酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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四十二話:エッチな薬にご用心

 

 

 

 

今日は何も無く、のんびりとエンシオとチェスをしていた。それをスズラン、シャマレ、ポプカルが肩によじ登ったり、膝に座ったりして観戦していた。そんな時だった。

 

『オペレーター総員に通達します。アーさんの薬がうっかりで散布されました。これより、一般フロアとの間の隔壁を閉鎖するので一分以内に一般フロアへと移動してください。

特にアスラン、ウルサス.ヴァルポ、エラフィア、クランタ、キャプリニー、フェリーン、ペッロー、ループス、レプロパの方は急いで移動をしてください。』

 

エンシオと顔を見合わせて三人娘に目を移すと、近くにいる子を脇に抱えて走り出した。

 

「全く、アーの野郎。今度は何しやがった?」

 

「わからん。しかし、放送の通り急いだ方が良いだろう。」

 

「そうだな。」

 

にしても、時間が余りにも短い。

 

「チッ、やっぱ時間足んねぇ。」

 

どうするかと一瞬悩むが向こうにエンカクが見えた。

 

「エンシオ。」

 

「ああ。」

 

きゃー、と楽しそうな声を出す三人娘を抱え直す。

 

「エンカーク!!」

 

「……あ?」

 

「受け取れぇえ!!」

 

「「「きゃあああ!!!?」」」

 

「うおおおお!?」

 

躊躇わず三人娘を隔壁向こうのエンカクにぶん投げた。

投げられた事に一瞬驚いていたが、すぐにエンカクに飛び着きやすいように姿勢を整えていた。

 

「後頼んだぞ!」

 

ガシャンと隔壁が閉じる。

さてと、薬品の効果が気になる所だが……。

 

「アーミヤに連絡をしてみるか。」

 

サヤは置いてきちまったから、端末からアーミヤに通話を繋ぐ。

 

「くっ……」

 

「エンシオ?おい、どうした?」

 

急にエンシオが膝を着いた。まさか、毒性の薬品か……?

 

『ラックさんですか!?』

 

「アーミヤ、一体何が起こってんだ?」

 

『それが、アーさんが新薬の開発に失敗してしまって……。発情期の種族、特に先程放送で言った種族を発情させてしまうそうです。』

 

「また変なもん作りやがって……。」

 

『とにかく、今は避難してください。もしもラックさんが発情した女性オペレーターに見つかった場合……。』

 

「見つかった場合……?」

 

『大変な事になります。』

 

「いやまあ、想像はつくけど……ん?待て、アーミヤ。ケルシーはどうした?こういう時、一番行動が早いのはケルシーだろ。」

 

『……。』

 

「おい、まさか……。」

 

『はい……。』

 

「やめろやめろ、聞きたくない。絶対俺が狙われるじゃん。やだよMon3trから逃げるとか。」

 

『が、頑張ってください!今ドクターも頑張っていますから!』

 

「ドクターもかよ。

しゃーねぇ、とりあえずエンシオを移動させるか。」

 

「私が手伝おう。」

 

「ああ、サンキュ。それで、どこか安全な……ん?」

 

待て、今俺は誰と喋っていた?

さっきまでエンシオがいた所を見ると誰もいなかった。

 

「……ホシグマにエンシオが攫われた。」

 

『どうしましょう……。』

 

「あいつはほっとこう。貴重な囮だったんだが連れてかれたんじゃしゃーねぇ。そんな事よりこれからどうするかだ。

まず今残っている男性オペレーターが問題だ。ぶっちゃけ、女の方が圧倒的に多いからな。」

 

そのままアーミヤと話を進めていく。

状況は良くないな……俺とエンシオとドクターとアンセル以外は設備修理、一般区画に用事だったり街に行ってたりで外に出ているらしい。ドクターの近くにはファントムがいる可能性もあるが。

ちなみにアンセルは既にカーディに連れていかれたらしい。いくらなんでも早過ぎる。わざとか?

