指揮官はつらいよ~美女美少女ばかりの職場でいかに性欲を発散するか~ 作:サモアの女神はサンディエゴ
楽しいマッソーの時間だよ!!
楽しい時間はすぐに過ぎてしまう!!
皆から送られてくるマッソーな感想を読みながら夢中で筋トレをして筋肉を磨くと時間が過ぎ去ってしまっていたなんてよくある事なんだ!!
今日はそんな過ぎ去ってしまう事についてのお話だよ!!
しかも今回は感謝のマッソー120%盛りだから筋トレしながら読もうね!!
それではレッツマッソー!!
指揮官です。
ただ今絶賛困惑中です。
目が覚めたら若い頃の自分(10代後半)に戻っており、全身のマッソーが細マッソーになっていた。
しかも前線で戦って付いた傷痕すら残っていない………
「………どういう状況だこれ?」
辺りを見回せば見たことも無い部屋のベットの上で、勉強机が置いてあってその上に教科書らしき物が積み重ねて置いてある。
起き上がって机の方に近寄ると生徒手帳らしき手帳が置いてあったので確認すると………撮った覚えのない俺の顔写真に年齢と学年が記入されていた。
「………アズきゅん学園2年A組という事は、この身体の俺は高校生か?」
聞いたことのあるような無いような学校の名前だが、とりあえず大事な情報源だ。
一応頬をつねって夢じゃないか確認してみたが、痛みを感じたので恐らくこれは現実である。
何故この身体に憑依してしまったのかは分からないが、学生であるのであれば学校へ行かなくてはならない。
もしこの身体の本来の持ち主が戻ってきた時に無断欠席した為に皆勤賞が取れなかったり、教師にその件について怒られる可能性があって実に不憫だ。
「時間は……7時10分か………朝食を食べて制服に着替えよう」
部屋を出てすぐにリビングに出るが、誰も居る気配が無い。
この世界の俺は学生なのに一人暮らししてるのか?
随分と羨ましい限りだ。
「ベルファスト達にいつもは作ってもらっていたけど、簡単な物なら自分でも作れるよな………なんだか懐かしいよ」
前世の記憶の欠片を思い出しながらコンロに油を引いたフライパンを置いて火を灯す。
大戦時はそこら辺の鳥や蛙に蛇を捕まえて調理していたのが懐かしい。
冷蔵庫の中を漁って卵とソーセージを取り出すと熱したフライパンに割った卵とソーセージを炒めた。
「男料理なんて焼くか煮るくらいだもんな」
なんだか懐かし過ぎて楽しくなってきた。
こんな簡単で楽しい事も最近はロイヤルメイド隊に任せていたという事が、なんだか勿体なく感じてきている。
焼き上がった卵とソーセージを皿に乗せて食器棚からお椀を出すと、炊飯器から温かい白米を入れて朝食の完成だ。
「おっと、マヨと醤油を少しかけてっと………いただきます!」
冷めないうちによく噛み締めて味を楽しみながらご飯を食べる。
こんな単純な組み合わせで幸福を感じるなんて俺も安っぽい男だと思いつつ、普段は食べられない簡単な料理に舌鼓を打っていると……
「ごめんなさ〜い!!ジャベリン寝坊しちゃいました〜!!」
玄関の方から何やら元気な声が聞こえてきた。
食べるのを止めて玄関を見るとそこには何やら制服を着て髪を降ろしたロイヤル駆逐艦 ジャベリンがリビングに入って来るのが見える。
「ごめんなさい先パイ!!寝坊してご飯作りに来るのが遅れちゃいまし………って!?先パイが一人で起きてご飯作ってる!?」
「………まずかったか?」
俺の方を指差しながらジャベリンが驚愕の表情を浮かべているのを見た所、この身体の俺は一人で起きられない上にジャベリンに飯まで作ってもらっているらしい。
しかもジャベリンは俺の後輩のようだ。
………年下に迷惑かけている俺って情けなさ過ぎないか?
普段ロイヤルメイド隊にお世話されている俺が言える事じゃないんだがな。
そんな事を思いながら食事を続ける。
ジャベリンの話が本当なら迅速に食べなければ学校に遅刻するとこも有り得そうだ。
「う〜………私の楽しみがぁ………」
「なんの事だ?」
「何でもないから気にしないで………はぁ……」
「……?」
肩をガックリ落とすジャベリンに首を捻りながらも食事は終わった。
食器を手早く片付け歯磨きをして自室に戻り、制服に着替えて再びリビングへ戻るとジャベリンはまだいじけている。
「そろそろ学校へ行こうジャベリン。遅刻するぞ?」
「う〜…………はっ!?もうそんな時間!?いけない!早く学校へ行きましょう先パイ!!」
元の世界と同じく賑やかだな。
慌てているジャベリンに苦笑しながら玄関へ向かう。
どんな世界なのか分からないが平和な世界なのだろうなぁ………
そんな事を思いながらジャベリンと一緒に外へ出た。
「………だいたい予想してたがな」
学園に着いて自分の席に座る。
一番後ろの窓際の席だ。
外は俺が転生する前の令和時代の日本によく似ていた。
ただ、セイレーンやKAN-SENといったモノは無く、アズールレーンが政府与党でレッドアクシズが野党がみたいな感じで平和を維持している。
なんともご都合主義な世界だ。
「ふぅ……」
「む?どうしたんだ?君がため息をつくなんて珍しいじゃないか」
「………エンタープライズか」
「体調でも悪いのか?なら保健室で休むと良いぞ?」
声を掛けてきたのはユニオンの英雄 エンタープライズ………では無い。
ここでは同級生でアーチェリー競技のオリンピック選考選手のエンタープライズとの事なのだが………ぶっちゃけ元の世界と性格は変わらないみたいだ。
学園に掛かっている横断幕にそう書かれていたのを見て知ったのだが、ここでも弓の冴えは鈍らないらしい。
「いや、大丈夫だ。問題ない」
「そうか?なら良いんだが……本当にキツイなら休息を取るのも大事だぞ?」
「ああ、分かった。本当にダメそうならそうするよ」
「無理はしないでくれよ?」
そう言うと心配そうな表情をしながら彼女は俺の席から離れていく。
仲間に対する優しさも変わらないようだ。
「………よし、現実逃避はやめだ」
色々な情報が満載過ぎて頭がパニックになりそうだが、そろそろ現実逃避をやめるとしよう。
なんで男は俺だけなんだこのクラス!!
