。

滅多な事件など起きないこの街でフル装備での出撃命令が出たときはどんな事件かワクワクしていた隊員もいたはずだ。

だが、自分達がこれから相手にする機体とはそういう存在なのだと見せつけられているように思えたからだ。

それに先遣隊のギャラルホルン部隊とは向かう途中で音信不通となり、連絡が取れなくなってしまった。

戦っているため通信ができない状態なのか、はたまたもうすでに彼らは‥。

 

「なっ!これは!!」

 

覚悟をして来た彼らが目にしたものは異様な光景だった。

もはや更地とかしている街の中央に広がるギャラルホルンのMSやMWの残骸。そして、原因となった機体のものと思われる巨大な機械。

羽と思しきパーツもあちらこちらに広がっており、かなりの激闘を繰り広げた様子がうかがえる。

そして、その元凶であろう機体の上に降り立つ一機のMS。

漆黒の翼を広げ機体に降りたつその機体はまさしく悪魔のように見えたという。

 

そのあとすぐに箝口令が引かれ、このことは詮索不要な案件とされてしまっていた。

 

そしてこのMSこそがガンダムフレームガンダムシャクスであり、そのパイロット比企谷八幡だったのだ。

 

あの街で何があったのかを知る者は多くはない。

だが、くしくも彼が残してしまった戦果はギャラルホルン上層部には無視できないものだった。

そして、協議の結果、彼にはいくつかの要望を聴くことと多額の賞金それを引き換えに件の隠蔽及びギャラルホルンへの協力することを契約した。

その上で、彼にはあらゆるギャラルホルンが関わっている戦場への参加を無条件で認めるライセンスを発行し、度々手を焼く案件などを彼に依頼という形で頼む形に落ち着いた。

 

彼の要望はおおよそのことは通り、そして数多くの戦場へと赴くことで戦果を挙げていた彼はギャラルホルン内での権力を着々と伸ばしていた。

それが噂としてセブンスターズと同様の権力を持つと誤解した隊員達が出した答えが幻の第8席なのではというものだった。

 

実際彼は彼らの尻拭いをいくつもこなしてはいるが、権力自体は遠く及ばない。

簡単に言えば、飼い主とペットの関係だ。

彼らは彼に特権を与え彼は飼い主のために死に物狂いで戦場へと赴く。

だが、それは多くの隊員達への命令権を持ち好きなように戦場へと介入できる、それに給料も口止め料として破格の額を貰っている。

平の隊員達から見ればその権力はセブンスターズと遜色ないものに映るだろう。

なので、あながち噂自体は間違いではないのだ、あくまで平の隊員達から見ればの話だが。

 

それにその噂の本人は貴族や上の人物には疎ましく思われてはいるが、弱味を握られているのもあるのと、汚れ役に使いやすいというのもあり重宝されているのだ。

 

そんな噂の本人はと言うと‥‥

 

「ああくそっ!!まだ終わんねえのか、あとどれくらい残ってる?」

 

「あと、数十件分の始末書が残ってるわよ、ほら」

 

自分の戦艦の執務室の中にいた。

一人の男と女が山のように積まれたデスクの上で作業をしている。

積まれている資料は彼の戦果の資料の作成並びに始末書を書くための紙だ。

 

「はぁ、働きたくねぇ、ずっと家に引きこもっていたい。」

 

「そんなこと言って、これ全部貴方の始末書でしょ。毎回毎回命令通りにしないからこんなに書く羽目になるのよ。少しは学習したらどうかしら比企谷君?」

 

「そんなこと言ったってなぁ」

 

疲れた目で側にある資料に目を向ける比企谷と呼ばれた男。

その資料に書かれているのはこの仕事で遭遇した目撃者及び関係者の抹殺。

だが、彼はその命令を無視し、何人かを彼の管理下に置くことによって上記の命令を無視したのだ。

もちろんその際に依頼主に不利益が被る場合に関する賠償の話や始末の付け方などが契約書という形でこうして送られてくるのだ。

それも一つや二つではなく、彼が仕事に行くとほとんど始末書を数枚送られてくる。

むしろ送られてくることがないことの方が多い。

 

「貴方のそうゆう優しいところは好ましく思うけれど、あまり背負いすぎないでね、ただでさえ貴方は背負いすぎてるのだから」

 

「わかってるって雪ノ下、俺も簡単に死ねるような立場にないのはわかってる。それに俺が死んだらお前らがどんな目にあうかわからないからな」

 

