酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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二話:料理上手はモテるはず

 

「くあぁ……。」

 

頭の痛みで目を覚ます。そうだ、昨日は食堂で酒飲んで寝落ちしたんだっけ。ありゃ、パンイチだ。服がどっかいっちまってる。

ホシグマやチェン、エンシオと飲み比べしていて潰れたんだっけ。

あいつ、オペレーターとしての名前はシルバーアッシュで登録してるからこんがらがるんだよ。

チッ、妹の事になると熱くなりやがって、今度妹系風俗の名刺を懐に入れてやろう。

 

「誰もいねぇ……。」

 

あいつら酒強いな。俺もそれなりに飲めると思ってたが上には上がいたか。

起き上がると厨房の方から何かが割れる音がして、何事かと見ると顔色を悪くした……そう、グムが地面に座り込んでいた。

 

「おい、体調悪いのか?」

 

「あ……だ、大丈夫だよ。それよりもみんなの朝ご飯作らなきゃ。」

 

俺の荒っぽい喋り方のせいか少し引き気味に断られる。でもその状態で料理したら怪我をしそうだ。

 

「しゃーねーなぁ。

グム、朝食のメニューは?」

 

「え……?」

 

「メニューを聞いてんだよ。」

 

「あの、えっと、鮭の塩焼きとお味噌汁と納豆、だよ。」

 

目を丸くして答えるグムにサッとどこかから取り出したエプロンを着ける。

 

「ふっ……俺に任せておけ。」

 

不安そうな目で見られた。

 

 

 

 

「ん?みんなどうしたんだ?」

 

朝食をアーミヤと食べに来たら食堂が妙に静かだった。

いつもは元気よくグムが配膳して、好き好きに喋りながらだからそれなりに騒がしいはずなんだが……。

 

「ドクター、これを見てください。」

 

アーミヤが張り紙を見つけて俺はそれを見るとこう書いてあった。

 

『セルフサービス、勝手に食え。

それと今日の朝飯は静かにしてろ。

 

代理担当 ラック』

 

そうして見ると、ラップを掛けてある鮭の塩焼きや、大きな炊飯器と鍋が置いてあった。

 

「肝心のグムは……。」

 

そう言いながら辺りを見渡しているとペンギン急便の面々がやってきた。

 

「お腹すいたー!ごはーん!」

 

「腹減ったわー!」

 

騒ぎながら食堂に入って来たエクシアとクロワッサンの顔の横を掠めてナイフとフォークが飛んできた。

 

「うひゃあ!?」

 

「どぅわっ!?」

 

飛んできた方向を向くと、ラックが長椅子に座って本を読んでいた。

よく見ると膝でグムが眠っており、片手で撫でながら子守唄のようなものを唄っていた。

器用なものだ。しかし彼はなぜ裸エプロンなのだろう?

 

「しー……。」

 

ラックが口元に指を当てて静かにするようにとジェスチャーをしてきた。

エクシアとクロワッサンが大きく頷く。

なるほど、張り紙の意味がわかった。

 

「アーミヤ、グムを起こさないようにあっちで食べようか。」

 

「そうですね。」

 

味付けはいつもと違うが美味しかった。

意外にも彼は料理が上手なようだ。

 

 

 

 

グムが倒れた次の日、俺はドクターの執務室へ来ていた。安心してくれ、服は着ている。

昨日は昼晩をクーリエやマッターホルン等の料理上手い組に任せて一日中グムの看病をしていた。

途中でズィマーが怒鳴り込んで来た時は焦ったもんだ。

 

「おいこら、ドクター。料理当番くらい決めろや!」

 

ドアを開けて開口一番そう言うと中にはドクターの他にエンシオとチェンもいた。

 

「うげ、エンシオ。」

 

そう言うとエンシオも顔を顰める。

 

「ああ、そうそう。その話を今していたんだ。

まずはラック、昨日はグムの看病と代理助かったよ。

君の言う通り、当番制にする事にした。出来ない人に時間があるときにちょっとずつ覚えてもらう事も考えている。

ああ、ラックも当番だから逃げないでくれ。」

 

うげ、自分で言ったことだけどめんどくせぇ。

 

「はんっ、あんなの気まぐれに決まってんだろ。恩を今のうちに売ってから仲良くなって「失礼しまぁす。」おにゃんにゃん……するために……。」

 

ひょっこりとグムが扉を開けて入ってくる。

部屋の空気が完全に死んだ。

 

「貴様……。」

 

「やはりここで捕まえるべきか……。」

 

「なになに?おにゃんにゃん?もしかして猫ちゃんと遊ぶの?」

 

じゅ、純粋……!

三人の方を向くと全員が顔を手で押さえていた。そうだよな、眩しいよなぁ……。

 

「そう……なんだよ!やっぱ一人で猫カフェに行くのは恥ずかしいって話をしてたんだよ!

良かったら一緒にどうだ!?」

 

「グ、グムで、良いの?」

 

「もちろん、どうかな?レディ。」

 

手を差し出すと後頭部を二人に殴られる。ぶっ飛ばすぞてめぇら、後で泣かす。

 

「え、えへへ……じゃあ、お願いします。」

 

顔を赤らめて差し出して手を握った。

フゥーー!!フゥフゥ!昨日の献身的な看病のお陰で好感度爆上がりかぁ!?その日のの夜はベッドの上で運動会でもするかあ!?

