44番目の悪魔   作:ミネラルいろはす

2 / 2
学校のチーム制作が忙しくて更新できず申し訳ないです。
これは自分の自己満足小説なのでそこはご了承ください。


会敵

「ここは俺だけでいい、みんな退艦準備をするんだ」

 

タービンズの艦首室で一人の男が艦を動かしている女達に告げる。

女たちと言ってもこの艦には男は彼一人なので必然的に彼以外の全員になるわけだが。

 

ここから先は死地だ。

その死地に女を連れて行く気なんてさらさらない。

今まで艦で命を張らしてきた俺がいうのもあれだが、女に命を張らせるわけにはいかない。

特に今回みたいな逃れようのない泥舟からはな。

 

俺の説明に皆納得した様子はなかったが、渋々言うことを聞いてくれたようで今艦内中で退艦準備の声が飛び交っている。

 

「違法兵器ねぇ?ほっんとあれだけオルガに身内に気をつけろって言っておいて、兄貴分の俺がまんまと足元救われてちゃ笑い話にもならねぇよなアミダ」

 

「ほんと笑えない冗談だよまったく、それも相手はかのギャラルホルンのセブンスターズの一人って言うじゃないか。どこでそんな大物と繋がってたのかねぇ」

 

一人だけ退艦を断り残ったアミダに俺は愚痴る。

日頃から鉄華団の奴らには注意しろって言っときながら、俺は脱出不可能なアリジゴクに落ちちまうなんてよ。

 

それにしてもアミダの言う通り相手がギャラルホルンのセブンスターズの一角とはな。どこでそんなコネを手に入れたんだあの野郎は。

大方俺を嵌めて鉄華団諸共掃討しようって魂胆なんだろうが、鉄華団はこねぇよ。

オルガの方は親父に止めてもらうように言っておいたから、この罠にはまりに来ることはない。

あいつは後先考えずに突っ走るからなぁ、こうでもしねぇと罠とわかっててもかかりに来ちまう。

誰かがストッパーになってやんねぇと破滅しちまう。

 

そこで、ふと危なっかしいやつと関連してあいつから預かっている子たちのことを思い出した。

あいつとは、親父の仕事を引き受けている外部の人間ってことで幹部の人間からは俺たちと同じように疎まれていたが、あいつの所属と上司がとんでもない奴らで手を出そうなんて馬鹿な奴はいなかったがな。

そんなやつとひょんなことから仲良くなった俺たちは二人ともクルーに女性が多いと言うこともあって、女性が多いという特有の苦労話で意気投合。

何だかんだ今ではお互いの艦にクルーを派遣させるくらいの仲にはなっている。

無論奴の所属組織に変な勘ぐりを入れられては困るので俺たちの関係は公にはせず、会うこともほとんどなく、会話のほとんどは電話越しでだ。

 

そう、そんな俺の親友とも呼べる友のクルーがこの艦には乗っている。

彼女たちは無事退艦したのだろうか?

気になったので、アミダに確認を取ることにした。

 

「アミダ、比企谷のとこの子達はみんな退艦したか?」

 

「…ちょっと待っとくれ、今確認するよ。……いや、まだだねあの子たちの機体はまだこの艦の中にあるよ」

 

「おいおい、それはマズイだろ。俺のミスにあいつんとこの子を危険には晒せねぇ、急いで呼び出してくれ」

 

「わかったよ、ちょっと待っておくれ。」

 

アミダが艦内のアナウンスが、艦内に響き渡るように機械を弄っている。

 

「…よし、いけるよ!!あー、あー結衣といろは艦内にいるなら今すぐ艦首室に来な、名瀬が呼んでるよ。繰り返すよ……」

 

アミダのアナウンスから数分後ドタドタという足音が近づいてくる。

その音はドアの前でピタリと止まると、次の瞬間にはドアが開いた。

ドアの外にいたのはピンク色の髪をして、お団子結びをしているとある部分の成長が激しい女の子、由比ヶ浜結衣と栗色のショートカットの髪の毛の年相応の成長をしている女の子、一色いろはだった。

 

「ふっーふっーなぜっちどうしたの急に呼び出して」

 

「そうですよ私たちも準備してたんですけど」

 

結衣の方は体力がないのか息切れを起こしていたが、いろはの方はケロッとした顔をしている。

やはり、重い分走るのも疲れるのだろうかなんて考えを振り切り、時間もないことだし本題に入ることにしよう。

 

「いや、すまねぇな結衣にいろはも。急で悪いんだが、護衛の依頼はここで取り下げさせてもらう。だから、急いで退艦準備をしてくれ」

 

「……なんで?なぜっちピンチなんじゃないの?」

 

結衣の言葉が胸に刺さる。

あぁ、確かに今の俺はピンチだ。

それも超がつくくらいのな。

だからこそ、お前たちを巻き込むわけにはいかないのさ

大事な友達のクルーをな

 

「ああ、そうだ。今の俺は超ピンチだ。だけど、その手伝いはお前らには求めない。お前らはタービンズじゃない、帰る家があるだろう?だから、タービンズの問題に巻き込むわけにはいかない。わかったらさっさとしろ、時間がねぇ」

 

俺の言葉に俯く結衣。

反論もせず、黙っている。隣のいろはも何も言わずそこに立っているだけだ。

しまった言い過ぎたか、善意からの申し出だったのはわかってるが、ここばかりは譲れないんだ。

すまない結衣

 

「…………ない」

 

「ん?なんだ?」

 

何か結衣が言ったみたいだが、よく聞き取れなかった。

 

「……んない」

 

「もう少し大きな声で言ってくれないと聞こえない」

 

次の瞬間彼女は俯いていた顔をガバッとあげこちらを睨め付けるように睨んできた。

 

