指揮官はつらいよ~美女美少女ばかりの職場でいかに性欲を発散するか~   作:サモアの女神はサンディエゴ

52 / 64
 
随分と遅れて済まないマッソー!!

古いノートに昔書いていたオリジナル小説を発掘して、思わず読み進めてしまっていたよ!!

しかも大学ノート3冊分とか書きすぎだよ!!

結構懐かしくて思わず没頭しちゃった!!

今回は懐かしむ事だよ!!

あと今回はその影響が出てて、作者の悪い所が出てるから注意だよ!!

それではレッツマッソー!!



第48話 晩酌とリシュリュー

 

指揮官です。

 

現在とても懐かしい人と母港にある通話室で電話しております。

その人物は元所属部隊の副長代理で、痒い所に手が届くと言えるような仕事ぶりを見せた、本当の意味で俺の右腕(本人は左腕と名乗っている)だった男だ。

現在は軍を抜け、少しだけ平和になった世界を見て回っているんだとか。

………ちょっと羨ましいぞ。

 

『こんな夜遅くにすみません大尉、いや、今は指揮官殿でしょうか?』

 

「お前にそんな風に言われるとこそばゆいな………まぁ呼びやすい呼び方で構わんさ、そっちはもう軍属じゃないからな」

 

『アイサー………っと昔の癖が抜けませんな』

 

「ははっ、長く軍に居たからな。それは仕方ない事だ」

 

他愛の無い会話。

元とはいえ俺の指揮下にいた部下の元気そうな声を聞いて少しホッとする。

あの時生き残った連中と一緒に笑いながら俺をこの母港に行くよう勧めた一人でもあるので……恨みがないとは言い難い奴ではあるのだがな。

 

『大尉、エリックの奴………結婚して子供出来てましたよ。一年見ない間にコロッと太ってました。あれを幸せ太りって言うんでしょう』

 

「そうか……エリックの奴に子供が………」

 

『本当に幸せそうでしたよ。これも大尉があの時に泣きながら敵前逃亡しようとしたアイツを、殴って気絶させて引き戻したから、あの時の空襲の犠牲にならずに済んだんです』

 

「あれは………酷い戦いだった」

 

二人してそこで黙り込む。

副長達の特攻の後、乗る船が無かった俺達は前線基地へと配属になった。

しかし、そこの基地司令が寄せ集めの捨て駒部隊 通称“ダストボックス(塵箱)”隊を基地内部に入れたがらず、基地から離れた場所での野営をする事になったのだ。

エリックは兵士として着任して三ヶ月、俺達の部隊に配属されて一ヶ月の新兵で、上官からのやっかみでこの部隊に配属された運の悪い奴だった。

やっかみの理由も実にくだらない物で、配給部隊に所属する女性に惚れていた上官がその女性がエリックに惚れているという事を知ってしまったというもの。

 

しかもその上官は上役の将校と親戚関係であり、その権力で俺達の部隊へ配属される羽目になったのだ。

支給される食事は残飯みたいな食べ残しのような物か、俺達が狩ってきた獲物を調味料無しで焼いただけの物。

毎日硬い地面に横になり、いつ死ぬかも分からない消耗率の高いと噂の悪夢のような部隊。

更に捨て駒故に他部隊との待遇の違いや、居るだけで針の筵のような突き刺さる視線の数々。

そんな部隊に配属された新兵のエリックが発狂するのは、水が上から下に流れ落ちるように当たり前の事だった。

 

『本当に偶然でした。あの日の昼の哨戒役の連中がセイレーンの艦載機が上空を飛んでいたのを発見したのは。それを見て発狂したエリックが、基地へ走って逃げようとしたのを大尉が無理矢理止めなかったら………爆撃を受けた基地と運命を共にしていたでしょう』

 

「俺も無我夢中だった………明らかにアレは基地を潰すつもりだったな」

 

『大規模な編隊を組んでの空襲………数えた訳ではありませんが、恐らく百機以上は居ました。あれは確実にあの基地を狙ったものでしょう』

 

「基地は消滅。基地に駐在していた兵員は基地司令を含めた全員が死亡………渡されていた4機の旧式の対空機関砲で攻撃したが焼け石に水だったからな。あんな数を止められる筈がない」

