酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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十話:この落差よ

 

 

 

おいおい、マジかよ……!

なんで一度なくなったこいつがまた出てきてやがる!?

 

「しかも堕天使仕様の真っ黒かよ。」

 

まあ、ラテラーノ出てからサンクタ殺す事あったし、当然か。

 

「こいつが出てきたって事は……。」

 

正面に軽く意識を向けて手を伸ばすと、何かにぶつかる。

 

「やっぱ、アーツが使える。」

 

何か関係があんのか?

 

「んん……おはよぅ……。」

 

モスティマが聞いてきた。丁度いい、昨日の事について聞いてみるか。

 

「おはよう。早速で悪ぃけど、なんでこれが出てきたか知ってるか?」

 

「もちろん、知ってるよ。」

 

「話してくれ。」

 

そう言うと少し勿体ぶるような顔をする。

なんだ?いつもならすんなり教えてくれると思ったんだけど。

 

「じゃあ、はい。」

 

目を瞑ってこっちを向く。

何がしてぇんだこいつ?……まさか。

 

「ほら、おはようのキスだよ。」

 

「はぁ……?」

 

どこの新婚夫婦だよ。少し待ってみても動きそうもない。ガシガシと頭を掻いてパッとキスをする。

 

「ちょっと短くない?」

 

「文句言うんじゃねぇ。キスはキスだ。」

 

「ふぅん、まあ、いっか。」

 

そう言って昨日の出来事を話してくれる。

なるほどねぇ、若返りの薬みたいなもんだったのか。

 

「んで、こいつは副作用か?」

 

「さあ?クロージャは何も言ってなかったから。」

 

アーツが使えなくなってたのって俺だけだろうからわかんねぇわな。

とりあえずドクターの所行ってみるか。

 

「おーい、ドクター。昨日は随分愉快な事になってたらしいな。」

 

「ああ、戻ったみたいだな。代わりに別の異常が起きたみたいだが。」

 

「お陰様……いや、自然に治ったから別に良いか。クロージャからは何か聞けたのか?」

 

「何も、遊びで試しに作ってみたものらしい。」

 

「ドクター!」

 

話しているとアーミヤが入ってきた。

 

「レユニオンが現れました。至急戦闘準備をしてください。」

 

おっ、丁度良いか。

 

「俺も連れてけ。」

 

「良いのか?」

 

「ああ、まあ、俺の方も少し準備が必要になるけどな。」

 

通信端末を取り出してエクシアに電話を掛ける。

 

『なになに?プロポーズ?』

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ。

執務室まで俺のスナイパーライフルとサブマシ持って来てくれ。」

 

『えー、でもラック使えないじゃん!』

 

「それが今は使えそうなんだなぁ。とりあえず持ってこい。」

 

『うぇー、わかったよ。』

 

数分してエクシアがやって来た。

 

「こっちだ。ほら、こういう事。」

 

「……モスティマと同じ。」

 

「まあ、当然だな。銃くれ、銃。」

 

パッと手の中から愛銃を取る。

……うん、大丈夫。こいつの事が十全にわかる。

 

「んじゃ、ちょっと行ってくる。」

 

「わ、私も行くよ!」

 

「いらねぇよ。知ってるだろ?」

 

「……うん。」

 

アーツが使える俺にとって、観測手や高台なんてもんはいらなくなる。ぶっちゃけるとくそつまんねぇ戦いになるけどな。

 

「ドクター、行こうぜ。

ああ、先に言っとくけど、狙撃は今回俺に任せときな。」

 

「なぜだ?他にもいた方がカバーが出来るはずだが。」

 

「良いから良いから、ここは俺に花を持たせてくれよ。」

 

「そこまで言うなら……。」

 

ドクターに着いていきながら、振り返ってエクシアに手を振る。

そんなエクシアは不安そうな顔で俺を見ていた。

 

 

 

 

「ふむ、この戦場は狙撃オペレーターが置けそうな所があまりないな。」

 

