酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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十六話:フィリオプシスは眠りたい/ラップランドは構って欲しい

 

 

 

 

「針の痛みってのはどうにも慣れねぇな。」

 

血液採取が終わって部屋に戻ろうと歩いていると誰か見つけた。

 

「ん?あいつはフィリオプシス?」

 

うーん、ライン生命はちょっと苦手なんだよなぁ……。まあ、話した事ないのに嫌うのもなんだかな。とりあえず声掛けてみるか。

 

「そこのお嬢さん、これから一緒にご飯行かな……い?」

 

「……。」

 

寝てる?あー、いや、待て待て、なんかあったような……。注意事項に……。

 

「ああ、そうか。過眠症だったっけ。」

 

なら、このまま放って置く訳にもいかねぇもんな。

 

「ここからなら、俺の部屋のが近いか。」

 

慎重に背負って歩く。

昼飯は抜きかなぁ。

 

「……あれは。」

 

 

 

 

「ドクター。」

 

「サイレンス?どうしたんだ。」

 

普段冷静な彼女が少し慌てた様子で部屋に入ってくる。

 

「フィリオプシスがあのケダモノに連れていかれたんだけど……大丈夫かな。」

 

ケダモノ?そんな風なオペレーターは……。

 

「まさか、ラックか?」

 

「そう、寝ているフィリオプシスを部屋に連れ込んでいたから。」

 

「大丈夫だと思うが……ああ見えて、強引な手段は……。」

 

いや、前のマタタビの件があるが。

 

「恐らく大丈夫だと思う。気になるならこれから見に行こうか?」

 

「うん、行こう。」

 

サイレンスに急かされてラックの部屋の前に着く。

 

「〜♪」

 

「ああ、やっぱりそうか。」

 

「これは……。」

 

「覗いてみれば分かる。」

 

扉をほんの少し開けて中を見ると、予想通りラックがフィリオプシスに膝枕をして子守唄を唄っていた。

 

「彼は寝ている人がいると基本的にはああやって起きるまで待っているんだ。」

 

「知らなかった……。」

 

「いつもの喋り方と態度で乱暴に見えるが、根は優しいものだよ。」

 

「うん、今は良いかな。

ドクター、良かったらこれから少しお茶でも飲まない?」

 

「ああ、構わない。」

 

さて、良いお茶請けはあったかな。

 

 

 

 

「……んぁ?」

 

寝ていると誰かがベッドの中に入って来た。薄く目を開いて見ると薄暗くて見づらいが多分白髪に見えた。ラップランドかフロストリーフでも来たのか?

 

「……おやすみ。」

 

ポンと頭に手を置いて撫でるとまたすぐに眠気が来た。

 

 

 

 

「ド、ドクター!」

 

「今度はどうしたんだ?」

 

またサイレンスが部屋に来た。今度は何があったんだ?

 

「き、昨日の夜、歩いてたらフィリオプシスが彼の部屋に入っていくのを見たんだ!ま、まさか手を出してるんじゃ……!!」

 

「確かに、二度目となると……しかし、単純に用事があったんじゃないか?」

 

「だとしても夜遅くに行く?」

 

そう言われると確かに……。

 

「じゃあ本人に聞いてみよう。」

 

またラックの部屋に向かうと部屋でのんびりしていた。

 

「ん?よぉ、ドクター。それと……ああ、サイレンスだっけ。どうしたんだ?」

 

「あー、いや、サイレンスがちょっとな。」

 

「フィリオプシスに手を出してない?」

 

「随分直球な質問だな、お嬢さん。

残念だけど、俺にはさっぱりだ。」

 

「嘘吐かないで!」

 

「おいおい、そんな怒らないでくれよ。本当に知らねぇんだから。前に廊下で寝てたからちょっと部屋で寝かせてただけだぜ?」

 

ラックは本当に知らないのか、困った顔をする。

 

「勘弁してくれよ。なあ、ドクター。どうにかならないか?」

 

「そんな事言われてもな……一旦数日待ってみよう。」

 

「OK、その間何も無けりゃ良いんだろ?」

 

「うん、それで良い。」

 

 

 

 

「くあぁぁ……。」

 

ググッと伸びをする。良く寝た。

 

「……ん?」

 

隣が暖かい。でも誰も居ないって事はさっきまで誰かが横で寝てたのか?

