酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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四十話:小さな命に祝福を

 

 

 

ある日ウェイから所定の場所で龍門近衛局と合同で任務するように頼まれた。どうにも、近衛局だけでは対処が難しいらしい。

人数は多い方が良いと思ってバイソンとアンセルも引っ張ってきた。途中でワイフーも見つけたが、暴れそうだからそっとしておいた。

 

「んで、この惨状はなんだ?」

 

現場に着くと、恐らく目的の地点であろう店が見下ろせる。

ため息を吐いて後ろを振り向くとチェンが膝を抱えて凹んでいた。

 

「私から説明をさせてもらいます。」

 

内容としては最近妙な噂があるらしい。様々な種族の少女を風俗でその手の趣味のやつらを相手に働かせているそうだ。その中には感染者もいるとか、どうにもさっきの店は違法風俗であり、消えた少女達が働かされているそうだ。

んで、チェンがなぜ凹んでいるかと言うと、囮としてチェンにボロ布を着せて潜入させようとしたらしいが、無意識に警戒や威圧をしたせいで一切声を掛けられず、寧ろ警戒されたらしい。

 

「まあ、チェンは一旦置いておこう。」

 

「おい。」

 

「にしてもどっからだ?もし孤児だったりするなら普通は俺かジジイのが先に見つけて働きたいなら仕事を斡旋してやるんだが……そもそも今の龍門でどうやって保護されてない子供を見つけたんだ?」

 

もしかして外部から連れてきた?面倒な事になってきた、何人が検問を抜けたんだ。

 

「まあ、そんな事は助け出してからか。

よし、アンセル。お前に重大な役目を与える。」

 

「私にですか?戦力にはならないと思いますけど……。」

 

「安心しろ、お前の得意分野だから。」

 

そう言ってわざと汚した安っぽいスカートとマントを取り出した。

 

 

 

「よし、潜入できたな。」

 

着替えさせて店の前を通らせると一発で捕まって連れて行かれた。

 

「わ、私は男に負けたのか……。」

 

内部の子供たちの確認はアンセルに任せて、俺は俺のやる事を進めねぇとな。

 

「カツラとかある?」

 

「一応ありますよ。」

 

金髪かぁ、まあ良いだろ。

オールバックにしてサングラスを掛けて店に近付くと、警備の男二人に止められた。

 

「ボディチェックを。」

 

「はいはい。」

 

手を横に広げて体を触られる。どうせなら女の子が警備してくれりゃいいのに。

 

「どうぞ。」

 

「おう。」

 

店の入口から地下に入ると思っていたよりはマトモな内装をしていた。

 

「いらっしゃいませ。今日はどうしますか?」

 

「誰がいるんだ?」

 

「あちらの子達です。」

 

指をさす方を見るとカーテンが開き、少女達が現れた。種族も様々だ。やっぱり攫ってきたか?

少女達の中で一人だけみんなの前に出て庇おうとしている子が目に入る、この子に決まりだな。

 

「んじゃ、こいつで。」

 

指をさすとループス、ペッローか?少女が怯えたように目を見開いてからそれを隠すように俺を睨む。……ちょっと凹む。

 

「では、あちらの部屋へ。」

 

別の男に背中を押されて前に出されると俺の手を掴んで引っ張ってくる。着いていくと、如何にも防音そうな部屋に着いた。ここなら何しても良いって事かよ。

 

「……は、早くして。ど、どうせ前の人みたいに私の事虐めるんでしょ?」

 

小さく震える少女を見ながらため息を吐く。やっぱり近々大規模な掃除が必要かもな。

 

「安心しろ、助けに来た。」

 

「嘘よ!」

 

「嘘じゃない。近衛局……あー、警察だって動いてる。」

 

「……本当に?嘘じゃなくて?」

 

「本当だ。俺たちが助けるから、他の子達の場所を教えてくれないか?」

 

この見た目じゃダメだとカツラとサングラスを外して、しゃがんで目線を合わせながら頼むと、ようやくぽつぽつと喋り始めた。基本的に子供たちは一箇所に固められているらしいが、感染者は別でもう一つしたの階に閉じ込められているらしい。

片方はアンセルに任せるとして、もう一つ下に行くための階段を見つけねぇとな。

 

