酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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四十三話:嗚呼労働

 

 

 

「よっと。」

 

「へ、へへへっ、悪かったよ旦那。だからそれは待ってくれよ。この前のは俺が第一被害者だぜ?」

 

「元凶が何言ってんだ。」

 

この前の薬品騒ぎのお仕置として縄で縛ったアーにマタタビの粉末をぶっかけて『Free hug』『感度三千倍』のプレートを叩き付けている時だった。

 

「あばばばばばば」

 

「これでもうちょっと常識的な事でもしてくれりゃあなぁ……。いや、それだと今のアーにはならないか。」

 

ため息を吐いてアーの頭に乗っかった粉末を払い落として軽くモフる。

 

「ラック、血液検査の時間だ。」

 

声を掛けられて振り返るとワルファリンがいた。

珍しい、いつもは必ずケルシーがやるのに。

 

「今日はケルシーじゃないんだな。」

 

「先日の出来事を気にしているらしい。存外、乙女な所もあるようだな。」

 

「気にしなくてもいいんだけどな。んじゃ、行くか。」

 

アーを放置したままワルファリンに着いて行った。

 

 

 

 

「……取り、過ぎじゃねぇか?」

 

「そなたの血液はケルシー先生が中々譲ってくれないからな。こういう時に個人用で採取したかったんだ。」

 

「限度ってもんがあんだろ……。」

 

気怠い、体が重い。

 

「安心しろ、ちゃんと増血剤だって用意しておるわ。」

 

「むごっ」

 

口に増血剤を押し込まれる。

 

「ふむ……血液だけでなく他にも欲しいな。」

 

「これ以上何を……」

 

「そなたは確か、性欲旺盛だったな。」

 

「お、おい、まさか……。」

 

「搾精させてもらおう。」

 

キュッ、とワルファリンが手袋を着け直す。それと同時に横になっていた台の側面からベルトが出てきて体を固定された。

 

「うっそだろ。」

 

軽く動いても外れる気配がない。

 

「知っているぞ、そなたの五感の一部が鋭敏になっているそうだな。」

 

「……だったらなんだってんだ。」

 

「こういうのはどうだ。」

 

ワルファリンが軽く飛んで顔の上に跨る。

 

「もが……?」

 

そして普段通り呼吸をしていた為に、一気に女の臭いが入ってきて一気に体が昂る。

 

「……っはあ!てめっ、んっぐ、何ッ……!」

 

体を動かしてもガチャガチャと金具の音が鳴るだけで外れる気配がない。袖からピッキングツールを取り出すが、錠まで届かない。

 

「楽しませてもらおう。」

 

ワルファリンが舌なめずりをした。

 

 

 

 

「どわっぷ……」

 

どれくらい時間が経ったか、ワルファリンが満足して部屋から投げ出される。

 

「あ、あんにゃろー……いつか、絶対に、ひぃひぃ鳴かせてやる……」

 

立ち上がろうと床に手を着くと、足を掴まれた。

 

「それだけ元気があるなら、まだ出せるな。」

 

「あ、あ……ご、ごめんなさぁあああ!!」

 

後ろから引っ張られて地面にべしゃっと倒れ込む。そして引き摺られないように床を掴む、と言ってもツルツルした床だから嫌な音をさせながらゆっくりを引っ張られる。

 

「ぬおおおおお!!」

 

必死に抗っていると誰かが歩いてきた。

見覚えのない顔だ。いや、確か名前は知らねぇけど、医療チームの予備隊員だったっけ。

とにかく助けてくれる事を願って手を伸ばす。

 

「ひゃあっ!?」

 

「た、助けてくれ!拗らせ女が俺を引っ張りやがる。」

 

「良い度胸だな……。今日一日足腰が立たなくしてやる。」

 

「ヘェェェェルプ!!!」

 

「で、でででも……」

 

「そなた、わかっておるな?」

 

「何が欲しい!?金か!?」

 

「あわわわわわわ……」

 

予備隊員の少女がおろおろと俺とワルファリンを交互に見る。

 

「どぅらっ!」

 

腕の力だけで跳ねて少女の足に抱きついた。

 

「きゃっ、きゃあああ!!」

 

 

 

 

「いっててて……」

 

あの後サイレンスが走ってきて一時間くらい説教されちまった。今回ばっかりは俺悪くねぇのに。

しかし、血と精を絞られたせいで体がかなり重い。

今日は安静にしとくか。

とにかく飯だと食堂に入るとテレビの前でケオベがアーをモフッていた。

……あれやばくね?

