酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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二十三話:気合い!入れて!いきます!!

 

 

 

 

 

「ふんふんふーんふんふんふーん。」

 

今日は何をしようかとタバコを吸う。モスティマでも探してみようか。

 

「……あなたは。」

 

「あ?……げっ、スカジ。」

 

こいつは苦手だ、なんか雰囲気とか。

 

「あなた、前に見た事があるわ。」

 

「そうかよ。俺は無いぜ。」

 

「一人でモンスターと戦っていた。」

 

「……待て、お前それ結構前じゃねぇか。」

 

トランスポーター二年目くらいの時だぞ。

あん時は酷かった。配達してたら触手のバケモン出てくるんだもんな。後から聞いたら立ち入り禁止区域らしかったし。

 

「それにありゃ戦いなんてもんじゃない。ただ、逃げる為に銃撃ってただけだ。

あんな怪物、俺じゃアーツ無しには戦えねぇわ。」

 

いや、今なら小細工含めりゃ多少戦えるか?

 

「あなたの事、気になるわ。」

 

「そりゃあ嬉しい。そんならこれから部屋までどうだ?」

 

「行くわ。」

 

……?なんか変だぞ。ちゃんと会話出来てるのにそうじゃないような。

 

「なぁ、どういう風に気になってるんだ?」

 

「変な事聞くわね。ハンターとしてあなたの力量が気になるのよ。」

 

「言葉が……圧倒的に足りてない!!」

 

マジかこいつ。

 

「な、なぁ、これから部屋って聞いてどう思った?」

 

「戦うか話をするんじゃないの?」

 

「うっそぉ……。」

 

こいつ脳筋かよぉ!?

 

「OK、戦うにしても訓練室行くぞ。……戦わないって手は?」

 

「……あまり、ないわね。」

 

「マジかよ。」

 

 

 

 

「よっしゃ、準備いいか?」

 

「いつでも。」

 

んじゃ、遠慮なく。

口から煙玉を吐き出して、鞘に納めた刀を握る。

 

「先手必勝!ん〜……真空刃的なやつ!!」

 

溜めに溜めて抜き放つと、空気の層を割りながら剣閃が向かっていく。

 

「持ってきな!」

 

振り切ってすぐに銃を構えて回避先に銃弾を置くように撃つ。ちったぁダメージ入んだろ?

 

「ふっ……!」

 

「……は?」

 

一閃。それだけで渾身の力で放った剣閃がかき消された。

 

「バッキャロー!?んなのアリかよ!?そこは多少なりとも食らっとくとこだろ!?」

 

マガジンを入れ替えながら懐に飛び込む。

あれがダメなら遠距離はもれなく意味無いだろ。なら、至近距離でやるしかねぇわ。

 

「はぁ!」

 

「そいっ!」

 

体を逸らして躱す。ただ剣振っただけでこんな風圧とかナメてんのか!?

こりゃ、ダメだ。手数でいってみるか。

銃と刀を納めて投げナイフを両手に持つ。

 

「はっ!せいっ!あらよっとぉ!」

 

……ダメだな、見られてる。やべぇ、当たる気がしねぇぞ。

一瞬動きが止まった隙にスカジが剣を振る。

 

「こいつで……!?」

 

いつもみたいに足の裏で受け止めた瞬間、嫌な予感がして肩を蹴って後ろに跳ぶ。

 

「……マジかよ。」

 

靴底が斬られてやがる、後一歩遅ければ片足が無くなってたぞ。

 

「どうすりゃいいんだよ!」

 

銃で牽制するけど、持たなそうだなぁ……訓練だから特殊弾を使う訳にもいかねぇし。

 

「話してばかりじゃダメよ。」

 

「くっそ!?」

 

スカジが銃弾を弾きながら駆けてくる。

大きく振りかぶって剣が振られる。まだいける。

 

「あ、嘘!無理!!」

 

一瞬下がり手持ちのスキレットから酒を口に含む。

 

「終わりね。」

 

「ぶっ……!」

 

ライターに火をつけて、火に向けて酒を吹き出してちょっとした火炎放射をする。

 

「って、怯まねぇのかよ!くそったれ!」

 

反射的な行動とかねぇのか?