「階段の場所は分かるか?」

 

「ううん……あ、でも、あの人達が受付の後ろに入ると出て来るのに時間が掛かるの。」

 

「なるほど、受付の後ろね。

チェン、全部聞こえたか?」

 

『モーマンタイだ。こちらも突入の準備をする。』

 

入る前から電源を付けていた小型マイクに話しかけると、耳の裏に隠した小型イヤホンから返事が帰ってきた。

 

「わ、私は良いから、他の子達を先に助けて。」

 

「……わかった。でも、絶対に助けに来るからな。」

 

軽く頭を撫でると、中が透けて見えるワンピースを握り締めて頷いた。

 

「せめてこれくらいは羽織っとけ。」

 

上着を脱いで少女に羽織らせると立ち上がった。

 

「さてと、準備は良いか?」

 

『万全だ、入口も抑えた。』

 

「スリーカウントで突入してくれ。

スリー、ツー、ワン……ゴー!」

 

扉を開けて目に付いた男を殴り飛ばす。

 

「なっ、ま、まさかラッ━━━━━━」

 

「あらよっと。」

 

別の男の顔面につま先をねじ込む。

入口の方から怒号が聞こえてきた

 

『こちらチェン、上階の子供たちは保護した。』

 

「流石仕事がはえぇな。そんじゃ、俺は地下に行くわ。」

 

『まだ首謀者は見つかっていない。気を付けてくれ。』

 

受付の後ろの部屋に入ると、普通の事務室だが床に一部だけ鉄板が敷かれていた。急ごしらえにしてももうちょっとあるんじゃねぇの?おっ、鍵束見っけ。針金で開けるしかないかと思ったぜ。

ズラして梯子を降りると、牢屋のような場所が左右に広がっていた。

 

「……おかしい。誰もいない。」

 

後は隠れるならここくらいのはずだ。人質でも取るのかと思っていたが……。

 

「おーい、助けに来たぞ。」

 

一つずつ牢屋を開けていき、子供たちから俺以外に降りてきた人間がいない事を確認した。

 

「まさか、隠し通路から逃走した?」

 

『……ラック、マズイ事になった。

一人だけ別の部屋に入れられていた少女が人質になった。』

 

「何ッ!?」

 

間違いなくさっき俺が話していた少女だ。しくしった、俺が近衛局の人間の方まで誘導するべきだったか……!!

 

「いや、なった事は仕方ねぇ。俺がどう動くかを考えるべきだ。」

 

恐らく、相手はさっき俺のいた部屋で陣取っているはずだ。他に入るところは無いだろう。ダクトなんかも無さそうだった。

 

「……出たとこ勝負か。」

 

あーやだやだ。

 

 

 

 

「っそれ以上こっちに来るんじゃねぇ!」

 

ナイフを少女の喉元に突き付けながら怒鳴る男を見て、一番前に出る。

 

「もうお前以外にいねぇんだ。大人しく掴まりゃ痛い思いもしねぇぞ。」

 

「てめぇ、ラックか……!」

 

「おっと、俺も有名になったもんだ。どうよ、特性ラックさんブロマイドいる?今ならサイン付きだぜ?」

 

「いらねぇよ!チッ、相変わらずムカつく顔しやがって……。」

 

「会った事あったっけ?悪ぃな、女の子以外の顔を覚えるのは苦手なんだ。」

 

ぶちっ、と音が聞こえた。

 

「今の状況が分かってねぇみたいだな……!人質がいる事を忘れんなよ!」

 

そう言うと良い事でも思い付いたのか急ににやけた。

 

「てめぇが女好きってのは有名だ。このガキも助けてぇんだよなぁ!?なら、俺の言う通りにしな!」

 

「ああ、裸踊りでもしてやりゃ良いか?」

 

「ケッ!誰がてめぇの裸なんて見るかよ!

