「うへぇ〜……降られるなんてツイてねぇな。」
配達からの帰り道、雨に降られた俺は近くの廃墟に向かった。普通なら気にもならないが、ここは砂漠だ。何が起こるか分からない。
「せめて、雨風防げればいいけど。ん?」
話し声が聞こえる。誰かが既にいるのか?建物の陰に隠れながら覗き込む。
「焦ったぜ。まさかここまで抵抗されるとはな。」
「まあ、死人がいないだけマシだろ。」
「くっ……!」
すると、クラウンスレイヤー━━━━クウちゃんがいた。
なんだってあいつがこんな所で捕まってんだ?
いや、そもそもあいつが捕まるとは思わなかった。
まあいいや。あいつが捕まるならこいつらは何か隠し玉でもあるって事だろ。ならとっととここから逃げ━━━━
「動くな。手を上げろ。」
……マズった。
「お、俺は通りすがりだ。見逃してくれ……!」
「例えただの通りすがりだろうが、見られたのなら見逃せない。」
そうこうしている内に後ろのヤツの仲間が集まってきた。騒ぎを起こさないように動かなかったが、しくじったな。
「お前も来い。」
背中を押されてクウちゃんの隣に並ばせられる。
クウちゃんが驚いて目を見開いた。
「なんだこいつ。」
「そこでコソコソと様子を伺っていた。
武器を寄越せ。」
「丁寧に扱ってくれよ?」
さて、救援要請はサヤがしてくれるから良いとして、どうしようか。
リーダー格のレプロパは別に良い。さっき後ろから脅してきたリーベリ、こいつが多分一番強い。そして……なんだこいつ。やけに興奮しているループス。この三人が特徴的か。他はどうとでもなるな。
「男なんて殺しちまえよ。」
「そいつは龍門のラックだ。」
今まで黙っていたクウちゃんが唐突に口を開いた。
「……何ィ?龍門のラックって言えば歓楽街の?」
「そうだ。そいつがいれば、龍門はある程度言う事を聞いてくれるぞ。」
そんな事はない、と言おうとクウちゃんを見ると俺の目をじっと見ていた。
……脱出手伝えって事かよ。
「なら良いだろう。
お前ら、服を脱げ。怪しいもんを仕込んでるかもしれねぇからな。」
「なんだ男のストリップショーが好みか?」
「いいから、早く、しろ。」
リーダー格がボウガンを頭に突き付けられる。頭に血が登りやすいのか?扱いやすそうだ。
「ったく、着替え無いのに。」
仕方なくパンイチになる。横を見るとクウちゃんもブラとパンティだけになっていた。後ろの誰かが口笛を吹いた。その気持ちめっちゃわかる。
「よし、二人は手錠で繋いで。地下に入れてろ。」
そんな時、チーンと金物の音がした。
周りが俺の足元の針金を見て黙り込む。
やっべ……。
「ああ、悪ぃ。それ俺のだわ。取ってくれるか?」
「全裸になれ。」
くそぅ
手首と足首に手錠を掛けられて地面に座ったまま放置された。まあ、これくらいならちょちょいのちょいか。
「どうしてくれる……。ブラがあればワイヤーを使って外せたのに、それにこんな体勢になるなんて……。」
赤くした顔で怒りをぶつけてくる。
うんうん、全裸のせいで非常に眼福。これだけは得したって言えるな。
「んな事言われても、俺だってまさか落ちるとは思ってなかったんだぜ?まあ、安心しなって。俺は脱出に関しても天才だ。」
余裕なのかなんなのか、見張りもいないとはな。
「それより、なんでお前捕まってんだよ。」
「……この廃墟を一時しのぎとして来たらヤツらがいて、隠れていたらやたらと息の荒い男に不意打ちされて捕まった。」
「えぇ……。」
「なんだその顔は。私だってまさか捕まるとは思わなかった。」
悔しいのか舌打ちをする。臭いで辿って来るのか。面倒な。
「それは後でなんとかしよう。とりあえず先にこれを外すか。」
「どうやって外すんだ。針金なんてないぞ。」
「任せろって。」