確かに、高台とか無いし、見晴らしの良さそうな戦場じゃねぇな。

 

「大丈夫だ。」

 

そう言って階段を登るように空を歩く。

 

「俺のアーツは空気を操る事だ。高台なんかいらねぇんだよ。」

 

「そうだったのか……。」

 

「まあ、今回は俺のチュートリアルって事で悪ぃけど好きにさせてもらうぜ。」

 

「あ、ああ。」

 

空を登って行き、丁度全体が俯瞰して見える位置に立つ。

 

「頼むぜ、相棒。」

 

昔のようにスナイパーライフルを構える。

まずは先行してきた一人に一発。頭を狙ったはずが肩に当たる。

 

「チッ、鈍ったか。」

 

まずテキサスが前に出て戦闘が始まった。

 

「さっすがっ。」

 

戦い方は苛烈なのに危なげなく立ち回っていて安心して見てられるって感じだ。

奥の方にレユニオンの火炎瓶持ちがいやがる。

ちょっと良い所見せてやるか。

火炎瓶より手前辺りに狙いを定め、引き金を引く。

 

「ヒュー!」

 

上手くいったな!

銃弾が当たった火炎瓶は手の中で燃え上がってレユニオンを燃やした。

 

「良い松明だなぁ!」

 

後ろからスカジとフィリオプシスが飛び出していく。

クオーラも行ったか。

 

「おっと、伐採者。

クオーラ、ちょっと食い止めてくれ。」

 

「はーい。」

 

クオーラが伐採者の攻撃をしっかりと受け止める。……あの鞄何入ってんだろうな。

 

「よっと。」

 

着けているゴーグルごと目を撃ち抜く。よしよし、調子が上がってきた。

 

「やっべぇ……!」

 

フィリオプシスの後ろに敵が現れた。見落としたか!?

スナイパーじゃ間に合わねぇ。……しゃーねぇなぁ、今回は調子に乗った俺のミスだ。

左手を振り上げて下ろすとフィリオプシスの後ろにいた敵が上から叩き潰される。

 

「あー……気分悪。」

 

それからは集中して狙撃を続けた。

 

 

 

 

『戦闘終了だ、降りてきてくれ。』

 

「りょーかいりょーかい。」

 

登りと同じく階段を降りるように歩く。

 

「……ん?ごふっ!?」

 

胃の中からこみ上げてきた感覚に大きく吐き出す。

 

「あ……?なんだってんだ?」

 

右目が妙に霞んできた。触ってみると顔の右側がやけにゴツゴツしていて、辿っていくとサルカズやオニのような突起も生えていた。

そこから更に首や体の内側からどんどん広がっていく異物感が気持ち悪い。

 

「鉱石病……?」

 

おい……どうしてだ?俺はならなかったはず……。

 

「あ……。」

 

しまった。忘れちまってた。アーツが使えねぇから、種族としての輪と羽がねぇから、鉱石病になってなかったって自分で言ってたじゃねぇか……。

 

「少し冗談交じりだったけど……マジだったのかよ……。」

 

足元に固めた空気が霧散して、そのまま地上に落下していく。

こんな高さから落下しちまったら、確実に死ぬな。自分のアーツで死ぬなんて、笑っちまうぜ。

 

 

 

 

「っ!!」

 

目を開いて勢いよく起き上がる。まだ生きてんのか……?

 

「起きたか。」

 

「ケルシー……。」

 

「あれからアンジェリーナがアーツで助けてくれたんだ。あのままだと間違いなく死んでいたからな。後で礼を言うといい。」

 

「ああ……。」

 

右目は霞んでないし、ゴツゴツした感触もない。

 

「……輪と羽も無くなっちまったか。」

 

「全く不思議なものだ。輪と羽が無くなった途端、ポロポロと剥がれ落ちた。」

 

「はぁ……。」

 

「私はドクターに起きた事を伝えてくる。もう少し休んでいろ。」

 

「世話になったな……。」

 

手を閉じたり開いたりする。銃も、アーツも使えそうな気がしない。

 