伏せるように避けて足元を斬り払う。

 

「意外とやるわね。」

 

「そりゃどうも!」

 

スカジが軽く跳ねて剣を振り下ろす。刀で受けたが……刃が欠けたか、また見てもらわねぇと。

 

「その剣、何で出来てるんだ!?」

 

「聞かないことをおすすめするわ。」

 

「いっ!?」

 

横っ腹を蹴り飛ばされる。あのまま刀が折れるまでやるよかマシか。

 

「いっつぅ……。」

 

「今度こそ、終わりかしら?」

 

「なんのなんの……!」

 

刀を左下に構えると息を止める。いつでも来い。

 

「今度は何を見せてくれるの?」

 

スカジの振り上げよりも少し早く動き出す。

 

「……!」

 

やっと動揺を見せたか。しかし、剣を弾くなりダメージを与えられりゃいいんだけど……。

 

「くっ……!」

 

……あれ?対応してきてない?どんどん動きが合わされていってる気が……。

少し苦しそうな顔が涼しい顔に変わっていく。

このままじゃやられるけど、動きを止めてもダメだ。……詰んでね?

 

「どうしたの?動きが鈍ってきたわよ。」

 

喋る余裕まで出てきやがる。

腕も震えてきたし、息も切れてきた。

 

「……そこね。」

 

「しまっ……!」

 

刀を弾かれて大きな隙が出来る。スカジの剣が首に迫る。

やばい、これは、止まらない。

首に剣が触れる寸前、いつの間にか後ろに下がって抱きかかえられていた。

 

「……私のラックに何をしているのかな?」

 

「も、モスティマ?助けてくれたのか。」

 

「ちょっと観戦をね。模擬戦かと思ってたんだけど、これは洒落にならないよ?」

 

モスティマがスカジに杖を向ける。

 

「……ごめんなさい。少し熱くなり過ぎたわ。」

 

「熱くなり過ぎたからって、ラックを殺されるなんて冗談じゃないよ。」

 

「モスティマ、俺は大丈夫だからさ。」

 

「でも……。」

 

「良いから。」

 

「……分かったよ。でも、部屋までは付き添うからね。疲労も残ってるだろうし。」

 

「ああ、それでいい。」

 

モスティマに手を掴まれて訓練室を出る。

 

 

 

 

「ほら、寝てて。」

 

「そんな過保護にならなくても。」

 

「寝てて。」

 

「……あい。」

 

「勝てないって分かってたでしょ。」

 

「まあ、そりゃあな。」

 

「断れば良かったのに。なんで戦ったのさ?」

 

「どこまでやれるかって試したかったのもあんだよ。

まあ、結果としちゃ惨敗だったけどな。」

 

チッ、あんだけ苦労して驚かす程度かよ。

 

「あーあ、また装備補充しねぇと。後慌てて出てきたから刀も置きっぱなしになってるし。」

 

「取って来ようか?」

 

「んにゃ、後で取りに行く。なくてもオペレーターか誰かが拾ってるだろ。」

 

一般の患者とかは入らねぇし。

 

「悪ぃ、今は一人にしてくれるか?」

 

「でも。」

 

「俺だって男だぜ?女性に負けりゃ考えるもんだってある。」

 

「そっか……わかった。じゃあ、またね?」

 

「おう、配達無かったら今度遊ぼうぜ。」

 

「楽しみにしてる。」

 

手を振ってモスティマが出ていく。

 

「…………あーーーー!!!くそくそくそくそ!悔しいに決まってんだろド畜生ォ!手も足も出ねぇなんて情けねぇ!!」

 

ドタバタとベッドの上で暴れる。ガキみてぇだけどこんくらい良いだろ。

 

「次やるときゃ、今回よりも上手くやってやる。」

 

目標は……なんだろ。パイタッチ?

 

「まあ、殺し合いする訳じゃないからそこから始めるかぁ。」

 

流石に疲れたし、今日はもう寝よう。

 

 

 

 

ゴポリ、と音がした。

きっと夢だろうと目を開く。

水の中?上を向いたまま沈んでいき、どんどん明るい海面から暗い深海へと落ちていく。

 

(下は、どうなってんだ?)

 

多少の怖気を感じながら向きを変える。すると、気持ち沈む速度が速くなった気がした。

 

(流石に見えないな。)

 

目を凝らして奥を覗き込む。無駄かと思ったその時。

 

(……なんだ、あの赤い光。)

 

奥の方でキラリと光った。

ジッと見ていると、光が二つに増えてようやく気付いた。

 

(目……?)