 

赤々と燃え上がる基地を尻目に悠々と去っていく奴らを俺達は、ただただ見上げるだけしか出来なかった。

数の少ない払い下げの古ぼけた対空機関砲では、疎らな弾幕しか形成出来ず撃ち落とせる筈もない。

それでも俺達は弾が尽きるまで撃ち続けた。

 

『あの時、基地の連中は何をしてたんでしょうか?我々が対空戦闘をしていた時に対空砲火の一つも上がっていなかった………内陸に近いからとボケていたんでしょうか?』

 

「あの基地は前線とはいえ、海上戦闘が主戦の戦争から離れていたからな………それもあったかもしれん」

 

人類総力戦と言われるセイレーン大戦においてなんとも羨ましい話だ。

平和ボケできる程に穏やかな場所なんてどこにも無かった筈であり、ましてや前線基地の一つだったのに………

 

「何にせよ俺達は生き残った。あんな地獄のような戦闘ばかりの戦場から生き残ったんだ………今はそれに感謝しておこう」

 

『そうですね大尉………っと、もうこんな時間ですか。長々と話して申し訳ありません』

 

「いや、久し振りにお前の元気そうな声が聞けて良かったよ」

 

『それでは大尉………今度は大尉の奥さんを紹介してくださいよ?俺、大尉がKAN‐SENのベルファストさんとくっ付くんじゃないかと思って賭けてますから』

 

「余計なお世話だバカ野郎!!」

 

電話先で笑いながらアイツは通話を終了した。

まったく………アイツは何考えてやがんだ。

こんなオッサンの相手とかベルファストに失礼だろうが………

だいたいKAN‐SENの子達に手を出すとかイカンだろう。

………そりゃ魅力的だし、たまに誘ってんじゃないかって思うくらいグイグイ来る奴らもいるがな?

あの爺に指輪まで渡されてるからケッコンできるだろうが、それはKAN‐SENの能力を上げる為の装備品だぞ?

 

実際にこんなオッサンの嫁とか皆嫌だろ?

一部なんか好意を持っている連中も居るが、それは俺しかこの母港に男が居ないからだろう。

この戦争が終わって周りを見れば俺以上に魅力的な奴だっていっぱい居るはずだ。

 

「………いったい俺のどこが良いのやら」

 

そんな呟きと共に溜息を吐きながら通話室を後にした。

外の中庭に通じる母港の渡り廊下を歩く。

空には綺麗な満月が浮かんで雲一つない空には、その輝きに負けないように光る星が見えた。

 

「月の綺麗な良い夜だな。戦時中はあんなに煩わしかったのに………」

 

夜の海において満月ほど厄介なモノはない。

夜闇が月明かりで照らされれば、それだけ被発見率も高くなってしまうからだ。

駆逐艦と魚雷艇で戦列を組んでいた俺達にとって、新月こそが味方であり満月は敵だった。

 

「本当に変わったもんだ………」

 

「そうでしょうか?」

 

「っ?!………リシュリューか、驚いたぞ」

 

「ふふふ、申し訳ありません。指揮官が夜空を見上げているのを見かけたものですから」

 

渡り廊下の少し先にあるテラスに置いてあるアンティークな椅子に座るアイリスの戦艦 リシュリュー。

彼女はヴィシアの戦艦 ジャン・バールの姉であり、アイリス陣営のトップだ。

また、アイリス陣営では枢機卿とも呼ばれており、その権威はアイリス陣営の中で絶対的なものである。

 

その装いは白いミニスカワンピースに赤色や金色の装飾が施された物を着ており、足には真紅のニーソックスを穿いてどこか清潔感を感じさせる服装だ。

容姿はジャン・バールと同じく黄金比と言ってもいいようなスタイルの良さが挙げられ、目はピンク色に近い紫色の瞳を持っている。

髪はオレンジ色よりの金髪で、腰よりも先まで伸ばしており、太陽に当たるとまるで輝いて見える事があるほどに美しい。

 

「ところでどうしたんだこんな時間に?」

 

「いえ、こんなに月が綺麗ですから、少しだけ晩酌をと思いまして」

 