 

「おーい、ケオベ。」

 

「!!」

 

声を掛けると耳がピンと立ってこっちを向く。

 

「アーが限界だからこっちに来い。」

 

「だだだだーっ!」

 

言葉通りだだだだーっと走って飛びついてくる。

勢いを何度か回転する事で逃して受け止めた。

 

「よしよしいい子だ。飯は食ったか?」

 

「食べた!」

 

「じゃあ甘いもんでも食うか。」

 

厨房に目を向けるとマッターホルンが既にはちみつクッキーを取り出していた。

それを目を光らせてケオベが貰いに行くのを見つつアーの回収を頼むためにウンにメッセージを送る。

 

「どうぞ。」

 

「ほわぁぁあ……!!」

 

「ケオベ、貰ったらなんて言うんだっけ?」

 

「ありがとう!」

 

ハッとしてマッターホルンにお礼を言うケオベを横目に飯を受け取る。今日は親子丼か。

 

「サンキュ。」

 

「中々似合っているぞ。」

 

微笑ましい物を見るような目でマッターホルンが見てくる。

 

「うっせ。」

 

鼻を鳴らして席に向かう。

既にケオベがクッキーに一心不乱に齧り付いている隣に座る。

 

「いただきます。」

 

「!!いただきますっ!」

 

言い忘れていた事に気付いたのか慌ててケオベが手を合わせる。

 

「うん、美味い。」

 

玉ねぎにしっかりと味が染みてら。

横からの視線を感じて見るとクッキーを食べ終わったケオベが穴が開きそうなほど親子丼を見つめていた。

しゃーねぇなとスプーンを取り出して、一口掬ってやる。

 

「ふーっ、ほらあーんしな。」

 

「あーん!」

 

勢いよくかぶりつくと幸せそうな顔をする。

それを見ながら口を拭ってやる。

そのまま食事を続けていると端末に着信が入った。

 

「俺だ。」

 

『あ、ラックさん!悪いんだけど今からこっち来れないかい?』

 

龍門の行きつけの居酒屋の親父からの連絡だった。

 

「何があった?」

 

『うちの店で立て篭りがあってさ。』

 

「……はぁ、わかった。今から向かうから喋るなりなんなりで時間を稼いでくれ。」

 

『いやぁ、ありがとう!それじゃ待ってるから!』

 

通話を切ると親子丼を掻き込んで食器を下げる。

 

「ごめんな、ケオベ。ちょっと用事が出来ちまったから行ってくる。」

 

「悪者退治?おいらも行く!」

 

「ダメ。ここで待ってなさい。テキトーに誰か呼んでやるから。」

 

とりあえずでラヴァとヴァルカンとマゼランにメッセージを送る。

さてと、部屋に装備を取りに行かねぇと。

それと足の確保だな。そう思って食堂を見渡すとうってつけの人物がいた。

 

「アンジェリーナ、悪ぃけど今すぐ配達を頼めるか?」

 

「あ、うん、良いけど何を運べば良いの?」

 

「俺。」

 

「……え?」

 

 

 

 

「ひゃっほぉぉぉお!!久し振りだなこの感覚!」

 

「そういえばアーツが使えてた頃って空が飛べたんだよね?」

 

「おう、あの頃はどこまでも空を自由に駆ける事が出来たなぁ……。」

 

「無くなって残念だと思った?」

 

「何度もある。アーツさえあれば俺はなんだってできた。でも、今となっちゃ最初から無かった方が良かったって思う。」

 

「なんで?」

 

「そうだな……これ、内緒にしててくれよ?」

 

「うん!任せて、口は硬いつもりだよ!」

 

「んじゃ良い。アンジェリーナはさ、俺のアーツがどんなのか知ってるか?」

 

「えっと、ミントみたいに風を操るんだよね?」

 

「残念、実は違う。

みんな勘違いしがちなんだけど、俺はいつも空気を操るって言うだろ?」

 

「うん、でも違いって?」

 