 

このまま沈んでいくとまずいと思い、上を向いて必死に泳ぐ。

足を何かに掴まれた。

ぐんぐんと沈んでいく。

この夢はまずい。落ちる所まで落ちたら戻って来れなくなる。なぜかそう確信できた。

誰か掴んでくれと願いながら必死に手を伸ばす。

願いが通じたのか、誰かが手を掴んで引き上げてくれる。その時下を見れば、昔見た触手のバケモンが俺を見ていた。

 

 

 

 

「っはぁ……うぉ!?」

 

目を覚ますと目の前にスカジの顔があった。

 

「な、なんだ!?闇討ちか!?」

 

「起きたのね。あの、武器を返しに来たのだけど。」

 

「そ、そうだったのか……サンキュな。」

 

「ところで、魘されていたけど。」

 

「夢見が悪くてさ。」

 

夢なんていつ振りだ?

 

「まあいいわ。ただ、気を付けなさい。深海に引き込まれないように。」

 

「ご忠告どーも。」

 

外はまだ暗いし、寝起きだといまいち寝る気が起きねぇ。

 

「軽くなんか飲むか?」

 

「……じゃあ、ホットミルクでももらおうかしら。」

 

「意外だな。んじゃ、俺もそれにするか。」

 

すぐに用意してカップを二つ置く。

 

「なあ、今日の模擬戦お前から見てどうだった?」

 

「驚きはしたけど、そこまで苦戦した気はしないわ。」

 

「やっぱりか……。」

 

面と向かって言われると俺だって凹む。

 

「次はもうちょっと喰らい付いてやるから覚悟してやがれ。」

 

「そう。」

 

「具体的にはパイタッチするから待ってろ。」

 

「……。」

 

冷ややかな目で見られた。

 

「目標だ目標。ご褒美みたいな目標ならやる気も出るだろ。」

 

「だからと言って胸を触ろうとするのはおかしいわ。」

 

スカジが少し顔を赤らめる。

 

「はっ、それが俺だ。」

 

「そう……。」

 

軽く息を吐いてスカジがホットミルクを飲む。

ホットミルクなんて初めて飲んだけど、確かに眠れない時には丁度良いな。

 

「くぁ……眠くなったから寝るわ。お前もテキトーな所で部屋に戻っとけよ。」

 

「えぇ。」

 

ベッドに入るとすぐに眠気がやってくる。よく眠れそうだ。

 

 

 

 

「……。」

 

今回は夢は見てない……いや、ちょっと見たかもしれない。

朧気だけど、また水の中にいて、俺の周りを何かが泳いで守っていたような気がする。

 

「ん?」

 

誰かが横にいて、布団を捲ってみる。

 

「……くぅ。」

 

スカジがいた。こいつ……戻れっつったのに。……いや、こいつのお陰?まさか。

 

「ラック、気分は……そう、良いみたいだね。」

 

「も、モスティマ?誤解だ。待て、杖を納めろ。」

 

「現行犯だね。」

 

「まだ付き合ってもないんだから現行犯も何も……。」

 

「ダメ。」

 

「どぅわぁ!?」

 

スカジを抱きかかえてベッドから転がり落ちて避ける。ああ……ベッドが粉々に。

 

「あ、危ねぇだろ!?お前こそ殺す気か!?」

 

「大丈夫大丈夫。加減はしてあげる気絶程度さ。」

 

「いや、ベッド……。」

 

「調整を間違えたかな?次はちゃんとするよ。」

 

「嘘だッ!」

 

再度杖を向けられる。やばい、次は無理そう。

杖が光る瞬間目を瞑る。

 

「もう、ゆっくり眠らせてほしいわ。」

 

「す、スカジ……。」

 

「昨日と逆ね。」

 

目を開くとスカジに抱きかかえられていた。

モスティマの目がヤバい。

 

「……ムカつくなぁ。」

 

「モスティマ、落ち着け。」

 

「うるさい。」

 

「あ、はい……。」

 

いや無理無理。スカジの腕の中で震えるしか出来ねぇわ。

 

「「……。」」

 

「あ、あー!そうだ。腹減ったし、飯食い行かないか!」

 

「……二人で?」

 