それと、今動いているにいる女性オペレーター以外はほとんど部屋に引き篭っているらしい、ただそれ以外が問題か……。

 

「自由に動けそうなのは俺だけか。

なんとかこっちを探しているオペレーターの鎮圧をしないとな。

一旦移動して話そう。どこか安全な場所はないか?」

 

『ちょっと待ってくださいね。』

 

アーミヤが調べてくれている間に少し見つかりにくい位置に移動すると、丁度そのタイミングで足音が聞こえて、慌てて通信の音量を下げる。

コツ、コツ、と一定のリズムで足音が廊下に響く。

……誰かは知らねぇけど、気づいてくれるなよ。

 

「あれぇ?タバコの臭いがしたからラックがいると思ったんだけどなぁ……。」

 

マズイ、ラップランドだ。隠れてても意味ねぇな。端末を懐に入れて飛び出した。

 

「アハッ!見つけた!」

 

「そりゃあ良かったな!」

 

足払いと仕掛けるとラップランドが軽く飛んで回避する。そして、そのまま一回転して胴を蹴り飛ばして壁に叩き付けた。

 

「クッ、アハハハ、素手でも結構戦えるんだね!」

 

ラップランドが剣を抜く。会話なんてしている暇なんてねぇから速攻で逃げ出す。

待って、あいつホントに発情してんの?

 

「鬼ごっこかい?いいよ、捕まえてあげるから!」

 

「チッ」

 

飛ぶ斬撃を避けながら逃げ、角を曲がる。これで攻撃が通らない。

 

「っとぉ……。」

 

「大丈夫?お姉ちゃんが着いてるからね。」

 

「うん、大丈夫……。」

 

角を曲がると地面に座り込んだビーズワクスと心配するカーネリアンがいた。やはり、二人とも顔が赤くて息が荒い。

背後から聞こえる高笑いを耳にしながら頭を抱える。

これ、ここにこのまま置いといたらラップランドのせいで絶対にめんどい事になる。

 

「ん、ああ、ラック。ごめんね、急にこの子の体調が悪くなってね。」

 

「あーいや、気にすんな。

それと、悪い。」

 

二人を抱えて走り出す。

 

「ちょ、ちょっと、何を……」

 

「わ〜……」

 

「ラップランドに追い掛けられててな。このまま安全な所に一旦置いてくから、我慢してくれ。」

 

……正直、重い。角が重いのか?

 

「……えい。」

 

「ふぉう!?」

 

ドスッ、と指で脇腹を突かれてよろめく。

 

「危ないだろ!?」

 

「良くないこと、言われた気がした。」

 

「気がしただけかよ……。」

 

恐ろしい直感してやがる。

 

「そんな事よりも、ラップランドが来たよ。早く逃げないと。」

 

「ラック……どうして私じゃない女と引っ付いているんだい……?」

 

「しゃーねぇだろ!お前が追いかけてくんだから!」

 

くっそ、やっぱ遅くなっちまう。

 

「悪く思うなよ!」

 

「きゃっ……!」

 

ビーズワクスを軽く投げて、銃を引き抜いて数発一気に撃ち込む。

いつものラップランドなら対処出来るだろうが、今はいつもよりキレが悪いからな。

 

「クッ、邪魔だよ!」

 

ビーブワクスをキャッチしてまた走り出すと、角を曲がって近くの倉庫に隠れた。

ちゃんと、臭い消しも放ったから問題ないだろ。

 

「二人とも少しだけ我慢してくれよ。」

 

「それは別に構わないよ。でもこの子の様子が……。」

 

「すん、すんすん……」

 

ビーズワクスが鼻を鳴らして近付いてきて、俺の匂いを嗅ごうとしてくる。

 

「お、おい、待てって。」

 

「よいしょ、私が見ているから、大丈夫だよ。」

 

カーネリアンが引き離してくれて助かった。

 

「それで、さっきの放送の話はなんだったの?」

 

「どうにも、一部種族を発情させる薬品らしい。」

 

「なるほど、やってくれたね。」

 

「全くだ。」

 

くそ、この部屋無駄に暑いな。それに二人の匂いまでしてきやがるから理性を削ってくる。

 

「……そろそろ出るか。二人は俺が出て行って少ししてから出てくれ。」

 

指示を伝えて立ち上がろうとすると手首を掴まれた。

 

「は?」

 

「ふっ、ふっ、ふっ……」

 

「はーっ、はーっ……」

 

ミシミシミシと手首の軋む音がした瞬間、カーネリアンに引き摺り込まれた。

そのまま俺の体を掴むと、二人で俺の匂い、特に首筋なんかの匂いを嗅ぎ始めた。

 

「お前らっ、何を……!!」

 

逃げようとすると、カーネリアンの手が俺の頭を掴んで壁に叩き付けた。

 

