「メリークリスマース!」
ドクターの言葉の後に続けて声が響く。
今日はクリスマスだ。ドクターの指示で最低限の警備を除いて全員が飾り付けをした食堂に集まった。
その中で俺はフロストリーフと二人で酒を飲んでいた。
「ふぃぃ〜……クリスマスは良いなぁ、存分に酒が飲めるぜ。」
「いつも飲んでいるだろう。」
「クリスマスだから良いんだよ。」
ケラケラ笑いながらフロストリーフを撫でるとため息を吐いて酒を飲んだ。美味いから良いじゃねぇか。
ただ、後でやる事があるからあんまり飲みすぎねぇようにしねぇと。
周りに目を向けると、ドクターの所にはアーミヤ、エイヤフィヤトラ、アンジェリーナが集まっている。
「先輩、このサラダとっても美味しいですよ。」
「ド、ドクター!このチキンもとても美味しいです!」
「この紅茶ほっとするなぁ。ねぇ、ドクターも飲んでみない?」
「……順番で頼む。」
あれじゃ腹膨れて動けなくなりそうだ。
その横じゃエンシオとエンカクとチェンとホシグマが酒盛りもしている。俺もあそこに混ざりたいところだけど、混ざったら酔っ払いそうだから今回はパスだ。
「……おい、この酒キツ過ぎる。」
「ははは、酒はまだまだ残っているぞ。」
「増やすんじゃねぇ……!」
「まだまだだな。」
「おっと、シルバーアッシュの酒も減っているようだ。ホシグマ注いでやれ。」
「はい。」
「くっ……。」
ありゃ潰されそうだな。
後は大体所属ごとに集まって騒いでるみたいだ。
「お前も好きな人の所行ってきても良いんだぞ。」
「……私はここが良い。」
「へぇ、そうか。」
そう言われて嬉しくないわけがない。
フロストリーフの肩を抱いて撫で回す。
「……暑い、やめろ。」
「照れんな照れんな。」
「照れてない。少し酔っただけだ。」
そう言って黙って酒を飲み始めた。
「ラックー!楽しんでるー!?」
エクシアが機嫌良さげにやってきた。この後やる事あんのにわかってんのか?
「忘れてねぇだろうな?」
「わかってるわかってる!ラックが手伝ってくれて早く仕事終わったんだからちゃんとやるよ!」
「なら良い。」
「まあ、今はパーティを楽しもうよ!アップルパイ焼いたから一緒に食べよ?」
カットされたアップルパイが俺とフロストリーフの前に置かれる。
良い香りだ。さっきからつまみでしょっぱいのばかりだから丁度良かった。
「うん、美味い。」
「むぐむぐ……。」
相変わらずいい味だ。意外と酒にも合うんだよなぁ。
フロストリーフも顔を緩めてアップルパイを食べている。
「ペンギンの方には戻らなくて良いのか?」
「さっきまでずっと居て騒いでたからね。
ラックの方に遊びに来たんだ。」
「そうか。」
アップルパイを一口食べる。
んん?なんか妙にエクシアがそわそわしている気がする。
「ね、ねぇ、つい最近何かなかった?」
「何か?あー……?」
手を顎に当てて考える。
なんだっけ、覚えてないぞ。クリスマスっては覚えてるけど……。
「アーミヤの誕生日……はこの前話聞いたしなぁ。」
ドクターがプレゼントをくれたって喜んでたし、俺も後でケーキを買ってあげた。
エクシアの額にぴきっと筋が浮き出る。
「スチュワードの誕生日は昨日だったろ?」
メランサがみんなでお祝いしたって写真を見せてくれた。送る物に困ったから現金を渡したはずだ。返されそうだったから今度部隊で飯でも食って来いって押し付けてやった。
エクシアの周りの空気が歪んで見える。
「エンカク……?」
あいつには花瓶か鉢植えでもくれてやればいいだろ。
「……もー!!あたしの誕生日!!昨日!!」
キーーーンッ、と大きな声が響く。
「あ、あー……そうだっけ?」
「もしかして……モスティマの誕生日も忘れた?」
「……えへ。」
我ながらキッツ。
「ばかーー!!」
「ちょっ、痛っ、痛てぇ。」
エクシアが俺の頭をバンバン叩いてくる。
いや、悪かったって。
「しゃ、しゃーねぇだろ!?自分の誕生日もポカンと忘れちまったんだから!」
「えぇー!?自分の誕生日だよ!?」
「色々あったし……。」
どこで忘れたんだっけなぁ……。
「悪ぃな。遅れちまったけど今度二人とも祝うって事で許してくんね?」
ジーッと睨まれる。
「……誕生日おめでとう。」
「仕方ないなぁ……。約束だからね?」
ほっと息を吐く。またなんか考えとかねぇと。
「私には?」
後ろから首に腕を回される。あっ、いい匂い……じゃねぇ。
「モスティマも誕生日おめでとう。忘れちまって悪かった。」
「うん、ありがとう。」
すり、と首筋に擦り寄られる。……こそばゆい。
「ラック。」
フロストリーフが声をかけてくる。
「どうした?」
「私の誕生日は五月一日だ。」
「……うん?」
「忘れるな。」
「ああ……うん。」
祝ってほしいって事か。
「わかった。忘れないようにメモしとこう。」
「ん。」
そう言うと機嫌良さげにアップルパイを食べた。
周囲から視線を感じて目を向けるとメランサやテキサス、ラップランド達が俺を見ていた。まさかのチェンやリスカムまで俺を見ていた。
……もしかして、俺はオペレーター全員の誕生日を覚えなきゃいけないのか?いや、メモすればいいだけなんだけど。
「出費がやべぇ事になりそうだ……。」
月の出費がそれなりにいきそうだ。
「いや、今考えるべき事じゃねぇな。」
手元の酒を一気に飲んで追加を注ぐ。
それから何人か俺の所に来て軽く話していた。
ラナやアズリウスがお菓子を持ってきた時にエクシアの目が少し鋭くなっていたけど対抗意識でもあんのか?
