酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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一話:痛む頭と両手に花

 

 

「なー、エクシア、モスティマ。」

 

「なに?」

 

「どうしたんだい?」

 

これは俺がまだ天使だった頃の記憶。

 

「お前ら将来大物になりそうだからなったら養ってくれよ。」

 

いつもみたいにふざけて言うと二人が笑った。

場面は変わって酒場になる。

 

「ラックって本当に信仰心がないよねぇ。」

 

「っっっかぁー!!ああ?信仰心なんてあっても飯も食えねぇよ。

俺にとっちゃ主よりも酒だわ。」

 

ダンッ、とジョッキを机に叩き置く。

 

「まあ、君らしいね。」

 

エクシアはぶーたれて、モスティマはいつものように飄々としていた。

また場面が変わると、あの運命の日。

 

「お、おお!?寝る時にいつもピカピカしてる輪も、寝返りがしづらくて鬱陶しかった羽もない!?」

 

俺は守護銃であるスナイパーライフルを持って二人に伝えようとして、いつも通り窓から飛び出して足元の空気をアーツで固めようとしていた。

 

「ん?ん?ん?」

 

踏みしてた感覚がなくて足元を見るといつもの波紋もなく、そのまま地面へと落下していく。

 

「アーツが使えねぇぇぇええ!?」

 

それからなんとか着地して、いつもエクシアのいる射撃場に向かうとモスティマもいた。

 

「おい、見てくれよ!」

 

「なーに、ラック。今新記録が出そうだったん…だ……けど……。」

 

「いつもながら慌ただしい……ね?」

 

珍しくモスティマが目を丸くする。

 

「なんか輪っかと羽が無くなった!」

 

そのままエクシアの横でスナイパーライフルを構える。

 

「……?……あっはっはっはっはっ!!やべー!撃ち方わっかんねぇ!俺今までどうやって撃ってたんだ!!」

 

この時の俺は今まであったものが無くなってどこかハイになっていたのかもしれない。

サブアームのハンドガンと近接武器の片手剣を持って残りをエクシアにケースごと渡して、着けていたペンダントをモスティマに渡した。

ハンドガンなら他の種族だって使えるし、練習すれば俺だって使えるはずだ。照準を合わせる事は出来るし。

 

「んじゃあな!」

 

ピッ、とサムズアップして家に帰って、支度だけしたら家を解約、ラテラーノから出る。

輪っかと羽が無くなった事で人生の転機だと思って、こんな行動をしたんだっけ。出て少しして軽く後悔したけど、それにしても懐かしいなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んがっ……。」

 

いつつ……なんか懐かしい夢を見ていたような……昨日は確か配達が終わって、龍門に帰ってきて酒飲んで……。

 

「ああ、なるほどね……。」

 

人が一人寝るには大き過ぎるベッドの俺の両脇に青髪と赤髪のサンクタの女性が寝ていた。

あの後、ラブホ行って嬢呼んだんだっけ、それも金が入ったばっかだから二人も。

 

「あ〜……気分わる……。」

 

愛用のライターで煙草に火を付ける。

 

「もう起きたのぉ?」

 

「昨日はあんなに激しかったのに……。」

 

「(記憶にないけど多分)最高だったぜ。」

 

甘ったるい声で二人が抱き着いてくる。

そんな二人を胸元に抱き寄せてベッドで横になる。

……この煙草吸い終わったら出るかぁ。

 

 

 

 

「「ありがとうございましたぁ〜、またのご来店お待ちしてま〜す。」」

 

両頬にキスをされる。

へにゃりと口元がだらしなく緩む。

うむ、あの二人に似ていた子を選んだのはムカついたが悪くない、いやむしろ良い!昨日の俺ナイス!!

ひらひらと手を振って歩く。

そして女の子の姿が見えなくなってからサイフを開いた。

 

「さて……仕事、探すかぁ。」

 

高かったなぁ……。

昨日のプレイが記憶に残って無いことを嘆きながら空を見上げるとどこかで喧嘩があったみたいだ、そこそこの規模だ。

街丸ごとの喧嘩なんて龍門じゃ珍しくもないが……。

 

「ふーん……やるなら今か。」

 

火事場泥棒でもするかぁ!