「……っぁ」

 

脳が揺れて、視界が歪んで脱力する。

歪んだ視界の中でカーネリアンが嗜虐的な笑みを浮かべていた。

カチャリと音がして、ビーズワクスにズボンを脱がされていく。

 

「ま……て、や、やめろ……」

 

「大丈夫だよ。私もやり方は知ってるから。」

 

「そう言う問題じゃ……」

 

「うるさい。」

 

「んー!?」

 

カーネリアンにキスをされて黙らされる。

まずい、このままじゃ喰われる。

手は出したくなかったが、しゃーねぇ。

カーネリアンの腹に手を当て、一気に押し込む。

 

「う”っ……!」

 

「ここで大人しくしててくれよ……?」

 

そのままビーズワクスも、と思ったがズボンを放してくれない。

仕方なくズボンを脱ぐと、ビーズワクスを持ち上げてカーネリアンに投げ飛ばす。

倉庫から出てもう一度アーミヤに通話を繋いだ。

 

『ラックさん!大丈夫でしたか?』

 

「なんとかな。ラップランドとカーネリアンとビーズワクスに襲われただけだ。撒いたから問題ねぇ。」

 

『普段温厚なあの二人が襲うなんて……。』

 

「それだけ薬が強力って事だな。それで、これからどうすればいい?」

 

『はい、まずは医務室に向かいましょう。そこなら鎮静剤や睡眠薬があるはずなので無力化出来るはずです。』

 

「なるほどな。了解だ。到着したらまた連絡する。」

 

通話を終えて移動を開始した。

 

 

 

 

医務室に向かっている途中でおかしな物を見つけた。

 

「なんで廊下に服が?」

 

辿って行くとベルト、上着、スカートとどんどん服を脱ぎ捨てている。

 

「あーつーいー!」

 

「ケオベ……。」

 

見つけたのはブラをぽーんっと投げ飛ばすケオベだった。

 

「こら、ケオベ!」

 

少し怒り気味に声を出すと、肩を跳ねさせてゆっくりとこっちを向いた。

……また胸でかくなった?

 

「ちゃんと服は着ないとダメだろ?」

 

「やだやだ!おいら暑いのやだー!」

 

「あーもー!駄々こねるな!」

 

ずるずると引っ張りながら医務室に連れて行く。こうなったら寝かせてから着せてやる。

 

「いーやー!嫌い!」

 

「ごぶっ……」

 

き、嫌い?嫌いって言われた?あ、やば、心折れそう……。

い、いや、頑張れ俺!俺がやらなきゃ誰がやる!

 

「やだやだやだー!!」

 

「せいっ!」

 

医務室に入って注射器に入った睡眠薬をぶっ刺すと、すぐに眠った。

 

「……辛かった。」

 

ため息を吐いて服を着せると、医務室のベッドに寝かせた

 

「本数は……結構あるな。」

 

腰にバッグを着けてその中に睡眠薬の入った注射器を詰め込む。

これ多分効能キツいんだろうなぁ。

詰め終わるとアーミヤに通話を繋げた。

 

「アーミヤ、道中でケオベに遭遇したけど、医務室に連れて行ってそのまま鎮圧したぞ。んで、睡眠薬とかも調達出来た。」

 

『本当ですか!良かった……。』

 

後は一人一人鎮圧していくだけでなんとか━━━━

 

『ラックさん!急いでそこから離れてください!』

 

「何があった?」

 

『良いから急いで!』

 

「了解。」

 

指示通り急いで廊下に飛び出すと、手遅れな事に気が付いた。

 

「……マズイ。」

 

廊下の両側からケルシー、ラップランド、テキサス、フロストリーフ、グラニ、シュヴァルツが完全武装で立っていた。

 

「くそっ!」

 

医務室に戻って扉をロックして天井のダクトに潜り込むと、極力音を出さないようにしながらも急いで離れる。

匍匐で移動していると、背筋に冷たいものが走って止まると目の前に見慣れた源石剣が現れた。

 

「ひぇっ」

 

「見つけた。」

 

「じょっ、冗談じゃねぇぞ!?」

 

天井を蹴破って廊下に飛び降りて全力で走る。

煙玉と臭い玉を撒き散らして撹乱を狙うけど、これで撒ききれるとは━━━━

 

「ッ!Mon3trか!」

 

煙を薙ぎ払うように振るわれた鎌をしゃがんで避ける。

 