 

「……ラップランドかフロストリーフかテキサス?モスティマとかエクシアがふらふら来たのかもしれねぇな。」

 

流石に誰が来たのかまでは分からないからなぁ……メランサくらい特徴があれば分かるんだけど。

 

 

 

 

「ドクター!」

 

「……またか?」

 

バタバタとサイレンスが入って来る。もう慣れた流れだ。

とりあえずラックの部屋に行ってみよう。

 

「待て待て、冤罪だ。」

 

「とは言ってもサイレンスが見ているらしいからな……。」

 

「……そういえば、最近誰かが寝てる間に布団の中に入ってる感じがする。」

 

「寝てる間に?」

 

「ああ、まあそこまで気にしてなかったから忘れてた。

それよりそっちのサイレンスをなんとかしてくれ。視線だけで殺されそうだ。」

 

「サイレンス、落ち着いてくれ。

すまないが、カメラを設置させてもらっても良いか?寝ている間だけでも構わない。」

 

「それで疑いが晴れるならいくらでも仕掛けてくれ。」

 

ラックがため息を吐いて肩を落とした。

 

 

 

 

「……に……ます。」

 

ん……?また誰か、入って来た?

確認しようと思ったけど、暖かいさと落ち着く匂いに眠気を誘われて、そっと抱き締めて眠りについた。

 

 

 

 

「さて、見てみるぞ。」

 

じっと画面を見つめるサイレンスとまだ眠そうに欠伸をするラックの三人で録画を見始めた。

 

「まだ寝ているな。」

 

「眠かったからな……あふっ。」

 

「……待って、誰か入って来た。」

 

これは、フィリオプシス?

 

『これより、ディープスリープモードに……入ります。』

 

画面の中のフィリオプシスは掛け布団を捲るとラックの横に寝転がった。

 

『んぁ……誰?……まあ、いいや。』

 

ラックも眠いのか気にせずに寝ていた。

 

「な?俺悪くねぇだろ?」

 

「……そうみたい。」

 

「そうだな。それにしても何故フィリオプシスが?」

 

「俺に聞かれたって知らねぇよ。本人に聞いてくれ。」

 

「それもそうだな。」

 

 

 

 

「フィリオプシス、少し良いか?」

 

「こんにちは、ドクター。サイレンスさんにラックさんも。」

 

フィリオプシスはいつも通り部屋にいて、不思議そうにこちらを見る。

 

「聞きたいんだが、最近夜にラックの部屋で寝ているようだが、何故だ?」

 

「教えて、フィリオプシス。」

 

「何故?……近くにいると、心地良いからでしょうか。落ち着きます。」

 

「なるほど。しかし、それなら寝た後に行かなくても良いだろう?」

 

「眠気が訪れる時がたまたまその時なだけです。」

 

「……紛らわしいな。」

 

サイレンスも呆れていた。

 

「なあ、フィリオプシス。俺だって美人さんが来るのは大歓迎だけど、せめて起きてる時に来て欲しいんだけど……。」

 

「では、次回からはそうします。」

 

「あー、次があるのは確定なんだな。まあいいや。」

 

ラックが困ったように頭を掻く。珍しいな。

 

「んで、サイレンス。疑いは晴れたか?」

 

「今のところは、そうだね。」

 

「そりゃあ良かった。」

 

なんとか仲直り出来たようだ。

これで一件落着だな。

 

 

 

 

「……うぅ。」

 

重い……誰だ上に乗ってんのは。またフィリオプシスか?寝てる時に来んなつったのに……。

 

「フィリオプシス……ちょっと退いてくれ。」

 

「アハハ……笑えないね。誰と間違えているのかな?」

 

スパッと目が覚める。

フィリオプシスかと思ったらラップランドが上に乗っていた。

 

「よぉ……ラップランド。」

 

「やあ、ラック。最近よく一緒に寝ている子がいるらしいじゃないか。」

 

「寝ている、じゃなくて寝られてるってのが正しいけどな。んで、どした?まさかお前も一緒に寝たいって口か?」

 

「そうだよ。昼の間は色んな子がラックの近くにいるからね。じゃあ夜の時間をもらおうかって事さ。」

 

「ああ……そう。悪ぃけど、最近仕事が多くて疲れてるんだ。静かにしててくれ。」

 

左手を背中に回して右手を後頭部に廻して抱き寄せて動かないようにする。人肌が心地良い。こりゃ丁度いい抱き枕代わりになるな。

 

「ちょ、ちょっとラック。急になんて……。」

 

声が跳ねてるけど俺は眠いんだ。

 

「……ぐぅ。」

 

「……構ってくれないのかい?」

 

とん、と胸に軽く叩かれた気がした。

 

 

 

 

目が覚める。

 

「……良く寝た。」

 

寝過ぎて頭が痛いくらいだ。

そういや、昨日確かラップランドが来たんっけ。

 

「あれ、いねぇや。」

 

ふらっとどっか行ったのか?

