酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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三十二話:ホストクラブロドス

 

 

 

 

「よく来てくれた、歓迎しよう。」

 

エンシオの一言で席の女の子の嬉声が響く。

 

「ありがとうございます。ああ、可愛いだなんてそんな……皆さんの方がとても可愛いですよ。」

 

アンセルの言葉で女の子がメロメロになる。

 

「おっと、気を付けな。グラスはしっかりと持てよ。お前の手が傷付いちまうからな。」

 

エンカクが女の子の落としたグラスを空中でキャッチして渡す時にさりげなく手に触れて囁くとぴしりと顔を赤くして固まった。

 

「お客様、私に最高の笑顔を見せてくれませんか?」

 

ミッドナイトが女の子の頬に触れて顔を覗き込むと女の子が気絶した。

まあ、何をしているかと言えば俺たちはホストをする事になった。

 

 

 

 

「急ぎ来て欲しいねぇ……。」

 

随分焦った声で俺に電話を掛けてきたのはホストクラブのオーナーだった。俺にだってやる事はあんだけどなぁ……。まあ、問題を解決すんのも仕事か。

 

「おーい、どうs「ラックさ〜〜ん!!」うごぷっ……。」

 

店のドアを開いた瞬間オーナーが腹に飛び込んできて吹き飛ばされた。

 

「……良い、度胸じゃあねぇか。二度とこの地を踏めないようにしてやろうか……。」

 

「ああ、ごめんごめん!?本当に大変なんだよ!許して!!」

 

すぐに離れて頭を下げてくる。

 

「まあいい。そんで要件は?」

 

「そう!そうなんだよ!これ見て!」

 

突き出された紙には『これ以上店を続けるなら潰す』と書かれていた。

 

「イタズラか?」

 

「違うよ〜!最初は私達だって冗談かと思ったんだけど、うちのホストが一人怪我させられちゃって、しかも次は営業中に潰しに来るって追加の張り紙まで貼られちゃったからみんな落ち着くまで出勤しないって言うんだよ。……どうしよう〜!?」

 

頭を抱えてピーピー泣き出す。

男の鳴き声なんざ鬱陶しいばっかだし、うるせぇな。

 

「あー、わかったわかった。んじゃあ俺と俺の知り合いが護衛でもしてやろうか?」

 

「本当かい!?でも見えない所でやられちゃうかも……。」

 

「……あー!わかったよ!俺らがホストやってやるから明日は通常通り営業してくれ!ただ、そいつらに給料出せよ。」

 

「う〜ん、でもラックさんはともかく他の人達の顔はどうなんだい?やっぱりホストは顔が良くないと入ってくれないからさ……。」

 

「やってやるっつってんのに一々文句言いやがって……。」

 

通信端末を取り出して写真のフォルダを開く。……エンシオで良いだろ。

 

「ほら、どうだ。」

 

「うちのホストよりもイケメンなんだけど……この人うちに入れれない?」

 

何言ってんだこいつ。

 

「ダメだ。」

 

それをやったら家族連中にどやされる。

 

「そこをなんとか……!」

 

「ダメなもんはダメだっての。その日一日限りだ。」

 

「くぅぅ……じゃ、じゃあ他の人は?」

 

「引き抜こうとすんなよ?」

 

とりあえず、毛色が違うしアンセルで。

 

「……女の子?」

 

「違ぇよ、男だ。」

 

「でもこの写真は……。」

 

「確かに……チアガールの格好してるけど男だ。

顔は申し分ねぇだろ?」

 

弾けるような笑顔でいい加減俺も、あれ?こいつ女の子では……?って疑問を持ち始めたが男のはずだ。

 

「そ、そうだね……。うん、ラックさんに任せたら大丈夫そうだ。」

 

「んじゃ、明日な。」

 

……急いであいつら説得しねぇとな。

 

 

 

 

「つー訳で、手伝ってくれたら助かる。」

 

とりあえず知り合いの男共を呼んで頼んでみた。

 

「いいだろう。」

 

「私もラックさんからの頼みなら喜んで……ただ、一つお願いを聞いてくれれば良いだけです。」

 

俺にねっとりと熱い視線を向けて舌なめずりをする。……ちょっと頼んだの後悔した。

そのままバイソン、エンカク、ブローカ、クーリエ、マッターホルン、ミッドナイトは承諾してくれた。他のやつらには断られちまった、イグゼキュターは手伝ってくれると思ってたんだけどなぁ。

……人数、足りるか?