「そう‥わかってるならいいの」

 

目の前の少女雪ノ下雪乃、彼女もまた依頼の末に保護した少女。

依頼内容は不正を働いていた彼女の親を殺すこと。

彼女の親は元々家から武器まで様々なものを作っていたのだが、それをギャラルホルンだけではなく裏の業者に流していたり、滞納金をちょろまかしたりとそれだけならここまでのことにはならなかったが、それがたまたま強い権力を持った貴族の子供が彼らが裏に流した武器で殺されたのだ。

もちろん、その親は怒りに怒って様々な関係者に武器の出どころや殺した奴に関係がある人物を殺し始めた。

そうして、武器を売った雪ノ下の親まで行き着いたのだが、流石に一般人とは違い大手の企業は一筋縄ではいかない。

だから、俺に依頼が回ってきた。

彼女の両親を殺すこと、娘は奴隷として売りはらえと。

なあなあの末に彼女達の姉妹を助けることになったのだが、そのうち話すことにしよう。

 

だから、俺は死ねない。

俺が死んだら彼女達が彼らにどんな扱いを受けるかわからない。

昔と違いいつ死んでもいい状況から、絶対死ねない状況へと変わった今俺一人の死は俺が守っている人達全員に対しての死に直結しかねないからな。

 

「‥‥貴方が死んだら私たちも死ぬわ」

 

他の人たちに弄ばれるくらいならねと言い残して彼女もまた始末書へと戻る。

彼女の重すぎる想いも、俺が関わってしまった故の産物だ。

だから、彼女にあの恐怖を再び味あわせるわけにはいかない。

 

「‥‥わかってるつうの」

 

雪ノ下に聞こえない小声でつぶやく。

心なしか彼女の方が赤く染まっているのは気のせいだと思いたい。

聞こえてたとかなったら死にたくなるかな。

 

「‥‥はぁ、やりますかねぇ」

 

俺も再び始末書へと手を付ける。

明日にはまた依頼が入っているし、気になる事もある。

こんなところで、始末書を書いている時間自体も本当は惜しいんだが、残っているのは俺の確認が必要なものだけだと言うのだからやらなければならない。

俺の確認がいらないものはいつも彼女達が終わらせてくれているので本当感謝しかない。

ふと、何かを思い出したのかこちらに顔を向ける雪ノ下。

 

「それと貴方が気にしていた件についてだけど近いうちにことを起こすらしいわよ彼ら。預けている子達も危険かもしれないけどどうするの?」

 

「‥‥なんで、それを知ってるかは聞かないが、バレてるならしょうがないか。‥‥まあ俺なりになんとかするつもりだ、名瀬さんにも世話になってるしあいつらを行かせたのも俺だしな。」

 

雪ノ下は、俺の知らないところでいろいろ情報をつかんでくるので今回の違法兵器の件の情報をすでに持っていてもおかしくはない。

流石うちの参謀役を務めているだけはある。

 

「けど、相手はセブンスターズも絡んでくるのでしょう?本当に大丈夫なのね」

 

「あぁ何とかする、いやして見せる。由比ヶ浜と一色を送ったのは俺だ、それを助けに行くついでに名瀬さんのところの子も助けられるだけ助ける。それに目的としては俺の艦の仲間を回収しに行くだけ、まあ何とかなるさ」

 

「そう…あなたがそう言うなら信じるわ。…けど絶対生きて帰ってきなさいよ、みんなで」

 

「ああ、わかってる。仲間を助けに行くついでにたまたま襲われている名瀬さんたちも助ける。雪ノ下達はいつも通り始末書を片付ける用意だけはしといてくれ。あとはなんとかする、いつも通りな」

 

そう、と相槌を打って再び始末書へと戻る雪ノ下。

いつも彼女たちには残していく不安を味合わせてしまうのは申し訳ないが、今回ばかりは動かないわけにはいかない。

 

別に俺はギャラルホルンのやり方についてどうこう言うつもりはない、今までもお偉いさんの仕事をこなして生活してきたんだ。

世界がどうなろうと関係ない。

誰が権力を持とうが気にもしなかったが、俺のものに手を出すなら俺も動かないわけにはいかないよな。

 

世界が変わろうと、人は変わらない。

だから、俺は俺の守るべき物のために赴こう戦場へと




お読みいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。