というか男は俺以外居ねぇじゃねえかよ!!
学園ラブコメ物の主人公が俺は!!
しかもクラスメイトはウチの母港に所属しているKAN-SENばかり………
こんな所まで元の世界の母港と一緒じゃなくても良いだろうがよ………
さっきのエンタープライズも制服着てて一瞬ときめいたわ!!
こんな美人のクラスメイトが前世にもいたらなぁ………なんて考えちまったよ………
それに俺しか男が居ないせいか皆ガードが緩過ぎる。
ジャン・バールと熊野なんてミニスカートなのに片膝立てて机に座ってるからそっち向けねえだろ!!
あとサフォーク!!
お前の装甲の薄さを表現してるのか知らんが、机でうつ伏せに寝るせいでブラウスからブラの紐が透けて見えてるぞ!!
ケントも上着を腰に巻いてるが、そのせいでブラウスの正面から透けブラしてやがる………ちくしょう青色かよ!!
何なんだこの状況は………
「この調子でいくと担任教師もKAN-SENだろうなぁ………」
ご都合主義の塊と青少年の煩悩をくすぐるのような状況に頭を抱えていると予鈴が鳴る。
そして現れた担任教師は………
「コホコホ………おはようございます皆さん。全員揃っていますね?」
スーツ姿の天城だった。
………身体のラインが出てエロいんですが天城先生。
スーツの上着に収まらないセクシーお胸様に俺の股間が熱くなる。
というかマッソーが細マッソーになってる影響なのか聞かん坊がマジで言う事を聞かねぇ………
助けてマッソー神!!
無性に筋トレがしたい!
この煩悩を筋肉に変えたい!!
ダンベルやバーベルが恋し過ぎる!!!
「………という事でホームルームを終わります。今日も怪我無く元気に過ごしましょう」
筋肉への欲求不満を爆発させているとホームルームが終わって天城が教室から出ていく。
ホームルームの内容が全く頭の中に入ってこなかったが、今の俺はそれどころではない。
だが、ここで筋トレをしてもそれは不審者にしか映らないだろう。
とりあえずこの湧き上がりすぎて着火数秒前的なリビドーを何か別の事にすり替えるのだ!!
「………耐え切れるのか俺は」
不安しかない学園生活。
だが、この身体の俺の名誉の為にも耐えて耐えて耐え抜くのだ………
「嘘だろ承太郎………」
座学の時間は何とか乗り越えた。
数学はラングレー、化学は夕張、現代社会はアマゾンといったように教師役は母港で指導役をしているメンツと変わりはなかった。
内容について行くのがやっとだったという事は伏せておくが………
そして午前中最後の授業は………体育だった。
体育館に集まった俺達。
体操服に着替えたのは良いんだが………女子の体操服の下がブルマってどういう事だよ?
ムッチリした子やスラリとした子に綺麗なお尻がクッキリと出るブルマを履いた子達が俺の前に整列している。
一番後ろに並んでいるから凄くハッキリ見えるのだ。
しかも体操服が身体のラインを浮き立たせるような感じで、お胸様が大きい子も控え目な子も普段は制服で見えない子も男の目指した頂をすぐに見ることが出来る。
たまらねぇぜ………
ずっと我慢し続けた。
授業の合間にある休み時間に戯れて下着をチラつかせたり、弾むお胸様を見せるクラスメイトの誘惑に………
そしてじゃれ合いで胸が揺れ、健康的な太ももを惜しげも無く晒して男の視線も気にしない彼女達。
マッソー神の教えを説いた筋肉経典を心の中で1から読んで沈め続けた俺の息子。
だが、もう限界だ。
「………という訳で今日はバスケットボールをします」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「そこ!うるさいですよ」
「あ、はい」
保健体育担当のレンジャーに怒られた。
というか仕方ないだろ?
待ちに待った念願の筋肉を動かせる時間が来たんだぞ?
ならテンション爆アゲに決まってんだろ!?
早く………早く筋肉を動かしたい………
運動をさせろと全身の筋肉が疼いてやがる。
ルールとしては5on5の10分間の試合らしい。
そしてそのチーム分けなんだが………
俺チーム
俺、サフォーク、フォーミダブル、ポートランド、大鳳
相手チーム
ボルチモア、瑞鶴、ジャン・バール、熊野、ケント
無作為なクジで決めたらこうなった。
「圧倒的に機動力が足りない………」
クジ運の神様は俺を見捨てたのか?