そして数時間経って各自で解散、騒ぎたいやつは残るみたいな感じになった。
「……そろそろか。」
残っているのが大人しかいない事を確認していると、ドクターが手を叩いた。
「よし、それじゃあ今日最後の大仕事だ。
全員着替えてくれ。」
男女に別れて着替えると振り分けられた荷物を渡される。
「ラックとモスティマはフロストリーフ達、特に気配に敏感なグループだ。バレないように頼む。モスティマ、いざとなったら時間を止めてくれ。」
「はっ、誰に言ってやがる。余裕だ。」
「うん、任せてよ。」
「頼もしいな。」
ドクターの振り分けが終わって、全員の前に経つと咳払いを一つ。
「サンタ部隊出動!子供たちに夢を与えに行こう!!」
クリスマスのプレゼント配達だ。
「そーっとそーっと……。」
抜き足差し足忍び足でプレゼントを置いていく。
気配に敏感なだけじゃなく匂いや音にも敏感なやつが多いから大変だ。
「ここで最後っと。」
喋り声で起きたんじゃダメだから担当の区画から離れる。
「お疲れ。」
「お疲れ様。」
モスティマとハイタッチをする。無駄に緊張したからモスティマもほっとしていた。
何度かバレかけたしな。
ケオベが野生の勘を発揮して起きたのは焦った。
「さてと、大仕事も終わったし寝るか。」
あー疲れたと自分の部屋に向かおうと思ってたら袖を引っ張られた。
「モスティマ?」
「……ねぇ、ラック。私にもプレゼントが欲しいな。」
こいつがそう言うなんて珍しいな。
「ああ、いいぜ。つっても今からは用意出来ねぇから明日になっちまうけどな。」
「大丈夫。すぐにできる事だから。」
すると俺の手を掴んで腹に当てて、背伸びをして顔を耳元に寄せてきた。
「……ラックのを私の中に注いでほしいな。もちろん、生でね。」
頭の中に性の六時間という言葉が過ぎる。
「ダメかな?」
「わかった。」
俺の言葉に意外だとモスティマが少し驚く。
「何驚いてんだよ。」
「だって、ラックだよ?」
確かに、いつもなら間違いなく断ってたはずだ。
ただ今日は回りくどいモスティマが素直に言ってきたし、こいつの事だし大丈夫だから言ってきたんだろ。
ため息を吐いて部屋に向かって歩き出すとモスティマが隣に並んで笑顔で俺の顔を見てくる。
「……なんだ。」
「ううん、なんでも。」
次の日、腰が痛いと言うモスティマを背負って食堂に向かうとフロストリーフが鼻息を荒くしてやってきた。
「ラック、見てくれ、サンタさんが私の欲しかったヘッドホンを持ってきてくれたんだ!」
キラキラと輝いた目で俺に見せ付けてくる。
うん、昨日俺が枕元に置いたプレゼントだ。にしてもサンタとか信じてたのか。
「今までクリスマスプレゼントを貰った事がなかったからサンタさんなんていないと思っていたが……私はいい子になれたという事か?」
……理由が重ぇよ。
俺もモスティマも優しい目になってフロストリーフを撫でた。
「どうした?」
「んにゃ。フロストリーフはいい子だなぁ……。」
「そうだろうそうだろう。」
「ラックさーん!」
フロストリーフを撫でているとアンセルが駆け足でやってきた。……ん?なんか本持ってるな。
「サンタさんからプレゼントが貰えましたよ!」
「そうか、何貰ったんだ?」
ざっと本を見せられる。
「なになに……?……?」
おかしい脳が本を理解してくれない。
二冊の本の片方はカーディとアンセルに似た二人が抱き合っていて、もう片方はアンセルと俺によく似た白髪の男が抱き合っていた。
「悪ぃ……俺には……よくわかんねぇ……まあ、良かったな……。」
頭痛い……二日酔いか?
