ベチャベチャの耳のまま起きたのが数日前。
俺は以前と同じように過ごしていた。
「ん、フロストリーフか。おーい。」
談話室で一人でいるフロストリーフに声を掛けるが無視される。聞こえてねぇのか?
後ろから近寄るといつも使ってるヘッドホンから音が聞こえる。音楽聴いてんのか。
でも、上の耳は普通に聞こえると思うんだけどな。
「聞こえてないっつっても無視されるのはちょっとムカつく。」
後ろからこっそり近寄ると脇腹を掴んで上に大きく持ち上げる。
「ほぅら高い高ーいっでぇ!?」
持ち上げた途端に肘が頭に突き刺さる。
たんこぶ出来たんじゃねぇか?
「おまっ、いきなりやる事じゃねぇだろ!」
「後ろから急に持ち上げる方が悪い。」
「そーかよ。んで、何聴いてたんだ?」
「……お前には教えられない。」
「えー、ケチだな。ちょっとくらい良いだろ?」
「絶対にダメだ。」
「うぇー、わかったわかった。」
フロストリーフの座っていた所に座って膝の上にフロストリーフを乗せる。
「いきなりなんだ。」
「癒しってやつだ。たまには優しくしてくれよ。」
両手をフロストリーフの前で組み、頭に顎を乗せる。
こいつは昔から丁度すっぽり入って収まりが良い。
「他のやつに頼めば良いだろう。メランサとか。」
「どうだろうなー、お前よりメランサのが高いんじゃねぇの?」
あれってヒールが高いのか身長なのかわかんねぇ。
頭を撫でながら頬ずりをする。んー、悪くない。
「頬ずりはやめろ、気持ち悪い。」
「そりゃねぇだろ。」
ため息を吐く、ちっこい頃は自分から膝に乗ってくるくらい可愛かったのに……。まあ、今も可愛いがな!
「ただペタンコなだけだよな。」
「……バカにしてるのか?」
「え、口に出てたか?安心しろ、ちっこくても俺は好きだぜ。」
顎に頭突きされた。
「もう良い。……歌え。」
「あん?」
「眠くなってきたから、歌え。」
そういや昔は毎日歌ってやらねぇと眠れなかったっけ。
「じゃあこっち向け。」
「別に、このままで良い。」
「お前、前は抱き着いて歌ってやらねぇと寝れなかったじゃねぇか。」
「もう子供じゃない……が、まあ、お前がそこまで言うなら抱き着いてやる。」
「あー、はいはい。」
向きを変えて抱き着いてくる。
……ちょっと場所が悪いから位置調整。そうしたら背中を一定のリズムでゆっくりと叩く。
「〜♪」
微かに歌声が聞こえてくる、誰か歌っているんでしょうか?
「ドクター、何してるんですか?」
「しー。アーミヤ、あれを見てくれ。」
「あ、この歌声はラックさんですね。」
よく歌っている子守唄だと思って覗き込むとフロストリーフさんを抱っこしているみたいです。
「あの二人、一時期一緒の部隊にいたらしい。」
「そういえば、フロストリーフさんが入った当初は寝不足気味で夜泣きする事もあったって聞いた気がします。」
「そうなのか。」
「きっとロドスに来る前はラックさんが寝かしつけていたんでしょうね。」
「あ、ラップランドが。」
部屋に入ってラックさんの近くに行った途端動きが止まりました。何かあったんでしょうか?
「やあ、ラック!」
「〜♪」
大きな声を出すなと軽く睨むと少したじろぐ。
「う、そんな目で見ないでほしいな。」
大人しくしてろって事で隣を叩く。
「そっちに行けば良いのかい?」
ラップランドが隣に座ると、懐のフロストリーフに気付いた。
「ああ、そういう事だったんだね。じゃあ、ボクも聴こうかな。」
トンっと右肩に頭を預けて目を瞑る。増えちまったな。まあ、歌ってるだけだから良いか。
「〜♪」
「ラップランドも居座ったな。」
「微笑ましいですね。」
まあ、いつものラックとラップランドの関係を考えれば微笑ましいな。
「……アーミヤ、この前ラップランドがラックの事を呼ぶ時「ごしゅっ……ラック」って言い直したんだけど、どう思う?」
「他の方と間違えたんじゃないんですか?」
「まあ、そうかもな。」
仲が良いから間違える事もないはずだろうし。
「次はプラマニクスか。」
「むぅ……?この歌は……。」
この声は……プラマニクスか?