「あーあ、折角また便利なアーツが使えるようになったと思ったのに。」

 

ベッドに倒れ込んでため息を吐く。

 

「ラック!!」

 

「エクシア、モスティマ……。」

 

「ドクターが私達は先に行けって。」

 

んじゃあ今説明してんのかな。

 

「ちょっとはしゃぎ過ぎちまったみてぇだ。悪ぃな。はっはっはっ!」

 

「なんで笑ってるのさ。」

 

ぐっと襟を掴まれて、上から睨まれる。

 

「たまたま生きてただけで、一歩間違えたら死んだんだよ!」

 

「わかってるって、でもまあ、結果としちゃ生きてたんだしよー。」

 

「っ!!」

 

パンッと顔を叩かれた。

 

「全然分かってないじゃないか!」

 

「何すん、いたっ。痛てぇって……いったぁ!?」

 

そのまま馬乗りで叩かれる。

 

「タイム!タイム!エクシア助けて!」

 

「ごめん、もうちょっとそのままにさせてあげてほしいな。」

 

何度も叩かれる、明日には頬がふっくらしてそう……。

やがて疲れたのか上に覆い被さる。

 

「怖かったんだ……君が死ぬかも、しれないって。」

 

「なんだ……お前、もしかして泣いてんのか?」

 

頬を両手で優しく上に向けるとボロボロと涙を流していた。んだよ……こいつが泣くなんてガキの頃以来か?

 

「ケルシーが来るまで何も手に付かないくらいだったんだ。」

 

「そうだったのか……ん?お前は泣いてくれねぇの?」

 

「まあ、死ぬとは思ってないし、銃を持つと気分が上がるのも分かるからね。」

 

「ひっでぇやつ……。」

 

「ちょっとは心配してたよ?」

 

「そーかよ。」

 

モスティマの目元を親指で拭うが、拭った端からたま涙が零れる。

 

「おい、美人が台無しだぞ。」

 

「うるさいぃ……。」

 

「……エクシア。」

 

「ダメだね。自分で何とかしてよ。私は誰も入らないように見とくからさ。」

 

「わかったわかった……サンキュ。」

 

「お礼よろしく!」

 

そう言って出ていった。

あいつちゃっかりしてんなぁ……。

 

「モスティマ。」

 

安心させるように頭を撫でる。

 

「……なに。」

 

ずっと鼻を鳴らす。

あーあー、ブサイクな顔しやがって。

 

「心配してくれてありがとな。」

 

「……ふん。」

 

拗ねて唇を尖らせる。なんかいつもより子供っぽくなってねぇか?

ぎゅっと尖らせた唇を摘む。

 

「むー……。」

 

「ぶはっ!変な顔!」

 

顎殴ってきやがった。

 

「……私には、何か無いの?」

 

「あん?」

 

「エクシアにはお礼するのに、私には無いんだ。」

 

「……はぁ、何が良いんだ?あんまり高い物はダメだぞ。」

 

「ん。」

 

こっちを向いて目を瞑る。

お前、この前それよりも激しい事したろうが……。

 

「もっと別のもんとかねぇのか?」

 

「印鑑、拇印、指輪。」

 

「よし、キスすんぞ。」

 

顎に手を添える、ぷるっとした唇が目に入り、喉が鳴った。

いやいや、この前何度もやった事だろ。……あ、割と無理矢理だったからあんま覚えてねぇのか。

 

「ん。」

 

「んぅ……。」

 

キスなんてやり慣れてるはずなのに、こいつとやるとどうも緊張しちまう。……エクシアとやっても緊張すんのかな?

