かなでの碁   作:ヴィヴィオ

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第8話

 

 

 全日本アマチュアプロ大会。土曜日に行われている予選も全勝で勝ち上がりました。問題は桑原さんと戦ったせいで乗っていた為、手加減を少し忘れてしまったくらいです。っと、佐為の部分が強くなったままかな。私は本戦行きが確定したので終わるまで暇なのです。なのでヒカルの側でパソコンを使って勉強しています。

 

「なにをしているんだ?」

「あ、緒方さん。仕事はいいの?」

「昨日で終わりだからな。帰ってきた」

「そうなんだ」

「一局打つか?」

「ううん。今はいいかな。それより、緒方さんってパソコン詳しかった?」

「それなりだな」

「じゃあ、教えて欲しいけどいい?」

「構わないぞ」

 

 緒方さんが私の隣に座って画面を見てくる。画面にはホームページ作成のコードが打ってある。

 

「ああ、ホームページを作っているのか」

「うん。棋譜を乗せたりみんなと打つ時の調整をここでしようかなって」

「それはいいな。離れていても打てるなら俺も助かる。特に棋譜の公開は嬉しいな。いつでも勉強ができるからな。よし、ホームページの作成は任せろ。棋譜のデータを頼む」

「うん。でも、自分で扱えるようになりたいから教えて」

「わかった」

 

 緒方さんと一緒にホームページを作成していく。ホームページの名前は藤原佐為のぺージ。家で貯めていた棋譜のデータを全て登録していく。ホームページには烏帽子を被った佐為の姿をマスコットとしておく。

 

「緒方さん、かなで、何をしているんだ?」

「進藤か」

「ヒカルと私の棋譜などをネットで公開するんだよ。一般に公開した方が強い人が生まれやすいし。それにネット碁に入ったら対戦者がいっぱいで面倒なの」

「そうか。確かにそれはいい考えだな。こっちならチャットもできるだろうし」

「うん」

「よし、これで完成だ。しかし、近頃の奴だけでもデータが多すぎだな」

「毎日ヒカルと打ってるもん」

「そうだな」

「羨ましい限りだ」

 

 もう大会も終わったようで、かなりの時間が経っているみたい。数時間もやっていたみたい。

 

「そうだ。パスワードを決めないといけないんだが、どうする? チャットは流石に一般人に参加させない方がいいからな」

「じゃあ……」

 

 私は記憶にある佐為とヒカルが出会った年をパスワードにした。

 

「あっ、それって……」

「なんだ、知ってるのか?」

「俺と佐為が出会った日なんですよ」

「佐為とね……なるほど」

「これでいい?」

「ああ。後は関係者にパスワードを教えればいい。それと囲碁の問題を乗せて少しずつパスワードがわかるようにするのも面白いぞ」

「いいな。それにしようぜ。強い奴が参加するのは嬉しいからな」

「そうだね。せっかくだから公開ランクも決めちゃった方がいいかな」

「確かにそうだな」

 

 3人で問題を作成してそれをネットに乗せる。

 

「塔矢や塔矢先生にも手伝って貰おうぜ」

「それはいいな。ランクは10段階にして問題は100門中80門正解でランクアップにしておくか。制限時間は一手1分にする」

「時間足りなくないですか? 表示されてから直ぐに見るなら」

「それなら、順番に一手一手をちゃんと碁盤に配置していけばわかるよ」

「それなら確かにわかるな」

「問題は……ああ、進藤の指導後のデータもあったな。それを使おうか」

「うわっ、なんかはずいですって」

「諦めろ。よし、完成。しかし、トップ棋士クラスじゃないと解けない問題もあるな」

「しかし、こういうのって他にも褒美が欲しくなるよな」

「そうだね」

「ふむ……いっそ、指導碁の特典をランダムにくれてやるか。ネット碁限定になるが」

「仕事じゃなくボランティア感覚で、ですか」

「そうだ。進藤や俺、かなでや参加者達に検討なども手伝わせばいい」

「じゃあ、それでいこう。難しい問題を解いたら指導碁もプレゼントして」

 

 そのまま完成させたホームページを公開する。問題は随時追加していくけれど、一旦はこれで完成。

 

「すいません、そろそろ片付けますんで……」

「ああ、すまない」

「すいません」

「やべっ、和谷と飯食いに行く約束だった」

「アイツか……ちょうどいいな。進藤、俺も行くぞ」

「え?」

「和谷に試させればいい」

 

 ニヤリと悪い笑いをする緒方さん。悪役だね!