リシュリューの手にはお高そうなワインのボトルがあった。

確かに今日の満月を見ながら飲むのは、なかなかに風情があっていいのかもしれん。

 

「なるほど、酒のつまみにはもってこいな綺麗な満月だからなぁ」

 

「はい、指揮官もどうですか?」

 

「俺もか?だが、勤務中に飲むのはな………」

 

リシュリューにお誘いを受けたのだが、さすがに俺が飲むわけにはいかない。

もしこの母港で緊急事態が起きた時に、飲酒していたら正常な判断を下せなくなってしまう。

それだけは一番避けたい所だ。

 

「ならこちらは如何ですか?今朝試作品が出来たとダンケルクが持って来た葡萄ジュースなんです」

 

「…………本当にダンケルクは何でも出来るな」

 

そう言ってワインとはまた違うボトルを取り出すリシュリュー。

最近のダンケルクはお菓子作りだけに留まらず、甘い物なら何でも出来そうな感じになってきている。

なんでも最高の完成品を食べてもらいたい人が居るらしい。

あんな家庭的な可愛い女の子であるダンケルクに、そこまで言わせるソイツが俺は羨ましいよ。

そんなダンケルクの試作品か。

美味くない筈がないだろう。

 

「ああ、そっちなら付き合おう」

 

「ではこちらに」

 

俺はリシュリューに誘われるままにテラスの空いている椅子に座り、彼女からワイングラスを受け取る。

このグラスも目が飛び出る程お高い物なんだろうなぁ………なんて考えていたらリシュリューが俺のグラスに御酌してくれていた。

これはありがたい。

こんな美女から御酌してもらえるなんて、なんて贅沢な事なんだろうか?

ワインのボトルの方のコルク栓は既に抜いてある。

ならば俺からもリシュリューに御酌を返しておこう。

そう思いボトルのラベルが注ぐ際に上を向くよう持って、置かれているリシュリューのグラスに容器の1/3ほど注いでおく。

 

「あら、ありがとうございます指揮官」

 

「こういうのも悪くないだろう?」

 

リシュリューにお礼を言われて自身のグラスの足を持ち、同じくグラスを持つ彼女とグラスを打ち合わせないように乾杯をして一口飲んだ。

葡萄の爽やかな香りが鼻を抜けてほど良い甘味が舌を刺激する。

なるほど、これは大人でも楽しめるジュースだな。

甘過ぎず、しかし少しだけ酸味を効かせることで全体にメリハリを付ける上質な味わいだ。

ジュースにここまでの違いを付けるなんて流石はダンケルクだな。

 

「これが未完成だなんて驚きの美味さだな」

 

「コレの前の試作品を私も試飲しましたが、本当にそうですね………それとは別の事なのですが、失礼ですが指揮官、どちらでマナーを?」

 

「ん?別に気にしてはいなかったが………」

 

たぶん無意識に前世の行動が出たのだろう。

忘年会や新年会での上司への御酌。

下手すると更に上の役員に御酌する事もあるあの行事なんて、マナーを知ってなきゃ損する事ばかりだからな。

 

特に洋酒であるワインなんて面倒なマナーが多い。

まず洋酒の本場であるヨーロッパでは注ぐのはだいたい男の役割であるという事。

そして注いだ後の雫で色が付きラベルが見えなくなるからラベルは必ず上に向けろだとか、グラスを持つ時は必ず足を持つ事、乾杯の時はグラスは打ち合わせずに軽く近寄せるだけ………なんてもんがある。

正直面倒くさいが、覚えておかないと社会に出て常識が無いなんて思われるのだ。

まぁかなり前に覚えていた事を今でも出来るってのは、それだけ身体に染み付いてしまっているのだろうな。

 

「まぁ、たまたまだよ」

 

「………それにしては自然にされていましたけど」

 

訝しむリシュリューに肩を竦めながら俺はまた一口ジュースを飲む。

俺に前世の記憶がある事は誰にも話していない。

そんな事を話せば精神を病んでいると思われても仕方ないからな。

内心そう思いながらまた一口ジュースを飲む。

本当に癖になりそうな美味さだな。

気が付けばグラスからすっかりジュースは無くなってしまっていた。

 

「お気に召されたようでなによりです」

 

「ああ、ダンケルクにとても美味しかったと伝えておいてくれ」

 

「ふふ♪指揮官からのお言葉は彼女にお伝えしたいのですが、これは私が試飲を頼まれた物なのでまた完成品の時に伝えてあげてくださいね♪」

 

「ん?どういう事だ?」

 

リシュリューに訊ねてみるが、彼女は笑うばかりで何も答えない。

………いったいどういう事なんだ?