口をモゴモゴと動かす。え〜っと……あ、これこれ、やば、引っかかった。
舌で糸を突き出す。
「ひっはれ。」
「……なんだ?」
「ひっはれって、ん。」
「それは……口でか?」
赤い顔を更に真っ赤に染め、睨みつける。しゃーねぇだろ。
「ほは、はやふひろっふぇ。」
「……覚えていろ。
んっ、っく……ちゅっ」
最初は歯だけで取ろうとしていたが、難しいと判断してキスをしてくる。そのまま舌を上手く動かして歯で糸を噛むと引っ張る。
「やっほ、ほれは。」
「体の中に仕込んでいたのか……。」
「ほおほお。ぷっ」
布で巻いた針金を吹いてクウちゃんの後ろに回した手でキャッチする。
「……くっつくな。」
「見えないんだからしゃーねぇだろ。見ないとちょっと時間かかんだよ。」
「……。」
体を更に密着させてクウちゃんの肩越しに手錠を見る。
良かった、簡単なもんだ。
「カチャカチャッと、よし取れた。」
そのまま足の方も外すと一旦体を反転させてクウちゃんの手錠も外す。
「手際が良いな。」
「捕まるのも慣れてるからな。」
何度か首と肩を回す。
「先に装備を回収するぞ。」
「わかった。」
まあ、捕虜の装備なんて伝説の剣とかでもない限り雑に保管されているはずだから隣の部屋にでもあるだろ。
「ん。」
「わかった。」
それだけでクウちゃんが理解して隠れる。
俺も扉の陰に隠れる。
「へへ、先にあの女を好きに出来るなんてツイてやがる。」
「そうか、良かったな?」
陰から飛び出して後ろから首を絞める。
「俺達の装備はどこだ?」
「は、はなっ……せ……!」
「もう一度だけチャンスをやる。どこだ?」
「うっ……と、な……り」
「サンキュ。」
首を捻って折ると、クウちゃんが出てくる。
「行くぞ。」
「ああ。」
冷静そうに返してんのに、俺の後ろに隠れて体を隠してんの中々可愛いじゃねぇか。
「お、あった。サヤ、何かされたか?」
『システムチェック……オールグリーン。問題ありません。』
「救援は?」
『現状は連絡が取れていません。』
「しゃーねぇか。クウちゃん、そっち……は……あ〜……。」
隣を向いて見たクウちゃんが持っていたのは武器である鉈だけだった。
ぷるぷると震えて涙を滲ませて怒りを示すクウちゃんをなんとか宥めて、着ていたジャケットを着せる。
「これなら袖は長いけど、下まで隠れるだろ。」
「……ああ。」
袖が長くて萌え袖になっているそれをくんくんと何度か嗅ぐ。
「そんなに嗅いだってタバコの臭いしかしねぇよ。」
「お前の臭いがする。」
予想外の一言に動きが一瞬止まる。
「んん……それで、お前の服を持ってんのはまず間違いなくあのループスだろ。あれ多分発情してるぜ。」
「……はぁ」
「んで、クウちゃんがあいつに捕まったのはクウちゃん自身の女の臭いをあいつが感知したって感じだろ。」
「なら別行動か?」
「いや、敵の陣地でそれは悪手だ。
安心しろって、ちゃんと考えてっから。」
バッグからロングコートを取り出して着ると、前を開いた。
「ん。」
「……?」
「ん!」
「……何をすればいいんだ?」
「だから、俺に抱き着いてくれ。それで前を閉めたら臭いが紛れるだろ。」
クウちゃんの目が泳ぐ。理解はしているが、抵抗があるんだろうな。
「別になんちゃないだろ?さっきまでは全裸で抱き合ってたんだぞ?」
「それは、そうだが……。」
「なら、早くしろよ。俺らがいない事がバレるのも時間の問題なんだからな。」
「……わかった。」
クウちゃんが俺の脇の下に腕を回して、抱き着くと、足も腰に回した事を確認すると前を閉める。
「キツくなったら言えよ。ロープかなんかで括るから。」
「わかった。……すん、すん」
やたらと臭いを嗅がれてるけど、臭くは……ないよな?