「ラック、悪く思うな。」

 

「お前らはちったぁ悪いと思え!」

 

発情作用にしても、こうも闘争意欲も上がるなんておかしなもんだ。

 

「はぁ!」

 

フロストリーフのハルバードを半身で躱して柄を掴んで引き避けて投げる。

しかし、武器が無いとこっちはこれ以上どうしようもねぇぞ。

ただ、あっちが冷静じゃないからこそこっちはなんとか戦いが出来ている。

もし冷静ならもっと連携を取られて負けてるだろう。

小細工で逃げるにしてもMon3trをなんとかしねぇと。

 

「……いや、違うな。」

 

その場で無防備な背中を向ける。

後ろから捕まえる為に近付いてきているのを感じる。

 

「小細工抜きの全力疾走だぁぁ!」

 

煙玉をばら撒きながら走る。やってられっか、めんどくせぇ!

 

「待てーー!」

 

グラニが後ろから追いかけてくる。流石にクランタには足じゃ勝てねぇな。

 

「なら、ここでグラニだけでも……うおっ!?」

 

左足を上げると足があった場所に矢が突き刺さった。

 

「おいおい、マジかよ。」

 

何度か跳ねるような音が聞こえると、俺の後ろにシュヴァルツが着地した。

 

「ふぅ……もう逃げられませんよ。」

 

参った、どうやって切り抜けるか……つーかずっとこいつら顔赤くして息荒らげてるの怖すぎんだよ。

他の四人が合流する前に無力化するにはどうすればいいか……。

 

「あ、良いこと思い付いた。」

 

徐にシュヴァルツに向かって走り出す。驚いたシュヴァルツに抱き着くと、そのまま尻尾よりやや上の所をトントンと軽く叩く。

 

「な、何……をっ!?」

 

すると内股になって俺に体を預けたまま震え始めた。

 

「やっぱフェリーンにはここか。」

 

「あ、やっ、やめっ……」

 

か細い声と震える手でで止めようとしてるけど、いつもと比べるとかなり弱い。

恐らく感度も多少なりとも上がっていて、感じてんだろ。

遂にガシャリと武器を落としてしまう。

そして首に注射器を刺した。

 

「……まずは一人。」

 

そっとシュヴァルツを寝かせると、様子を見ていたグラニに向き直る。

 

「さあ、来い!」

 

「いいい行くよ!!」

 

何故か目がぐるぐるしているグラニが槍を突き出す。興奮か混乱か分からないが、単調になった攻撃を横から手の甲で逸らして抱き寄せる。

 

「よ〜しよ〜し、暴れんなよ。」

 

「う〜〜……」

 

槍を振るえないように肩をロックして注射を打って無力化した。

二人を廊下の端に移動させる。

 

「アーミヤ、逃走ルートの確保を頼む。」

 

『わかりました。……あっ、ド、ドクターっ!そっちは!』

 

「何があった?」

 

『ドクターがどんどん袋小路に追い詰められてて……。』

 

「そりゃまずいな。つっても、俺が行くと数が増えて不利になるだけだからな。悪ぃけどそっちでなんとかしてくれ。」

 

そう言えば、よくドクターの近くにいるファントムもフェリーンだったな。今の状況じゃ頼れそうもないか。

 

『はい、頑張ってナビゲートします!』

 

「ああ、それと状況はドクターの方が悪ぃんだろ?ならこっちは一旦大丈夫だから一先ずドクターを優先してくれ。」

 

『良いんですか?』

 

「俺と違ってドクターは戦えねぇからな。

アーミヤだって心配だろ?」

 

『それはそうですけど……すみません。』

 

「気にすんな。繋いだままにしとくけど、また後でな。」

 

『はいっ!』

 

さてと、こっちも行動開始だ。と歩き出した瞬間、横から誰かがぶつかってきた。

 

「おっと。」

 

「……オマエか。」

 

誰かと思えばズィマーだった。薬の影響か、いつもなら俺に触れたらすぐに離れようとするのに動かない。

 

「なんで……すんっ……オマエがこんな所に……すんすんっ」

 

無意識なのか、俺のシャツを握り締めて匂いを嗅ぎながら文句を言う。

 

「アーミヤからの放送は聞いたろ?それでちょっとな。」

 

「……すーっ」

 