リシュリューの言葉に頭を悩ませていると、グラスを空にした彼女がこちらを向く。

答えを聞かせてくれるのか?

 

「こうしていると懐かしいですね」

 

「む?懐かしい?」

 

「覚えてないのですか?初めてお会いした時も、こんな満月の夜だったじゃないですか」

 

「………ああ、そうだったな」

 

答えを教えてくれずにクスリと笑うリシュリューに、俺は若干残念な気持ちになるが、確かにこんな満月の夜に彼女と俺は出会った事は事実だ。

というかこんなロマンチックな状態ではなかったのだがな。

 

「あの時の指揮官は前線帰りで、ボロボロの軍服に包帯だらけのまるで幽霊のようでした」

 

「仕方ないだろう、服なんて持っていなかったんだ。それにあの時の俺は………」

 

「………そうでした。申し訳ありません」

 

「いや、もう過ぎた事だ。気にしてないさ」

 

頭を下げて謝るリシュリューに俺は気にする事もなく空を見上げる。

リシュリューと初めて会った時の俺は、大戦の戦勝パーティーに英雄という神輿となるべく出席させられたもの。

まだ俺の価値は指揮官としての適性が高い捨て駒でしかなかった頃の話だ。

 

歴戦の兵士、常在戦場という風体を出させる為に、あえてそのまま出席させられた俺にとって本当にどうでもいいパーティーだった。

それよりも早く前線に戻って残党狩りを進めてしまいたかった俺は、挨拶もソコソコにさっさと壁の花になるべくパーティーホールから外の見えるテラスへと移動したら………そこで静かにワインを飲むリシュリューが居たという訳だ。

 

「あの時はしつこく話しかけてくる殿方を避ける為に外で飲んでいましたら、パーティーの主役だった筈の指揮官が来たので驚きましたよ」

 

「俺も誰も居ないと思ってたから少し驚いたな」

 

「ふふ、あの時の指揮官は顔にも包帯を巻き付けてましたから、本当に驚いていたかなんて分かりませんよ」

 

「そうだったかな?あの日の俺は、早く前線に戻りたくてイライラしていたからなぁ………あまり覚えていないな」

 

リシュリューがクスクスと笑うのを見ながら、思い出してみる。

だが勝ったと騒いでパーティーなんぞ開いている上に対して苛つくばかりで、そんな事を気にする余裕なんか俺にはなかった事だけは記憶しているんだが………

たぶんそんな中でリシュリューとも話したんだろうなぁ………

 

「という事は私と話した内容も覚えてらっしゃらないのですか?」

 

「あー………すまん」

 

タイムリーにリシュリューが訪ねてきたので、とりあえず謝っておいた。

そんな俺を見て、また笑うリシュリュー。

だって仕方ないだろう?

前線の様子や残党狩りの経過なんかが気になってそれどころじゃなかったのに………

 

それもこれも指令書まで作っていきなりパーティーなんぞに俺を呼び出した上の連中が悪い。

だいたい捨て駒扱いして、毛嫌いしていた俺達を………いや、俺を英雄扱いして神輿にしてきたんだ、それ位の無礼は許してもらいたいもんだ。

 

「あの時の指揮官に『こんな所に居て大丈夫なのですか?』って訪ねたら、『俺はパーティーの飾りだ、用が済んだら捌けるのが筋だろ』なんて低い声で言われたのでビックリしましたね」

 

「………あの時は本当に気が立っていたんだ」

 

「でしょうね。目のギラ付き方や纏っている雰囲気がまるで神話に伝わる戦士 ベルセルクのようでした」

 

「そんなにか?」

 

「ええ」

 