 

 

 

 

コソコソと隠れながら移動をする。確か噂だとこの辺にペンギンのアジトがあるはずだよな〜っと。

 

「みっけ。」

 

中に入り、早速物色と思った瞬間、背後で爆発が起きる。

 

「ぶへっ……!!」

 

壁に叩き付けられる。誰だ、こんな時に非常識な野郎だ。つーか服焦げてんじゃん、たっぷり金をぶんどってやる。

焦げた服を脱いで上半身裸で下手人がいるであろう地点を睨む。

 

「うっひゃー……すっごい爆発。

リーダー、アーミヤ、大丈夫?

今はモスティマが抑えててくれてるから一旦落ち着こっか。」

 

「おいゴラァ!てめぇら何他人の家でドンパチやってんだ!金よこ……慰謝料請求すんぞ!!」

 

土煙が晴れて姿が見えていく。

ふんふん、短い赤髪に、サンクタの特徴である輪っかと羽、それにサブマシンガン。んで、軽い口調にモスティマ。なるほどねぇ。

 

「やれやれ、次から気を付けろよ!じゃあな!」

 

そのまま窓を突き破って着地する。

 

「貴様、奴らの仲間か!」

 

「んんんんんんんん…………!」

 

なぜこうも上手くいかない!おお酒よ!私を見捨てるのですか!

 

「しゃーねぇなぁ、折角人が良い気分だったのに……。」

 

腰に差している刀とホルスターから拳銃を抜く。

 

「なんだ、戦場で半裸だ。」

 

「こいつ変態か……?」

 

「ロドスは狂ったやつらの集まりなのか!?」

 

ロドス。最近よく聞く名前だ。

 

「ラック!そっちよろしくね!」

 

しっかりバレてるし。

 

「わかったわかった……。」

 

「それとそのほっぺにマークも後で聞くから!」

 

……すーっ。

 

「……あいつ彼女みたいなのがいるのに浮気してたのか?」

 

「いや二つあるから風俗とかだろ。」

 

「俺さっきこいつがラブホから出てくるの見かけたぞ。」

 

「最低なやつめ。」

 

「やはりロドスは変人変態の集まりだ!」

 

……い、言ってくれるじゃねぇか。

 

「まあ、待てよ。三下共。」

 

「「「ああ!?」」」

 

「まず一つ、あいつは俺の彼女じゃない。幼馴染だ。確かに風俗には行ったが浮気ではない。いいな?」

 

「……気まずいな。」

 

わかってくれるか。

 

「そこの君、ありがとう。今度また会う時があれば奢ろう。」

 

そう言った途端周りの連中も乗ってきた。

 

「ええいうるさい!便乗してくんな!

は?おい、誰だ舌打ちしたやつ出て来いよ。」

 

「ラック!そっちまだ終わってないの!」

 

ほら見ろ時間かけるから言われた。

 

「んん……よーし!俺はロドスアイランド所属のラックだ!

ふぇへへへへ捕まったやつら連れ帰ってあんな事やこんな事しちまうぞぉ〜!特に女はしっぽりと!!そう、声が届かない独房なんかでしっぽりと!!」

 

決め台詞の如く言い放ち、ビシッと拳銃と刀を構えるとさっきまでいた連中は姿を消した。

 

「………………これが、孤独か。」

 

「何言ってるのさ。」

 

エクシアの声が聞こえて振り返ると呆れた顔のエクシアと重い空気を纏ったモスティマがいて、その横に怪しいマスクの男?と可愛いコータスの少女がいた。

 

「やあ、愛らしいお嬢さん。俺はラックと言います。貴方は?」

 

「え?あの……ロドスのCEOを務めているアーミヤと言います。」

 

ロドスのCEOはこんなに幼いのか?となると、この横とマスクはドクターってやつか?

 

「なんと……こんな愛らしいお嬢さんがロドスのトップとは、驚きです。

ところでアーミヤさん、この後予定がなければ俺と一緒に最高の思い出を作りませんか?」

 

スッと片膝を着いて騎士のように手を握り、微笑む。

アーミヤさんは顔を赤らめて目をそらす。

おっ、脈アリ?

 

「何してるのさ、それと君が半裸だからだと思うけど。」

 

ゴスッとモスティマに杖で頭を殴られる。

 

「ふっお……あぁ……。」

 

何しやがると見上げると目は釣り上がり、口はへの字に曲がったモスティマが俺を睨んでいた。

 

「どれだけ心配したと思っているの?」

 

「あ、えっと、モスティマ、ちょっと落ち着こ?」

 

「私はとても落ち着いているよ。」

 

そのままモスティマがしゃがんで目線を俺に合わせる。

 

「それに、この口紅は何。色んな女の臭いがするよ。」

 

「お、お前ってそんなやつだっけ……?」

 

前はもっと無口と言うか、誰にも流されず影響されずみたいな空気みたいなやつだったのに。

チラリとエクシアに目を向けると俺が悪いと返ってきた。マジかよ。

そのまま首を掴まれる。ちょっと扱い雑じゃない!?