まずいな、ズィマーですらこれか。

とにかく、眠らせて逃げよう。まだあいつらが追いかけて来てるだろうからなぁ。団体で行動してやがるから困ったもんだ。

右手で注射器を取ろうと手を伸ばすとズィマーが右手を掴んだ。

 

「オマエ……今何しようとした?」

 

「いや、何も。」

 

マジかよ、勘づきやがった。

 

「アタシになんかしようとしたよな?ああ?」

 

手首を握った手に力が込められる。

さっきからそうだけど、種族の特徴ってのは中々理不尽だ。サンクタもこういうのありゃ良かったのに……。

 

「いっ……!」

 

「気に入らねぇ……気に入らねぇな、なんでオマエなんかに……!」

 

手首をへし折らんばかりに力を込めながら壁に押し付けられる。

しかも向こうから足音が聞こえてきた。間違いなくケルシー達だ。

 

「ズィ、ズィマー、放せっ!」

 

「うるせぇ、オマエの言うことなんて聞いてやるか。」

 

「わかった、わかったから、せめて二人きりになれる所に行かないか?ほ、ほら、ここだと誰かに見られて邪魔されるだろ?」

 

苦し紛れにそう言うと少し考える素振りをすると、手首を握ったまま俺を引っ張った。

 

「っく……」

 

「モタモタすんな、早く来い。」

 

ある一室に着くと部屋の中に放り投げられる。多分、ズィマーの自室だ。

 

「いっだ……!?」

 

腰のバッグから注射器が何本か飛び出て割れた。

くそっ、ただでさえ本数が少ないってのに。

 

「なんだこりゃ。……そうか、こいつでアタシになんか打ち込むつもりだったのか!」

 

ズィマーの右手が俺の首を掴んで締め上げる。

 

「こっ……!?かっ……!」

 

締め上げる手を掴んで外そうとする。

せめて、武器さえあれば……!

 

「こんなもん!」

 

その間に腰からバッグを奪うと地面に叩きつけて何度も踏み付けられる。あれじゃもう使い物にはならねぇ。

 

「いつもいつもアタシを舐めやがって。」

 

右手で締めたまま、左手で顔面を殴られる。

こ、こんにゃろ……!

外そうとしていた手を片方放して拳を受け止める。

 

「あ?生意気なんだよ……!」

 

左手を引き戻すと今度は腹に拳が突き刺さる。

 

「う、げ……」

 

首を掴んだまま引き上げられて、ベッドに寝かされる。

 

「ふーっ、ふーっ……!オマエなんて、オマエなんて……!」

 

「ま、て……」

 

「黙ってろ!」

 

服を引き裂かれる。

やだ、大胆。なんて巫山戯た事を考えてる状況じゃないな。どうにかして逃げ出さねぇと。

すると、さっきまで散々ボコボコにしてくれていたのに動きが固まった。

俺の腰の上に座ったまではいいが、躊躇するように目を泳がせる。そして、腰をもどかしそうに動かしている。

……ああ、くそ。

方法は思い付いたが、後で殴られそうだ。

ズィマーの肩を掴んで引き寄せてキスをした。

 

「……!?お、オマ、エ……ん〜!?」

 

「良いから。」

 

キスをしたまま、抱き寄せたまま頭を撫でる。

やっぱこういう事をした事がなかったからか、顔を赤くさせて腕の中でもがく。

このまま骨抜きにしてやる。

するりと制服のシャツの中に手を入れて、脇腹を撫でながら上に手を伸ばす。

 

「ば、馬鹿、何してやがっ」

 

「してほしかったんだろ?」

 

「ん、んなわけっ……!」

 

え〜っと、ズィマーの本名なんだったっけ……前にたしかグムと雑談してる時に教えてもらった……ああ、思い出した。

頬にキスをして耳元に口を寄せる。

 

「可愛いぞ、ソニア。」

 

ぼんっ、と音が聞こえてくるくらいに顔を赤く染めると俺の上に倒れた。

 

「……危なかった。」

 

上から降ろして布団を掛けてやる。

 

「いっつつ……。」

 

殴られた所を押さえながら廊下へ出る。手首にも跡が残ってるな、首にも付いてそうだ。

 

「悪い、アーミヤ、そっちはどうなった?」

 

破かれた服を脱いでテキトーに放り捨てる。

結局パンイチか、これから端末は手で持っとかねぇとな。

 

「あれ?アーミヤ?おーい、聞こえてんのかー?」

 

返事がない。もしかしてドクターに何かあったのか。

 

「しゃーねぇ、ここからは一人でなんとかするか。とりあえずサヤを━━━━」

 

「かくれんぼはおしまいだ。」

 

ヒタリ、と首に源石剣が添えられる。

 

「テ、キサス。」

 

もう見つかったのか!?