思わず目を丸くしてしまうのは無理もないだろう。

ベルセルクっていえば、和訳するとだいたい狂戦士(バーサーカー)なんて言われる存在だ。

だからあの時挨拶が終わったら誰も話しかけて来なかったのか………

しみじみとあの日の疑問が解決した事に納得していると

 

 

 

「あの日………私はそんな貴方が気になったのです」

 

 

 

リシュリューがポツリとそう言った。

ハッとして彼女を見ると微笑みながらこちらを見るリシュリュー。

月明かりに照らされる彼女はとても神秘的で、その微笑みまでも輝いているようにも見えてしまう。

まさに月の女神と呼んでも良い程だ。

そんな彼女が俺を見ながら言葉を紡ぐ。

 

「調べてみた指揮官の活躍はまさに物語の英雄そのもので、苦難に満ちて先が茨の道だったとしても抗い戦い続ける戦士であり、そして多くを率いて道を示す指導者………どれ一つ取ってもまさに神に愛された存在と言っても過言ではありません」

 

「………そんな大層なもんじゃないさ」

 

その言葉に俺は真っ向から反論する。

神に愛された?

それなら今まで救えなかった奴等はどうなるんだ?

神に愛された存在ならもっと多くを………いや、その前に助けられた筈だ。

俺は唯の人間であり、自分の両手で助けられるだけしか救えなかった男だ。

………まぁそれも本当に限られた人数だけだったんだがな。

 

「いいえ!そんな事はありません!!指揮官のお陰で救われた人達は皆、貴方に感謝しているのです!!あの悪名高いアイアンボトムサウンド鏡面海域撤退戦だって………貴方が座乗していた艦が殿を務めなければ全滅、文字通りの全滅していたのですから」

 

「俺達はただ………必死に抗っただけさ」

 

熱弁を振るうリシュリューに俺はそれだけ言って視線を下げた。

あの時も俺達は囮………そのまま沈むまで戦えと命令されただけだったんだ。

命令して真っ先に逃げた連中が一番初めに沈み、途中で重桜の艦隊が合流しなければそのまま沈んでただろう。

そして指揮権があの爺、あの時大将だった元帥に渡り、全軍撤退命令が出されなければずっと戦う事になっていた筈だ。

 

「それでも貴方達が居なければもっと被害が増えていた筈です」

 

「………そうかもしれんな」

 

チラリと視線を向けて見た先にいた、目を輝かせながら話すリシュリューの言葉は俺には眩しく感じる。

誰だってそう信じたい。

俺達にはそんな希望を感じる暇さえなかった。

我武者羅に生きて生きて生き延びる術を常に模索して、泥水だろうが下水だろうが生きる為に啜り続けた存在には目が眩むほどに眩しい言葉だ。

 

「………指揮官は何故そこまで」

 

「その自覚が無いからかもな」

 

「自覚、ですか?」

 

「そうだ。英雄なんて持て囃されても、結局俺の中では地べたを這いずりながら生きた記憶しかない。それに今まで毛嫌いされて目の敵にされていたのに、手の平を返して褒め称えられるなんて性に合わないし、そんな風に言われる覚えなんてないのさ」

 

結局の所そこだろう。

あれから数年経つのだが、どうしてもその感覚が抜けない。

目を閉じればすぐに思い出せる。

飛び交う砲弾に硝煙の匂い。

弾ける波に混じる赤い色(炎)と黒い色(重油)が。

陸に戻っても同じだ。

すぐ横を黄色の閃光が連続的に走って土を耕しながら前に居た仲間を穴だらけにし、肉の塊にしていく。

爆弾が開けた大きな穴と立ち上がる土柱、そして焼ける肉の不快な香りと湿ったワタや肉の部品を撒き散らす戦場。

 

そんな地獄が俺の日常だったんだ。

 

懐かしさすら感じる。

 

まるで俺自身、そこに居る事が当たり前のように………

 

 

 

「ダメッ!!」

 

 

 

「っ!?」

 

気が付けば俺はリシュリューに抱きしめられていた。

小刻みに震える彼女は何かに怯えるかのように俺から離れない。

フワリと広がる甘い香りにドキッとさせられながらも、俺は状況把握に努めた。

昔を思い出していたら急にリシュリューに抱きしめられ、しかも何故か震えている?