 

 

 

 

「うんうん!ありがとうラックさん!来てくれた皆さんも本当にありがとう!!これだけ人数がいればなんとかなるよ!」

 

店に着いて全員スーツに着替える。

 

「あ、お前ら一応名前変えとけよ。後々面倒な事になるからな。」

 

「ラックさんは変えないんですか?」

 

「俺はほら、ここら辺じゃ有名だし、こういう事するのもそこまで珍しくねぇからな。」

 

今更隠した所でどうしようもねぇ。

 

「にしても、アンセルがオペレーター姿以外で男の服着てるの久し振りに見た気がするな……。」

 

最近こいつ見たの女装ばっかだぞ。

 

「似合ってますか?」

 

「ああ、ちょっと安心した。」

 

「じゃあ皆さん、今日はよろしくお願いします!」

 

丁度呼ばれたか。

じゃあ、頑張るか。

 

 

 

 

「白兎さん、あちらのテーブルにお願いします。」

 

「わかりました。」

 

白兎……アンセルが俺に手を振って表に出る。あ、おい、足元見てねぇと……。

アンセルが段差に足を引っ掛けて前のめりになる。

 

「ほら見た事か。」

 

先に動いて後ろから捕まえる。

 

「気を付けろって。……聞いてんのか?」

 

後ろだから顔が見えねぇけど……。

 

「ああ、すみません。ありがとうございます。」

 

抱き留めてる手を撫でられる。お礼を言われただけなのになぜか背筋に寒いものが……。

 

「んじゃ、行ってこい。」

 

「行ってきます。」

 

上機嫌で呼ばれた席に向かって行った。

 

「そろそろ食べられそうですね……。」

 

横にいたバイソンがそう呟いた。……それはちょっと勘弁してぇな。

 

 

 

 

あれから上手くいっていた、なんならオーナーがいつもより稼げているって言うくらいだ。この調子で終わればボーナスも出すと言っていたから働きがいがあるもんだ。

 

『きゃあああ!!』

 

「エンシオとかエンカクが行く度に聞こえてくるな……。」

 

俺の時よりも歓声が多いんだけど?なに、俺は見慣れた?

 

『可愛いぃ〜!!』

 

エンシオ達はかっこいいって意味での歓声だったが、アンセルとバイソンは可愛がられている。アンセルはノリノリだったけど、バイソンは複雑そうだった。

 

「ラックさん、あっちの席からお呼びが掛かったよ。」

 

「ん、了解了解。」

 

さてと、お仕事のじか……ん?あれ、エンシオ達ががいるけど……なんで正座……?

 

「……。」

 

「お、お姉ちゃん、落ち着いて……。」

 

「……ぐふっ」

 

「かはっ……」

 

「……せめて、我が主だけでも。」

 

「エンヤとエンシア……?なんでここに?」

 

「あ!ラックお兄ちゃん!」

 

その一言でエンシオがギロリと俺を睨む。いや、昔からずっとこの呼び方なのにまだダメなのか。

 

「ヤーカおじさんがこそこそしてたからどうしたんだろうっ聞いたらラックお兄ちゃんに誘われてホストやるって言うからお姉ちゃんと見に来てみたんだ〜。」

 

あ〜、なるほどねぇ。

 

「ラック、おすすめをください。」

 

「ん。……ところでこいつらは?」

 

「気にしないでください。そのまま置いておいてくれれば良いです。」

 

「そっかぁ……。」

 

それから軽く酒を用意して軽く雑談をした。ただ、エンシオ達が動こうとする度に睨んでいたのは流石に可哀想だと思った。

 

 

 

 

「ラックさん次はあっちに。」

 

「忙しいな。んじゃ、またな。」

 

エンヤとエンシアに手を振って席を離れる。次は誰だ?