ゆっくりと前に回ってくると、さっきズィマーにやられた顔や首を見る。

 

「随分とやられたな。」

 

「は、はは、まあな。お前らが手加減してくれないからな。」

 

「そうか。」

 

テキサスが俺の二の腕を掴むと爪を食い込ませる。

そういえばこいつもそうだった!?

これじゃ体が持たねぇ。ここでやり合うしかねぇか……!?

 

「やぁ!」

 

ゴンッ!と殴る音が聞こえるとふらりとテキサスが倒れた。慌てて抱きとめて端で寝かせる。

 

「だ、大丈夫だった?」

 

「助かったぁ……。」

 

ほっ、と息を吐く。ブレミシャインが助けてくれたみたいだ。休んでいたのか、いつもより薄着だった。

すると今度は複数の足音が聞こえてきた。

 

「まずっ!」

 

「こっちに来て!」

 

言われるがまま着いていくと、ブレミシャインの自室に着く。

 

「ここ、入って!」

 

「あ、ああ。」

 

そのまま部屋の電気を消して、ベッドの中に押し込まれて布団を被せられる。

そして、少しするとノックが聞こえた。

 

「ここにラックは来なかったか?」

 

ケルシーの声だ。匂いを辿って来たのか……!

 

「え?来てないよ。探してるのなら手伝ってあげたいけど……私も体調は良くないから。」

 

「そうか。休んでいたのに、すまない。」

 

そう言うと帰って行った。

匂いがした周囲の部屋で聞き込みでもしてたのか?

もう少ししたら出ようと思っていると、こっちに向かう足音と衣擦れの音が聞こえた。

そっと顔を布団から覗かせると下着姿のブレミシャインと目があった。

しまった、ブレミシャインもクランタじゃねぇか。

 

「あ、ちょっと、逃げないでね。」

 

起き上がろうとする俺の肩を押してベッドに寝かせるとそのままベッドに入って自分ごと布団を頭から被った。

さっきまでは隠れていた緊張感から気付かなかったが、この布団、かなり匂いが染み付いてやがる。一人でシてやがったな。

それに気付くと頭がクラクラして来た。

 

「さっき、顔が腫れてたよね。可哀想に……。」

 

ズィマーに殴られた所を撫でられる。

目が慣れたのか、薄暗闇の中でブレミシャインの顔が薄らと見えてきた。

はぁ、と熱の込められた息が顔に当たる。

 

「ラックさんは私たちの為に頑張ってたんだね……ありがとう。」

 

頭を優しく撫でられる。さっきまでの理不尽さから一転して優しくされて、逃げる事を躊躇ってしまう。今の状況で外に出れば、また誰かに襲われるかもしれない。

 

「もう痛い事はされないから、安心してね。」

 

ブレミシャインがブラを外して俺を抱き締める。

谷間に顔を埋めながら、震える手で背中に手を回す。

 

「お、落ち着け、ブレミシャイン。」

 

「ねぇ、ラックさん。マリアって呼んで?」

 

体を少し離して、両手で顔を挟まれて目が合う。普段の騎士として振舞おうと頑張る彼女はどこにもいなかった。

 

「……マリア。」

 

「……うん。」

 

情欲に濡れた目をしたマリアが顔を寄せてくる。

拒もうと思えばいくらでも拒めたそれを、俺は止められなかった。

 

 

 

 

……あれ、いつの間に寝てた?何してたんだっけ。

ぼんやりとした頭で目を開く。

 

「あ、起きた?おはよう。」

 

ブレミシャインの顔が目の前に広がる。ああ……思い出した……。

何度も優しく撫でながらキスをしてくるブレミシャインを止める。

 

「あー……ブレミシャイン。体調は━━━━」

 

どうだ?と聞こうとすると人差し指で止められた。

 

「もう、マリアって呼んでって言ったでしょ?」

 

「ぇ、あ……ま、まりあ……。」

 

そのまま機嫌良さげに頬を撫でる。

正直、何が何だかわからず、頭がパンクしそうだった。

 