 

「いいのかなー」

「奢ってやるぞ」

「あ~わかりました。かなでもいいよな?」

「私はヒカルと一緒ならどこでもいいよ」

「そっか。じゃあ、行きましょうか」

「ああ」

「うん」

 

 一緒に移動していく。下に降りると和谷さんと奈瀬さんが居た。

 

「遅いぞ進藤」

「そうだよ」

「悪い悪い。だけどパトロンを連れてきたぞ」

「「え?」」

「今日は俺が奢ってやるから感謝しろ」

「「えぇえええええぇぇぇぇっ!?」」

「かなで、何か食いたいものはあるか? 本戦出場祝いだ」

「お寿司がいい」

「寿司か。進藤達もそれでいいよな」

「俺は大丈夫です。和谷と奈瀬は?」

「俺もいい、ですけど……」

「私もいいんですか……?」

「構わない。あとで少しテストに付き合ってくれ。君も少しは囲碁はできるんだろ?」

「はっ、はい。院生ですので大丈夫です」

 

 院生とプロならちょうどいいよね。

 

「なら問題ないな。むしろちょうどいい」

「ですね」

「だな」

 

 ヒカルも賛同してるし、問題なし。

 

「車を回してくるから待ってろ。それと進藤。アキラも呼べ。アイツも戻ってるはずだ。店はここだ。予約はしておく」

「了解」

 

 緒方さんがお店の方に電話をしながら駐車場の方へと行った。ヒカルは携帯を取り出して塔矢君を呼び出しています。

 

「ねえ、かなでちゃん」

「?」

「テストって何をするの?」

「ネットのsaiって知ってる?」

「そりゃ知ってるけど」

「saiが関係あるのか!?」

「うん。佐為のホームページを作成したから、そこででてくる問題のチェックだよ」

「ホームページを作成したっ!?」

「かなでちゃんが?」

「おっ、緒方さんがだよ。そこにいっぱい棋譜が載ってるから便利だよ」

「ふ~ん」

 

 ばっ、バレたかも。まあ、バレても問題ないよね。うん、平気のはず。やっぱりヒカルみたいに上手いこと嘘はつけないや。

 

「そりゃすげえな。でも、進藤がsaiについて何か知ってるとは思っていたが、緒方さんも知ってるんだな」

「よし、塔矢も直ぐに店に行くって。で、佐為の話か? まあ、テストに答えたらわかるから安心しろよ。まあ、他言無用だぞ。その方が面白いしな」

「わかったよ」

「はいはい。でも、進藤って緒方さんと仲良くなってたんだね」

「そうだな。塔矢先生と一緒に世話になってるよ。な」

「うん。緒方さんにも色々と世話して貰ってるよ。家を買ってもらったり」

「おい」

「そっ、そうなんだ……」

「ああ、今度遊びに来いよ。特に奈瀬は来てくれると嬉しい。かなでの買い物とか付き合って欲しいから」

「もしかして、一緒に住んでるの?」

「うん。2人で住んでるよ」

「へぇ~ほぉ~」

「なっ、なんだよ……」

「別に~」

「進藤ってロリコンなんだな」

「ちげえよっ!?」

「?」

 

 何かよく分からない事で言い合ってる。そんなヒカル達を見ていると、緒方さんが車でやって来た。狭いので和谷さんが助手席に座り、私を真ん中にして後部座席にヒカルと奈瀬さんが座った。車椅子は折りたたみ式なのでトランクにちゃんと入ったから大丈夫。なのでお店に行くの。

 

 

 

 

 

 


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