酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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三十七話:人の善意を踏みにじるなんてとんでもない!

 

 

 

 

「……ん?」

 

龍門外への配達の帰り、龍門が見えてきた辺りで蹲った人影を見つけた。

 

「……。」

 

うっわ〜!あやっし!滅茶苦茶あやっし!つーか周りの岩陰に気配感じるし絶対罠じゃん!行きたくねぇよ俺!

でもまあ、蹲った人影が敵じゃなくて本当に怪我してて動けなくなってるって事も確認しとかねぇと。もしそうだったら流石に見捨てる訳にはいかない。

早速双眼鏡をカバンから取り出して覗き込む。

 

「顔が見づらいな。」

 

フードを被ってるからか顔が見えないがチラッと見えた髪は赤茶色?みたいな色をしていた。尻尾の感じからしてループスかペッローかな?

武器を持っている感じじゃねぇな。しかしかなりラフな格好だ胸が強調されて……違う違う、徒歩で移動していたのならもっとしっかりと装備やパックパックがあるはずだ。ならどこかから攫って来た?態々?

 

「とりあえず助けに行ってから考えるか。」

 

ある程度なら十分対応出来るだろ。

岩陰のやつらに気付いてない風を装いながら女性に近付く。

 

「おーい、大丈夫か。お嬢さ━━━━━━━」

 

気配が一斉に動き始めた。俺ごとハリネズミにするつもりか?

ハンドガンを抜きながら振り返り、構えられたボウガンを順番に撃ち抜く。ただ、装填されている弾丸にも限りがあるから余裕を持って避けれそうなものだけ無視する。

にしてもあの格好はレユニオン?なぜこんな所に?

 

「よっと。」

 

小脇に女性を抱えて射線の通らない岩陰に隠れる。

 

「これで一旦よし……でも無かったか。」

 

「終わりだ。」

 

女性が持ったナイフを喉から数センチの所に突き付けられた。

敵意を感じなかった。まさか、こいつらのリーダーがこいつか?

そうしている間にも周りにいたレユニオンが俺を囲う。

諦めてため息を吐き、膝を着いて両手を頭の後ろに回した。待ち伏せしてたみたいだし殺されないでしょ。

横目でサヤを見ると取り付けられているランプが点滅していた。

 

 

 

 

「ドクター!サヤから救援の信号が届いたよ!

ラックが危ないかも!?」

 

マゼランが慌てながら執務室に入ってきた。そんなものまで搭載していたのか……。

立ち上がろうとすると端末に連絡が入る。ラックの名前が表示されたそれを見てマゼランに手が空いているオペレーターを呼ぶように頼む。

 

「俺だ。」

 

『あー……悪ぃドクター。捕まっちまった。』

 

「こちらでも既に確認している。」

 

『だよなぁ。あ、カメラつけてくれ。』

 

言われた通りにするとオペレーター達が集まってきた。

そして画面には捕まって頭にボウガンを突き付けられたラックとクラウンスレイヤーが映っていた。

 

『ははは、油断しちまったよ。こんな美人さんがまさかこの中で一番強いと思わなくっで……!?』

 

「ラック!?」

 

クラウンスレイヤーが鉈の柄でラックの頭を殴り付けた。

 

『いや、大丈夫大丈夫。ちょっと頭から血が出てるだけだから。』

 

周りの男に腕を引かれて元の姿勢に戻される。

おかしい、妙に冷静だ。

 

『こっちからの要求はドクターを単身で連れてくることだ。』

 

『そうそう、この、クラウンスレイヤー、クウちゃんでいい?めっちゃいい匂いしてたぜ!』

 

「……はぁ。」

 

ため息を吐いて右手で頭を抱える。

画面の中でラックが鉈の柄でガンガンと頭を殴られている。緊張感がまるでない。

少しすると肩で息をするクラウンスレイヤーが振り返った。

 

『もう一度言う。こいつを生きて返して欲しければドクターを単身で連れてくることだ。』

 