「ごめんね、ラックさん。昨日はわがまま言って。」

 

「あ、ああ、いや、気にしなくて良い。全部アーが悪いんだ。

それに、俺も悪い気はしなかったしな……。」

 

「え、えへへ……そ、そっかぁ。」

 

嬉しそうに笑うと体をもっと寄せてきた。マリアの胸が俺の胸に当たる。

 

「ねぇ、もうちょっとだけわがまま言っても良い?」

 

「ここまでしたんだ。好きなだけ言ってくれ。」

 

「ほ、ほんと?じゃあね……」

 

耳元に口を寄せて伝えてくる。

 

「……それで良いのか?」

 

「あ、あれ?何かおかしかった?」

 

「いや、これだけヤッたんだからもっと大胆な事だと思ったんだけどよ……。」

 

「でも、やっぱり女性としては言ってもらいたいんだ。」

 

「わかった。」

 

マリアの頭の上の耳に顔を寄せる。

 

「好きだ。」

 

「……っ!!」

 

ピクリと少し震えると耳がゆらゆらと揺れ始めた。左手で優しく掴むと深呼吸をする。

 

「すぅぅぅ……ふーーーー。」

 

「ぁぁぁぁあ……」

 

少し野性的な酸い匂いがした。

 

「マリア、好き。好きだぞ。」

 

我ながら随分薄っぺらいな言葉だと思う。

コリッ、と耳を少し揉む。

 

「ふひゃっ……!」

 

まあ、マリアの事が好きなのは間違いじゃねぇ。じゃないとそもそもヤるなんて事はねぇし。

……誰に言い訳してんだ。

 

「ね、ねぇ、ラックさん?

また、してもいい?」

 

「………………おう。」

 

マリアが俺の足を股で挟んで押し付ける。

もってくれよ、俺の体。

 

 

 

 

 

 

 

 

・その後の一幕

 

 

 

 

「全く、酷い目にあった。」

 

「そうは言うが、それを見るとそうは思えないな。」

 

薬の効果が切れたエンシオと廊下を歩く。

あの後ホシグマにとことん絞られたらしい。

そしてそんなエンシオが見ている俺の左腕に目を向ける。

 

「?どうしたの?」

 

「……いや。」

 

マリアが左腕に抱き着きながら歩いていた。

なんか、薬の効果に付け込んだ感じがして複雑な気持ちになる。どうせなら自力で口説き落としたい。

それに背後から感じる二人の視線も気になる。過保護過ぎるだろ保護者共。

 

「あー、なあ?そろそろ離れてもいいんじゃないか?ほら、あれは事故みたいなもんだったし。」

 

「ラックさんは、嫌だった?」

 

しょんぼりとした顔で見上げられて空いた手で頭を搔く。

 

「マリアみたいな美人とヤれたんだ。嫌な訳がないだろ。」

 

「本当に?」

 

「本当だ。あんな薬抜きだったらもっと良かったのにって思っただけだ。」

 

「え、えっと、じゃあまた今度とか……!」

 

「誘ってくれるのは嬉しいけどせめてあの保護者共がいない時にしてくれ……。」

 

視線の鋭さが増した事にため息を吐く。

隣のエンシオが楽しそうに笑っていて腹が立つ。

 

「んで、そっちはホシグマとどうなんだ。」

 

「ふっ、良い関係だとだけ言っておこう。」

 

「良い関係ねぇ。」

 

シルバーアッシュ家も安泰ってか。

 

「それより良いのか?」

 

「あん?」

 

マリアが左手の指、特に薬指に何かを巻き付けているのを感じる。

 

「何してんだ?」

 

振り向くと指の採寸をしていた。

 

「……おい、おい待てコラ。」

 

そう言うとマリアがサイズを書いた紙を大事に抱えて後ろに下がる。

 

「良い子だからその紙をこっちに渡すんだ。」

 

「ちょっとだけ、ダメ?」

 

「用途だけ聞いてやる。」

 

「ゆ、指輪……。」

 

「アウトだ!」

 

「ま、またね!」

 

「待てッ!」

 

マリアを追い掛けると陰から見守っていた二人が出てきて道を塞ぐ。

 

「お前ら良いのか!?このままだとなんやかんやあって婚約者みたいな関係にさせられるんだぞ!?」

 

「私の妹では不満だと?」

 

「いや、そうは言ってないだろ……。」

 