まあ、あんまり考えてもしゃーない。今日は休みだし、のんびりさせてもらおう。

 

 

 

 

「グムー、カレー頼むわ。」

 

「任せて!」

 

グムからカレーを貰ってテキトーに座って食ってると白い影がチラつく。

 

「……?」

 

ラップランドかと思って見ると誰もいない。

 

「……気のせいか?」

 

あいつだと突撃してくるから気のせいだろ。

 

 

 

 

「……?」

 

歩いていると気配を感じて振り返る。

 

「また誰もいない……。」

 

直前まで誰かいた気がすんだけどなぁ。

 

「鈍ったか?」

 

レッドが監視してきてる可能性もあるけど、どうだろ。

 

 

 

 

「おぅい、アズリウスー。ケーキ食いに来たー。」

 

「あら、お待ちしておりましたわ。」

 

目の前に皿が置かれる。いつもながら配色が絶妙だ。しかし味は美味いんだよなぁ。

 

「ん、美味い。」

 

「では、こちらのモンブランも。」

 

なんでモンブランが青いんだろ。……着色料使ってないんだよな?

 

「でも美味いんだよなぁ。」

 

「どうかしました?」

 

「んにゃ、なんも。」

 

美味い美味いと食っているとまた視界の端にチラつく。

 

「……なんなんだ。」

 

ため息を吐いてモンブランを食べた。美味い。

 

 

 

 

「テキサスー。」

 

「なんだ?」

 

「ラップランド見てないか?」

 

鼻も良いし、今日会ってるかもしんねぇ。

 

「それなら……いや、なんでもない。」

 

「おい、なんで止めた。」

 

「……気にするな。」

 

わざとらしく目をそらす。

 

「今度美味いチョコパフェの店連れてってやる。」

 

そういうとテキサスの尻尾がピンと立ちふるふると小刻みに震え始めた。

 

「し、しかし……。」

 

「期間限定ポッキーも付けてやるぞ。」

 

「くっ……すまない!」

 

……逃げられちまった。自分で探すしかねぇか。

 

 

 

 

「……あんの馬鹿。」

 

どこにもいねぇし。

誰に聞いても教えてくれねぇ。めんどくせぇ。

 

「まあ、勝手に出てくんだろ。」

 

にしてもずっと視界のどこかでチラついてんのになんで見つかんねぇかなぁ。構ってちゃんめ。

 

「おーい、ラップランド。何か文句あんなら出てこいよー。」

 

ベッドに転がって呼んでみる。

いつも通り目の端に見えてそっちを向くと今回はちゃんとラップランドがいた。

 

「やっとか。んで、構ってちゃんなラップランドは何がしたいんだ〜?」

 

わしゃわしゃと撫でるとちゃりっと音がした。

ラップランドの手に首輪があり、それを自分の首に着けると、リードを俺に渡した。

 

「え”っ……。」

 

「さあ、散歩に行こうじゃないかご主人様?」

 

「待て待て、どうしてそうなった。」

 

「構ってくれるんだろう?」

 

「いや、そうだけど……ああ、わかった。やりゃいいんだろ。」

 

「よし、行こう。安心して、遅くならないようにちゃんと歩くし、服も着てるから。」

 

ちゃんと歩かない場合があるのか……え、四つん這い?いや、考えない方が良さそうだ。しかも脱ぐ場合があるのか……まずい、ちょっと興奮してきた。

 

「しゃーねぇなぁ。」

 

「「あ。」」

 

んじゃ、行くかと、ラップランドが先に扉を開けた先に、ドクターとアーミヤがいた。

 

「……ラック、何をしているんだ?」

 

「ラップランドさん、どうして首輪を……?」

 

「ふふっ、ご主人様と散歩さ。」

 

ばっ……!その言い方はまずいだろ。あー、考えろー……いい言葉が、閃いた!!