道中の敵をナイフを投げたり刺す事で始末していると、鼻につく臭いがした。
「おいおい、マジか。」
「すぅー……ふぅー……どうした?」
「ああ、いや、気にすんな。」
ナイフを持ってない方の手で尻を持って支える。
そのままナイフをしまって、部屋を覗き込む。
「ふぅーっ!ふぅーっ!」
致しちゃってるよ……。
面倒だから早く済ませようとゆっくり後ろから近付いて首をへし折る。
「よっ、と。」
「ほぎゃっ!?うっ……!」
「え、ちょ、マジかよぉ……。」
男を横に退かせるとそこにはクウちゃんの服があった。……あったが。
「く、クウちゃ〜ん、一応取り返したけど……どうする?」
「ん〜……あ、ああ、わかった。」
ぐりぐりと鼻先を押し付けてくるクウちゃんを一旦コートから出す。
そして、男が出したアレがベッタリと付着した服を見て呆然とした。
「……くすん」
「……ビニール袋あるから、使うか?あの、そのジャケットもやるからさ。」
「……うん。」
「俺が入れとくから、な?」
「……うん。」
ティッシュでも触りたくはないがをなるべく取り除きビニール袋に入れる。
「終わったぞ。」
服を入れ終えてからクウちゃんを見ると口から魂が抜け出ていそうな顔をしていた。
「……入るか?」
「……。」
なんとなく空気を和らげようとコートを開くと、戦闘時とはかけ離れたのそのそとした動きで入ってきた。
なんだって敵地で別の敵である相手の世話までしなきゃならないんだ……。
大きくため息を吐いて歩き出した。
「ほいっ」
「ぐがっ!?」
「そら」
「ぎゃっ!?」
「えーいっ」
「たわばっ!?」
気配を消して首をへし折っていく。我ながら惚れ惚れする手際だぁ……。
まあ、クウちゃんが張り付いてなけりゃもっと手際が良かったんだが。
「そろそろ機嫌直してくれると助かるんだけど?」
…………返事がない。完全に拗ねちゃってるよ。
「もうちょっとでボスっぽいレプロパの所だぞ?」
「……仕方ない。」
やっと出てきたか。……ん?なんか妙にホカホカしてね?そんなに暑かったっけ。別に汗とかかいてないはずだけど。
「まあいいか。」
目の前の扉から話し声が聞こえる。リーベリの男の声が聞こえないな。お喋りでも無さそうだったし黙ってんのか?