……腹を斬れ。」

 

周りがどよめく。逃走の為ではなく俺を殺す為ってのが意外だったんだろう。

 

「はぁ〜……しゃーねぇなぁ。

チェン、ちょっと借りるぞ。」

 

「本気か!?」

 

「本気も本気、超本気だぜ?ほら、寄越せ。」

 

チェンから普段使いの剣を奪って腹に向ける。

あ〜、これあんまりやりたくねぇんだよなぁ。

呼吸を少し変えて、内蔵を動かす。大丈夫だ、俺の体の事は俺が一番よくわかっている。

 

「大丈夫、今助けてやるから。

おい、その目かっぴらいてよぉ〜く見てろよ?」

 

そして、腹に剣を突き刺した。

 

「ひっ……!」

 

「はっ……はははっ……!マジでやりやがった!イカれてやがる!」

 

「ぐっ……」

 

片膝を地面に着け、蹲る。

 

「他のやつらも手を出すなよ!こいつが死ぬまで見てろ!

やっと目障りなお前を殺せた……!!」

 

まだ死んでもねぇのに男が喜んで油断を晒す。

刀を順手で握り直して、体を前に傾けると剣を腹から引き抜きながら振り上げると、男のナイフを持った手を手首から斬り飛ばす。

 

「なっ……は?」

 

振り上げた剣の柄を下にして振り下ろして男の側頭部をぶん殴る。

よし、終わった。

 

「おら、とっとと拘束してくれ。」

 

剣を肩に担いで指示を飛ばすと、近衛局の人間がようやく動き出した。

服を引っ張って剣に付着した自分の血を拭う。

 

「全く、引き抜く時にズレで傷口が少し広がっちまった。」

 

「お前は……!何を考えている!?」

 

チェンが襟を掴んで俺を見上げる。

 

「しゃーねぇだろ。銃とか持って入れねぇし、ナイフじゃ届かない。これしか方法が思い付かなかったんだよ。ほら、剣。

アンセル、包帯をくれ。内蔵は避けたし、出血も筋肉の収縮で抑えてるけど限界がある。」

 

なんなら背中に突き抜けた方は普通に出血してるし。

 

「あまり無茶をしないでくださいね。」

 

簡単な応急処置をしてもらって少女に向き直る。

 

「大丈夫……おっと、こりゃいけねぇ。」

 

頬に血が着いていた。俺が引き抜いた時の血だろう。

呆然とした少女の頬を服の袖で拭う。

 

「これでよし。痛い所とかないか?」

 

そう聞くとハッとして俺の腹を見るとジワジワと涙が浮かんできた。

 

「私のせいで……ごめんなさい……」

 

「気にすんな、かすり傷だ。」

 

「後でロドスでちゃんとした治療を受けてくださいよ。」

 

「……気にすんな、重症だ。」

 

爽やかな笑顔を浮かべて言うとまた目が潤んできた。

 

「バッカアンセル、お前不安にさせるような事を言うんじゃねぇよ。全く……。」

 

少女をあやしながら他の子達に話を聞くとそれぞれ別々の場所から誘拐されているらしい。どうにもほとんどが家族がいるそうだ。親元に返してやらねぇとな。

感染者の子達や家族がいない子達は非感染者ならジジイの所に送って、感染者は俺預かりでロドスに入れてもらうか。

通話をしながら話を進めていく。ジジイとしてもこの件は見逃せないからか、一斉に掃除を始めるそうだ。

 

「ああ、分かった。報告書はまた後で送る。ああ、じゃあな。

……ふう。」

 

次にドクターに子供たちを預からせてほしいとメッセージを送るとすぐに了承が返ってきた。

その少し後にジジイの遣いが来て子供たちを連れて行くのを見届ける。

 

「んじゃ、俺らでこの子達をロドスに連れて行くぜ……っとと。」

 

歩き出そうとするとふらついて膝を着いてしまう。とっととロドスに戻って治療してもらわねぇと。

 

「そんな状態じゃ帰るのも一苦労だろう。私も同行する。」

 

「いや、そりゃ悪いって。」

 

「私の剣で付いた傷だぞ。」

 

「でも俺が勝手にやった事だし……。」

 

チラッとホシグマに目線を向けると仕方ないと笑みを浮かべた。

 

「ではこちらの処理は小官がやっておきますので、隊長はそっちをお願いします。」

 

「……オイコラ。」

 

「すまないな、苦労をかける。

ほら、行くぞ。」

 

「はぁ、分かった。

よし、みんなちゃんと着いて来るんだぞー。」

 

チェンに肩を借りるとバイソンとアンセルに武器や荷物を運ぶのを頼むと、子供達に声をかける。

 