 

「ふっ……そういう、プレイなんだ。」

 

馬鹿野郎。

言葉を絞り出すとラップランドを抱き抱えて走る。

 

「馬鹿じゃねぇの!?なんで俺があんな苦しい言い訳してんだよ!?俺も馬鹿か!?」

 

「どうして逃げるんのさ、見せつければいいじゃないか。」

 

「間違いなくチェン辺り呼ばれて御用だっての!」

 

ある程度逃げて座り込む。散歩ハードモードに突入したぞ。

元凶のラップランドは呑気に膝の上で甘えてくるし。

 

「こいつ……甘えたって撫でるくらいしかしてやんねぇかんな。」

 

呆れながら撫でる手が軽くから最終的にわしゃわしゃと全力で可愛がる撫で方に変わっていく。

 

「おー、ラップランドお前戦ってない時は本当に可愛いなぁ。」

 

……変な性癖目覚めそう。

そんな事をしているとコツンと音が聞こえた。

 

「て、テキサス。」

 

「……一応聞くが。何をしていたんだ?」

 

「ふふ、ただの触れ合いさ。ペットとご主人様のね。」

 

頬にキスをしてくる。だからお前言い方なんとかしろよ。

 

「そうだ、テキサスもペットになろうよ。うん、それが良い!」

 

「おいこら、共犯者を増やす……いや、リスクの分散が出来るか?」

 

ラップランドを見ていた目がキラリとテキサスを捉えた。

 

「ゴー!ラップランド!」

 

「フッ、任せてよ。」

 

飛び跳ねるようにラップランドが動き、テキサスを相手取る。

その間にちょろっと後ろに回って……。

 

「くっ……!」

 

「久し振りにやろうよ!」

 

「いや、やるなよ。」

 

ぐわしっとテキサスの耳を後ろから鷲掴みにしてコリコリと弄る。

 

「……っ!?」

 

「よ〜し、テキサス。落ち着けよ。」

 

ふははは、ループスの耳と尻尾はサンクタの輪と羽と同じくらいっての知ってんだからな。

 

「今だラップランド!」

 

「ああ!」

 

カチャンと首輪とリードがテキサスの首に着いた。

 

「……。」

 

「よし、これでテキサスと共犯者だな。」

 

「何故私まで……」

 

「まあまあ、こうしなきゃ俺らだけチェン達に捕まっちまう。だからおと……仲間が必要だったんだ!」

 

目を見て真摯に答える。

 

「いや、こんな事の仲間にはなりたくない。」

 

「あれ……?」

 

想定では感極まって仲間になってくれるはずだったんだが、何がいけなかった。

 

「まあ、いいか。とりあえず連れて行こう。」

 

「……好きにしてくれ。」

 

疲れているのか、ため息を吐く。ペンギン急便は荒事が多いからな。疲れるんだろう。決して今の状況に対してため息を吐いた訳じゃないだろう。

しゃーないと横抱きにする。

 

「よし、なるべく人に見つからないように行くぞ。」

 

しかし、散歩と行ってもどこに行くかも決めてないし、目標を決めよう。

 

「あ、そうだ。甲板に行こう。今日は晴れてるから星も見えるだろうし、夜なら風も気持ちいいだろ。」

 

そう言って動き出そうとすると服を掴まれた。

 

「っととと、ラップランド?」

 

「ボクも。」

 

「は?」

 

「ボクもそれしてほしい。」

 

「後でな後で。」

 

「嫌だ。」

 

「駄々こねるなよ。後なら良いから、な?」

 

そう言うと不貞腐れて座り込んで動かなくなってしまった。

 

「あー、分かった。やりゃ良いんだろ。」

 

テキサスを横抱きから片手で抱えるようにするともう片方の手を差し出すと嬉しそうに抱き着いてきた。

 

「ははは、なかなかだな……!!」

 

お前ら、女の子だからって羽のように軽い訳じゃないぞ。

 

「さあ、行こうよ。」

 

「……。」

 

「好き勝手しやがって。」

 

ラップランドがゴーゴーと手を突き出して、テキサスが拗ねてお菓子を食べている。

 

「行くぞお嬢様達ー。」

 

少し持つ位置を整えて歩き出す。

誰にも会わずに行ければいいなぁ〜。

 

「……っとぉ。」

 

「こんな時間に、何してるのかと思ったら……。」

 

「よぉ、サイレンス。奇遇だな。

んじゃ、散歩してっからここらで。」

 

えっほえっほと小走りで逃げる。

 

「やっぱり、ケダモノ……!」

 

「やべっ。」

 

走りづらいから肩に乗せて走り出す。

 

「うっ……!?」

 

「げほっ……!」

 

「我慢しやがれ!」

 

腹が肩に当たって痛いだろうけど、許せよ。湿布なら後で貼ってやるからな!