『あ、エクシアー、晩飯までには帰るから一緒に飯食おうぜー。』

 

「はーい、待ってるねー。」

 

へらへらと笑ったラックにもう一度鉈が振りかぶられた所で通話が切れた。

やっぱり冷静にも程がある。

 

「エクシア、どうしてそんなに冷静にいられるんだ?もしかしたら殺されるかもしれないんだぞ?」

 

「えー、だって、ラックって暗殺とか潜入してたって言うけど結構捕まってるし、ちゃんと任務済ませて帰って来てるんだよ?」

 

結構捕まる……?それは暗殺出来ていると言えるのだろうか?

 

「考えてみてよ。サンクタには光る輪と羽があるんだよ?」

 

「……ああ、そういえばそうだった。」

 

「初めこそすっごい心配してたけど十回超えた辺りからみんな気にしなくなっちゃった。」

 

「そうなのか。」

 

なら、大丈夫なのか?

エクシアの言っている事は事実だろうが、とりあえず部隊を編成してラックの所に向かうことにしよう。

 

 

 

 

「いっつつぅ……。」

 

あー、吐きそう。本当に容赦ねぇなチクショーめ。

 

「あまり私を舐めるな。」

 

襟を持って引き寄せられる。

 

「……んべっ。」

 

舌を出してやるとピキッと青筋が立った。

 

「おおっと、可愛い顔なのに怒るもんじゃなっわぶっ!?」

 

地面に顔面を叩き付けられて踏まれる。

随分切れてやがる。ついでに口の中が切れちまった。

 

「ぺっぺっ!あー……なあ、タバコ吸わせてくれよ。」

 

「……。」

 

「なー、良いだろー!タバコタバコ!ニコチンキレちまったよ!ターバーコー!」

 

「チッ、吸わせてやれ。」

 

「おー、言ってみるもんだな。左の胸ポケットに入ってるから頼んだ。」

 

近くにいた兵士がタバコを取り出して口に咥えさせて火をつけてくれる。

 

「……ふぅー。全く、犯罪者向いてないんじゃねぇの?」

 

タバコのフィルターを噛み潰して目を瞑って真上にタバコを吹き出すと光が周囲を包む。

 

「一応無力化したからって拘束してないのはダメでしょ。」

 

ギリギリ手が届く範囲にあった大剣を掴み取って一回転しながら振り回すと囲んでいた兵士達の首に当たって骨がへし折れた音がする。

 

「おお、いい耐久性。」

 

刀と銃を拾ってマガジンを差し直すとクウちゃんが俺を睨んでいた。

 

「……態と私に当てなかったな?」

 

「ほら、俺って女の子大好きだからさ。」

 

もう一つ青筋が立つ。

チッ、まだこの剣が使いこなせてないか。本当ならクウちゃんの細首もへし折ってやるつもりだったのに。

 

「こんなぶっとい剣が当たっちまって泣かれると困っちゃうだろ?」

 

内心を晒さずにへらりと笑うとクウちゃんが消えた。

 

「うおっ」

 

反射的にしゃがむと後ろにクウちゃんがいて鉈を振り切っていた。危うく首が刈られる所だったぜ。

 

「厄介だな。」

 

大剣で鉈を防ぎながらゆっくりと後ろに下がる。

 

「おっと、まだまだっ、ほら、隙作りたいんだったらこうセクシーなポーズをしたりすればいいと思うぜ?」

 

攻撃が激しくなる。これ刀だったらまた折ってたかも……。

遂に上からの大振りな攻撃になる。

 

「待ってました。」

 

半身で避けて鉈の背を踏み付けると剣先を真っ直ぐ突き当ててグリップのスイッチを押す。すると剣先の両端がスライドして地面に突き刺さり鉈を固定した。

 

「とーうっ!」

 

そのまま突き刺さった大剣のグリップを軸に飛び上がって両足で蹴り飛ばす。

クウちゃんは咄嗟に鉈を手放して後ろに飛んだが少し痺れたみたいで軽く腕を振っていた。

距離が空いた所に無事だった何人かがボウガンを向けてきたが先にボウガンに弾丸をぶち込んで壊してやる。

 