 

「……。」

 

「……えぇ。」

 

席に近付くにつれて少し異常な事に気が付いた。さっきのエンヤ達もそうだが静か過ぎる。話だとアンセルが先に着いてるはずだけど。

 

「あ、アンセルくん、似合ってるね!」

 

「あ、ありがとう。」

 

ああ……カーディかぁ。

チラチラとアンセルを見るカーディと、それに気付きながら少し気まずそうにするアンセル。そして周りでそれを見ているメランサとプリュムとムースとグムがいた。

 

「あー……んん、良く来たな。」

 

「ラックさん。」

 

端に座っていたメランサの隣に座る。

 

「あいつらは一旦置いとくけど、お前らなんで来たんだよ、未成年共……。いや、アンセルを色々連れ回してる俺が言うのもおかしな話だけどよ。」

 

「隊長のスーツ姿が見れると聞いたので……!」

 

プリュムが少し興奮しつつ言ってきた。

 

「だぁから隊長じゃねぇって……もういいや……。」

 

「スチュワードさん達が話してたのを聞いてしまって……一緒にいたみんなで来たんです。」

 

「……ダメだった?」

 

「ごめんなさい……。」

 

メランサとムースとグムがしょんぼりと顔を俯かせる。

 

「怒ってる訳じゃねぇから……んん、お客様、俺に最高の笑顔を見せてくれないか?」

 

ミッドナイトの言葉を借りて言う。……あんま俺には合わないな 。

 

「ほらっ、なんか飲みたいもんあるなら頼め。」

 

メニューを渡すとみんなで見始めた。

っとこの間にアンセル達の方を……?

 

「え、えへへ……。」

 

「ラックさん……!ラックさん……!!」

 

カーディがぴったりとアンセルの横に引っ付いて左手を握る。引っ付かれてるアンセルは助けを求めて俺を呼んでくるけど。

それお前が俺にやってくるのと同じ……いや、それよりもずいぶん可愛いもんだから放っておこう。

 

「ねぇねぇ、ラックさん。これ誰が作ったの?」

 

グムがツマミを食べながら言ってきた。わかるわかる、酒飲まなくても子供とかこういうの好きだよな。

 

「基本的にマッターホルンだな。あいつが呼ばれてる時はクーリエが作ってるはずだ。」

 

今エンヤに捕まってるから作り置きかな。

 

「後でレシピ教えてもらおうかなぁ……。」

 

「俺から後で伝えといてやろうか?」

 

「ほんと?じゃあお願いするね!」

 

「おう。」

 

これで俺が飲む時もグムに作ってもらえるぜ。やっぱり野郎よりも女の子に作ってもらった方が嬉しいし。

 

「……はふぅ。」

 

グムの横に座ったムースが息を吐いた。いや、なんか顔赤いな……まさか酒?いや、雰囲気だけで酔ったのか?

 

「ほら、水飲め。」

 

ムースに水を渡すと飲みはするがふわふわとした感じが抜けてない。

 

「メランサ、ムースの事ちゃんと連れて帰ってやってくれねぇか?」

 

「わかりました、私もちょっと心配でしたし。」

 

「サンキュな。」

 

頭を撫でてやると嬉しそうに笑った。

 

「あ〜!グムもグムも!」

 

「はいはい。」

 

……いい加減フラッシュが少し邪魔だな。

 

「なぁ、プリュム。」

 

「なんでしょう?」

 

「当店撮影禁止となっております。もし撮るのであれば別途料金を「払います!」……マジか。」

 

財布から金を数枚出して机に置くとカメラを構えた。……そうだったな、お前あんまり浪費しないもんな。

 

「それならツーショットの方が良いだろ。おーい、オーナー。写真頼む。」

 

まあ、本当なら店のカメラでも使うんだろうけど大目に見てやるか。

 

「はいはい、それじゃ撮るよ。」

 

「あの、私は別に映らなくても……。」

 

「いいから撮るぞ。」

 

プリュムを立たせて、その後ろに俺が立って肩に手を置く。

 

「はーい、チーズ。いやぁ、こんな良いカメラ持った事ないからこっちが緊張しちゃうね。これで良かったかな?」

 

「どれどれ。」

 

写真の中でプリュムが困惑気味だが楽しそうに笑っていた。……しかし、これじゃホストとのツーショットじゃなくて親戚の写真っぽくなるな。

 

「ありがとうございます。」

 

「これで良かったのか?もう一枚とか、ポーズの指定とかしても良いんだぞ?」

 

「いえ、この写真が良いです。」

 

プリュムが写真を見て笑う。それならいいか。

 

「ラックさん、悪いけど今度はあっちに……。」

 

「おう、大忙しだな。」

 

最後にプリュムの髪をクシャリと撫でる。

離れる時にアンセルから恨みがましい視線を向けられたから次会う時は気を付けよう。

 