「モスティマ……帰って寝ても良いか?」
「ダメ。」
「そっかぁ……。」
それからも出会った子供からプレゼントを見せられてようやく食堂に着いた。
「ドクター、見てください。私にもプレゼントがありましたよ!」
「ああ、良かったな。」
食堂ではアーミヤがドクターにうさぎのぬいぐるみを見せていた。
あのぬいぐるみはドクターが選んで、自分でアーミヤの所に置きに行ったやつだ。
喜んでくれて良かったな。
さて、飯注文しようとグムの所に向かうと既に幾つか料理が作られていた。
「あっ、ラックさん!見て見て、昨日サンタさんがレシピ本をプレゼントしてくれたから早速作ってみたよ!」
あー、俺とモスティマが色んなところで食べた料理のイメージをマッターホルンに伝えて実際に作って纏めてもらったレシピ本だ。
……あの後モスティマに食べ過ぎたと怒られた。
「二人で食べてみて!」
「あ、ああ……。」
背中のモスティマを見ると笑顔だった。……どっちの笑顔だ?美味しいご飯が食べられる笑顔か、また大量に食わせるのかって圧力の笑顔か。
「モスティマ、どうする?」
「じゃあ、これを貰おうかな。」
「んじゃ、俺こっち。」
空いてる席に座って食べていると、エクシア達ペンギン急便の面々が来た。
あれ、クロワッサンといつもいるバイソンがいない。
「残りの二人は?」
「二人で部屋にいるんじゃない?」
そういう事か。
一人で納得していると、テキサスがふんふん鼻を鳴らして俺とモスティマの匂いを嗅いできた。
「……ラック、後で話がある。」
「あ、あー……ちょっと断りてぇ……。」
「ダメだよ、テキサス。今日はラックのせいで腰が痛くなった私のお世話をしてもらう予定なんだから。」
「えぇっ!?も、もしかして二人で配達した後に……。」
「そんなのハレンチだよ!!」
黙ってりゃテキサスだけで終わってたのに……!!
恨みながらモスティマを見ると、ぺろっと可愛らしく舌を出した。
・遠い日の一幕
「……。」
訓練が終わってアパートへの帰り道、寒さでマフラーを口元に上げて歩いていた。
「ママー、今日はごちそうなんだよね?」
「ふふっ、そうよ。」
すれ違った親子を目で追う。
ほんの数年前は俺を含めた家族五人でクリスマスの買い物に歩いてたのに、今は一人で歩いている。
片手にケーキの箱を持って急いで帰る男性、楽しそうに話すカップル、笑顔で街のイルミネーションを見る家族を眺める。
自分で選んだけど、やっぱり寂しくなる。
頭を軽く振って歩く速さを上げる。明日は訓練は無いけど、自主訓練をしよう。家族の為に強くならないと。
「ラックくん、おかえり。」
「……どうも。」
アパートに着くと大家さんが声を掛けてくれる。
若くて一人暮らしをしている俺にたまにご飯を持ってきてくれたり面倒を見てくれている。
「さっき、可愛い女の子達から預かり物をしたよ。」
「俺に?」
モスティマ達かな。あまり来ないように言ってるのに。
「はい、ケーキかな?」
「ありがとうございます。」
白い箱を受け取って部屋に入る。
机の上に乱雑に置いてある缶やカップ麺のゴミをゴミ箱に投げると箱を机に置く。
「……これ。」
箱を開くと少し形の悪いアップルパイが出てきた。
「クリスマスなのにこれなんだ。」
らしいなぁって笑って、早速アップルパイを六等分に分けて手掴みで齧り付く。
「……美味しい。」
自然と笑顔が浮かぶ。
一切れ二切れと食べていると、気付けば無くなっていた。
「……明日、ちょっと帰ろうかな。」
訓練する予定だったけど、家族に会いたくなってきちゃった。
帰ったら三人にプレゼント買おっかな。
久し振りによく眠れそう。
大遅刻クリスマス。
R18は気長に待っててね。
普通にデレデレの絡みより、喘ぎ声とか入力してるとこっちが悶えてくるのよ。
今後の読みたいと思う内容
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ラックの過去話や異格イベ等
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このままで構わん