というかポートランドの奴なんて早速フォーミダブルに妹の薄い本を布教しようとしてやがる。
サフォークは今にも眠りそうで………大鳳はこっちを見て両手を頬に当てたままウットリした表情を浮かべているのが見えた。
背筋がゾクゾクしてきたな………
「いい試合にしよう」
「できるのかコレ?」
挨拶しに来たボルチモアに思わずそう言ってしまった俺は悪くないと思う。
苦笑するボルチモアにため息を吐きながら両チームがポジションに着いた。
俺とボルチモアはジャンプボールのポジションに立つ。
審判はレンジャー先生だ。
「それでは始めます………ピー!!」
「「っ!!」」
レンジャー先生のホイッスルが鳴ってボールが高々と飛び上がる。
その瞬間に互いにボールに向かって飛び上がるが、KAN-SENではないただの高校生のボルチモアに俺が負けるはずが無い。
「そら!!」
「くっ!」
ボールを弾き飛ばして一番まともだろうフォーミダブルに送る。
そこまで勢いは無いからボールは取れたはず………
「え?ちょっ!?きゃあ!!」
「マジかよ………」
ボールはフォーミダブルの超ド級お胸様に当たって跳ね返り、相手チームの方へと転がるとそれをケントが拾ってしまう。
「へへ、チャンスってやつだよ!」
「ほぇ〜、頑張ってね〜」
「何してるのよサフォーク!敵チームを応援してるんじゃないわよ!!」
「ほよ?」
ケントがドリブルしながら走るのを止めもせずに手を振って応援するサフォーク。
それを見て怒るフォーミダブルだが、ケントをブロックするには遅すぎた。
「シュート!Hey!先制攻撃成功だよ!!」
「………3ポイントシュートだと?」
規定ラインよりも外側で放つ3ポイントシュートをあっさり決めるケントに周りの生徒達は歓声を上げる。
すぐさまゴール下からボールを拾ってパスをしようとフォーミダブルが振り返って………ポートランドへ投げた。
「そのボールをくれたら後で妹ちゃんのお話いっぱい聞かせてもらっちゃおうかな〜♪」
「本当!?じゃあ上げるね♪」
「ちょっとぉ!!」
熊野がポートランドに大好きな妹の話を聞く事を条件にボールを貰う。
そして響くフォーミダブルの悲痛な叫び。
これは酷い。
「はーい、ボルチモアにパース♪」
「ありがとう熊野!てぃ!よし!!」
そして熊野はボルチモアにパスして速攻でまたもや3ポイントシュート。
これ試合になってねぇなぁ………
「今度こそ………サフォーク!」
「ほぇ?」
「もらったぁ!!」
「またなの!?」
フォーミダブルは今度こそとパスしたサフォークはボールの事を全く見ておらず、その瞬間に瑞鶴にボールを取られてそのままレイアップシュートでゴールネットを揺らす。
フォーミダブル涙目である。
というかボールが一向にこっちに来ないのだが………
「おーい、パスくれー」
「ほら大鳳!!」
「ああ……手を振る御姿も良いですわぁ」
「何してるのよ!!」
「あー、ボールは貰うぞ?」
フォーミダブルは俺を無視して大鳳にパスするが、肝心の大鳳が俺の方を向いていてボールを取ろうとすらしていなかった。
その隙にジャン・バールがボールを拾ってまたしてもシュートを決められる。
そんなこんなでフォーミダブルが俺を無視してプレイを続けた結果
66対0
この有様である。
なぁにこれぇ?
いくらなんでも酷くないかこれ?
フォーミダブルは涙目で肩で息をしているのが見えるっていうかほぼ泣いてるな。
KAN-SENの方の彼女も負けず嫌いな所があるから、よく似た彼女も同じような気質を持っていてよっぽど悔しいのだろう。
「あと6分か………仕方ない。レンジャー先生、タイムをお願いします」
「ええ、いいわよ?両チームストップ!タイムよ!!」
涙を流しながらパスしようとしていたフォーミダブルが止まった。
相手チームもそんな彼女を少し不憫に感じている様子が見て取れる。
俺はオロオロしているフォーミダブルに近寄って話しかけた。
「どうして俺にパスしない?」
「べ、別にいいじゃない!あんたなんて居なくても勝ってやるんだから!!」
いや、涙目で言われても困る。
というかなんか理由がありそうだな。
少し話を聞いてみるか………
「現実はどうだ?この大差は覆せないぞ?」
「そんなの………分かってるわよ!!」
「じゃあ何故俺にパスしようとしないんだ?」
「そ、それは………」
口篭るフォーミダブル。
根が深そうだが、ここで聞いておかなければ不和を持ったままじゃあのチームには勝てない。
さて、いったいどんな理由があったんだ?
「あ、あんたが私の事を重いって言うから………」
「へ?」
「私の事を重いって言ったのよ!!」
「そ、そうだったか?」
「そうよ!!!忘れもしないわ………運悪く階段から足を踏み外して落ちた先にあんたが居て、下敷きにしたのは悪かったけどね………その後重いって言ったのよ!?女の子に重いは無いでしょ!?」
すげぇ俺が悪かった。
てか本当にこの世界の俺は何をしてんだよ………
確かに多感な時期である高校生の女の子に重いは無いな。
そりゃ怒るわ。
「その件に関しては悪かった。この通りだ」
「………とりあえず謝ったから許すわ。でもこの点数差じゃもう………」
「俺に任せろ。何とかしてやる」
「できるの?本当に?」
頭を下げて謝りフォーミダブルに許してもらった。
だが、フォーミダブルはこの点数差で覆せるのか心配なようだ。
また泣きそうになっている。
「ああ、その為にも………サフォーク!!」
「ふにゃ!?ね、寝てませんよ?本当ですよ?」
立ったまま寝ているサフォークへと声をかけた。
というかよく寝られるな………
「サフォーク、こっちへ来てくれないか?」
「良いですよ〜」
「ほら、こうだ!!」
「はにゅん!?」
無警戒に近寄ってきたサフォークの頭を優しく撫でる。
普段駆逐艦の子達に気持ちいいと評判の俺の撫で方が、サフォークの頭を刺激すると一気にサフォークの表情が変化してきた。
「ね、ねぇ………サフォークの顔が女の子がしていい顔をしてないんだけど………」
「ーーーーーっ♪」
「………声も出せないくらいビクンビクンしてるけどこれ大丈夫なの!?」
「大丈夫だ、問題ない」
手の平と指のマッソーに集中する。
頭頂部から広範囲に広がるツボをマッソーセンスで探して刺激し、頭を撫でるという行為で心地良い状態を作った。
された方は素晴らしい心地良さに夢見心地だろう。
「頃合か………」
「ーーー♪………あれ?終わりなの?」
「どうだサフォーク?もっと撫でて貰いたくはないか?」
「是非!」
俺のマッソー撫でをとても気に入ったのかサフォークは、満面の笑顔で俺の方に近寄ってくる。
よしよし、良い食い付きだ。
「このバスケットボールでケントをずっとガードしてくれたら、もっと気持ち良くしてやれるんだがなぁ………」
「やります!だからもう一回!もう一回お願いします!!」
「しょうがないな……頑張ったら放課後にもう一度してあげよう」
「は〜い♪サフォーク頑張ります♪」
これでケントは動けないはずだ。
次に………大鳳だな。
さっきから凄いこっち見て恍惚としてて怖いんだが………仕方ない。
「大鳳」
「はぁい♪貴方の為ならなんでも致しますわ♪」
「よし、なら皆からパスを受けたら俺に必ず渡してくれないか?」
「ふふふ♪この大鳳にお任せ下さい♪」
「………頼んだ」
いつの間にか満面の笑みを浮かべながら近寄って来た彼女に、気圧されながらもお願いするとあっさり承諾してくれた。
…………なんか後が怖そうだが、これもコラテラルダメージなのだろう。
「最後に………ポートランド!」
「なになに?貴方もインディちゃんのお話を聞きます?」
一番の問題児ではあるが、この問題も解決してみせる!!