「あっ……あの……。」

 

「ん?何かあるのか?」

 

サンクタの少女が前に出る。白い髪に赤と青のメッシュが着いている。ん?この髪の感じは……。

 

「ら、ラック様、ですか?」

 

「確かに俺はラックだけど、様付けなんていらねぇよ。」

 

そういえば子供達には名前を教えてなかったか。

すると、サンクタの少女が目を輝かせながら一冊の本を取り出した。

 

「さっ、サイン……くださぃ……!」

 

「サイン?いや、まあ、良いけど……どこで俺の事知ったんだ?年齢的に俺がラテラーノにいた頃は赤ん坊か幼児くらいだろ?」

 

「お母さんから聞いたのと、この本からです。」

 

「本?」

 

差し出してきた本を見るとタイトルが『Luck』と書かれていた。

 

「……え、何この本。」

 

俺知らないぞ、こんな自伝みたいな本。

誰が書いたんだと著者を確認すると『ウィリアムズ』と書いてあった。

 

「おいマジか。なにやってんだあの人……。」

 

軍人時代に世話になった人だが、引退してから関わりも無かったがこんな事やってやがったのか。

 

「うん?」

 

情報提供の所には『ルーシィ』となっていた。

 

「マジかよ、母さん。」

 

なに息子の人生書くの手伝ってんだ。

 

「……一回ラテラーノ戻るかぁ。」

 

何年振りだ?十年もいってないから、八年くらい?

子供達を返すのに色んな所を回るからこの子を返す時にラテラーノに寄るだろうから会いに行くか。

サッと本にサインを書いてようやく動き始めた。

 

 

 

 

「おーい、戻ったぞ。フロストノヴァいるかー!」

 

子供達が不安げに視線をあちこちに向けているのを落ち着かせながら大声でフロストノヴァを呼ぶ。

 

「どうした。この子達は?それに怪我をしているな。誰が医療オペレーターを呼んでこよう。」

 

「俺の事は後で良い。

お前ら、これからこのお姉さんに着いていくんだ。良いな?」

 

「……ああ、なるほど。ドクターが言っていた子供達か。

フロストノヴァだ。ここでは子供達の先生をしている。よろしく頼む。」

 

フロストノヴァが挨拶をすると子供達が揃って俺たちの誰かの後ろに隠れた。

 

「………………どうやら、私ではダメな様だ。」

 

「……なんか、ごめん。」

 

慣れてないと気付かない程度に眉を下げて凹むフロストノヴァを慰めると手を叩いて子供達の気を引く。

 

「んじゃ、みんな好きなやつの所に分かれてくれ。」

 

そう言うとサンクタとループスの少女は一目散に俺の所に来たが、他の子達は少し迷っていた。

匂いを嗅いだり、周りをくるくると回ったりして品定めをして決まったアンセルには一人で、バイソンの所には三人、チェンにも一人だった。

なんか意外だな、アンセルかチェンに集まると思ってた。少し気になってバイソンの所の三人に質問をしてみる。

 

「なんでバイソンの所に集まったんだ?」

 

「「「お金の匂い!!」」」

 

「お金の匂い……。」

 

「そっかぁ……。」

 

この子達は一人でスラムにほっぽり出されても図太く生きてそうだな……。

 

「んんっ、ちなみにそっちはなんでアンセルを選んだんだ?」

 

「……えへへ。」

 

「ああ、うん、わかった。」

 

チラリとアンセルの股間を見た瞬間全てを把握した。

……なんだかなぁ。

 

「ついでだけどそっちは……。」

 

まさか同性愛者とか━━━━━━━━━

 

「お姉さんみたいなかっこいい女性になりたいです!」

 

「君はそのまま育ってくれ。」

 

前の四人と比べると純真な少女を抱き締めて撫でる。良かった、この子までちょっとあれだったらどうしようかと思った。

 

「褒められたっ!」

 

「良かったな。」

 

少女を離して立ち上がると、遠くからケルシーがやってきているのが見える。その後ろにはドクターもいるな。

 

「……ん?」

 

ケルシーに気付かれないようにする為か、ドクターが忙しなく手を動かして何かを伝えようとしている。

なんだって?……いや、分かんねぇよ。

ドクターの動きをジッと見ているとプスリと首筋に何かが刺さった。

 