「ぶちのめしだオラァ!」
「……オラー」
扉を蹴破って中に入る。
「なっ!?てめぇらどうやって!?」
「はっ、あんなもんで俺を捕まえられると思うなよ?」
「私のお陰だ。」
「ここは俺を褒めるとこだろ?」
「お前が針金を落とさなければあんな事をしなくて良かった。文句はあるか?」
「なんも。」
降参して両手を上げると刀と銃を抜く。
さてと、どう動く━━━━風の音が聞こえてきて、その方向に数発撃つ。
「やっぱ隠れてたか。」
「やはり無理か。」
俺の死角になる窓にボウガンを構えたリーベリの男がいた。
「で、やるか?」
「……やめておこう。憧れに殺されるのは悪くないが、まだその時じゃない。」
「へぇ、俺が憧れか。ラテラーノにいたか?」
「噂と本だけだ。まさか本物に会えるとは思ってなかった。」
「こんな時じゃなけりゃサインでも書いてやったんだけどな。残念だけど次回だ。」
「お、おい、話が違うだろ!?お前を雇うのに幾ら使ったと思ってる!?」
リーダー格が話に割り込んでくる。なるほど、雇ってたのか。
リーベリの男が不快そうに眉間に皺を寄せた。
「俺は自分の命は安売りしない。」
「な、ならもっとだ、もっと出してやる!」
「幾ら積まれても断る。」
「くっ……ふざけやがって!」
「また会おう。」
リーベリの男が窓から外に出て行った。
さてと……。
「やるか。」
「ああ。」
「舐めんじゃねぇ!あいつなんかいなくたってやってやる!お前ら、やれ!」
男達が襲いかかってくる。それをのんびりと眺めているとクウちゃんが動き出した。
「私があいつを殺る。」
「じゃあ俺は露払いだ。ほら、さっさと来な。」
クウちゃんの姿が掻き消えると銃と刀を納刀めて居合の構えで待ち構える。ちょっとした練習をさせてもらおうか。
「クソッ!く、来るな!お前らそんな女、とっとと止めろ!」
ああ、イライラする。
ただでさえあの変態のせいで捕まった上に服をダメにされてイライラしているのに、妙にクセになってしまったあいつの臭いを嗅いで妙な温もりを感じる時間まで邪魔をするなんて。
「ど、どこに!?……ぎゃっ!?」
すぐ近くにいた男の後ろにアーツで移動して首を狩る。
「連発出来ないはずだ!」
「全員でかかれ!」
三人同時に男達が迫って来るのを構えもせずに眺めていると発砲音がして三人とも額から血を流して倒れた。
何も言わなくてもスムーズに連携を取れるのが心地よい。あいつが敵じゃなければ良いのに。ああでも、前に戦った時の殺気も今なら悪くないと思える。
どこか浮ついた気持ちで鉈を構えてリーダーの男の目の前まで歩くと覚悟を決めたのか剣を抜く。
「こ、こうなりゃ、俺の手で……!」
振り下ろす刀はあいつと比べればまるで遅く、横から払ってやればすぐに体が泳いだ。自分で戦うことは少なかったのだろう。
そのまま返す手で首を刎ねた。
「……弱い。」
「そりゃあ所詮はチンピラ程度の連中だからな。」
振り返るとあいつ……ラックが気怠げに刀を担いでいた。その顔や服には返り血が付着していて、後ろには血の海に沈んだ男達がいた。
物足りない戦いだったが、多少の高揚感から鉈を持つ手に力が入る。このまま、こいつをここで殺してしまおうか。殺せばレユニオンにとっては利に働くが……私個人はどうだろう。殺せて喜ぶか、それとも、もうあの温もりが無くなることに悲しむのか。
「敵はもういないぞ。」
気が付けばラックが目の前にいて、手を握ると解くように鉈を取られた。
「これからこいつらの処理しなきゃなんねぇんだ。手伝ってくれるよな?」
「……ああ。」
そんな事を考えている間にすっかり体は冷めてしまって、処理を手伝い始めた。
外は雨だから死体を一部屋に集めるだけに留める。雨が止んだら燃やしてしまおう。
そのまま二人で食事を摂る。上等なもんはないが、暖まるくらいは出来る。
「そろそろ寝るか。」
少し疲れた。それに、もう夜になっているから昼との寒暖差で余計に疲れる。
「互いに反対の部屋で寝よう。それでいいな?」
元は敵同士。あまり馴れ合う事もないだろう。
「…………わかった。」
クウちゃんがガーンッ、と衝撃を受けたような顔をする。何かおかしい事言ったか?
「そうそう、さっき水が使えるところがあったからちょっとクウちゃんの服を洗ってくるわ。」
出来ればクウちゃんが寝た後に寝たいから少しでも起きとかねぇと。
「つめてっ……」
外出用の洗剤を使って洗濯をする。持ってて良かった。
にしても、ここはオアシスから水を引いてるみたいだ。枯れたりしないのか?