「それこそ、風だけじゃなくて空気中の水素や酸素だって操れんだよ。」

 

そう言うとアンジェリーナが驚いたように目を開く。

 

「相手を体の中から破裂させられるし、全力を出せば天候を弄ったり雨を降らせたり、雷だって落とせるし、天災紛いな事だってできる。」

 

「天災……。」

 

「あんな物騒なアーツだけど、お陰で軍で活躍出来て金を大量に貰えた事には感謝してんだぜ?」

 

お陰で母さんの負担を軽減出来た。

 

「でもまあ、皮肉な事にアーツがなくなった事で俺は自由になれた。」

 

自由なアーツを持っているのに俺自身が自由じゃないなんて笑えちまうな。

 

「さてと、長々と話してたけどもうすぐ目的地か。どうだ、面白くなかったろ?」

 

「そんな事ないよ。ラックさんはアーツが大好きだったんだね。」

 

そう言われて驚いて、口角が釣り上がる。

 

「ああ。大好きだったよ。」

 

思い出すのは家族との思い出。風を拭かせて草木の演奏を聴き、空に浮かんで笑いあった。

次いで思い出すのは戦場での記憶。空から戦場を無表情で見下ろしながら空気を操って蹂躙する自分の姿。

どちらも同じアーツなのに全く違う結果になる。結局の所使い方次第なんだ。

 

「よし、配達完了!」

 

「助かった。さてとワイフーはっと……おーい!こっちこっち!」

 

事前に呼んでおいたワイフーを見つけると手を振る。

 

「む、早く成敗しましょう。」

 

「まあまあ、落ち着けよ。とりあえずこれ掛けな。」

 

サングラスをワイフーの眼鏡の上に重ねる。

 

「そのサングラスでサヤが誘導してくれるから、それに従ってくれ。それとこれな。」

 

「これは?」

 

「爆弾。」

 

「……これでどうしろと?」

 

「ちょっとやってもらいたい事があんだよ。俺も手早く済ませたいからな。

頼んだぜ?」

 

一応アンジェリーナにも頼んで一緒に来てもらう。保険ってのは大事だからな。

準備を整えて店の前に行く。

 

「あー、立て篭り犯に告ぐー。大人しく出てきなさーい。今なら痛い目に合わないぞー。」

 

真正面から飛んできた矢を斬り払う。

 

「てめぇが死んでくれりゃあこの辺りは俺達のもんだ!」

 

俺を殺して俺の席に座ろうって事か。またかぁ……。

 

「いいかー、もし仮に俺が死んでもお前らの誰かが俺の席に座れることはないからなー。

つーか、そもそもジジイとかウェイが認めねぇし、歓楽街のトップに求められるのは力じゃねぇし。」

 

力があった方が良いのは間違いないが、力だけを見るなら俺はこの席にいねぇし。

後釜はアンセルかバイソンに任せる予定だしな。

 

「そんで、お前らは降伏しねぇのな?」

 

「誰がするか!」

 

「んじゃ、ヨロシク。」

 

店の奥の壁が唐突に爆発して、ワイフーが飛び出す。それと同時にハンドガンを抜いて犯人達の肩を撃ち抜く。

やっぱ積極的に動いてくれるやつがいると助かるな。特に今なんて貧血やらなんやらで疲れてるし。

 

「や、やってられるか!」

 

「おっと。アンジェリーナ、頼む。」

 

「身体が重く感じてきた?」

 

アンジェリーナのアーツで動きが鈍った男に近付いてぶん投げる。

 

「サンキュな。」

 

「えへへ、どういたしまして。」

 

そのまま殲滅して、警備隊に引渡しを終える。

アンジェリーナは用事があるみたいで先に帰って行った。ドクターとか?