………分からん。

なんでこんな状況になる?

 

「ダメです指揮官。そんな風になってしまっては………戻れなくなります」

 

「リシュリュー?」

 

俺の背中を掻き抱く様に何度も手を彷徨わせる彼女の声は、縋り付くような弱さを秘めていた。

何を恐れている?

リシュリューがここまで弱さを見せる何かが俺にあったのか?

分からない………。

それが何なのかが分からない。

 

「指揮官は………またベルセルクに戻ろうとしていました。もういいのです、そんな風にならなくても。」

 

「ベルセルク……俺が?」

 

「……はい」

 

少し離れてようやく俺に顔を合わせたリシュリューは泣いていた。

彼女によれば、俺はベルセルク(狂戦士)へと戻ろうとしていたらしいが………

自分ではよく分からない。

というかこれが俺なんだが?

今でこそ母港という後方にいるが、俺の戦いは常に死と隣合わせの前線で、それに付き従う同士たる部下………いや、戦友達と地獄を巡るのが常だったんだ。

それ相応の心持ちになるのは普通ではないのか?

 

「貴方はそれが普通だと思ってしまっているのです。普通ではないのに、それが自分であると認識しているから………」

 

「…………そうか」

 

「私の大好きな………いいえ、愛している貴方に戻ってください。あの陽だまりのような暖かな眼差しで皆を見守る貴方に」

 

「リシュリュー?!」

 

思わず声が出た。

いや、いきなり告白されたらビックリするだろ?

だが彼女は俺の目をじっと見つめて離さない。

その目は懇願するような願いを込めた目だ。

困惑する俺を見ながらもリシュリューは語る。

 

「気になって調べ、実際に共に過ごして貴方という人に触れてみて………私は恋をしました。気さくに話し掛け、嫌な顔一つせずに様々なしがらみを持つ私達を平等に受け入れてくれた貴方に。貴方のお陰で私達は兵器ではなく、まるで普通の女の子のような体験をする事ができたのですよ?それだけで私達は満たされたのです。」

 

「それは………普通ではないのか?」

 

兵器であると存外にそう言うのだが、心を持つのであれば、それを尊重しない訳がない。

確かに彼女達KAN‐SENは兵器として生まれてきた。

だが心を、感情を持つのであれば、それは同じ心や感情を持つものとして人と同じように尊厳を守るべきなのではないのか?

捨て駒として戦友達と共に生きた俺は、それが普通だと思ったんだ。

最期のその時まで、人として生きていたい。

その思いを抱えて必死に今まで戦っていたのだから。

 

「いいえ、それは貴方だけです指揮官。KAN‐SENというだけで私達を武器や道具としてしか見ていないからこそ………ジャン・バールや他の娘達のような事が起きてしまったのです」

 

「それは………」

 

「私達の尊厳を、心を守ってくれる。それだけで私達は貴方に尽くし、そして心を寄せてしまう………貴方以外をそういう対象として見る事ができないのですよ?」

 

「俺は………ただ、仲間だと」

 

「ええ、そうです。何も打算も裏も無くそう思ってくれるだけで、私達は救われているのですよ」

 

意外だった。

それが俺に固執する理由だとは。

分からなかった。

誰でもそうするのだと思ってしまっていた。

だが思い返せばこの世界はまだ、俺の世界でいうWW2の真っ只中である。

人権という言葉は無く、現代でも残る差別なんて一番酷かった時代だ。

それこそスマホやタブレット端末なんかがあって科学の一部が突出しているので忘れそうになるが、時代背景は史実に照らし合わせればその辺りなのだから。

 

「忘れないでください。私達KAN‐SENは貴方だけしか求めていない事を。貴方以外に何もいらないのだという事を」

 

「………」

 

改めて見たリシュリューの目は何処か濁っているようにも感じた。

KAN‐SENでその陣営のトップとしての権力を掌握する。

この時代においてどれだけ苦労する事があったのだろうか?