 

「ドクター、彼を連れて帰るよ。」

 

「ま、待ってくれモスティマ。彼を問答無用で連れて行くのは問題が……。」

 

「さっき自分でロドス所属って言ってたから問題ないよ。」

 

「人権人権人権!!」

 

「今の君にはないよ。」

 

となると方法は一つしかないか。

 

「ふっ、悪いが今お前らに捕まる訳にはいかない。」

 

モスティマの手を外してスルリと抜ける。

 

「こっちにも事情があるんでな。」

 

「ふぅん、言ってみなよ。」

 

男には、やらねばならぬ時がある。

 

「お前らに会うのがまだ気まずいのとこの前チェックしておいた風俗に行くたムゴッ!?」

 

気が付けば武装解除されて縄でぐるぐる巻きにされていた。

 

「むごー!もごー!(ずりぃ!アーツ使ったな!しかもこんなアーツ知らねぇぞ!)」

 

「ま、私にも色々あったって事さ。」

 

あ、こいつ堕天使になってんじゃん。

そのまま台車に乗せられてゴロゴロと運ばれた。

 

 

 

 

ロドスの中へ入れられて取り調べ室のような場所へ入れられると喋れるように口だけ解放された。

 

「いやー!変態ー!俺を縛って《龍門スラング》みたいな事するんだろ!!」

 

そう言うとドクターとアーミヤが困った顔をする。こうやって奇人変人を装って監視の目を外せれば━━━━

 

「君が望むなら、私も望む所だよ。」

 

「……わあ、イケメン。」

 

話し合っているドクターとアーミヤの横で静観を続けていたモスティマが人差し指で顎クイをしてきた。

やだ……俺の幼馴染、超美人。惚れ直したぜ。

 

「もちろん髪を切ったエクシアにも惚れ直したぜ。」

 

パチリとウインクすると、えへへと言いながら頬をかく。可愛い。

 

「いふぁいいふぁいいふぁい!!」

 

「今は、私が話してるんだけど?」

 

顔を掴まれて握られる。

いや、あの、顔がね、近くてね。

それと目のハイライトがないの怖いんだけど。

 

「ラックさんの事はお二人に任せる事として、今からラックさんには鉱石病の検査を受けてもらいます。」

 

「あー……いや、それなんだけどさ。俺は受けなくても結果が分かってるよ。」

 

「え?」

 

「なぁ、モスティマ。俺の輪っかと羽が無くなった日の事覚えてるか?」

 

「……もちろん。」

 

「輪っかと羽?……そういえば、ラックさんの種族は?」

 

「やっぱわかんないよねぇ。ラックはサンクタだよ。」

 

「しかし、特徴が……。」

 

「そう、サンクタの特徴と言えば鬱陶しいくらいに光る輪っかと寝る時に邪魔な羽。無くなっちゃったんだよね。みんなの言う主から見放されたか知らねぇけど。

多分それが原因で使えてたアーツが使えなくなったんだ。

そんで、ここからが重要だ。俺って今フリーでトランスポーターやってんだけど、当然源石から作られた物を運ぶ事だってある。でも、俺は感染してない。流石に心配になって一度念入りに調べた事があったけど、源石反応は皆無。

つまり、俺はアーツと種族を捨てた代わりに源石に耐性、又は中和出来る力を手に入れたって事だ。」

 

全く、これさえ無けりゃ追々どっかの企業でトランスポーターやれてたのに。監禁とかペットにはなりなくない……いや、美人、美少女ならアリか?

 

「お分かり?」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。ドクター、これはケルシー先生と話さないといけません。」

 

アーミヤがドクターを連れて出ていく。

 

「お〜い、今モスティマと一緒にいるの怖いんだけど〜……。」

 

「エクシア、あれは持ってる?」

 

あれ?