「妹はやらないぞ。」

 

「めんっどくせぇ!ウィスラッシュお前もなんとか言ってくれよ。」

 

「マリアが結婚しちゃうと本当に叔母さんになっちゃう……でもあの子が幸せなら……。」

 

「くそっ、こいつらマジでめんどくせぇ!」

 

強引に突破しようにもこの二人相手は厳しい。

 

「おい、エンシオ。お前も手伝え!」

 

「断る。」

 

「んなっ!?」

 

「私に女性の純粋な気持ちの邪魔など出来ないのでな。……ふっ。」

 

「……せめて俺の目ェ見て言えよ。」

 

「おっと、ヤーカ達に呼ばれていた。ではな。」

 

「このっ!クソッ!」

 

しゃーねぇと切り替えて前方の二人を抜こうとするが的確にニアールが進行方向を塞ぎ、ウィスラッシュに次の行動を制限される。

連携が整い過ぎだろ。どうすりゃいい?

 

「チッ、こんな事してても良いのかよ!」

 

「どういう事だ?」

 

「こんな事してるよりも恋人の一人でも作ってた方が良いんじゃねぇかっつってんだよ。」

 

「私にはまだ必要ない。」

 

ニアールがそう言った瞬間、隣のウィスラッシュが膝から崩れ落ちた。

 

「え、お、おい、大丈夫か?」

 

「くすん……そうよ、今まで出来たことなかったわよ……。」

 

あれ、地雷踏んだ?

ニアールに目配せすると、何とかしろと目で返された。

 

「ほら、人生長いんだからこれからだって……。」

 

「……そうよね?まだこれからよね?」

 

「ああ、ウィスラッシュだって若くて美人なんだし、これから引く手数多だって。」

 

ウィスラッシュの肩に手を置いて慰める。

 

「び、美人?ラックもそう思う?」

 

「当然だろ!」

 

親指を立てて肯定すると、ウィスラッシュの目が俺を捉えた。

 

「じゃ、じゃあ……これからちょっと話さない?」

 

「え、俺今からマリアを……」

 

「くすん」

 

困惑してニアールを見ると大きく頷かれた。

 

「わかった、わかったから、行きゃいいんだろ。

その代わり、マリアを止めてくれよ。」

 

そう言うとニアールが嫌そうな顔をした。

 

「じゃあお前、今のウィスラッシュの相手するか?」

 

「…………わかった。」

 

たっぷり悩みやがって。

ため息を吐いてウィスラッシュを連れて行く。

話聞くってんなら居酒屋でいいだろ。

 

 

 

 

「ねぇ、聞いてる?」

 

「うんうん。」

 

テキトーな相槌をしながら酒を飲む。

 

「男だってみんなして遠巻きで見ているだけなのよ?話しかけようとしても逃げるからまともに会話だって出来ないわ。」

 

「そうだな。あ、これ追加。それと酒も。」

 

「騎士だからって私も女性よ?男性と付き合いたいって気持ちくらいあるわよ。」

 

「わかるわかる。あ、これ美味ぇ。」

 

「このまま独身のままは寂しいし。」

 

「そうだな。……けふっ」

 

酔ってきたな……。

 

「ねぇ、ラックさえ良ければなんだけど……これから、その……ね?」

 

「うん。」

 

ちょっと夜風に当たりてぇ。

 

「ああ、でも本当に良いのかしら。マリアだっているし、そもそも何股もしているみたいなものだし……。」

 

「悪くない悪くない。」

 

あー、眠い。

 

「じゃ、じゃあ、お願いするわね。あまり、詳しくないから……。」

 

「おう。」

 

店を出てホテルを探す。あれだろ、とりあえず酒飲んで眠いって話だろ。

 

 

 

 

「あ〜よく寝た。」

 

確か昨日はウィスラッシュの愚痴を聞く為に居酒屋行ったんだっけ。大体聞いてなかったけど。

つーかここどこ?

 

「……んん、寒いわ。」

 

「悪ぃ悪ぃ……ん?」

 

なんで隣でウィスラッシュが寝てんだ?

いや、まあ、そういう事か。…………多分ヨシッ!

このまま雰囲気に全部任せよう。

そのまま横を向いて寝惚けているウィスラッシュを抱き締めると目を瞑った。

 

 

 

 







大分無理矢理だけどエロが全て解決してくれるでしょう。きっと。

今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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