コイツの攻略法は割と簡単だからな。
「それもいいんだが………もし自分の姉が試合に負けてしまって、理由が自分の話をする為に敵に味方したなんて知ったら妹は悲しむんじゃないかなぁ………」
「インディちゃんが悲しむ!?そんな………どうすれば良いの!?」
「方法は簡単だ、この試合で君はジャン・バールと瑞鶴にボールがいかないようにブロックしてくれ」
「そんな事でいいの?」
「もちろん、後はボールが取れたら大鳳にパスしてくれ。そうすれば後はなんとかなる」
「うん、分かった!」
これで相手の半数がブロックされる事になる。
熊野も運動が出来そうだが、ポイントゲッターは主に熊野以外のメンツなので俺がプレイしながらボルチモアと併せて見ておけば良い。
ポジションを上手いこと決めていたらフォーミダブルに体操服の裾を引かれる。
そんなに心配そうな表情をしなくても役割は決めてあるさ。
「ねぇ、私は?」
「フォーミダブルには全体を見てもらいたい」
「全体を見る?」
「ああ、ガードが緩くて通れそうな場所や逆に危なそうな場所を教えてくれ」
これが一番重要だ。
フォーミダブルのパスは皆が取ろうとしなかっただけでしっかりとメンバーには届いていた。
つまり全体を見て誰が一番パスを通しやすいか判断できていた訳だ。
ならば前線で戦う俺よりも全体を見れる位置で、指示を出してくれていた方が勝率は上がる。
「フォーミダブル、君の指示が頼りだ。頼んだぞ?」
「私が…………任せてちょうだい!!」
俺と視線を合わせて力強く頷くフォーミダブルに、もう涙は無かった。
レンジャー先生にタイム終了を伝えると再開のホイッスルが鳴る。
「一番左のケントが居るコース!」
「了解だ!!」
フォーミダブルのパスを受けた俺はドリブルしながら全力で駆け抜けた。
それを見たケントはブロックしようとするが……
「ごめんね〜、ナデナデの為にここに居てね〜?」
「な、ナデナデ?何それ!?」
やる気を出したサフォークにブロックされて動けない。
慌てて出てくる熊野を後目に俺は軽く飛んで左手をボールに添え、右手首のスナップだけでシュートする。
もちろん規定ラインより外側でだ。
簡単に3点GET。
「こんなに簡単に………」
ディフェンスに戻りながら呆けているフォーミダブルの肩を軽く叩いて
「言ったろ?任せろってな?」
肩を竦めながら笑ってそう言った。
まぁ女子には分かるまい………この俺の煩悩を通して出る筋肉の力は。
授業中や休み時間の間に溜まったリビドーが全て筋肉への活力に変わっていくこの瞬間こそが俺の求めていた時間なのだ。
「さっきまで一方的に攻撃してきたが………教えてやるよ、一方的にやられる悔しさと悲しさをな?」
そこからは怒涛の追い上げだった。
すぐにパス回しをして逃げる作戦に切り替えた相手チームだったが、俺やポートランドにボールを遮られてすぐにボールを拾った大鳳やフォーミダブルが俺にパスする事ですぐに攻め上がって3ポイントシュートを決める。
俺の大腿四頭筋とハムストリング、下腿三頭筋がうねりを上げながら熱く、そして強靭なまでに俺の身体を走らせ押し出す力を出してくれるのだ。
マッソーが力を発揮する事が出来れば造作もない事である。
そして、残り時間が1分になった頃には点数差はもう無かった。
66対66
「凄い、凄いわよ!!あんなに点数差があったのにここまで巻き返せたなんて!!」
「ああ、あと少しだな」
興奮しているフォーミダブルに俺は油断なく相手チームを見続ける。
向こうも何度も俺に攻められて突破を許したので悔しそうにしているが、またなんかの作戦を立てているようだ。
普段クリーブランドに誘われて彼女の姉妹に混ざってバスケをしている経験が上手く生かされている。
それにこの身体になってマッソーが減って貧弱になったと思っていたが、瞬発力が重要なこの競技では軽くなった身体が思った以上に動けて相手の動きよりも早く動けた。
「次で終わりね」
「ああ、油断するなよ?」
最後に最高の瞬間を迎える為に油断しない。
それは俺もフォーミダブルも一緒だった。
そしてディフェンスのポジションに戻ると、俺の前に熊野がポイントゲッターである俺のマークをする為に立っている。
「ふ〜ん、やるじゃん」
「やるからには全力ってな」
「……へぇ〜」
熊野がニヤリと笑った。
これは何か仕掛けてくるな?