 

「え、あれって、あれ?」

 

「今のうちにやってしまおう。」

 

「……そうだね、またいなくなりそうだし。」

 

「じゃあ、ラック、今まで心配させた代償として、一つ契約をしようじゃないか。トランスポーターならよくあるだろう?」

 

ふむ、なるほどね。確かに俺は契約となれば破ることはない。考えたな。

 

「さあ、これに拇印を押してくれ。」

 

そう言うとモスティマとエクシアは紙を取り出した。

ふむ、形に残る物として保存して証拠として残すって事か。それに二人に分ける事で紛失するリスクを減らすのか。

 

「こっちは、何々……婚姻届、夫ラック、妻モスティマ。」

 

ほうほう。

 

「こっちは、婚姻届、夫ラック、妻エクシア。」

 

なるほどなぁ……。

 

「ふっ、俺には押すことは出来ないな。」

 

「理由は?」

 

「まだ見ぬ美女美少女とおにゃんにゃんするまで待って待って待って待って……。」

 

モスティマに開放された右手の親指を掴まれる。

 

「違う、言葉を間違えたんだ。誤解だ。」

 

「……本当は?」

 

「夢いっぱい溢れる桃源郷を目指して待って待って待って待って待って。」

 

エクシアに左手の親指を掴まれた。

嘘は言ってない、純粋な願いなのに……。

ここは小粋なジョークで一つ和ませようか。

 

「それにしても、二人とも成長したなぁ……。」

 

「急にどうしたの?」

 

「エクシアも大人っぽくなったし。」

 

「えへへ……そう?」

 

「モスティマも少し変わっちゃったけど素敵だし。」

 

「ふふ、嬉しいな。」

 

何より……。

 

「二人ともおっぱい成長したなぁああああ!!!くそ!待てよ待て!!違う!違わないけど、違う!!」

 

朱肉を付けた指が押されようとして手に全力で力を込める。

 

「ふぅ……あのな、確かに俺が言ってる事はカスだ。間違いない。」

 

「うんうん。」

 

「そうだね。」

 

「しかしそんなカスでも重婚は出来ないんだなぁ……法的に。」

 

正直言うとペンギンがなんかしでかしたら出来そうだけど。

 

「いや、こんな美人さんのどちらか片方とでも結婚できりゃあ男としては最高だけど重婚はなぁ、出来ないなぁ。」

 

そう言うとモスティマがおかしそうに笑う。

 

「事実婚って知ってるかな?」

 

ぶっ、と吹き出す。

 

「おまっ、そこまでするかぁ!?」

 

「するよ。一体何年想ってたと思う?」

 

ラテラーノを出て五年くらいだっけ?

 

「知らん。だってお前ら、ラテラーノにいた頃何でも無かっただろ。」

 

「離れると惜しくなる物もあるんだよ。」

 

「私も似た感じだよ。」

 

確かにその気持ちは分からなくもない。

カチャリと音がしてドクターとアーミヤが戻ってきた。

よーし、何とかなった。

 

「ケルシー先生と話した結果。一応検査をしてみて、本当に鉱石病に効果があるなら、治療又は抑制剤が出来るかもしれません。

ですから、ロドスに協力してもらえませんか?」

 

「OKOK、天使ですら無くなった俺だが、苦しんでいる人への救済なら喜んで手伝おう。

その代わり、給料は弾んでくれよ?」

 

もしもの金はあっても、懐が寒いのには変わらないからな。

そう言うと早速とばかりに契約書を置かれる。

俺は契約書にサインする前に天井の明かりに向けたり、裏からライターの火を当てる。

 

「何をしているんだ?」

 

ドクターが訝しむ。

 

「いや、ちょっとあってな。」

 

横目でエクシアとモスティマを見ると横を向いた。

ガシガシと頭を掻くと契約書にサインと拇印を叩き付ける。

 

「よぅし、契約成立だ!改めて、ラックだ。戦術なんかはめんどくせぇからお前らに任せるぜ。

上手く使ったならその時は幸運を届けてやんよ。」

 

ピッと紙をドクターに渡す。

 

「ああ、よろしく頼む。」

 

ドクターが右手を差し出してくる。

口角が釣り上がる。握手なんて久し振りだ。

 

「おうよ!」

 






久し振りに書いたんで文章が変かもしんないですわ。

モスティマは元々ヤンデレみたいになるつもりはなかったんですけど、書いてると指がヤンデレっぽく書いてました。なんで?

R-18版読んでみたいですか?

  • もっとエロいのが読みたい。
  • このままチキンレースで良い。
  • もっと健全にしろ。
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