 

 

 

「なんだ、お前らも来てたのか。」

 

「客に対してお前とはなんだ。」

 

「面白そうな事をすると聞いたのでな。」

 

呼ばれた席に向かってみるとチェンとホシグマの二人がいた。こいつらがこういう店に来るなんてな。

チェンの隣にどっかりと座った。知り合いがよく来るな。

 

「そうかよ、ところでスワイヤーは?」

 

「置いてきた。」

 

……可哀想に。

 

「なんだかんだ仲良しなんだから呼んでやりゃ良かったのに。」

 

次の瞬間万力に挟まれたような激痛がした。

 

「誰と、誰が、仲良しだって?」

 

「……なんでもない。」

 

傍から見たらチェンが俺の腕に抱き着いてるみたいに見えるけど、背中から肩に手を回して握り潰そうとしてるだけだ。

 

「全く。」

 

「隊長、今のはラックが可哀想ですよ。」

 

「……悪かった。」

 

「いや、俺の失言が悪かったんだから気にすんな。」

 

肩折れた訳でもねぇし。

 

「それで、結局何しに来たんだ?ここに来てお前らが酒飲んでないんだ。なんか目的があるんだろ?」

 

「お前が頼まれた原因と同じだ。」

 

「……ああ、なるほどね。そりゃあ助かる。一般人もいるからそこら辺のカバーは人数が足らねぇかもしれなかったからな。

よろしく頼むぜ、隊長さん。」

 

「私には無いのか?」

 

「おっと、優秀な副官殿にも感謝してるぜ?

今度の飲みは俺の奢りだ。」

 

「それはありがたいな。サイフが空になるまで飲んでやろう。」

 

「ちったぁ遠慮しやがれ。」

 

「ラックさーん!また頼むよー!」

 

忙し忙し、やる事が多いな。手を振って二人と別れた。

 

 

 

 

「おーおー、よぉ似合っとるでバイソン。」

 

「ちょっ、引っ付かないでくださいよ!」

 

テーブルに着くとバイソンがクロワッサンにへばりつかれていた。

 

「……はぁ。」

 

ちょっと疲れそうだ。

 

「ちょっとー、ため息吐くなんて酷くない?」

 

「うっせ、今忙しいんだよ。」

 

エクシアが拗ねて唇を尖らせる。

 

「似合ってるよ。」

 

「ん、サンキュ。」

 

モスティマの隣に座るとエクシアが膝の上に転がってきた。

 

「行儀悪いぞ。」

 

「良いでしょー。」

 

「しょうがねぇなぁ。」

 

話しながら一緒に来ていたテキサスとソラの方を見る。

ソラは変装して来ていて、珍しいのかキョロキョロと周りを見ていた。

テキサスはソラにここでどういう事をするのかみたいな話をしているみたいだ。

 

「何か飲むか?」

 

「うん、貰おうかな。」

 

「おう、っと悪ぃちょっと待ってくれ。」

 

通信端末が鳴って、着信を取る。

 

『ラック、お客さんが来たよ』

 

「ん、ご苦労さん。

外に溢れたやつらの相手はしても良いけど、殺すのは無しな。」

 

『仕方ないなぁ。君の頼みだからね、いいよ。』

 

「助かる。んじゃ、また後でな。」

 

通話を切って立ち上がる。

 

「お客様方にお伝えします!これより少々物騒な事になるので奥の方へ詰めて行ってください!」

 

お客さんがざわつきながら奥に行く。

……オペレーター連中はこっちにいるけど。

 

「お前らもあっち行けよ。」

 

「しかし、我々がこちらにいなければお客さんがいなくて違和感を持たれるだろう?」

 

テキサスの言葉になるほどと納得する。

 

「んじゃ、みんなよろし━━━━━━━」

 

よろしくと言おうとした瞬間に扉が蹴り開けられた。

 

「まだわかってないみたいだなぁ。」

 

紫のスーツを着た小太りの男を戦闘に傭兵っぽい集団がゾロゾロと入ってきた。

あいつ誰だったっけ……ああ、別のホストクラブのオーナーだっけ。ここの人気を落として自分がトップに立とうって事が。

 

「ちょっと一人痛め付けるだけで止めておいてあげたのにねぇ。」

 

「あー……お前が今回の原因?」

 

俺が声をかけると男がにんまりと口角を上げる。

 