そう思って警戒されないくらいに全身のマッソーに力を巡らせてマッソーセンスを発動していると
「じゃあさ?この試合でこれ以上動かなかったら〜………熊野がサービスしちゃうけどぉ……どうかな?」
体操服の裾をピラピラさせてへそチラしながら熊野がそう言ってきた。
だがしかし、マッソーをフル稼働中の俺にはそれは悪手だ。
何故なら煩悩は全て筋肉へのエネルギーへと変換し続けているのだから、逆にエネルギー補給をしてくれたのと変わらない。
煩悩は股間の息子では無く全て筋肉に変わっているのだ。
それにこの子はKAN-SENでは無くて普通の学生で、精神年齢おじいちゃんな俺がそんな事したらポリスメン出動案件だわ。
「魅力的な提案だが断っておこう」
「え〜?ノリ悪〜い」
唇を尖らせながらそう言う熊野だが、こちらからも少し言いたい事がある。
俺は熊野の頭をポンポンと軽く叩くようにして撫でながら
「可愛いんだからそんなに自分を安売りするな。悪い男に捕まるぞ?」
「ーーーっ!?」
そう言ったら熊野の顔が真っ赤になった。
あ、全身のマッソーに力を巡らせっぱなしでマッソーセンスを使ってる状態だからオートでマッソー撫でしちまった………
すぐに手を離すが熊野は胸を抑えながら潤んだ目でこちらを見ている。
「つい癖で………すまない」
「え?え?えぇ!?な、なんなの今の………凄い胸がドキドキしちゃう……」
ギュッと胸の辺りを抱きしめるように悶える熊野に、その抱きしめる腕で形を変える胸にドキドキしっぱなしの俺。
実に素晴らしい自給自足だ。
おかげでリビドーエネルギー充填率120%まである。
「それじゃ熊野、勝たせて貰うぞ!!」
「これって恋?初めてだよ………でも今ならチャンスかも………特定の人が居ないって聞いてるし大丈夫、熊野ならこの人落とせるはず………ねえ、ライン教えて………って!?嘘!!試合始まってる!?」
呆けている熊野を置き去りにして俺は駆け出した。
彼女には悪いが、フォーミダブルに勝利を約束しているのだ。
漢に二言は無い。
「正面から少し右にボールが来るわ!そこから左に抜ければゴールまで一直線よ!!」
「了解だ!!」
フォーミダブルの指示を受け、俺はそれを信じて走る。
ジャン・バールと瑞鶴がそれに気がついて止めようとするが、ポートランドが必死にブロックして通さない。
ボルチモアとの一騎討ちだ。
「来たね!」
「勝利は俺達の物だ!」
「負けない!勝つのは無理でも引き分けには持ち込ませてもらうよ!!」
そう言ってドリブルしながら後退しようとする彼女に俺は追い縋った。
さすが元の世界でもスポーツを幾つも掛け持ちする運動神経をしているボルチモアだ、素早い身のこなしや時に股下にボールを通す事で俺からのカットをさせないように粘っている。
残り時間はあと20秒
これ以上は時間を掛けていられない。
この身体になって初めてだが、フルマッソーパワーで動かせて貰うぞ!!
「っ!?更に動きが!?」
「取ったぞ!!」
「しまった!!」
更に速度の上がった俺に驚愕するボルチモアの隙を着いて、俺はドリブルしていたボールを奪い去る。
そして一気に相手のゴールに向かって走っていく。
「いくぞ!!!」
「3ポイントじゃない!?レイアップシュート!?」
追いかけて来るボルチモアの声が聞こえる。
確かにこの近さならそう考えるよな?
だが俺が決めるフィニッシュシュートは別の物だ!!!
前世でよく読んだとあるバスケ漫画で尊敬するマッソーを持つ、ゴリゴリなキャプテンの必殺シュート。
あの技をリスペクトして名付けるその技は
マッソーダンク!!!
飛び上がってゴールリングにボールを叩き込む。
全身の筋肉を血管が浮き出る程に隆起させてぶち込んだボールは、一度地面に叩きつけられてそのまま天井近くまで飛んでいった。
そして少し遅れてカウントダウンを刻んでいたタイマーからのブザーが鳴る。
「俺達の勝利だ!!」
掴んでいたゴールリングから手を離して床に降り立ち、後ろにいるであろうフォーミダブル達に勝利宣言をしながら振り返ると………体育館にいたクラスメイト全員がこっちに向かって来た?!
「悔しい!!でも凄いカッコよかった!!」
「凄いよ!!あそこから逆転するなんて本当に凄い!!」
「勝ったよ!!インディちゃ〜んお姉ちゃん勝ったんだよ!!」
「凄いなお前は。またオレ達と勝負しような!」
「やはり貴方様は私の…………うふふ♪」
「放課後頭をナデナデして下さいね〜♪」
「ラインを………ああもう、これじゃ話をかけられないじゃん!サイアクなんですけど〜」
聞き取れたのはここまで。
それ以上はもみくちゃにされて一度に話すので聞き取れない。
しかも何故か密着してくる子も居るので柔らかい女の子の尻乳太ももが当たって俺の煩悩を掻き立ててきやがる。
「コラー!!皆授業中よ!離れなさい!!」
レンジャー先生が注意しているが、全く皆の耳に入っていない。
それどころかますますヒートアップして収まりそうにないぞこれ?
マッソーを動かしていないので、煩悩で股間の息子が『ヒャッハー!フィーバータイムだぜ!!』と暴れ狂いそうだ!!
誰か助けて!!マッソー!!
そんな心の叫びは聞き入れられる事は無く、結局騒ぎが収まったのは授業終了のチャイムが鳴った頃だった………
「先パ〜イ!可愛い後輩がお昼ご飯を持ってきましたよ〜!」
昼休みの教室で昼食を持ってきていなかった事に気が付いて慌てていると、扉の方からジャベリンがやって来て大声でそう言ってきた。
「本当は朝のうちに渡そうと思ってたんですけどぉ……忘れてました。てへ☆」
「そうか、すまんありがとう」
俺の席までやって来てウィンクしながらそう言うジャベリンにとりあえずお礼を言っておく。
しかし、俺の反応が面白くなかったのかジャベリンは頬を膨らます。
「………なんか素っ気ないのは悲しいですよ」
「お前は俺にどうしろと………」
そんな彼女に若干呆れながら俺がそう言うとジャベリンは袋に入ったお弁当を渡してくれた。
そして俺の腕を取ると
「今日はお天気が良いので外で食べませんか?きっと気持ちいいですよ?」
グイグイと引っ張ってきた。
確かに外は天気も良くてあまり風も吹いていない。
青空の下で食べるお弁当は美味しいだろう。
「了解だ。それじゃ行こう」
「は〜い♪」
俺が承諾するとジャベリンは元気よく返事をしながら俺の腕に自分の腕を絡めて胸に抱え込んできた。
ジャベリンって着痩せする方なんだな………
制服では分かりずらい部分に少しドキッとしながら、ご機嫌なジャベリンに引き連れられて校舎を後にする。
そして中庭の空いているベンチを見つけてそこに二人並んで座った。
「は〜い♪今日のお弁当はサンドウィッチで〜す♪」
「美味そうだな」
「愛情たっぷり込めて作ったんですよ?絶対美味しいですから♪」
「それじゃあ、頂きます」
色んな具材の入った肉厚なサンドウィッチを頬張る。
正直横から覗き込むようにこちらを見ているジャベリンがいて食べにくいのだが、挟んであるシャキシャキのレタスやみずみずしいトマトに程よい硬さの卵、そして塩コショウがハッキリと効いたベーコンはとても美味しい。
しかもそれが3層も連なっていてとても食べ応えがある。
「美味しいぞジャベリン」
「わぁ♪良かった〜………それじゃあ私も頂きま〜す」
味の感想を伝えるとジャベリンはヒマワリのような満面の笑顔を浮かべると自分の分のサンドウィッチを食べ始めた。
もちろん俺のとはサイズが違ってかなり小さい。
そんな量で足りるのか不安になるが、俺とジャベリンの身体の大きさ的に丁度いいのかもしれない。
「弁当ありがとうなジャベリン」
「ふぇ?いえいえいえ!!これはあの時のお礼なんですから、別にそこまでお礼を言うほどじゃ………」
不意にジャベリンから気になるワードが出てきた。
この身体の俺はこの美味いお弁当がお礼として貰える何かをしたらしい。
とりあえず俺には分からないのでそれとなく聞いてみるか。
「あの時?」
「はい、私と綾波ちゃんにラフィーちゃんとユニコーンちゃんと二ーミちゃんが一緒に遊んでて、ガラの悪い人達に囲まれてどこかに連れて行かれそうになった時に先パイが助けてくれたじゃないですか」
「そうだったか………」
「………先パイのご両親の言う通りで喧嘩と筋トレ以外は気にならないって本当だったんですね?」
………マジモンの学園ラブコメか?