ひょっこりとプラマニクスが顔を覗かせる。
手招きをするとゆっくりとこっちに来ると、眠るフロストリーフを見る。
「良いですね。……私もご一緒しても?」
頷くとラップランドの反対に座って腕を枕替わりに抱く。
フロストリーフが撫でにくくなるが、まあいいか。
「いつもラックの周りには女性がいるが、今日はやたら静かだな。」
「基本的に騒がしいのはラックさんですからね。」
「そうだな。問題を起こす事も多いが、彼のお陰でロドスの雰囲気が明るくなった。」
フロストリーフが誰かに甘えるなんて見た事が無かったしな。
「……私ももっとフロストリーフさんと仲良くなりたいです。」
「今度ラックに子守唄を教えてもらったら良いんじゃないか?」
「そうしてみます……。」
「しかし、ここまで来ると次に誰が来るのかが気になってくるな。」
ん、次は……二人同時か。
「〜♪……ん?」
目を瞑って気分良く歌っていると目の前に気配を感じて目を開くと机を挟んで反対側にシージとテキサスがいて、飴とチョコを食べながら俺をジーッと見ていた。
「気にしないで続けてくれ。」
「ああ、気にするな。」
二人して黙って俺を見てるの怖いんだけど……。
「っ〜♪」
気にしないようにまた目を瞑るとフロストリーフを撫でながら歌う。
すると手を掴まれる。片目を開くとテキサスが手を取ってにぎにぎしていた。
何、してんだ?
「……。」
「……。」
それに釣られたのかシージも手を触り始めた。
なんかむず痒いな……。
「んっ。」
パクリとテキサスが指を咥える。隣のシージが驚いて目を見開く。珍しい顔が見えた、可愛いな。
何度か甘噛みして離す。
「それは……なんだ?」
「なかなか癖になる。」
テキサスが俺の顔、正確には頭の上を見ると、背筋がぞわぞわする。何か知らない間にあったのか……?
「……ふむ。」
気になったのかなんなのか分からないけど、シージも俺の指を咥えた。……お前ら、俺の指はお前らの骨じゃないんだぞ、自分の指咥えろや。
「……思っていたよりも、良いな。」
うっそぉ……。
「あの二人は何をしているんでしょう……?」
「ラックが混乱しているぞ……ただ、歌は止めないんだな。」
「まあ、寝ている人がいますから……。」
そういう問題ではない気がするが……。
「次は誰が来るんだ?」
「ドクター、楽しくなってきてませんか?」
「アーミヤだって見てて面白いだろう?」
「まあ、ちょっとだけ。」
「あれは……シュヴァルツか。」
「〜♪」
どうしよう、動けない。
体がガッチガチに固まってきた。
すると、後ろからするりと腕が首に回された。
「っ……誰だ?」
「私です。どうぞ、続けてください。」
「あ、ああ……〜♪」
あ、でも後頭部がおっぱいで幸せに包まれて良いかも……。
口元が緩むとガリッと痛みが走った。
「……っ?」
「気にするな、続けて歌ってくれ。」
テキサスが噛んでいた指から血が滲み出していた。
「……〜♪」
何やってんのこいつぅぅ!!?
しかも血が出た指まだ咥えてんだけど!?つーかこいつらいい加減指離せ。
やべぇ、冷や汗出てきた。
「大丈夫ですか?」
シュヴァルツがそっと頭を撫でてくる。
頷いて答える。おお、シュヴァルツが優しいなんて珍しいなぁ……。
ゴギンッガコンッという音と共に右腕に鈍い痛みが走る。
「いっ……!?」
ラップランド起きてやがったのか!?こいつ、今肩外して戻したろ!?
「可哀想に。」
頭を抱き締められて撫でられる……が、もう嫌な予感しかしない。シュヴァルツ、もしかしてこれに乗じて俺に仕返ししてないか……?
「シュ、シュヴァルツもう……」
「歌ってください。」
「……〜♪」
「そう、偉いですね。」
怖い怖い怖い!?なんだこいつ!?
トドメ刺しに来たのか!?
テキサスがガジガジと指を噛み、ラップランドが右腕の関節を幾つか外してくる。シージはただ咥えて舐めているだけだ、飴の代わりにかよ。砂糖ぶっ掛けんぞてめぇ。
キョロキョロと周りを見て助けてくれそうな人を探す。……いねぇ!?メランサとか、クーリエとか……こう、常識人枠はいねぇのか!?