「どうした、クウちゃん。」
後ろから気配を感じて振り返らずに声をかける。少し動揺していたみたいだが落ち着くと後ろから抱き着いてきた。
「すぅー……ふぅー……」
「……そっちにオアシスがあったから汗流してこいよ。」
「……そうだな。」
背中から離れる。その時に横目で見るとどこかふわふわした様子で頬を染めていた。
「なんだ?」
訳がわからない。意図が読めない。今考えてもしゃーねぇか。
あの後水浴びをしたクウちゃんにシャツを渡した。流石にジャケット一枚じゃ寝ずらいだろう。
その後に交代で水浴びをした。
「寝袋は使っていいからな。」
「寒くないのか?」
「自分の格好を見て言え。俺は大丈夫だ。」
タオルケットを掛け布団代わりにすれば良い。
「すまない。」
「気にすんな。んじゃ、おやすみ。」
「おやすみ。」
ランタンを持って自分が寝る部屋に向かう。
「サヤ、雨は止みそうか?」
『予想では朝には止んでいるはずです。』
「ならいい。おやすみ。」
『おやすみなさいませ。』
転がって目を瞑る。流石に少し冷えるな。
「……。」
寝転がって十分程したくらいか。後ろから衣擦れの音が聞こえて目を覚ます。
警戒し過ぎかと思ってたが、してて良かった。
仕掛けてくるなら相手になってやる。
そのまま目を開かずに待っているが、殺気も敵意も感じない。妙だと思っていると上に乗ってきた。
「ふー……ふー……」
息が荒い。なるべく抑えようとしているみたいだが、漏れている。
直接危害を加えてくる訳じゃないのか?
そのままどんどんと息が近くに聞こえてきて、そのまま俺に跨って胸元に顔を押し付けた。
……………………んん?
「すん、すんすん……すぅ〜〜〜〜」
こいつ、俺の臭い滅茶苦茶吸ってやがる。え、マジで何?そういうフェチ?
「何してんだ。」
じっとりとした目でクウちゃんの見ると随分と動揺していた。
「……私は悪くない。」
「いや、責めてる訳じゃなくてよ。」
「お……」
「お?」
「お前が、悪い。」
この野郎、俺に押し付けやがった。
「はぁ……好きにしろよ。」
これ以上考えても意味が無いとまた眠る為に目を瞑る。
「好きにしていいのか?」
返事をする前に口をキスで塞がれる。
「はむ、ふっ……んんっ……ちゅっ」
「……なんのつもりだよ。」
「好きにしていいって言った。」
「限度ってもんがあんだろ。ほら、満足したろ?とっとと離れな。」
「やだ。」
眉間に寄った皺を揉む。なんだってこいつは……いや、待てよ。こいつの種族ループスだっけ。
ループス……テキサスとラップランドと一緒かぁ。いや、種族だけで決めつけるのは良くねぇけどさぁ。
「は・な・れ・ろ!」
「い・や・だ!」
俺の腕の上からしっかりと抱き着いて離れようとしない。
「めんどくせぇな……もうなんでも好きにしろよ、全く……。」
むふーっ、とどこか満足そうな顔のクウちゃんに頭を抱えたくなる。
こいつ前に殺し合ってた事も忘れてんじゃねぇの?
前は切れ者だと思ったが、思っていたよりもポンコツだったらしい。
カチャカチャと音がして見てみると、クウちゃんがベルトを外していた。
「……?大きくなってないぞ。」
「当たり前だろ。俺、お前、敵同士。」
クウちゃんが困ったように唸る。こっちが困ってるんだが???