「おやおやおや、ドブネズミに縋ることしか出来ないアーツも使えない落ちこぼれ天使様じゃないか。」

 

「ちょっ……!」

 

エクシアが声を荒らげようとして手を挙げて止める。

 

「まあまあ、落ち着けよ。」

 

「ふん、店のホスト共がいないと思っていたが、お前の知り合いか。」

 

「お前の所のホストよりイケメンだろ?」

 

そう言うと青筋が浮き出る。

すると急に笑い始めてエンシオに話掛けた。

 

「そこの銀髪。俺の店に来ないか?そいつに幾ら貰ったかは知らないが、そいつよりも高額で雇ってやる。」

 

「必要ない。」

 

「くっ……!ならばそこのフォルテ!」

 

「え、僕ですか……?他にやる事もたくさんありますし、やめておきます。一応ラックさんに感謝している所もありますし。」

 

「バイソン……!!」

 

ぶっちゃけ親の金もあるし、本人もそれなりに稼いでるって理由で裏切らないと思ってた俺を許してほしい。

 

「チッ……!なら、女だ。特別に俺の店に招待してやろう。」

 

男が歩いてきてメランサの手首を掴む。

 

「ッ……!」

 

メランサがビクッと体を一度震わせる。一瞬手が動きかけたが止まった。

手が出なくて良かった。後々面倒な事になりそうだからな。

ああ、ごちゃごちゃ考えたらダメだな。

男の手首を掴んで捻る。

 

「ぐおぉ……!!」

 

「あんまり調子に乗らねぇでくれるか?

メランサ、よく我慢したな。」

 

背中を押して後ろに庇う。

 

「さてと、お前ら戦闘準備だ。」

 

そう言うと全員が携帯してたり机の下に入れていた装備を取り出す。

俺も腰からハンドガンを抜く。刀はまだ完成してねぇからな。

 

「ここら辺で好き勝手してくれたお返しだ。」

 

 

 

 

「……なんつーか、呆気ねぇな。」

 

店から溢れる程の傭兵が数分で倒された。うん、ちゃんと生きてる。

 

「だっ、だが、まだ外に仲間が━━━━━」

 

「ラック、片付いたよ。手加減が必要だから少し手間取っちゃったよ。」

 

血濡れの剣を持ってラップランドが入ってきた。

お前本当に殺してないよな……?

 

「なんだい?ラックが頼んできたんだよ?」

 

「まあ、それはそうだけどな。お疲れさん。」

 

ラップランドの頭を撫でる。

 

「な、な、ななっ……!?」

 

「さて、もう仲間はいねぇぜ?

あそこの隊長さんに捕まるのと鼠に捕まるの、どっちが良い?優しい優しい俺は選ばせてやるよ」

 

そう言うと、男が膝から崩れ落ちた。

 

「チェン、頼む。」

 

「ああ、任せろ。」

 

チェンが男を連れて行ったのを見届けると、オーナーがやって来た。

 

「ありがとうラックさん!!」

 

「これが仕事だからな、気にすんな。

それより、今日来てもらった連中に給料頼むぜ?」

 

「任せてよ!」

 

んじゃ、俺もロドスに戻るとするかぁ。

歩こうとしたら誰かに肩を掴まれた。

 

「ラックさん。」

 

「あ、アンセル……!!」

 

「ふ、ふふふ……約束してましたよね……?」

 

やっば……!!

 

「……アンセルくぅん。」

 

「あ、え、カーディ……?」

 

「あのね、あっちのお店行ってみない?」

 

こ、これは……!!

 

「カーディ!俺がおすすめのホテルを紹介してやろう!ははは、宿泊費は俺持ちだから安心しな。」

 

簡単に行先を教えてやるとカーディが嬉しそうにしてアンセルの腕を引っ張って行った。

ふぅ……良い事したなぁ!

