酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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五話:訓練中のお触りは事故だから

 

 

 

「訓練の相手ぇ?」

 

朝っぱらから呼び出したと思えばそんな事かよ。

 

「ああ、メランサの訓練に付き合ってあげてほしい。元々はチェンがしてくれる予定だったのだが、近衛局で急ぎの仕事が入ったらしいんだ。」

 

「だからってなんで俺が……。」

 

「どうせやる事もないんだから良いだろ?」

 

「はっ!俺はどこにいようと引っ張りだこな男だからな。歩くだけで女の子が声を掛けてきちまうのさ。」

 

しかし、たまにはドクターの頼みを聞くのも悪くない。

 

「そうだなぁ。じゃあ美味い酒を一つでどうだ?」

 

「見返りと言う事か?……まあ、良いか。

じゃあ頼んだぞ。」

 

「あいよ。」

 

まあ、やるって決めた事だし、しっかりとやってやるか。

 

 

 

 

「よ、よろしく……。」

 

「おう、よろしくな。」

 

ふわり、と鼻に何か良い匂いが着く。

くんくん鼻を鳴らしく辿ると目の前のメランサからしているみたいだ。

 

「……あの。」

 

「失礼レディ、少し髪を触らせてもらっても?」

 

しゃがんで目を合わせて頼む。

何度か目を泳がせてぎゅっと目を瞑る。

 

「えっと……少しだけ、なら。」

 

「悪ぃな。」

 

言葉に甘えて、髪を少し纏めて嗅がせてもらう。

ほお……これは素晴らしい。甘い匂いが嫌に残る程でもなく過ぎ去る。もっと嗅いでいたくなるような……。

 

「あ、あのっ……。」

 

「え?あ、ああ、俺とした事がすまねぇ。」

 

気付けば軽く抱き締めるような格好になっていた。

ふむ、魔性の香りと名付けよう。

 

「詫びとして今度何か持ってこよう。甘い物は好きか?」

 

「その、気にしなくても……。」

 

「いやいや、レディに不躾な態度を取ったんだ。是非受け取ってほしい。」

 

そう言ってもおろおろとして返事が返って来ない。

ああ、なるほど。

 

「メランサ、俺の為にも受け取ってほしい。ダメかい?」

 

「……わ、わかりました。」

 

「サンキュな。んじゃ、真面目にやるか。」

 

今日は刀だけでやったほうが良いか。

 

「好きに来い。」

 

「いきます!」

 

踏み込んで袈裟斬りに斬り込んでくる。

弾かず受け流すように刀を滑らせる。

そんな攻防を繰り返していくうちに気付く。

剣の腕は悪くない、むしろかなり良いと言える。型がしっかりしているからどこかで習っていたのか?

 

「はあ!」

 

メランサの突きに合わせて刀を手首で回して剣を上に弾く。

 

「あっ……!」

 

「一旦ここまでだ。」

 

落ちてきた剣を左手でキャッチして返す。

 

「なんつーか、王道の剣って感じだな。」

 

そう言うと耳と尻尾が落ち込んだように垂れ下がる。

 

「あ、いや、悪く言った訳じゃねぇんだ。勘違いさせちまったな。

王道ってのはまっすぐ、綺麗な戦い方って事だ。そのまま突き進んだって構わねぇよ。

でも、そうだな。搦手を使う相手を想定した戦いをしてみるか。」

 

「搦手、ですか?」

 

「ああ、まあ、やってみるからいつも通りに戦ってみな。」

 

銃弾をペイント弾に変えて装填しながら距離を取る。

 

「さあ、どこからでもいいぜ。」

 

「ふっ……!」

 

俺よりも小さな身長を活かして姿勢を低くして潜り込みながら剣を振り上げる。

 

「っおっとぉ!」

 

上に弾かれた風に後ろに下がると距離を詰めて来る。

その時に奥歯に仕込んだカプセルを口の中で外し、潰しながら吹き出す。

メランサへ飛んでいくと煙を出した。

 

「きゃっ!?こ、これは……。」

 

「俺特製の煙玉だ。

ん〜っ……この香り、クセになるぜ。」

 

メランサの後ろに立って長い髪から香る匂いを堪能する。

 

「くっ!!」

 

「うぉっと、危ねぇ危ねぇ。」

 

「やあ!」

 

「ほいっと!」

 

振り下ろされた剣を靴の裏で受け止めて後ろに流す。

 

「靴裏に鉄板仕込んでんだ。どうよ、びっくりした?」

 

「まだまだ……!」

 

一心不乱に振る剣を避け、タイミングを図る。

 

「…………ここ!」

 

パンッ!とねこだましをすると目を白黒させてふらつく。

 

「とある暗殺者が使っていた技だ。俺じゃあ完全には出来ないな。」

 

手を引き、抱き留める。

 

「よし、ここらでやめとくか。あんまり根を詰めても良くないしな。」

 

「はぁ……はぁ……はい。」

 

「お疲れさん。」

 

軽く頭を撫でる。労いの意味もあるが……ふへへへへ、綺麗な髪してんなぁ。

 

「メランサちゃんどこに行ったんだろ……へ?」

 

「きっと、散歩しているんじゃ……え?」

 

訓練室の扉を開けて行動予備隊A4の面々がやってきた。

ん?よく見たらカーディって前にアンセルを相手にした女の子に似てる気がすんな。本人も気まずそうにして顔を赤くしてやがる。

 

「おっと、そんな事よりもこの状況は良くねぇ。」

 

「メランサちゃんに何をしているんですか!!」

 

すぐに戦闘態勢を整える。よく訓練しているな。

 

「待て待て、お前ら勘違いしてるぜ?