「わかった。」
「よし、ならさっさと寝床に戻って……何してやがる?」
服を脱ぐと抱き着いてきて、首や頬にキスをしてくる。
「これなら興奮するだろう?」
「……つまり、なんだ?お前、俺が好きなのか?」
「わからない。」
「わかんねぇのかよ。」
結局なんなんだと大きくため息を吐いて、クウちゃんを見ると、どこか不安そうな顔で俺を見ていた。
「…………あー!もうわかった!わかったよ!ヤるよ!だからそんな顔すんなって!」
ここまでされといてヤらないとか男として失格もんだろ。
頭の中でスイッチが切り替わる。さっきまでの張り詰めていた心にゆとりが出来た。
「よっと。」
少し抱き上げてバッグから大きめのタオルを取り出すと、その上にクウちゃんを寝かせる。
「こっからはもう我慢しねぇからな。」
歯を剥き出して笑うと顔を赤らめて横を向いた。
「で、できるだけ優しくしてくれ。」
意外と初心なんだな、と思いながら顔を近付ける。
「やだ」
そのまま強引に唇を奪った。
「んー!?」
ええい、鬱陶しい。キスしたまま、ばたばた暴れるクウちゃんを抱き締める。
「ほぁ、くひあけろ」
「はぷっ……んっ……れる……」
舌も入れてディープキスに入ると、クウちゃんも全身で抱き締めてきた。
それに気を良くして、クウちゃんの背中に回した手で背筋と尻を撫でる。
「んぅ……そ、こはぁ……」
「うるせぇ、まだキスしてるだろ。」
「んふぅ……」
尻を少し堪能してから手を離して今度は頭を撫でると、どんどん顔が蕩けていく。なんか目にハートが見えてきたな……。
「はぁっ……この臭い、すきっ、すきすきすきぃ……」
バチンッ、とスイッチが完全に切り替わった。こんなにも可愛く求められたらたまったもんじゃない。
「も、もっと……ちゅーしてくれ、ちゅー」
「はいはい。」
「ん〜っ……!れぁ……あむ……」
……そろそろ良いだろ。
口を離すと下を脱ぐ。
「そっちも準備万端なんだろ?緊張すんなら、臭い嗅いでな。」
「すぅー……」
やれやれ、本当に気に入ってんな。
苦笑いを浮かべて体を動かした。
「……あっつ。」
ジリジリと焼けるような暑さを感じて起きる。
「昨日ヤるだけヤって寝たんだっけ。」
胸の上を見るとクウちゃんが気持ち良さそうに寝ていた。
「おい、そろそろ起きろ。」
「……おはよう。」
目を覚ましてぼーっと上目遣いでこっちを見ると恥ずかしそうに目を逸らした。
「暑いから水浴びするぞ。……動けるか?」
「無理。」
ぐっ、と首に抱き着いた。
何度か頭を搔くとクウちゃんを抱き上げた。
……あっつい。
「すんすんっ」
気に入られちゃったなぁ。
そのまま水浴びを終えて、服を着る。クウちゃんも乾いた服を着た。
貸した服を取ろうとすると、パッと取られた。
「……あー、返してくれるか?」
「嫌だ。」
「お前なぁ……いや、おい待て。貸したのよりも多くないか?」
シャツとジャケットのはずだろ。
バッグの中を確認すると、着替えが一部無くなっていた。……下着が、ない。
「おいこら、サラッと盗んでんじゃ━━━━」
振り返ると既にクウちゃんがいなかった。
「……やりやがったな、あんにゃろう。」
大きくため息を吐く。やっぱりあの時密着せずに置いて行動すりゃ良かったな。
「性癖開拓しちゃったかぁ。」
諦めて荷物を持ってロドスに戻った。
「疲れた。」
『本日は湯に浸かってリラックスした方が良いでしょう。』
「そうだな、今日は大浴場に行くか。」
自室に荷物を置いてサヤだけ持って食堂に向かう。
飯食ったら風呂入ろ。
「……誰だ!」
刀を半分抜きながら振り返る。
「なんだ、レッドか……。」
ふぅ、と息を吐く。
「どうした?何か用か?」
「どうして、オオカミの匂いがする?」
心臓が跳ねる。そういや、レッドってクウちゃんの事狙ってたよな?