 

「ふぃ〜、なんとか逃げ切れたし、もうちょいで甲板か。」

 

「もっと優しく運んでほしいな。」

 

「……苦しい。」

 

「悪かったって。今度デザート奢ってやっからそんくらい許せや。」

 

軽く叩かれて抗議されようがテキサスはともかく、ラップランドは我慢しろ。

 

「そら、着いたぞ。」

 

ん〜……風が気持ちいいな。それにやっぱり星がよく見える。

 

「満足したか?テキサスも悪かったな。」

 

「ふふ、そうだね。今日はこのくらいで満足してあげるよ。」

 

「まあ、良い。ただ、デザートは約束だ。」

 

「はいはい。んじゃ、戻るか。」

 

「そうか、楽しかったか?」

 

ガシッと肩を掴まれる。おーっと……?

 

「こんばんは、チェン。お前も散歩か?今日は星がよく見えるからな。風邪引かない内に戻れよ。」

 

「チャージ。」

 

「なんだリスカムも一緒にいたのか?ロドスの警備の話でもしてたのか?真面目なのは素晴らしいが夜更かしはお肌に悪いぜ。」

 

「投降してください。」

 

「……そら、逃げろ!」

 

そう言った瞬間ラップランドとテキサスが腕の中から飛び出して振り返りもせずに逃げ去って行った。

 

「……え?見捨てるの?」

 

え、ラップランドの我儘でここまで来たのに?

 

「マジ?」

 

「今のうちに言い訳を考えるんだな。」

 

「ちなみにカツ丼って出る?グムに連絡すれば良い?」

 

「こんな時間に出る訳ないだろう。」

 

「早く行きますよ。」

 

手錠を手に掛けられる。

 

「喜べ、お前の好きな女性と話せるぞ。」

 

「わぁ、嬉しい〜。ベッド行く?」

 

「はっ。」

 

「バカも休み休み言ってください。」

 

酷い言い様だ。短かったら良いなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

・今日の一幕

 

「ほれほれほれほれ。」

 

「……。」

 

あれからちょっと動物プレイみたいなのにハマってしまって、今はメランサの目の前でねこじゃらしを振っている。

 

「…………にゃ。」

 

ぺしりとメランサがねこじゃらしを叩いた。

 

「よーしよしよしよしよし!」

 

褒めるように撫でるとやや不満げだけど笑顔になる。やはり良いな!

次行ってみよう!

 

 

 

 

「るーるるるるー。」

 

「また変な事を……。」

 

シュヴァルツが溜息を吐く。なんてやつだ。ただ俺はねこじゃらしを降ってるだけなのに。

 

「ぉうっ……!」

 

鼻を指で弾かれる。やっぱりシュヴァルツにはダメかぁ……次!

 

 

 

 

「うりうり。」

 

目の前で転がるシージにねこじゃらしを振る。アスランだけどライオンだし、ネコ科だからいけんだろ!

 

「これは、必要な事か?」

 

「俺にとっちゃ必要なこったな!」

 

どうだと振り続けると咥えていたロリポップを俺の口に突っ込むと寝始めた。

ふぅむ、次で最後にしとくかな。文句言われそう。

 

 

 

 

「ちちちちちちっ。」

 

「あの、ラックさん?」

 

仕事をしているアーミヤの目の前でカットした人参を振る。

 

「どうしたCEO様。」

 

「これは何をしているんですか……?」

 

「おかしな事聞くなぁ。これは人参だ。」

 

「それは知ってます!私が聞いてるのはどうして人参をむぐっ。」

 

長くなりそうだから問答無用で口に突っ込む。

 

「むぐむぐごくん……もう!急に入れないでむぐっ、だからもぐっ、やめてむっ。」

 

「よ〜しよし、偉いな〜。」

 

文句を言っても口の中に人参を入れると口の中が無くなるまで喋らないのは育ちの良さか?