 

「……別の女性の事考えてるね。」

 

「んぇっ!?い、いや、んな事……。」

 

「はぁむっ。」

 

「んー!?」

 

口を食べるかのようにキスをされ、そのまま舌を入れたディープキスになる。

ジタバタと手足を暴れさせるが、肩を押さえ込まれてベッドが軋むだけに終わる。

 

「も、モフフィマ!まっへ!」

 

「ちゅーっ……んあ〜。」

 

舌を吸われて、歯茎をなぞはように舐められる。

 

「んーっ!?んー!!!?」

 

「ん、もう、暴れないで。」

 

口を離すと手で頬を撫で、幸せそうに微笑む。そんなモスティマの顔に見蕩れてしまった。

 

「あむっ。」

 

「てめっ、どこ触って……!」

 

左耳を口に咥えられる。

 

「ねぇ、ラック。無くなった輪と羽の分の感覚はどこにいったんだろうね。」

 

「……はあ?」

 

輪と羽っつうと、やたら感覚が過敏になる所だよな……?

急に何を……。

 

「ふーっ。」

 

「ぉぉおう……んだ今の……。」

 

ぞわぞわして、なんとも言えない感覚が……。

 

「こっちもどうかな。」

 

右耳にモスティマの指が入れられ、動かす度にショリショリと音がする。

 

「な、なんだ、なんだこれ、俺、これ、知らねぇ……!」

 

ふっ、と視界が暗くなる。モスティマが反対の手で目を覆ったみたいだ。

 

「ねぇ、ラック。」

 

「うひっ!?」

 

右耳をモスティマの指が弄り続け、左耳からモスティマが語り掛けてくる。

 

「そんなに震えてどうしたのさ、大丈夫?」

 

「や、やめろ、喋んな。指うごかすんじゃっ……!?」

 

「なに、聞こえないよ?」

 

右耳を手で塞がれ、左耳からの音しか聞こえなくなる。

 

「本当にわかってる?」

 

「わ、わかってる……?あ、ああ、わかってる!わかってるから、やめてくれ!」

 

頭の中でモスティマの声が反響する。

 

「何がわかってるの?」

 

「そ、れは……だな……あれだ、あれ……。」

 

「ふーっ。」

 

「おっおっ……ほふぅぅぅ……。」

 

あ、頭がおかしくなりそうだ。

 

「エ、クシア!エクシアー!」

 

「ふぅん……エクシア呼ぶんだ。私よりもエクシアなんだね。」

 

「はっ、いやっ、ちがっ、そういう訳じゃ……。」

 

パサッと顔に何かを乗せられる。……モスティマの、上着?

くんっ、モスティマの匂いがする。

 

「だ、ダメだ、モスティマ、それ、ダメ、やだ、やめろやめろやんぶっ……!」

 

視界は真っ暗、鼻からはモスティマの匂い、口には上着をかけて空いた指を入れられ、片耳は塞がれて、唯一聞こえる左耳からはモスティマの声がする。

 

「ちゅぷっ。」

 

「おっ……!?」

 

耳に舌を入れられる。

 

「き、きひゃにゃいから、ひゃめろぉ……。」

 

そう言うと余計に舌を奥に捩じ込まれる。

 

「はっ……あ……あ……ぁ……。」

 

「ラック、好きだよ。」

 

それだけ聞こえて、気絶してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・今日の一幕

 

「シルバーアッシュ様、どうなさいました?」

 

「……クーリエ、一つ聞きたい。」

 

「何なりと。」

 

「……私は、おじさんなのだろうか?」

 

「……はい?」

 

「子供のラックに言われたのだ。」

 

「そうでしたか、しかし、子供の言う事ですからあまり気にする事はないと思いますが。」

 

「いや、子供だからこそだ。私を見ておじさんに見えたのだろう。

もう一つ聞くが、お前はなんと呼ばれた。」

 

「……クーリエおじさんと。」

 

「その気遣いは美点だと思うが、包み隠さず教えてくれ。」

 

「これは、失礼しました。クーリエお兄さんと呼ばれました。」

 

「……そうか、くっ!」

 

「……今度、服でも買いに行きませんか?服装だけでも印象というのは変わるので。」

 

「すまない……助かる。」

 

 

 

 







重い話はカロリーを使う上に胃にきます。

ギャグに……エッチにしなきゃ……。

今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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