「あ〜、出先でループスと会ったからだろ。」
俺の周りを回ってジロジロと見ながら時折匂いを嗅ぐと顔を顰める。
「……そろそろ、良いか?」
「わかった。」
あっさりと背中を向けると俺の向かう方向とは逆方向に歩いていく。
ケルシーに報告されてそうだ。
「しゃーねぇか。」
諦めて食堂に向かい、飯を受け取ると席に座る。
「……おい。」
「ん?」
黙々と食べていると、肩を掴まれた。振り返るとおっかない顔をしたテキサスとラップランドがいた。
二人でいる事に珍しいなと思っていると、奥にエクシアを見つけた。いつも通りテキサスにラップランドが絡んでたのか。
「どうしっ……!?」
肩を掴む力が強くなる。なぜ急にこんな事をするのかと思っていると二人が両隣に座った。
「ラック、この臭いはなんだ?」
「ボクの知らない所で何してたのかな。」
……これだからループスは!!
この後必死に弁明した結果、なんとか許された。
・その後の一幕
「ジェイ、いるか?」
「あ、旦那、丁度良かった。お客さんが来てやすよ。」
「客?ああ、お前か。」
「このあいらぶりらな。」
もごもごとジェイの料理を頬張りながらリーベリの男が手を挙げた。
隣に座って、ジェイのおまかせで酒と飯を頼む。
「どうしたんだ。」
「んぐっ、仕事がない。」
「斡旋してほしいって?軽く殺り合ったのに都合良すぎじゃねぇか?」
「あんたならよっぽどでもない限り気にしないと思った。」
「へぇ、そう思った理由は?」
「……なんとなく?強いて言えば、ずっと殺し殺される世界にいたんだから今更気にしないだろうと思ったからだ。」
「ふぅん?」
カウンターに肘をついて男を見る。
さてさて、どうすっかなぁ。正直悪くない話だと思っている。そこそこの強さもあるし、俺が配達で離れている間に動いてもらうのも悪くない。
「いいぜ。雇ってやる。契約内容は……龍門の警備みたいなもんだ。自由に動かせる部下の一人が欲しかったんだ。」
「構わない。」
「よし、成立だ。」
「あのー……俺が横から口挟むのもおかしいんでしょうが、そんな簡単に決めちゃっていいんですかい?」
ちょっと気まずそうにジェイが酒と飯を出してくる。
「いいんだよ。なんとなくだけどな。」
「ちょっと不安になる言い方しないでほしいんですがね……。」
「まあ、もしもの事があったら俺が責任取るから気にすんな。」
「はぁ、まあ旦那がそういうならいいんですが。」
そう言ってジェイが離れていった。
「んで、金額としちゃこんなもんでどうだ?」
端末に数字を打ち込んで見せてやると少し驚いた表情を浮かべた。
「警備だけで良いのか?」
「ああ、結構この街も荒事多いから忙しいと思ってな。それと、この街の掟で殺しはナシだ。いいな?」
「わかった。」
「よし、じゃあ就職祝いだ。この店は奢ってやるよ。んで、この後は風俗行くぞ。」
「……は?」
なんでと言いたげな顔をする。
「なんでって、そりゃあお前俺の事知ってんだろ?そういう事だ。別に経験ない訳でもねぇだろ?」
「それはそうだが……わかった。」
「んじゃ、もっと精をつけねぇとな。ジェイ!追加頼む!」
「わかりやした。」
「……思っていた以上にクセが強そうだ。」
「そうだ、お前の名前、コードネームでもいいや、教えてくれ。」
「特には決めていないんだが……じゃあローニンにしよう。」
「んじゃ、よろしくな。ローニン。」
手を差し出すと、少し躊躇いがちに握手をした。
R-18版の内容が思い付いたんでそろそろ書きます。
皆さんが見たかった物ではない可能性がかなり高いですがテスト品として見てもらえれば嬉しいです。
R-18版読んでみたいですか?
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もっとエロいのが読みたい。
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このままチキンレースで良い。
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もっと健全にしろ。