そんな王道でベタ過ぎる出会いってなんだよ。
しかもこの身体の俺、筋トレは分かるが喧嘩って………
どの世界の俺も戦いからは逃げられんようだな。
「皆でお礼をするって先パイに言ったら、別にいらねぇの一言でしたし………思い切って先パイの家に行って直談判したらご両親が凄い喜んで、先パイの世話を任せるって言って私達にお家の鍵を渡してそのままお父様の単身赴任先へ行ってしまいましたから………」
「……… 」
両親が家に居ない理由もここで判明した。
というか不用心過ぎるだろこの世界の両親。
普通なら有り得んわ。
「おかげで私達は役得ですけど………」
「ん?」
「な、なんでもないですよ?!コホン、それで交代で先パイの家にお邪魔してお世話しに来てたんですけど………迷惑でした?」
「いや、助かってる。何度も言うがありがとう」
「はぅ、その笑顔は卑怯です……と、とにかく、これは私達からのお礼なんですからしっかりと受け取って下さいね?」
何故か照れているジャベリンの言葉に俺はしっかりと頷く。
というか時々小声でなんか言ってるけどよく聞き取れないぞ?
まぁ自分の置かれている状況がだいたい把握出来たから良しとするべきか………
そう思いながら最後の一切れを口に放り込む。
美味かったサンドウィッチも、もう品切れだ。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした♪」
食べ終わりの挨拶を済ませたら笑顔のジャベリンにそう言われた。
こうやって誰かと一緒に食事をする事はやはり良い事だな。
誰かと一緒にご飯を食べる、それだけで美味い飯が更に美味く感じられるのだから。
「先パイは食後の筋トレに行くんですよね?」
「ん?ああ、そうだな」
「それじゃあ私はお弁当を仕舞いに戻りますから、また放課後に会いましょう!」
「そうだな………?」
動く前に食後の俺に関する貴重な情報を得る事が出来たが、それ以上に俺のマッソーアイに重要な情報が入ってきた。
それはジャベリンの指だ。
ジャベリンの指の何ヶ所かに絆創膏が貼ってある。
それに注意深く見てみれば、ジャベリンの目の下に薄く化粧で誤魔化されていたが隈が見える。
もしかすると今日のジャベリンは何かしらの理由で寝不足気味なのではないのか?
「ジャベリン」
「はい?なんですか先パイ?」
ベンチに座ったままで弁当を片付け終わったジャベリンに声を掛けると笑顔のままこっちを向く。
しかし、先程から少し頭がふらついているのも確認出来た。
このまま帰すのは転倒などして怪我するリスクが高そうだ。
「ほら、休め」
「え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!??!!」
俺は有無言わさずジャベリンの頭を太ももの上に置いて休ませる。
男の膝枕なんて硬いだけで気持ち良くないかもしれないが、こんなに危険な状態で動かれて怪我されるよりはマシだ。
ジャベリンは真っ赤になってオロオロしている様子だが、ここで駆逐艦専用ナデナデのマッソー撫での出番だ!!
さぁジャベリン、このナデナデで夢の世界に旅立つのだ!!!
「ーーーっ!?あ、あぁ……先…パ………イ……」
「ゆっくり休め、いつも世話になっている俺からの礼だ」
「………あり…がと……う………ご……ざ………すぅ……」
「寝たか」
所要時間11秒フラット。
元の世界の俺なら4秒でいけたな。
ジャベリンは下ろしていた足を曲げて、まるで丸まった猫のように身体を小さくして眠っている。
俺の足に顔を擦り付けながら寝心地の良い場所を探しているようだったが、ポジションが決まったのかそのまま深い眠りへと落ちて動かなくなった。
「俺の世話の為に寝不足か?ありがたいんだが、それ以上に自分を大切にして欲しいもんだ」
寝たままのジャベリンにマッソー撫でを続けてしっかりと休んでもらう。
夢でも見てるのか寝たまま笑顔を浮かべるジャベリンに俺まで笑顔になる。
平和な日常ってのはこういう事を言うのだろうか?