 

「よく働いたし、酒飲んで帰るかな。」

 

コソコソと見つからないように動きながら離れる。

 

「やあ、ラック。どこに行くの?」

 

「今日のお礼をしてもらおうかな。」

 

「ひえっ。」

 

肩を掴まれて後ろを見ると、モスティマとラップランドがいた。

 

「アンセルが戻って来たかと思った……じゃあ、これから三人で酒飲みに行くか?」

 

そう言うと二人が少し考え込むと頷いた。

 

「ん、じゃあ行くか。」

 

本当は一人で飲むつもりだったんだけど、まあいいか。

美人二人と飲むってのも悪くない。

少しテンションを上げながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・近頃の一幕

 

「ラック、美味しい?」

 

「んぐっ……美味いっ!」

 

うんうんと頷きながら食堂で親子丼を頬張る。

今日は珍しくモスティマが昼飯を作ってくれるっつってくれた。

やっぱ俺はオシャレな飯よりもこういう家庭的な飯の方が好みだ。

エプロン姿のモスティマも見れたし、今日はいい日だ。

柔らかい鶏肉にトロトロの卵が絡み付いてるし、甘い玉ねぎがまた良い。

 

「へぇ、美味しそうね。あたしも一口食べてみたいわ。」

 

「うん……?」

 

どこかで聞き覚えのある声がして後ろに振り返った瞬間、唇を塞がれて舌を捩じ込まれた。

 

「ん……あむっ。」

 

「んん〜!?」

 

目を見開くとWが目の前にいた。

なんでこいつがここにいやがる!?

慌ててWを突き飛ばしてハンドガンを引き抜く。

 

「ケホッ……てめぇ、なんでここにいる!?」

 

「うん、結構いい味してるわね。」

 

話を無視して味の感想を言うWの横を掠めるように撃ち抜く。

 

「せっかちねぇ、体を重ねた仲じゃない。」

 

なんでロドスにいるんだ。そもそもどうやって入った?誰にもバレずに食堂まで来るなんて……。

いや、まずはこいつを食堂のメンバーで倒す事を考えるのが先だ。

 

「待てラック!彼女は仲間だ!」

 

ドクターの声に混乱する。少し前まで殺し合っていたのに急に仲間って言われたって……。

 

「そうそう、それにあたしはここがロドスになる前からいたんだから帰って来てもおかしな話じゃないでしょ?」

 

「……チッ。」

 

仕方なく銃を下げる。仲間だってんなら殺り合う必要もねぇし。

元々座っていた席に戻ってまた親子丼を食べ始めると、左隣にWが座ってきて凭れてきた。

 

「はぐっ、もぐっ……。」

 

「再会出来たって言うのにシカトするの?」

 

「……うっせぇ。」

 

「君が前にラックの端末に写ってた人?」

 

右隣にモスティマが座るとピシッと空気がひび割れた気がした。

……あ、やば、逃げたい。

 

「そうよ。それで、アンタ誰?今あたしはラックと話てるのよ?」

 

「私はモスティマ、ラックの家族だよ。よろしく。」

 

「へぇ、そう。あたしはWよ、よろしく。」

 

互いに笑顔を浮かべているが絶対に友好的じゃない。マジで逃げたい。

 

「うん、それと久し振りに会った相手にキスするのはどうかと思うよ?」

 

「そうかしら?あたし達からすれば挨拶みたいたものよね?」

 

「……ノーコメントで。」

 

親子丼の味がわかんねぇ……。

 

「W、これからまだロドスの施設を案内しなければならないから来てくれ。」

 

「そうね、今日は会えただけで良しとするわ。

またね。」

 

Wが最後に頬にキスをしてドクターに着いて行った。

 

「……嬉しそうだね、ラック。」

 

「そんな事は……いや、悪ぃ。」

 

「まあ、良いよ。ご飯のおかわりはいる?」

 

「頼む。」

 

さっきは味わえなかったから今度はもっと味わって食べよう。

 

 

 

 

「そういえば前にラックと会っていたのを忘れていたな。」

 

「そうね、彼みたいな人は好みよ。」

 

「俺ももっと君に好かれるように努力しよう。」

 

「頑張る事ね。」

 

Wがドクターの後ろを着いていきながら端末を開くと、カメラ目線で笑顔を浮かべるWと引き攣った顔で親子丼を食べるラックが映っていた。

 

「彼女がいないのは悲しいけれど、彼がいるから我慢してあげるわ。」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「何も言ってないわ、早く案内して。」

 

困ったように頭を搔くドクターの後ろでWが笑みを深めた。

 

 

 

 







新年明けましておめでとうございます。2021年もこの小説をよろしくお願いします。

さて、投稿してない間にクリスマスがあったりしましたね。俺は一人でローストビーフとか作ってぶち上がってましたが皆さんはどうでした?
次は遅れましたがクリスマス回でも書きますね。
では、また次回。



今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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