体を伸ばして解し、ワイフーを後ろから抱くとすっぽりと収まった。う〜ん、モフモフ。

 

「なあ、ワイフー。お前やっぱこっち来ねぇ?」

 

「お断りします。」

 

「えー、良いだろー。俺お前の事これでも気に入ってんだぜ?」

 

まあ、追いかけられるのは勘弁してほしいが。

のんびりと彼女の歩くテンポに合わせて歩く事で邪魔にならないようにする。

ワイフーも邪魔ではないからと振り払う素振りもせずに俺の腕に手をかけるだけだった。

俺もさっきの事件の報告書を書かねぇとだし、行くか。

欠伸を一つ出して、少し強く抱き締めて彼女の髪に顔を埋めると、少ししてパッと離れる。よし、これで頑張れる。

そして財布から札を何枚か抜き出すとワイフーに握らせた。

 

「さっきはありがとな。これで美味いもんでも食ってくれ。じゃな。」

 

ひらひらと緩く手を振って歩く。

いつもならいらないだの文句言われるんだが、珍しく素直に受け取ったな。

 

 

 

 

「あば……あばば……」

 

カタ、カタと震える指でキーボードを打つ。

疲れた、眠い、マジでもう無理。でもこれ書かねぇと……。

嫌々ながら報告書を書いてると誰かが入って来た。

 

「……んぇ?ビーズワクスか、どうした?」

 

いつもの服じゃなくて、モコモコした服を着たビーズワクスだった。寝る前か?

 

「じーーーーー」

 

じっ、と俺の顔を見つめると手を引かれる。

 

「お、おいおい、まだこれ終わって……」

 

「いいから。」

 

ぽてぽてと歩くビーズワスクに引き摺られるようについていくと、今度は別の部屋に入った。

 

「お姉ちゃん。」

 

「ん、あれ、どうしたの?」

 

カーネリアンの部屋だったみたいだ。

すると俺と同じように手を掴むとベッドまで引っ張られた。

 

「二人とも、寝て。」

 

ぐいぐいと引っ張られて仕方なく横になると、頭の上にビーズワクスが座った。

 

「なぁ、まだ仕事が終わって……」

 

ポフン、と顔にビーズワクスがもこもこした袖を顔に当てる。

そのまま何度もポフンポフンと当てられるとだんだんと眠たくなってきた。

目だけで横を見るとカーネリアンは既に寝ていた。いや、早すぎんだろ。

 

「おやすみ、ラックさん。」

 

最後にポフンと袖を乗せられるとそのまま意識が落ちた。

 

 

 

 

ビーズワクスが膝元で寝るラックを見つめる。

 

「お姉ちゃん、一緒にラックさんも連れて帰ろうね。」

 

そう言うと、寝ていたと思っていたカーネリアンの目が開く。

 

「そうだね。」

 

カーネリアンが眠ったラックをお気に入りの人形を扱うように抱き寄せる。

 

「ロドスには持って帰りたい物が沢山あるからね。」

 

ラックを見つめるカーネリアンの瞳はギラギラと輝いていた。

 

 

 

 

・もしもの一幕

 

 

 

 

俺がロドスで活動するようになって数年。鉱石病に対する薬も完成し、差別もようやく落ち着いてきた頃だった。

 

「……ん?あれ、何これ。」

 

目を覚ますと顔に何かを被せられて体を縛られているみたいだった。

おかしいな、昨日は確かカーネリアンと紅茶を飲んだ……所までしか記憶がない。

すると、顔に被せられた物を取られた。

 

「起きた?」

 

ビーズワクスが寝転がった俺の前にしゃがんでいた。お、パンツ見えた。

 

「なあ、ここどこだよ。」

 

「私達の故郷だよ。」

 

ビーズワクスの後ろからカーネリアンが出てきた。

 

「は?お前何言って……。」

 

「ようやく私の方もやる事が終わったからね。気に入った物を持って帰ったんだ。」

 

「気に入った……物?」

 

「うん、そうだよ。」

 

カーネリアンの手が俺の頬を撫でる。

ゾッとした。まさか、確かにそれなりに仲が良いとは思っていたが、こんな事になるなんて。

 

「じゃあ、何日か滞在するから、そしたら帰らせてくれ。」

 

「帰る?何言ってるの、ラックはずっとここで暮らすんだよ?」

 

ね。とビーズワクスの笑いかけると、うんと頷いた。

 

「くっ、なら自力で……!」

 

拘束を外そうとすると首を掴まれた。

 

「言ったでしょ?ずぅっとここで一緒に暮らすって。」

 

「っ……ごっ、ぇっ……!」

 

メキメキと指が喉に食い込む。

拘束されていて抵抗出来るはずもなく、無様に体を捩る事しか出来ない。

 