リシュリューだけじゃない、その他の陣営のKAN‐SENだってそうだ。

人間が数を減らしているとはいえ、陣営の旗頭を持っているならば………それだけ暗い部分だって見てきたはず。

 

そう思ったらつい………俺はリシュリューの頭を撫でていた。

 

「………指揮官?」

 

「なんだろうな………こうしたくなったんだ」

 

優しく、労るようにリシュリューの頭を撫で続ける。

彼女は少し驚いた様子だったが、スッと目を閉じて俺の手に任せてくれた。

こうした触れ合いこそが俺をここに留めてくれる。

何も言わずに、ただそこに居てくれるだけで良い時があるのだから。

 

 

 

傷の舐め合いと言われればそれまでだ。

 

 

 

この世界は本当に理不尽な事で溢れている。

 

 

 

それでも俺は………彼女達と共に有りたい。

 

 

 

同情なのかもしれない。

 

 

 

でも………この思いは無くしたくなんかないんだ。

 

 

 

月明かりだけが照らすこの場において、それ以上に思う事は俺にはなかった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「………はい、ありがとうございました」

 

『お役に立てたのなら幸いです。あの人は………昔からそうでしたから』

 

通話先にいる指揮官の部下だった人はそう言って溜息を吐く。

指揮官の事なら何もかも知っている。

そう存外に言っているかのように。

少しだけ受話器を握る手に力が籠もった。

そんな態度に私は少しだけ嫉妬してしまっている。

 

「………ですが助かりました。今回の事で皆への接し方や考え方が少しでも変わるといいのですが」

 

『そうですね。そうだと良いですね。ですが自分に出来るのはここまでです。後はそちらの努力次第です』

 

淡々とそう口にするその人は、まるでこちらの苦悩を嘲笑うかのように事実だけを話す。

感情を感じさせないというのはまさにこういう事なのだろうか?

 

『では吉報を待っていますよ。貴女方の努力が報われ、あの人がこれ以上苦しむことの無い世界の為に………他の連中など信用するに値しませんので』

 

「分かっています」

 

この口調からも分かる通り………この人は指揮官や戦友以外の全てを敵だと思っている。

いや、仕方の無い事だとは思う。

それだけの事をしてきた人達を憎み、世界を滅ぼそうとしないだけでも奇跡に近いのだから。

だからだろうか?

急に連絡が入り、こういう話を持ち掛けてきた事には本当に驚いた。

 

他者への不信感しか持たないこの人が、わざわざ私にこの一連の流れを組んできた事にも。

本音で指揮官と話す事ができて嬉しかったのだけれども、それ以上にこの人の手の平の上で踊らされている感覚に陥ってしまう。

色んな人間と話してきた私だけど、正直言ってあまり関わり合いにはなりたくない人種だ。

舞台裏から全てを見通し、そうとは悟られる前に全てを終わらせるような感覚………

 

『………ああ、それと』

 

「………何でしょうか?」

 

通話がもうすぐ終わると油断して、不意に続けられた言葉にビクリと反応する。

枢機卿と言われるまでに魑魅魍魎が跋扈する権力闘争を乗り越えた私がだ。

たった一人の人間の言葉を恐れていると言ってもいいだろう。

いったい何があるというのだろうか?

 

 

 

『そういった感情はあの人に向けないように。その感情を向けていいのは………その隣に居る事を赦された者のみにだけですので』

 

 

 

この人はどこまで見透かしているのだろうか?

思わず固まってしまった私は咄嗟に何か言おうと口を動かすけど、言葉が、声が出てこない。

だけど、ここで返さなければ、私はその程度の女だと思われてしまう。

あの人の………指揮官の隣を目指すのならば、必ずこの人と比べられてしまうのは明白。

この人よりもその隣に相応しいと言われるためにも………

 

「大丈夫ですよ。私は指揮官にこの感情を“今はまだ”向けようとは思っていませんから」

 

『………そうですか、なら期待しておきましょう』

 

見透かされる感覚はもう慣れた。

感情の籠もらない言葉も気合を入れて迎え撃つ。

指揮官でなければ抑えられなかったこの怪物を私は超えるのだ。

 

「それではまた………元“ダストボックス隊副長代理”さん」

 

『ええ、それでは自由アイリス教国枢機卿猊下』

 