「どうする?ラックが焦ってるぞ。」
「どうすると言われても……あそこに突撃する勇気はありません。」
「あ、こっちに気付いた。」
「助けを求めてますけど、どうします?」
「そうだな……放っておいても良いんじゃないか?」
そろそろ仕事に戻らないと、寝る時間が無くなってしまう。
「あ、そうでした。追加の書類がありますよ。」
……寝る時間は無さそうだ。
・今日の一幕
「ラックとー」
「クーリエの」
「「料理教室ー!」」
パチパチと拍手される。
ドクターから料理が出来ない子達に教えてあげてほしいって頼まれたからやる事になった。
今日の生徒はフェンとフロストリーフとカーディとメランサだ。
「クーリエくん、今日は一体何を作るの?」
「……やけくそになってないか?」
「やけ?何変な事を言ってるんだい?さあ、クーリエくん張り切っていこう!」
「コホン……では、本日はシンプルにハンバーグを作ってみましょう。
みなさん、エプロンはちゃんと着けてますね。手は洗いましたか?」
そこからは順々に工程を追っていく、流石クーリエ、教えるのも上手いな。
……さて、俺も仕事しねぇと。
「カーディ!玉ねぎを炒めるのにとりあえず強火にするのをやめろ!」
「ええ、良い感じですよ、メランサ。」
「は、はい。」
「アレンジで変なもん入れようとするんじゃねぇ!」
レシピに無いものを入れようとするカーディに拳骨をする。
「いったぁい!暴力はんた〜い!」
「なら、まずは指示通りに作れっての……。」
「フロストリーフ、この位で良いです。次はこれを混ぜ合わせましょう。」
「わかった。」
「OK、カーディ、せめて左手でボウルを押さえろ。ミンチが跳ねて俺が失明しない内にな。」
ピッと飛んできたミンチが的確に俺の右目を襲ってきやがった。
「うんっ!」
「返事だけは良いなぁ……!!」
「フェン、良い形に成型出来てますね。」
「そ、そうですか?ありがとうございます。」
「……。」
「あ、あわわ……。」
カーディが空気抜きでキャッチし損ねたタネが顔にぶち当たった。
「……カーディ、失敗すんなとは言わねぇから、もうちょっと落ち着いてやれ。」
「お、怒ってない……?」
「少しは怒ってるけど、ちゃんとやってて失敗したなら怒らねぇよ。
いいか、俺が手本見せるからよく見てろ。」
タネを拭ってカーディから少量タネを貰って手本を見せる。
「むう……。」
「……。」
「メランサ、フロストリーフ。美味しいハンバーグを作って驚かせましょう。」
さっきよりもゆっくりとだが慎重に空気抜きをする。
「真ん中に窪み作っとけ。」
「なんで?」
「……なんでだったっけ?クーエリー。」
「なんで講師が忘れてるんだ……火の通りを均一にするのとハンバーグのひび割れ防止ですよ。」
「……だってよ!」
「そうなんだ!」
「はぁ……。」
遂に焼く時がきた。
「強火にすんなよ。」
流石のカーディも黙ってハンバーグを焼く。
「よし。ひっくり返して蓋をするんだ。」
そんで少し放置する。
「ちゃんと出来てるかなぁ……。」
「多分大丈夫だろ。」
手順通りに作ったし、大丈夫なはずだ。
「よし、蓋を開けて、竹串を真ん中に刺せ。透明な肉汁が出てきたら強火で数秒……よし、このくらいだろ。皿に取って……ソースはケチャップとワインで良いか。」
肉の旨みを閉じ込めてハンバーグにかける。
「出来たぁー!」
「やりゃあできるじゃねぇか。」
ぐしゃりとカーディの頭を撫でる。
あー……大変だった。
「ねぇ、最初の一口食べてみて!」
「お、毒味か?」
「もー、酷い!ほら、食べて!」
フォークを向けられる。
「しゃーねぇなぁ。」
出来たてのハンバーグをはふはふと息を吐きながら食べる。うん、ジューシーで食べ応えがあるし、ソースも良い感じ。
「美味いぜ。頑張ったな。」
「うん!」
「ラック。」
「あ?どうしたよ、クーリエ。」
振り返るとフォークを持ってメランサとフロストリーフがにじり寄って来ていた。
「あまり、放っとかないでやってほしい。」
奥に山盛りのハンバーグが見える。
……これ、全部?
「むぐっ……うん、美味いは美味いけど、その量はちょっと……うぐっ!?」
飲み込む端から口にハンバーグが突っ込まれる。
「フェンは誰にあげるんですか?」
「はい、お世話になっているドーベルマン先生やドクター達に渡そうと思ってます。」
「それは良い考えです。」
「あぐっ……もぐっ……ふ、ふひゃりとも、胃もたれが……んがっ!?」
当分、肉は食いたくない……。
最近ネタが尽きてきやした。
ちなみにこの小説に出てくるのはちゃんとうちのロドスのオペレーターですぜ。
今後の読みたいと思う内容
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ラックの過去話や異格イベ等
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このままで構わん