「でも、そうだね。」

 

「こひゅっ……はーっ……!はーっ……!」

 

ようやく解放されて必死に呼吸をする。

 

「手が使えないのは不便だよね。

これは外してあげるけど、その代わりに。」

 

カーネリアンが腰の剣を抜くと俺と右足を掴んで固定する。

 

「な、なにを……や、やめろ、やめろやめろやめろぉぉぉ!!!」

 

ばつん、と音がしてアキレス腱を斬られた。

 

「……っがぁぁ!?」

 

「ちょっと、大人しくして。」

 

上にのしかかられると今度は左足のアキレス腱を斬られた。

 

「これでよし。」

 

そう言うと包帯を足首に巻いた。

 

「くそっ……やりやがったな……!ぶっ飛ばしてやる!」

 

「出来ない事を言っちゃダメだよ。それとも手の筋も斬っちゃおうか?」

 

「……畜生。」

 

これ以上動けなくなるのはまずいから黙り込んだ。

 

「じゃあ、お姉ちゃんはちょっと用事があるから、後でね。」

 

「うん、またね。」

 

そしてビーズワクスと二人きりになった。

 

「ビーズワクス、いいからここから逃がしてくれ。頼むよ。」

 

「なんで?」

 

「なんでって……」

 

「ラックさんはずっと一緒って言ったよ?」

 

「チッ……」

 

一旦ここは、大人しく逃げるチャンスを待った方が良いか。夜になってみんなが寝静まるのを待とう。

 

 

 

「……よし。」

 

食事や風呂も終わってカーネリアンもビーズワクスも眠った深夜。

二人に抱き締められるように転がっているが問題は無い。

そっと手を外してとにかく音を立てないように動く。

歩けないのは痛手だが、腕の力だけでも何とかしてみせる。

匍匐前進でゆっくりと進んでいく。

第一目標はロドスだが、とにかくここから逃げて通信設備のある場所に行けば連絡が取れるはず━━━━

 

「どこに行こうとしているのかな?」

 

ひゅっ、と喉から音が出た。

 

「なるほどね。逃げるのに腕を使うなら、その腕も落としちゃおうか。」

 

カリカリと刃物が地面を削る音が聞こえて後ろを向くと、カーネリアンが斧を持っていた。

 

「ま、待て、やめてくれ、頼む、もう逃げないから」

 

「ラックは嘘つきだから、私も困るよ。」

 

ドスリと俺の背中に足を乗せて口の中に布を押し込まれる。

くそ、こいつ、イカレてやがる……!

そして、カーネリアンが俺の腕を掴んで伸ばすと斧を振り上げると肩へと振り下ろした。

 

「むーっ!!!」

 

肉が裂け、骨が砕ける音がした。一度じゃ斬れなかったからか、何度も振り下ろされる。

 

「む……が……」

 

あまりの痛みに耐えられず、俺は気絶してしまった。

 

 

 

 

「……ん」

 

目が覚めると、ベッドの上に戻されていた。

そして鈍い痛みを感じて自分の体を見る。

 

「う、嘘だろ……」

 

腕は肩から落とされ、足も膝から下が無くなっていた。

呼吸が整えられない、現状を理解できない。脳が混乱する。

 

「あ、お姉ちゃん、起きたよ。」

 

「ああ、やっと起きたね。お寝坊さん。」

 

肩を跳ねさせて声の方を向く。その途中で部屋の隅に投げ捨てられた俺の手足が落ちていた。

 

「それで、まだ逃げたい?」

 

カーネリアンが俺に血濡れの斧を見せた瞬間、俺の心は折れてしまった。

 

「や、やめて、くれ……わかった、ここで一生暮らすから……」

 

そう言うと満足気な顔で俺の頬を撫でる。

きっと今の俺は死にそうなくらい青ざめているんだろう。

 

「やっとわかってくれたんだ。良かった。」

 

ひょい、とカーネリアンが俺を抱き上げると子供をあやすように撫でる。

自分の目が、折れた心がそのまま死んでいくのを感じる。

ああ、ここで終わりかぁ……もっと、自由に旅とかしたかったんだけどなぁ……

 

 

 

 






我ながら唐突に物騒な一幕を書いてしまった……。

こういうのも需要ありますかね?


今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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