実に羨ましい世界だ。
俺の世界では戦争で人は簡単に死んだ。
各陣営は互いのメンツを潰されないように意地を張り合う。
そして互いの足を引っ張り合う上層部に振り回されて混乱する末端が、前線ですり潰されていくのを書類上の数でしか見ていない。
まさに末期だ。
あの時に上層部を一掃出来たのはまさに奇跡としか言いようがない。
それもこれもKAN-SEN達のおかげだ。
だがそんな世界でも俺は帰りたい。
こんなにも平和な世界なんて俺には眩し過ぎるのだ。
平和を甘受する権利なんて………前世の時間に既に置き去りにしてしまった。
今の俺には持つ資格すらない。
そう思える程に俺達が戦いを終わらせた後に目指す尊い世界でもある。
「それにしても世界線が違うだけでこんなにも平和なんて………羨ましい限りだな」
順当に技術発展して娯楽が充実し、戦争が無い平和な世界なんて誰もが羨む最高の環境だ。
まあ、ここまでご都合主義が続けば怪しくもなってくる。
「そうは思わないか?オブザーバー」
これで確信した。
ヤツの名前を呼んだ筈なのにそれが音として出てきていない。
何の関係もないならば普通に発音出来ていたはずだ。
「あら?気が付いたの指揮官?」
「………やはりか」
突如として空間に裂け目が現れて全ての時が止まる。
風に吹かれて揺れていた筈の草木はそのまま止まり、喧騒に包まれていた校舎からの声は消えた。
恐らくこの空間は時折戦場で現れる鏡面世界と似たような空間なのだろう。
ならばアイツらの思うがままに操れるはずだ。
「俺をここに閉じ込めてどうするつもりだ?」
「何も、貴方が望む平和な世界へ招待してあげただけよ?貴方が望むならこれからも、そしてこれまでも………」
まるでタコのような艤装を持つセイレーン オブザーバーが空間の裂け目から現れた。
その顔には笑みを浮かべて何を考えているのか分からない。
前世の記憶の欠片から知っている情報ではコイツはあらゆる世界線を観察して情報を取り纏めるのか役割であり、直接介入する事はあまり無かったはずである。
そんなコイツが介入してくるなんて一体どういうつもりだ?
「そんなに警戒されると傷つくわね………でも貴方に会うのを楽しみにしていたわ」
「………どういう事だ?」
近寄るヤツに警戒しつつも、俺はその発言の意味を考える。
俺に会うのを楽しみにしていた?
あらゆる世界線の情報を知るコイツなら俺の事なんて既に知っていそうな気もするんだが………
「ふ〜ん、なるほど。あの世界線が交わって出来た未来の英雄………アレらを打倒するカギになるかもしれない原石………実に興味深いわ」
「原石?」
「いいえ、こっちの話よ。今の貴方が気にする必要は無いわ」
まるで煙に巻いたような話し方をするヤツに俺は更に混乱する。
俺を混乱させようとしているのか?
ヤツの出方がイマイチ掴めない今の状況で、闇雲に攻撃的になったりこちらから仕掛けるのは悪手だ。
引き出せるだけ情報を引き出して、この状況を打破するきっかけを掴みたい。
「それで?観察は終わったのか?」
「う〜ん………本来の目的は果たせなかったけれど、これ以上は効果を見込むのは難しいわね」
「目的?何をするつもりだ?」
これは重要な情報だ。
何らかの実験をここでするつもりだったようだ。
しかもKAN-SENではなく俺を使った実験。
色んな実験を繰り返して、人類を滅亡の危機から救う世界線を探すとされているコイツらの実験に俺は付き合わされていた訳なのだが………
この学園ラブコメ染みた世界で俺の精神をこの身体に入れて何の実験をしていたんだ?
「つくづく貴方の精神には驚かされるわね。この世界に来ても揺るぐ事なんてなかったのだもの………もしかしてホモ?」
「誰がホモだ!!」
それは失礼過ぎるだろうが!!
俺はノーマルだ、ちゃんと女の子にドギマギする一般男性だぞ?
…………ただ手を出すような勇気の無い童貞なだけだ。
自分で言っててなんか悲しくなってきた………
「ふ〜ん、まあいいわ。そろそろ潮時ね………コードGもここを見つけたみたいだし終わりね、貴方を元の世界に返してあげるわ」
「なんだと?」
コードG?
時々報告にも上がるセイレーンと敵対している謎の存在………っていうか前世の情報通りなら滅んだ世界の何らかの力に目覚めたエンタープライズらしき存在の事か?
ますます頭が混乱してきた。
いったい何が起こっていたんだ?
「それじゃあ指揮官、また会いましょう?」
「ま、待て!」
「………貴方の行く末に武運長久あらんことを」
小さく手を振るオブザーバーはそう言って何も無い空間からモニターを呼び出すといくつかキーをタッチすると俺の意識が遠のいていく………
慌てて立ち上がろうとするが、既に身体に力が入らない。
…………意識が………消えて…………
……クソ………が……………
「…………ん………指揮官…………もう、起きて〜!!」
「うぅ……ここ…は………」
「あ、やっと起きましたね指揮官。もうすぐ晩御飯ですよ?」
目が覚めるとドアップで映るジャベリン。
その姿は制服ではなく、いつものノースリーブのワンピースに髪を結い上げた姿。
身体を起こして辺りを見るといつも本を読んでいる談話室のソファーに眠っていたようだ。
「………どのぐらい寝ていたんだ?」
「えっと〜………だいたい4時間くらいですね?」
顎に指を当てながら答えるジャベリン。
そう言われて壁に掛けられている時計を見ると、その針はすでに夕方の18時を過ぎた所を指していた。
確かにもう夕食の時間が近い。
「起こしてくれてありがとうジャベリン」
「ふぇ?えへへー♪それほどでも〜♪」
頭を掻きながら笑うジャベリンに俺も釣られて笑う。
そして全くの無意識にその頭を撫でた。
「ほにゅ!?ーーーっ!?」
「あ」
無意識に発動したマッソー撫でを何故か更に使いやすくなった状態のフルマッソーパワーで。
するとどうだろう?
「ーーーーーーーーー?!!!??!!」
「ジャベリン!!」
全身を痙攣させたジャベリンが見た事も無いような恍惚というか、まるで対〇忍のだらしないア〇顔のような表情でのたうち回っている。
これヤバ過ぎるだろ!?
「ちょ、だ、大丈夫かジャベリン!?誰か!誰か居ないか!!」
慌てる俺のマッソー神への祈りが通じたのか談話室の扉が開く。
「ん、指揮官は起きたですかジャベリン?………綾波は何も見てないです。何も見えないのです」
「ラフィーは………先に行ってる」
「えっと……ベルファストさ〜ん!!」
「いったい何が起きたんですか!?ジャベリン、しっかりして下さい!!」
現実逃避する綾波にその場から逃げるラフィーと慌ててベルファストを呼びに行くユニコーンにジャベリンへ慌てながら駆け寄る二ーミ。
うたた寝して起きたらいつも以上にマッソー撫でがしやすくなっていて加減が効かなかった………
"何かの夢を見ていたが全く思い出せない"
もしかするとマッソー神が更なるマッソーパワーを俺に夢の中で与えてくれたのかもしれない。
だが、その内容が全く思い出せないなんて………
今はとりあえずジャベリンをこのフルマッソーパワーのマッソー撫でによる快楽地獄から救わねば!!
