ヒカルと一緒に学園祭で指導碁を行っていく。休憩時間にはヒカルと一緒に模擬店とかを楽しむ。お化け屋敷では怖くてヒカルにずっと抱き着いてた。楽しい時間はあっという間に過ぎて、いつの間にか私は眠っていた。
「んっ……」
「起きたか」
「ヒカル、ここって……」
「見覚えあるだろ」
「うん……懐かしい」
回りにはヒカルの後ろで佐為として住んでいた場所。ヒカルの部屋。私はヒカルのベッドで寝かされていたみたい。窓から外を見ると、日が暮れて夜になっている。
「ごはんの準備……」
「ここは実家だからな、別にいいぞ」
「そっか……あっ、挨拶しないと……」
「そうだな」
両手を差し出すと、ヒカルが抱き上げてくれる。そのままヒカルの首筋に顔を埋めてすりすりする。
「くすぐったいって」
「嫌?」
ヒカルが嫌だったら、止める。嫌われたくないから。嫌われたら悲しくなる。
「嫌じゃないから、泣きそうな顔をするな」
「あうっ……ん~~」
頭を撫でてくれるヒカルの手は大きくて気持ちいい。ずっとこのままでいいかも。そう思っていると、扉が開いて閉じた音がして階段を急いで降りる音もした。
「……」
「?」
「なんでもない。降りるぞ」
「あ、鞄」
「ああ、わかった」
ヒカルに鞄を取って貰って階段を下りていく。怖いので、しっかりとヒカルに抱き着く。
階段に入って、リビングに入る。
「ヒカル、アンタには色々と聞きたい事があるの」
「うんうん、その子との関係とかね」
「あっ、ああ」
ヒカルに椅子に座らせてもらった後、隣にヒカルが座る。私はヒカルの服を掴みながら、前を向いて両親を見る。
「えっと、この子は……」
「かなで、です……ふつつかものですが、よろしく、おねがいします」
「おいっ」
「「っ!?」」
頭を下げてから、緒方さんに事前に言われたように鞄からお土産を取り出す。
「ヒカルっ、あんたまさかっ!」
「誤解だっ!」
「そうだよな、ヒカルにはあかり君が……」
「これ、つまらない、ものですが……」
「あら、これはどうも……って、これは……」
「高級店のじゃないか!?」
「これ、から……すえ、永く……お世話になる……ので……」
「待て、誰に言われた。誰が用意した?」
「緒方、さんと明子、さん……だよ?」
「緒方さんの差し金かっ!!」
「いや、なの……? うぅ……ひかるは、私とずっと一緒は……いやなの……約束したのに……色々、したのに……」
涙がぽろぽろと流れてきて、膝を掴んでうつむく。
「ヒカルっ、こんな小さな女の子を泣かせるなんて男らしくないぞっ!」
「それに手を出しておいて捨てるなんて……」
「いや、ちがっ……」
「……お風呂っ、一緒に入ったり……キスもして……寝ながら朝まで、ずっと……ベッドで色々したのに……」
「「ひかるぅぅぅぅぅっ!!」」
「まっ、待ったっ! 絶対考えている事と違うっ!!」
「ヒカル、父さん話がある。母さん、任せるぞ」
「ええ、任せて。大丈夫よ。ちゃんと責任は取らせるからね」
お母さんが抱きしめて撫でてくれる。明子さんと同じでお母さんみたいで温かい。
少しして、部屋から出て行ったお父さんが戻って来た。
「かなでちゃん、悪いんだけど君のお父さんへの連絡先を教えてくれるかな?」
「ん、いいよ」
携帯を取り出して、お父さんの番号を渡す。
「あなた、一旦かなでちゃんから掛けて貰った方がよくないかしら?」
「おっと、そうだね。掛けてくれるかな? そして、お父さんに大事な話があると……」
「う、ん……」
電話を掛けると少しして繋がった。
『かなでか、どうしたんだい?』
「お父さん、大事な話があるって、お父さんが」
『いや、よくわからないが……どういう事だ?』
「かわるね」
『ああ』
「ん」
「ありがとう。初めまして、私は進藤ヒカルの父親で……はい、はい……実はこの度、うちの愚息が……」
お父さんは部屋から出て行って何か話し合っている。
「かなでちゃん、お菓子でも食べてようか。それとも……」
「夕飯、作る」
「え?」
「ヒカルのご飯、私が作る」
「あらあら、ヒカルの事が好きなの?」
「大好き」
「そう。少しジュースでも飲んで待っててね。おばさん、少し席を外すから、戻ったら一緒に作りましょう」
「うん」
お母さんが出ていって、お父さんに何か話した後、戻ってきて一緒に料理を作っていく。
しばらく料理をしていると、お父さんが携帯を持って来た。
「お父さんと話してくれ」
「うん。お父さん」
『ああ、かなで。かなでに聞きたい事があるんだ。ヒカル君の事だが……これからずっと一緒に居たいのかい?』
「うん」
『彼になら何をされてもいいのかい? こう言ってはなんだが、男は狼だからね。かなでみたいな可愛い子は食べられちゃうよ』
「いいよ。ヒカルになら」
『彼の事を好きなんだね』
「大好き」
『わかった。もう一度変わってくれるかな?』
「うん。はい」
「ああ、ありがとう」
それから、こっちのお父さんは電話越しにもペコペコしながら話していた。少しして、お父さんが出て行ってからヒカルと一緒に戻ってきた。私はヒカルに抱き着く。
「いてて、ひどい目にあった」
「どうしたの?」
「ああ、ちょっとな」
手と口に何かの跡がある。どうしたんだろ?
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。緒方さんには絶対に文句を言わないとな……裏で糸引いてるの、絶対あの人だ」
「料理が出来たわよ。席について」
「ああ」
私はヒカルにお世話して貰いながら、楽しい食事をした。食事の後、お茶をゆっくりと飲んでまったりとしていると、お父さんとお母さんが真剣な顔をして話してきた。
「ヒカル」
「ん?」
「かなでちゃんと婚約する事になったからな」
「は? 誰と誰が?」
「何言ってるのよ。ヒカルとかなでちゃんに決まってるでしょ」
「えええええええええええっ!?」
「これは決定事項だ。しっかりと責任を取りなさい」
「いや、それは誤解で……」
「どちらにしろ、女の子の裸を見て、触ったりしたんでしょ。責任を取るのが当然よ」
「いや、それは……確かに触ったけど」
「?? 婚約?」
小首を傾げる。
「ええ。かなでちゃんが大きくなったらヒカルと結婚して、夫婦としてずっと一緒にいるって事よ」
「夫婦? お母さんとお父さんみたいに一緒……」
「かなでの気持ちもあるだろ。それは……」
「私、ひかると夫婦になるよ」
「え? いや、わかってるのか?」
「ヒカル、大好きだから。ヒカルは嫌?」
「……かなで……あっ、あかりが言っていたのってこういう事か。ってなると、もしかして緒方さんだけじゃないな。明子さんと名人もかかわっている可能性が……」
「ひかる?」
「わかったよ。16になったら、結婚しようか。他の人に取られると思うと無茶苦茶いらつくし」
「うん♪ 私は私達を解放してくれたひかるのだよ」
ヒカルに抱き着いて身体を擦りつけて、匂いをつける。明子さんの言う通りにして良かった。これからもずっとひかると一緒にいれる! また別れるのなんて絶対に嫌だから。