 

「むう……。」

 

不満そうにカリカリと人参を頬張る姿はいつものCEOとしての姿ではなく一人の少女として見えた。

 

「休憩って事で許してくれ。後でこき使ってくれて良いからよぉ。」

 

「……仕方ないですね。」

 

おっ、許された。

今度は少し口から離すと食い付いてきた。やっぱ人参が好きなんだな。そう思いながらエサ……じゃなくて人参を持ってない手で頭を撫でる。

そうそう、こういう反応欲しかったんだよ。

そうやってちょっとず〜つ座ってる場所を膝の上に移動させて餌付けする。

 

「ふへっふへへふぅへへへへへへへっ……!」

 

「ふぅん、楽しそうだね。」

 

「もう超楽しい。」

 

「ふぅん……へぇ〜。」

 

「……んぁ?」

 

誰と話してんだろうと振り返るとつまらなそうな顔のモスティマがいた。

 

「……っすぅー…………よっ、モスティマ!」

 

凍える視線ってのはこんなもんなのかな?

 

「アーミヤ、コレ貰ってくね?」

 

「むぐもぐ、あ、はいっ。」

 

「あ、これ残りの人参ね。晩飯入らなくならないように程々にしとけよ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「ほら、行くよ。」

 

襟を掴まれて引き摺られながらアーミヤに手を振る。どこに連れてかれるんだろう。

 

 

 

 

「はいこれ。」

 

「……はい?」

 

モスティマの部屋に着いて渡されたのは犬のつけ耳と付け尻尾に首輪だった。

 

「見ての通りだよ。聞いたよ?こういうの、好きなんだよね?」

 

「いや、好きなのはこっちじゃなくて。」

 

「好きなんだよね?」

 

「めっちゃ好きなんだわー!俺一回試しに飼われてみたかったわー!」

 

ちゃちゃっと全部装備する。

 

「わんわん!っしゃ!解散。」

 

「……。」

 

「んげっ!?」

 

首輪に付いていたリードを引かれてすっ転ぶ。

 

「何しやがる。」

 

「こっちの台詞さ。何ペットが勝手にどこかに行こうとしてるの?」

 

「ははは、ペットにも自由ってのはあるもんだぜ?」

 

「うちはうち、よそはよそだよ。」

 

横暴だぁ。

ぐいぐいと引っ張られでベッドの前まで四つん這いで向かう。

 

「はい。」

 

「……?」

 

モスティマがベッドに転がる。何のサインだ?

 

「察しが悪いなぁ。上に来て。」

 

言われてベッドの上に乗るとリードを引かれて顔の目の前までいって目を合わせる。

惚れた顔が目の前に来て、その綺麗な瞳に目が震えてしまって逸らすと、頬を両手で挟まれた。

 

「ねぇ、私を見て。」

 

「も、モスティマ?」

 

震える目で見ると天使が微笑んでいた。

 

「……こいつは目に毒だぜ。」

 

「ふふ、それでもちゃんと見てくれるラックの事が好きだよ。」

 

ガツーンとハンマーで頭を殴られたみたいな衝撃が走る。その顔でそれはズリィよ……。

 

「……やっぱお前の顔好きだわぁぁぁ。」

 

「顔だけ?」

 

「……全部。」

 

おいおい、年甲斐も無くきゅんきゅんしちゃうぜマジで。

 

「今日は二人でのんびりしちゃおっか。」

 

「そうだなぁ……。」

 

頭をモスティマの胸に乗せられる。……?これ、男女逆じゃねぇか?

 

「おい、俺が下になる。」

 

「えー、ダメ。今ラックは猫なんだから、もっと甘えてくれないと。」

 

そう言って抱き締めて頭を撫でられる。

 

「……しゃーねーな。」

 

ぽふっと大人しく胸に乗ると目を瞑る。

あ〜、いい匂い……勃ちそうだわ。

 

「なぁ、モスティマ。」

 

「今日はダメ。我慢して。」

 

「ケチだな。」

 

あ〜、でも眠くなってきたかもしんねぇ。

規則的に叩かれる背中と撫でられる頭の感触が余計に眠気を誘う。

もう、ダメだ。

 

「おやすみ、いい夢を。」

 

 

 







今回の後書きは軽く次回予告


「エクカクゥ!!」

「ラックゥ!」

「「うおおおおおおぉぉぉくらえぇ!!!」」


ギャグ回です。

今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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