「囲んだからって油断をするな。武装解除したからって慢心するな。自分達が上だと思うな。それがお前らの今回の敗因だよ。」

 

クウちゃんの足に向かって発砲すると後ろに下がりながら物陰に隠れた。

大剣のスイッチを押してスライドを戻すと背中に担ぎ直して、鉈をクウちゃんとは別の方向へ蹴り飛ばすと銃を構えながら龍門に向かう。

 

「んじゃな。」

 

一定の距離が取れた所で煙玉を辺りに撒き散らしながら全力で龍門に走る。

流石に負けはしないけど、勝つ事も難しそうだからな。

 

「……クウちゃんクラスが二人いたら死ぬなぁ。」

 

Wがこっちに来てくれて本当に良かったと息を吐いた。

しかし、まあ、今度会った時の為の準備はしておいた方が良いだろうな。

あんな飛びっきり可愛い女の子に手を出したくはないんだけど━━━━━━

 

「次会った時は確実に殺す。」

 

 

 

 

「おー、ドクター。ご苦労さん。」

 

龍門の入口付近でロドスのヘリを見つけてドクターに連絡を入れると、近くのヘリポートで合流した。

 

「無事で良かった。」

 

「んだよ心配しててくれたのか?よし、今度俺がオススメの店を紹介してやるよ。」

 

ガシッと肩を組みながらヘリに乗り込む。

 

「あ、ラックおかえりー。」

 

中でエクシアがじゃがりこを食べていた。なんでじゃがバターじゃないんだ。

 

「ラック、あーん。」

 

「あーん。」

 

うまい。

サクサクと食べているとヘリが動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

・ある日の一幕

 

 

「かっとばせー、おーれ!」

 

バットをぐるんぐるんと振り回しながらバッターボックスに立つ。

なんで立ってるか?クオーラに誘われたんだよ。

 

「こいやぁ!ミッドナイトォ!!」

 

「……ふっ!」

 

ミッドナイトがボールを投げる。回転と方向を見て予測する。

 

「うおっしゃあ!」

 

キンッ!と良い音が鳴り響いて空へと飛んでいき……

 

「あ」

 

ガシャン!と大きな音を立てて窓ガラスをぶち破った。

 

「あ、あわわ、あそこってケルシー先生の研究室じゃなかったっけ……?」

 

「えっ」

 

マジかよやべぇじゃん怒られるよ。そう思っていると向こうからブチ切れたケルシーが歩いて来た。

 

「今のは……誰だ?」

 

その瞬間全員が俺を指さした。マジかこいつら、今さっきまで仲良く野球してたじゃん!?

 

「ほう、ラックか。」

 

「すみませんでした。」

 

ケルシーが目の前に来ると速攻で土下座をすると、頭に足を乗せられて踏みにじられる。

 

「危うく研究室が爆発する所だったんだ。分かっているな?」

 

「いくらでも使ってくれ。」

 

「ではまずは研究室の掃除と窓の交換、その後は私に食事を作ってから書類整理をして助手として薬品を持ってきてもらおう。」

 

うへぇと嫌な顔をすると睨まれる。

ああ……今日の俺の素晴らしい休日の予定が……。

 

「悪ぃな、つーわけで俺はここまでだわ。」

 

じゃあな、と手を振るとみんな振り返してくるが、ミッドナイトだけは頬を引き攣らせていた。

 

「……なんだが、上手く使われた気分だ。」

 

 

 

 

 







ケーちゃんのきのこ迷宮のあれは絶対に許さない。
クランタ娘も書きたいなぁ、既に投稿されているやつはヤンデレ系が多くて嬉しい。
次はマンティコアかニアール家あたりの話書きます。



R-18版読んでみたいですか?

  • もっとエロいのが読みたい。
  • このままチキンレースで良い。
  • もっと健全にしろ。

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