かなでの碁   作:ヴィヴィオ

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第9話

 

 

 

 回らないお寿司屋さんに到着して、個室に案内してもらったよ。そこでは既にアキラが待っていた。

 

「待たせたな」

「いえ、先程ついたばかりです。それと一通り注文はしておきましたよ」

「悪いな」

「そっちはどうだった? 勝ったか?」

「ああ、もちろんだ」

 

 ヒカルが話ながらお姫様だっこで運び、座布団に座わって自分の膝の上に座わらせてくれる。

 

「えっと、何時もそんな感じなの?」

「指定席」

「そうなんだ……」

「お前たちもさっさと座れ」

「「はいっ」」

「和谷君に奈瀬さんもこのコースを頼んだけど、大丈夫かな?」

「だっ、大丈夫です」

「ああ」

 

 あっちはアキラに任せて私達はパソコンの準備をする。

 

「アキラ、ノートパソコンは持ってきたか?」

「ええ、仕事先で対戦する為に持って行ってますから」

「じゃあちょっと貸せ」

「佐為のページを作ったんだ。お前もいるだろ?」

「当たり前だ!」

「安心しろ。入れておいてやるから」

「わかった」

 

 直ぐに緒方さんがパソコンを立ち上げて作ったホームページに入る。

 

「奈瀬君だったか」

「はい」

「届くまでの間でいいからこの問題をやってくれ。和谷はアキラのでだ」

「わかりました」

 

 2人が碁の問題をやっていく。最初はすらすらと進んでいったけど、だんだんと進む速度が遅くなってきた。

 

「これは問題集か」

「ああ。アキラはパスワードも教えるから携帯からアカウントを作れよ。それで棋譜が見れるからよ」

「わかった。直ぐにやる」

「俺達はどうします?」

「もちろん打つぞ」

「おー、といいたいけど、検討やろ。桑原さんと昼間打ち掛けの奴がありますので」

 

 ヒカルに石を持ってもらって桑原さんと打った奴をマグネットの碁で並べて貰う。

 

「どっちも凄いな」

「だよな」

「早碁でこれだからな。癪だが、あのくそじじいの力は確かだ」

 

 4人で検討していると、お寿司が届いた。

 

「和谷達も一旦やめて食おうぜ」

「そうね。でも難しいわね」

「そうだな。セーブとかできるのか?」

「あーそれなんだが、やっぱりセーブはなしの予定だ。ランダムだとはいえパターンがあるわけだから、攻略ができる可能性もあるしな」

「ふん。真に実力のある奴以外はいらん」

「でも、私じゃ全然いけそうにないよ……」

 

 がっくりと項垂れる奈瀬さん。

 

「奈瀬さん、一緒に勉強しましょう。大丈夫です、先生はいっぱいいますから」

「え?」

「そうだな。和谷も制作側に入っちまったし、先生の許可さえ出ればこっちこいよ。佐為と塔矢先生も居るぞ」

「い、いいのかな?」

「わかった」

「構わんぞ。和谷はともかく、奈瀬君には進藤も色々と頼みたいだろうしな」

「頼む。流石に塔矢のお母さんが協力してくれてるけど色々ときついからな。どうしても遠慮するならそれが代価だと思えばいい」

「ええ、そういう事なら。でも、打算とかじゃなく、友達として協力するから」

 

 女のお友達が増えた。今までいなかったし嬉しい。

 

「ほら、食えよ。まだまだガリガリだからな」

「あむ」

 

 美味しいお寿司を食べさせて貰って幸せな感じがする。しばらくお寿司屋さんでやった後、結局みんな家に来る事になった。

 

「うわぁ、高そうなマンションだな」

「父さんも出してるし、バリアフリーでかつセキュリティもしっかりしているよ」

「いいとこ住んでんな」

「そうね」

 

 エレベーターでお家の前まで上がってヒカルが扉を開けてくれる。鍵と指紋認証が必要なので私じゃ開けられない。

 

「上がってくれ」

「いらっしゃい」

「「「おじゃまします」」」

 

 皆をリビングに案内して私はお茶を用意していく。

 

「手伝うわ」

「ありがとう」

 

 奈瀬さんが手伝ってくれたので直ぐに終わった。といっても、私でも大丈夫なんだけど。

 

「おい、これって……」

「ああ、それは父さんが打った棋譜だね。置きっ放しになってたか。悪いけどそっちのファイルに入れておいてくれ」

「ああ……って、これ……」

「どうしたの?」

「佐為のファイルまである。これがsaiの……」

「みんなの棋譜があるぞ。それらを全部公開しようと思っている。もちろん、クリアした人だけにだが」

「ちゃんと段階を踏んだらだがな」

「よーし、やるぞ!」

 

 和谷君が元気にパソコンに向かいだした。私はテーブルに車椅子のままついて、大きめのぬいぐるみを抱きしめる。

 

「奈瀬さん、一緒に打ちましょう」

「ええ、お願いします」

「打つのは遅いけど許してね」

「大丈夫よ」

 

 私は奈瀬さんと打つ。

 

「塔矢、俺達も打とうぜ」

「ああ、打とう進藤」

 

 2人も対局をするみたい。緒方さんはリビングに置いてある冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

 

「あっ、車」

「大丈夫だ。今日は泊まっていくからな」

「ん、わかった」

「それと奈瀬と和谷。お前ら家に連絡して泊まるって言っておけ。保護者がいるなら俺がやるから。もう遅い時間だしな」

「わかりました。でも大丈夫なんですか?」

「俺は一人暮らしなんで大丈夫です」

「大丈夫ですよ。朝方まで打つなんでよくあることですから」

「お母さんには怒られるけどね」

「まあ、かなでは小さいからな」

「……悪影響しかなさそうよね」

 

 結構な頻度で寝落ちしてヒカルの腕の中で寝ちゃうのが沢山ある。ヒカルに包まれてると安心できるから。それから結局、日付が変わって2時くらいにみんな切り上げて眠った。部屋とお布団は沢山あるから大丈夫。私は何時も通りヒカルと一緒に寝たよ。

 

 

 

 


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