「ええっと………こうだったか?」
「!!???!???!!!?」
「何してるんですか指揮官!ジャベリンが更に酷くなったじゃないですか!!」
「違った!………なら………こうだ!!」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「ジャベリン死んだ?」
「もうジャベリンは帰って来れないのです」
「縁起でもない事言わないでくださいラフィーに綾波!!」
あーでもないこーでもないと騒がしくジャベリンを助けようと四苦八苦する俺と二ーミに、諦め姿勢のラフィーと綾波。
廊下からはユニコーンに呼ばれたベルファスト達が走ってこっちに来る音が聞こえる。
なんでこうなったんだ………
それもこれもセイレーンってヤツのせいなんだ!!(八つ当たり)
バッキャロー!!!!
ちなみに騒動が収まった後、めちゃくちゃベルファストに怒られました。
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「あれれぇ?指揮官に会いに行ったんじゃないのぉ?」
「そうね、会えたけど目的は果たせなかったわ」
そこはどこにも無い空間。
空中に浮かぶモニターには様々な世界線のKAN-SEN達による戦闘や日常風景が映し出されている。
その中でもオブザーバーはとある一つのモニターを食い入るように見つめていた。
それを見ていたセイレーン戦艦 ピュリファイアーはため息を吐きながら肩を竦める。
「指揮官の遺伝子情報を手に入れるって作戦だったのに………若い肉体に入れられて若くて色んな美少女に囲まれてるのによく堕ちなかったよねぇ〜」
「若い肉体ならリビドーを抑えられなくなると思ったのに………失敗したわ」
彼女達は残念そうに実験の結果について話す。
どの世界線においてもあの指揮官の遺伝子情報は手に入らない。
彼自身の情報なら手に入るのだが、それではただのクローンに過ぎず人類存続の為にはならないのだ。
その為にも遺伝子情報を手早く手に入れる方法として性欲が顕著に現れる学生時代の肉体を用意してみたのだけれども………失敗した。
「そもそもクローンから採取するのも有りだって私は言ったんだけどね〜………アンタがそっちの作戦の方が良いって言ったからこんなに長引いてるんだけどぉ?」
「確かにそうね。でも貴女も知ってるでしょう?」
「………クローンの遺伝子情報じゃあの力は再現出来ない」
「そういう事よ 」
何故かあの超人染みた力を継承した子供は誰一人として生まれない。
何度も実験した結果なので既に分かっていることなのだが、諦めきれないのだ。
「ああもう面倒くさいなぁ!なんで人類最高クラスの遺伝子情報なのにそれを受け継げないのかなぁ!!」
ピュリファイアーはガリガリと頭を掻きながら苛立ちを隠そうともしない。
唯一残された方法が今まで観測してきた様々な世界線に居たあの指揮官が結婚し、産ませた子供のみに発現しているという情報のみ。
つまりは指揮官が愛した人との愛の結晶しかその力を継いで産まれてこないという事になるのだ。
「それもまた人間の情報だけでは解析出来ない不可思議な現象なのでしょうね」
「………そんな不確定要素がアレらと戦うカギになり得るってのがまた面倒だわ〜」
クスクスと笑うオブザーバーに呆れて頭の後ろで手を組むピュリファイアー。
アレらと戦う上で絶対に外せないキーマンとなる指揮官の子供。
KAN-SENと共に前線で戦い続けるやり方は親譲りで、驚異的な超人的身体能力を備えた存在。
たった1艦隊指揮させるだけでアレらの8個師団を相手になんと半年も持ち堪える脅威の粘り強さを見せる破格の存在なのだ。
こちらからすれば是非とも来るべき日に向けて何人もの子供を作って貰いたいのだが………
「今まで進めてきた実験の中で、あの世界線の指揮官が一番私達の思惑に乗ってくれそうなんだけどなぁ〜………あ〜んな無茶なクーデターも裏から少し支えてさぁ〜、せっかく母港にあれだけのKAN-SENを集めてるのにねぇ〜」
「ええ、でもあとひと押しといった所かしら?」
「早く子供たくさん作ればいいのになぁ〜」
「ふふふ、慌てないのよ?ほら、これを贈っておけば勝手に事態が進むわ」
オブザーバーは小さな黒い箱を取り出して手の中で弄ぶ。
それが何なのか気が付いたピュリファイアーはお腹を押さえて笑いだした。
「確かにそうだね!それを使えば一気に大騒ぎだよ!!」
「………さぁ未来の英雄達が産まれるのを見届けましょうか?」
「うんうん、楽しみだよぉ!!」
彼女達は嗤う。
過ぎ去りし過去や未来を踏み越えて。
それが例え倫理や人道に反していようとも。
それが人類の存続に必要な事である限り…………
という訳で過ぎ去ってしまう事についてのお話だよ!!
皆も過ぎ去ってしまった日々に思い返す事なんかあるんじゃないかな?
友人と二人で学校のトレーニングルームでバーベル何キロ持てる?をしてた青春の日々が懐かしいよ!!
それと今回の特別編は実は先月に書き終わる予定だったのにこんな時期になってしまって本当にごめんね!!
気が付いたら一万八千文字も書いてたよ!!
読んでる間にいっぱい筋トレ出来たかな?
このお話が皆の筋肉を育てて素晴らしいマッソーとなるのを願っているよ!!
そして、アズールレーン3周年本当におめでとうございます!!
母港のKAN-SEN達と戦場へ行きながら筋トレする日々は本当に楽しい日課です!!
これからも楽しくアズールレーンと筋トレを続けていこうと思っています!!
それでは皆もマッソーマッソー!!
友人にアズレン小説書いてるのがバレて言われた一言「史実側、宇宙人に侵略されている歴史にも居るんでしょこの指揮官?それってどんな感じなん?」これはいる?
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いる
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いらない
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マッソー