かなでの碁   作:ヴィヴィオ

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第13話

 

 

 

 ヒカル

 

 

 

 

 俺がいるのは暗い部屋の中で、目の前には机がある。机の中央にはスタンドがあり、部屋の唯一の光源となっている。そんな机に備え付けられた椅子に座らされ、対面にはあかりが座っている。あかりの背後には警察官の格好をした若い女の子がいる。

 

「さあ、きりきり吐きなさい。どこであんな可愛い子を誘拐してきたの!」

「お母さんが泣いているぞ!」

「大丈夫。罪を認めれば楽になれるから」

 

 あかりに続いて警察官の子がそう言ってくる。

 

「誘拐とかしてねえよ!」

「嘘だ!」

「なんでだよ!」

「ヒカルにあんな幼い彼女が出来るなんて信じられない!」

「彼女じゃない」

「ダウトだ」

 

 部屋に新たに入ってきた警官の子が机の上にカツ丼を置きながら話していく。

 

「彼女から事情を聞いた。一緒に毎日寝ているそうだな」

「このロリコンっ!!」

「待て! それはかなでが淋しいからって潜り込んで来てだな……」

「本当に?」

「当たり前だって」

「ふっ、次の証言だ。一緒にお風呂に入って身体の隅々まで洗っているそうだな」

「かなで~~~~!!」

「アウトっ!」

「110っと」

「待て待てっ、それは待てぇっ!!」

 

 あかりが取り出した携帯をどうにか奪う。

 

「まあ、同意の上なので問題はないのだろうが」

「いや、かなではな……」

 

 説明しながら出されたカツ丼を食べていく。ここはコスプレ喫茶の一種で取調室のように作られた場所でカツ丼を食べるというコンセプトらしい。まじで捕まえられた時はびびった。

 

「まあ、事情は理解したけど……とりあえずおばさんには連絡しないとね」

「今日、帰る予定だから問題ない」

「ヒカル、それって……」

「なんだよ?」

「ヒカルがわかっているならそれでいいけど、外堀を埋められていってるわよ」

「何言ってんだ?」

「はぁ~これはまずいかもね、あかり」

「そんなんじゃないから……」

 

 何かあかりが他の子たちと話していると部屋の中に慌てた男子が入ってきた。

 

「おい、あの子泣き出したぞ!」

「えっ!?」

「その人のところへ行こうとしているみたいで」

「あ~やっぱりか」

「よくあるの?」

「わりと。俺から離れるのを極端に嫌がるからな」

「それってまずいんじゃ」

「まあ、家や囲碁をしている時は大丈夫だが、知らない人ばかりのここじゃな。かなでは極度の人見知りだから」

「とりあえずかなでちゃんを拾ってから囲碁部に移動しましょうか」

「だな」

 

 あかりと一緒に外に出て、かなでの所に向かう。かなでは俺を見つけるなり車椅子から飛び出してくる。こけそうになるかなでを慌てて近付いて抱きとめる。

 

「ひかる~~」

「はいはい」

 

 しばらく落ち着くまで撫でてやってから車椅子に戻し、一緒に囲碁部へと向かう。

 

「随分と仲がいいんだね」

「まあな。長い付き合いだし」

「ふ~ん」

「ヒカル、誰?」

「ああ、こいつは幼馴染のあかりだ」

「あかりです。よろしくね、かなでちゃん」

「……」

「なに?」

「ヒカルは渡さない」

「……」

 

 俺の服を掴んで涙目で睨みつけるかなで。

 

「べっ、べつにいらないから!」

「そう、ならいい」

「おいおい」

 

 部室へとついたら早速指導碁を開始する。俺とかなでが並んで指導をしていく。かなでは俺の服を掴んだままだが、片手で行っていく。

 

「ヒカル、この子滅茶苦茶強いんだけど!!」

「そりゃ、俺も勝てないし、俺の師匠なだけあって実力じゃあ名人クラスだからな」

「え!?」

「それ、本当ですか!」

「こいつ、いつも家で塔矢名人と真剣勝負で勝ち越してるからな」

「えっへん」

 

 無表示で無い胸をはるかなで。サイのおちゃめな部分が出てきているな。

 

「あの、塔矢名人にサインを貰う事なんかは……」

「あ~」

「ヒカル、サイト」

「ああ、あれがあったか。実はだな」

 

 サイトの事を教えていくと皆が張り切って挑戦していく。

 

「すいません、一局頼めませんか?」

「あっ、本当に進藤プロがいる」

 

 しばらくすると一般のお客さんも入ってきて忙しくなってきた。なのでかなでと二人で多面打ちを使って指導を行っていく。

 

 

 

 

 

 


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