「はい?」

 

あれ、なんか、いしきが……

 

 

 

 

「……あ?」

 

目を覚ますとロドスのどこかの病室で寝ていた。

 

「お”ぎだ〜〜!!」

 

「ラッグざま”〜〜!!」

 

「ヴッ……!?ぃっでぇ!?」

 

ドスリと誰かが飛び乗ってくる。

 

「いけません、体に障ってしまいます。」

 

恐らくフィリオプシスだろう声に反応して重みが離れる。

 

「何日寝てた?」

 

「二日程です。麻酔が効きすぎたのと失血多量の影響でしょう。」

 

思っていたより長い。俺の薬物耐性を考えてに長くて一日くらいだと思っていたが、余程強い薬でも打たれたか。多分アズリウス辺りが作ったんだろうなぁ。

 

「まだ鈍いな。」

 

手足の先がまだ痺れているみたいに力が入りずらい。まあ、当分は荒事もないから良いか。

 

「悪いな。」

 

「皆さん心配していましたので、後で謝った方がよろしいですよ。」

 

「そうだな。……ちなみにフィリオプシスは?」

 

「とても心配で、いつもより寝付きが良くありませんでした。」

 

「……おう。」

 

「ラックさんが回復するまではドクター主導で子供達を元の場所へ帰すそうです。」

 

「そうか。なら俺はのんびり寝てても大丈夫そうだな。」

 

ダバダバと涙を流す少女達の頭を安心させるように撫でる。

 

「ケルシー先生を呼んできますので、少々お待ち下さい。」

 

「うっ、ケルシーか。」

 

意識を失う最後の光景はケルシーが俺の首に注射機を刺した所だったからちょっと怖ぇ。

 

「ちょ〜っとお兄さん用事があるから出てくるわ。」

 

「え?でもさっきのお姉さんが……。」

 

「良いの良いの。な?」

 

「はっ、はいっ。」

 

うーん、こっちのサンクタの子は扱い易くて助かるな。

 

「んじゃ、また後で━━━━━」

 

「ほう、どこへ行くんだ?」

 

扉を開けると目の前にケルシーの頭が見えた。

 

「……あ〜、超絶美人なケルシー先生の所?」

 

「お世辞は受け取っておこう。だが、逃げようとした事は許さん。」

 

「ま、待て待て、俺怪我人。」

 

「分かっている。すまないが、部屋から出てくれ。」

 

「は、はい!」

 

「あ、あの、ラック様は……。」

 

「大丈夫だ。手荒な事はしない。」

 

サンクタの子がほっと息を吐く。いや待て、出てったらダメだって、俺がぶっ飛ばされる。

……出てっちゃった。

 

「さて、二人きりだな。」

 

「そ、そうだな。久し振りの二人きりだし、キスでもするか?」

 

「シている最中に傷が開いても良いなら良いぞ。」

 

「そいつはちょっと勘弁。」

 

「私としてもそれは困る。回復したらだ。

それよりもスズラン達にはちゃんと謝れ。彼女達はまだ幼いからな。」

 

「そうだな。会ったら言っとく。」

 

話しながら検査を続けていく。

 

「問題なさそうだな。もう数日休めば良いだろう。」

 

「ロドスの医療様々だな。」

 

内蔵避けたつっても腹貫通したのに数日かよ。

感心していると部屋の扉を開けてぞろぞろとオペレーター達が入ってきた。

 

「チッ」

 

ん?今ケルシーが舌打ちしなかったか?

まあ、良いかと切り上げて入って来た連中の相手をする。

途中で泣き着いて来たスズラン達も落ち着かせて部屋に帰すとようやく落ち着いた。

 

「ほんと、多過ぎだっての。」

 

疲れたと息を吐く。

 

「それにしては嬉しそうだがな。」

 

「……まあ、それはそれって事で。」

 

ケルシーから視線を逸らして窓越しに外を眺める。

 

「ふっ。」

 

頭を撫でられる。文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、手がほんの少しだけ震えていた。

 

「悪かったよ。次からは怪我せずにやるからさ。」

 

「……約束だ。」

 

「ああ、指切りでもするか?」

 