その言葉を最後に通話を終わる。

終わった瞬間、全身の力が抜けた。

全身から汗が吹き出てくる。

まったく、本当に心臓に悪い。

枢機卿となって様々な人を見てきたけど、一番身近にいるタイプであり、あまり近寄りたくない人種。

それがさっきの通話相手の元ダストボックス隊の副長代理だ。

 

「指揮官が戦い続けていられたのはあの人が裏で全てを整えていたから………とんでもないですね」

 

足りない物資を自給自足する場面が何度もあったダストボックス隊。

しかし、その中でも本来なら最も手に入れ難い筈の武器弾薬を、どの場所でも忌み嫌われていた部隊に補給したのが彼なのだ。

不要となった武器や弾薬を処分したように見せかけて徴収し、部隊へと支給し続けたその手腕はまさに神がかり的なものだった。

元々は処分品故に不良品も多かった筈なのに、それすらも修理部品として活用しながら戦う彼らは本当に神に愛されたかのような活躍をあの大戦時に残し続ける。

 

「それもこれも全ては…………私は勝てるのでしょうか?」

 

ついそんな弱音が出てしまった。

あの日から調べ続け、枢機卿となった今の権力を使ってまで細部に渡って調べ尽くした情報を考えると頭が痛い。

どうすればあんな優秀な部下を持てるのか?

また、上層部は何故そんな優秀な人材を手放し、あれ程までに憎まれるような事をしたのか?

 

「それもまた、人の業というものでしょうか?」

 

ダストボックス隊を調べれば調べるほどおかしな事実が出てくる。

指揮官が未成年で徴兵された事もあるが、無実の罪で左遷されて配属された者も数多く居たのだ。

もちろんその事でクーデター後に裁判となり、軍事裁判で裁かれた者も多いと聞く。

最高刑は死刑で、銃殺刑だったそうだ。

だがその一方で、何故そこまで多くの者達の罪が暴かれたのかも謎となっている。

 

懐かしさすら感じる随分と過去の出来事ですら、しっかりと調べ上げられてその証拠までもが揃っていたのだから。

私の方でかなり力を入れて調べてみたけど………それに関しては特級の機密事項として陣営トップの枢機卿である私ですら知る事は出来なかった。

 

「まぁ………誰の仕業なのかは目星が付きますけどね」

 

この予想が当たっていたら、本当に恐ろしい事である。

それとは分からないように全てを揃えられてしまう。

誰も気が付かずに欲しい物だけを必ず手に入れるなんて事がもし出来るのならば………

 

「…………裏の顔を持つ者ならばこれ程恐ろしく感じる存在は居ないでしょう」

 

しかし、私はこの人物に勝たなくてはいけない。

指揮官が悲しむ事の無い世界。

それが私とあの人の共通の目標であり、唯一利害が一致している事である。

指揮官の隣に立つのであれば、必ず越えなければならない壁。

おそらく重桜の軍師や参謀である彼女達もそれに気が付いているはず。

 

「目標にはまだ遠く………先は長い…か」

 

この数年で得られた力を振るっても、届かない背中。

 

 

 

でもまだここから巻き返せる。

 

 

 

「指揮官の隣は私が取ります。他の誰にも譲れません」

 

 

 

窓の外に見える星空を眺めながら、自分の決意を刻み込むように口にした。

 

 

 

表も裏もその全てを護り、貴方と共に歩みましょう。

 

 

 

清濁併せ呑む事で、貴方に安らぎと平穏を齎す事を誓います。

 

 

 

我が身、そして我らが祈る神に誓って。

 

 

 




 
という訳で懐かしむ事だったね!!

皆も懐かしい思い出や品はあるかな?

作者は学生時代は筋トレか空手か柔道をして、鬱憤が溜まったらノートに妄想小説を垂れ流しするのがマイフェイバリットだったんだ!!

軽い黒歴史だね!!

でもそのノートを見返す事で、学生時代を思い出して懐かしんでいるよ!!

全部で24冊程あるけどね!!

今回はここまで!!

それでは皆もマッソーマッソー!!

友人にアズレン小説書いてるのがバレて言われた一言「史実側、宇宙人に侵略されている歴史にも居るんでしょこの指揮官?それってどんな感じなん?」これはいる?

  • いる
  • いらない
  • マッソー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。