後ろを向いてドヤ顔をかますとエンシオの指が目に突き刺さった。

 

「ガァァアアア!?!?」

 

目が、目がぁぁ!?こいつ許さねぇ!

踵でエンシオの足の小指を踏み付ける。

痛みに悶える大人が二人いた。

 

「んんっ!ところで、グムは何か用事があったのか?」

 

空気を変えるために咳払いをして言うとグムが小さな袋を取り出した。

 

「えっと、昨日のお礼がしたくてラックさんを探してたの。そしたらドクターの所に行ったって教えてもらったから来ちゃった。」

 

ふっ、これがモテる男の性か……。

 

「ありがとう、大切に頂くぜ。」

 

鼻で笑ってエンシオを見る。

 

「それと、みんなもお菓子どうかなって思ってたくさん持って来ちゃったの!」

 

エンシオに鼻で笑われた。

その後みんなでお茶会でもしようという話になって、ドクターが紅茶を淹れてくれた。

 

「聞きそびれていたが、シルバーアッシュとラックはどうして仲が悪いんだ?」

 

ほーう?今それを聞くかドクター。

 

「良いだろう、俺が誇張抜きで話してやる。」

 

ほわんほわんほわんほわわわ〜ん。

 

 

 

 

そう、あれはシルバーアッシュ家に配達に行った時の事だ。

 

「ほぉ〜、でっかい家。正にボンボンって感じ。」

 

シルバーアッシュの当主であるエンシオに直接の配達が終わって、帰る最中、あまりに広い屋敷の中で迷子になってしまったんだ。

 

「おいおい、ここどこだよ……。」

 

この時の俺はテキトーにドアを開けて、屋敷の人がいれば案内してもらおうと思ってドアを開けると、丁度エンヤが着替えていた所に入ってしまった。

 

「あなたは……。」

 

こりゃあナンパするしかねぇと思った俺は早速彼女の手を取った。

 

「おお、麗しい方よどうか私と一晩の恋に落ちませんか?」

 

「……困ります。」

 

「申し訳ない。しかしながらこの私の胸の熱があなたを求めて止まないのです!」

 

オロオロと困り果てたエンヤを見て俺は押せばいけると確信していたんだが……。

 

「ドアが開いたままになっている……ぞ。」

 

たまたま通りかかったシスコンに見つかって追い掛け回された。

それからと言うものの、配達の依頼は来ても終わったら即追い返されるようになってしまった。

まあ、めげずにエンヤとエンシアに会おうとしたけどな!

 

 

 

 

「まあ、こんなもんか。」

 

エンシオが頷いて同意する。

 

「……それはラックが悪いんじゃないか?」

 

「おいおい、ドクター。男として肩を持ってくれても良いんじゃねぇのか?」

 

「グムもそれは良くないと思うなぁ。」

 

「ふっ、女の子には分からない事さ……。」

 

ポスリとグムの頭に手を乗せる。

 

「じゃあチェンとは?」

 

「酒飲んで全裸で龍門走ってたら捕まった。

気が付いたら取り調べ室に入ってたな。」

 

「信じられるか?捕まってる癖に口説いてきたんだぞ。」

 

「美人がいるなら口説いてなんぼだろ。どうだ、これから俺の部屋でじっくりとだな……。」

 

手を握ろうとすると避けられる。

 

「むぅ!!」

 

「いででででっ!?耳引っ張んじゃねぇよ!」

 

グムが拗ねて耳を引っ張ってきた。

 

「さっきグムをデートに誘ったのにそれは無いと思うな!」

 

ふむ、一理ある。

 

「それは悪ぃな。許してくれ。」

 

優しく撫でながら囁くように語り掛ける。

 

「しょ、しょうがないなぁ……ほら、折角クッキー焼いたんだから食べて食べて!」

 

チョロいもんよ。

 

「無垢な少女に対して下衆な男だ。」

 

「悪い男に騙される子のサンプルとして使えそうだ。」

 

「顔が悪どい。」

 

うるせぇ。

 

「こんなやつら放っておいて猫カフェ行こうぜ。」

 

「あ、待って待って!せめてならオシャレして行きたいな!」

 

「おいおい、今のままでも充分可愛いぜ。もっと可愛くなっちまったら心臓がドキドキで止まっちまう。」

 

ふっ、と顔を背けて言う。

 

「え〜!も、もう、照れちゃうよ!」

 

照れ照れと顔を隠す。

 

「演技力は中々あるな。」

 

「胡散臭いがな。」

 

「ちょっと様になるのがムカつく。」

 

お前らポップーコーン食いながら映画でも見てんのか。

 

「さあ、行こうぜ!」

 

「あ、う、うん!!」

 

グムの手を引いて走り出す。

俺には見えるぜ、ピンク色の未来が!!

 

 

 

 

「どうする?」

 

「あのままだとグムがあの男に誑かされるぞ。」

 

「うーん、流石に放っておくのは出来ないから、何人かに見張っててもらう事にしよう。」

 






気分が乗るとペースが上がりますな。


今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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