小指を差し出すと撫でていた手がするりと落ちて小指に絡む。

ぽたりと水滴が肩に落ちると、ケルシーが肩に縋り着いた。

声を掛けようかと思ったが、黙って外を眺め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・ある日の一幕

 

 

 

 

「なぜ、なぜなのだ、エンヤ……!!」

 

「あ〜、うんうん。傷は深いぞ。」

 

龍門のとある居酒屋にエンシオから呼ばれて行くと既に出来上がったエンシオがテーブルで泣きながら酒を飲んでいた。

どうせまたエンヤになんか言われたんだろなぁ。

 

「んで、今回はなんなんだ?」

 

「……この前、ホシグマと二人で私の部屋で飲んでいたのだ。そして、次の日気付けば二人共下着姿になっていて、目が覚めた瞬間にエンヤが入ってきてしまった。」

 

「ああ、なんか不潔とかでも言われたのか?」

 

そう言うとブワッと目から涙が溢れた。

 

「わっ、悪かった!悪かったって!

悪い、水をくれ!」

 

エンシオに水を飲ませて落ち着かせると、今度は寝息を立て始めた。

 

「はぁ〜……しゃーねぇな。」

 

エンシオの肩を担いで店から出る。俺全く飲んでねぇのに、今度請求してやるからな……。

 

「うぅ……何故だ……。」

 

「こいつのシスコンも困ったもんだ。」

 

ため息を吐きながら歩いていると向こうから見慣れた顔がやって来た。

 

「おっ、ホシグマか。……そっちも似たような事になってんな。」

 

「そっちこそ、シルバーアッシュが外で酔い潰れるなんて珍しい。」

 

どうにもチェンが酔い潰れたみたいだ。

すると、ホシグマの目が細められる。なんか嫌な予感がする。とっとと切り上げるか。

 

「エンヤ絡みだ。んじゃ。」

 

「まあ待て。」

 

「なんだよ……あれ?」

 

ホシグマが一瞬霞んだと思えば担いでいたエンシオが消えてチェンが腕の中で丸まっていて、エンシオがホシグマに担がれて攫われた。

 

「あっ、ちょっ……」

 

……見えなくなっちまった。

うん、まあ、なんとなく気があるのは分かってたし、いっか。

 

「チェンの家ってどこだったっけ。」

 

こいつの部屋の片付けでもしてやるか。

 

 

 

 

「……っここは?」

 

頭が痛い、昨日は飲み過ぎたな。ホシグマが連れて帰ってくれたのか?

 

「妙に部屋が綺麗になっているな……。」

 

寝転んだままで体の向きを変えて部屋を見渡すと片付けられていた。

 

「おっ、やっと起きたか。昼前だぜ?」

 

「???????」

 

なぜラックが私の部屋に?

鈍い頭を働かせて考えてみる。

 

「……夢か?」

 

「寝惚けてんのか?ほら、水持って来たから飲め。」

 

夢なら、自分の好きにしてみても良いか。

ベッドの横にしゃがんだラックの首に腕を回して抱き着くとキスをした。

 

「……?」

 

ゴトンとコップが落ちて中の水が溢れるのも気にしないで唇を貪る。

 

「んっ……ふふ、照れてしまうな。」

 

「……あ〜、いや、な?嬉しいぜ?でも、これ夢じゃねぇからな。」

 

一瞬空気が固まって、自分の顔に熱が集まる。

 

「まあ、思ってたより好かれてたんだな。

ああ、水持って来ねぇとな。」

 

嬉しそうに笑うと私の頭をくしゃりと撫でると、床を拭いてキッチンへ消えて行った。

 

「……〜〜〜〜っ!!!」

 

枕に顔を埋めて足をバタつかせた。

 

 

 

 

「まさかチェンからキスされるなんてな。」

 

鼻歌を歌いながら気分良く水を注ぐと、端末が鳴る。

誰だと思って見てみるとエンシオからだったから切ってやると数秒後にメールが届いて開いてみる。

 

『ころs』

 

とりあえずメールは消した。

 

 

 

 






何度か書き直してました。
どれかイベントの内容書こうかと思ったんですけど数日跨ぐイベントはエグいぐらい長くなりそうだったんで諦めました。

今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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