「え、三人だけど……あ、待って待って、違うって、三人いるなら一緒に食べた方が良いじゃん。」

 

「……まあ、いいよ。」

 

「私も構わないけど。」

 

「よ、よし、行こうぜ。」

 

 

 

 

「……はぁ……はぁ。」

 

カチャカチャとスプーンが震える。おかしい、俺はカレーを食ってるだけなのに。

食堂の長机に座っている。それは良い。でもなんで二人に挟まれなきゃならない。

 

「あ、あの……。」

 

「スプーン止まってるよ。」

 

「冷めるわよ。」

 

「はい……。」

 

目の前をドクターとアーミヤが通り過ぎる。

目だけでヘルプを送ると顔を逸らされた。

 

「あっ!?待って!そんな殺生な!?」

 

思わず椅子から立ち上がる。

 

「行儀悪いよ。」

 

「静かに食べなさい。」

 

ベルトを掴まれて椅子に叩き付けられた。

 

「お”っ……!?」

 

ケツが……割れる……!!ついでに顔面がカレーに浸ってとても熱い。

 

「お前ら、実は仲良い?」

 

足踏まれた。

くそ……来い、来い、空気読まずにゲラゲラ笑って前に来そうなヤツ……来い!

 

「ぶっははははっ!ザマーねぇなラック!女二人に頭が上がらぶっ!?」

 

「エンカクゥゥ!!?」

 

アシストに来たエンカクが吹き飛ばされて壁の染みにされた!?

左右を見るとにっこり笑顔のモスティマと無表情なスカジが拳を突き出していた。

 

「そ、そろそろ、収まった……?」

 

「「全然。」」

 

「……も、モスティマ、カレー一口食うか?」

 

「あ〜。」

 

「へいっ!」

 

カレーを口に入れる。すると逆の方から腕を掴まれた。

 

「……あーん。」

 

「へ、へい……。」

 

また逆から手を掴まれる。

 

「早く早く。」

 

「あれ、俺のカレー……。」

 

みるみるうちにカレーが消えていく。……俺の食べる分はもう無いらしい。

 

「……くすん。」

 

 

 

 

……腹減ったなぁ。

すごく悲しい気分になってきた、一応今回は俺悪くないんだけどなぁ。この後ヴァルカンに刀見せるの怒られるから嫌だなぁ……。

 

「……ラック?」

 

「なに……?」

 

「私が言うのもなんだけど大丈夫?」

 

「……ダメそう。」

 

腹が鳴った。後でまたなんか食べに行こう。

 

「これ食べる?」

 

スカジが菓子を取り出した。意外だ、あんまりそういうものは食べないと思ってた。

 

「ドクターに渡されたのよ。私はこういうのは食べないから、いいわ。」

 

「お、おお、サンキュ。」

 

素直に受け取って食べる。……あぁ、美味い。

 

「……ふぅん。ねぇ、ラック。」

 

「ん、どうした?」

 

「今日の夕食は私が作ってあげるよ。」

 

「え、マジで?」

 

テンションが上がってきた。モスティマの料理は美味いから楽しみだ。

 

「さっきのお詫びさ。」

 

今日の晩飯が楽しみだ。何を作るかは聞かないようにしよう。

 

『レユニオンが現れた。これから呼ぶオペレーターは集まってくれ。』

 

ドクターの放送に呼ばれる。

丁度俺ら三人が呼ばれる。いっちょ気合い入れていくか!

 

 

 

 

 

 

 

 

・今日の一幕

 

「それで、刀がボロボロな事を忘れて暴れてきたのか?」

 

「いや、まあ……。」

 

ヴァルカンの前で正座する。威圧感で萎縮する。

 

「はっきりして。」

 

「テンション上がっちまって……。」

 

「ケーちゃんだって武器の状態には気付くよ。」

 

「うぐっ……。」

 

「しかも持ってくるまで手入れもしなかったらしいな。」

 

金槌でコンコンと頭を小突かれる。

 

「あの、悪かったんで……。」

 

「悪いと思うならもっと早く持ってきて。」

 

「……うっす。」

 

「これから取り掛かるから、手伝ってもらうよ。」

 

それからずっと材料や機材、間の飯とか、扱き使われた。

 

「……次はちゃんと持って来よう。」

 

 

 

 

 

 






アビサルむずいっすね。



今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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