「ぜっん!!ぜっん!!わかんないよ!!」

 

「だって、なぜっち困ってるんだよね。身に覚えのない冤罪被せられて、自分の艦の子達を逃がすくらい逃れようのない結末が見えてるんだよね?だったら、言えばいいじゃん!!助けてって!!!!」

 

結衣の叫びが艦首室に広がる。

彼女は優しい子だ。そして、真っ直ぐすぎるくらいに感情的に動く。

それは良い点でもあるがこういう場合裏目にでることもある。

だから、教えてやる必要がある物事を解決するための最善って奴を。

 

「それは無理じゃねぇかな?相手はギャラルホルンのお偉いさんだ。そんじょそこらの組織や海賊じゃねぇんだ。世界を束ねてる奴らだぞ。歯向かってみろ、そいつらもろとも、宇宙の藻屑だ。それに助けを求めろって言ったて、誰に助けを求めろって言うんだ?ギャラルホルン相手に手を貸してくれる奴なんて「いるじゃん!!ここに少なくても二人はいる!!なぜっちが色んなこと考えてみんなの為に行動しようとしてる事ぐらい、バカな私でもわかってる。」

 

でも、と結衣は言葉を続ける。

 

「でもね、感情では納得しないんだよ。なぜっちの艦の子達みんな辛そうだったよ」

 

そうやって、優しく語りかけてくる結衣。

比企谷からはバカでアホの子なんて言われているが、こんなにも心にくる言葉が吐けるのは、彼女が周りをよく見ているからだろう。

結衣は比企谷のクルーの中でもよく俺の仲間と仲が良かったからな。

 

「はぁ、ほんっと類は友を呼ぶというかなんというか」

 

今まで静観していた一色いろはが口を開く。

顔の表情からは諦めの表情が伺える。

 

「なんというか、ほんともう、うちの先輩と同じですね、そういうところ。先輩も自分の失敗なんかはみんなを巻き込まないようにしてますし、それを何度も私達で注意したりもしましたけど、名瀬さんもそういうタイプだったとは……。ほんと、先輩の友達ってもしかしてめんどくさい人ばかりなんですかねぇほんと。」

 

ただでさえ友達少ないのになんで呟きながら話が脱線していく気がするので、とりあえず、言いたいことを聞いてみることにした。

 

「あのですね、名瀬さんがみなさんを助けたがってるいるように、みんなも名瀬さんを助けたいんです。名瀬さんもそれはわかってると思うんですよ。でも、貴方が犠牲になって助かった先であの子達は笑えるんですか?」

 

「っ!!だが、俺はそれでも助かって欲しいと思ってる。これから先俺がいなくても、生きていて欲しい。そう願うのは悪いことじゃねぇだろ。」

 

「それは違うよなぜっち、みんなはなぜっちがいない明日なんて考えられないんじゃ無いかな。私たちのヒッキーと同じで」

 

だから、頼って欲しいんだ

 

一人で抱え込まないで、みんなを頼って欲しい。

アミダさんがそうしたようにと彼女たちは言葉を紡いだ。

 

「……わかった。お前たちの言う通り、力を貸して欲しい。ただし、お前たちを死なせたとあったら、この局面を乗り切ったとしてもあいつに合わせる顔をがねぇからぜってぇに死ぬんじゃねぇぞ。危ないと思ったら俺たちを見捨てて逃げろ。」

 

それが、力を貸してもらう絶対条件だと彼女たちに言う。

すると、彼女たちは顔を見合わせてふふっと笑った。

なぜ、笑っているのか、俺にはわからねぇが、あいつならわかるんじゃないか。

いや、あいつは俺よりも女心がわかってねぇからわかるはずもねぇか。

 

「それに関しては大丈夫ですよ。ね、結衣先輩?」

 

「そうだね、いろはちゃん。私たちにもなぜっちと同じように大切に思ってくれる人がいるから、捻くれてて心配性のくせに自分のことを話さない私たちの艦長がね」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お前ら準備はいいか?そろそろ敵さんを目視で確認できる距離だ。絶対に油断するなよ」

 

「こちら結衣大丈夫だよ、準備万端。」

 

「こっちも大丈夫ですよ、名瀬さん」

 

彼女たちが乗るのは漏影。

自分たちの専用機ではなく、タービンズの基本装備である。

彼女たちの専用機はちょうど修理が終わっておらず、移動だけならばともかく、戦闘となると厳しいため漏影は乗ってもらった。

 

「アミダは、って聞くまでもねぇよな?」

 

「当たり前だよ、いつも通りあんたの目を釘付けにしてあげるよ」

 

ピンク色の漏影にのる。

他の二機とは違うこの機体はアミダ専用にカスタマイズされていて、基本装備の漏影とはかけ離れた性能を持つ。

絶対的なタービンズのエースが持つに相応しい機体となっている。

 

「「「っつ!!!」」」

 

一発の砲弾が放たれた。

機体にも艦隊にも当たらなかったその砲弾。

それは唐突に、突然に戦争の、いや皆殺しの戦場の幕をあげるファンファーレとなった。

 

「気ぃ引きしめろよお前ら!!敵の方が数が多いんだ離れすぎねぇように注意しろ、アミダはともかくお前らは乗り慣れた機体じゃねぇからな」

 

「わかってるよ」

 

「わかってます」

 

「そんじゃまぁ、生き足掻くとしますかねぇ」

 

戦艦一隻、モビルスーツ三機は戦場へと飛び出した。

自らの仲間を守るために。

 

 

 

 

 

 

「どうにか、間に合ってくれよ名瀬さん」

 

ガンダムシャクス宇宙へと旅立つ。

仲間と友達を助けるために


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。