アンセル、お前からも言ってやってくれよ。一緒に遊んだ仲だろ?」

 

アンセルとメランサを除いた三人が目を向ける。

 

「ちょっと!それは内緒だと……!」

 

「あれぇ?そうだっけ?」

 

「アンセルくんズルいよ!私も混ぜてよー!」

 

「カーディ、彼がまともな遊びをしたと思うか?」

 

「メランサちゃんを離してもらえますか?」

 

ふむ、女性を盾にする趣味は無いが離せと言われると離したくなくなるもんだ。

 

「んじゃ、捕まえてみな。」

 

脇に抱いて刀を構える。

 

「え……え?」

 

「さ〜て、仲間が攫われそうだぞ。お前らどうする?」

 

「メランサちゃんを返して〜!」

 

「むっ。」

 

そうか、メランサが前衛だからカーディが出るしかないのか。

 

「やあ!」

 

「ほっ、と」

 

変わった武器だ、トンファー?

 

「ふん。」

 

「効かないよ!」

 

「うおっと!?」

 

足を狙って矢が来たのを後ろに下がって躱す。

奥の方でアーツを使おうとしているスチュワードの手を撃って杖を弾く。

 

「あっ!?」

 

「お前には仕事させねぇぜ?」

 

仕事されたら厳しくなっちまう。

ポケットからある物を取り出して火を着けて投げる。

 

「カーディ!警戒を!」

 

「うん!」

 

少ししてバチバチと音が鳴る。ただの爆竹だが、耳の良い種族は混乱する。

 

「カーディちゃん、下がってください!」

 

「っ、うん、ありがと!」

 

チッ、隙をアドナキエルが埋めてきたか。

このままじゃ、ちょっと良くないな。障害物もないから逃げ場がない。

 

「とんずらするか!」

 

訓練室の扉を蹴破って通路に出た、その瞬間壁に貼り付けにされた。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「テ、キサス!?」

 

やっべ、ペンギンとこの社員じゃん!

こいつはヤバいと縫いとめられたシャツを脱いで上半身裸で逃げ出す。

 

「逃がさない。」

 

逃げ道へアーツで出来た剣が刺さる。

 

「チィッ!」

 

二刀流の連撃を捌きながら降り注ぐアーツも避ける。

 

「やっ……べ!?」

 

こういうアーツとの相性悪ぃんだよ!

ハンドガンを手首を狙って撃つ。片方の剣を弾く事は出来たが、降り注ぐアーツは変わらない。

 

「あらよっとぉ!!」

 

アーツを足場に跳んで、縦にくるりと回転してのかかと落としは剣で受け止められる。

 

「なんとびっくりっ!」

 

「くっ……。」

 

器用に蹴り足を回して逆の足で蹴り飛ばす。

 

「こいつでどうよぉ!」

 

首を狙って気絶させようと踏み込んだ瞬間、ガクンと体が止まる。

足元を見るとアーツで裾を地面に縫い付けられていた。

 

「やっ…………」

 

側頭部に衝撃を受けて視界が真っ黒になった。

 

 

 

 

「いっつぅ………。」

 

頭が割れそうなくらいに痛む。

俺の部屋か……何があったんだっけ?

サクッと音がして、そっちを見るとテキサスが座って菓子を食っていた。

 

「て……めむぐっ。」

 

ずぼっと口に菓子を突っ込まれる。

 

「エネルギーの補給は大事だから。」

 

一理ある。サクサクサクサクとすぐに食べて口を開こうとすると菓子を突っ込まれる。

黙って食えってか。まあ、美人に食わせてもらうってのも悪くない。

 

「あ〜!?ちょっと、テキサス!何してるの!」

 

「別に、食べたそうにしていたからだ。」

 

不満げにエクシアが文句を言う。

 

「折角アップルパイ焼いてきたのに……。」

 

悲しそうに眉を下げる、手元には切り分けられたアップルパイがあった。

 

「……寄越せ。」

 

手掴みでアップルパイを取って頬張る。昔から変わらない優しい甘さだ。

 

「ふん、甘いな。」

 

「……美味しい?」

 

「昔と変わんねぇよ。」

 

「そ、そっかぁ!じゃあまだまだ余ってるから持ってくるよ!」

 

バタバタと部屋を出ていく。慌ただしいやつだ。

 

「エクシアは。」

 

「あん?」

 

「ずっとラックを探していた。遠くをモスティマが、近くをエクシアで分担しながら。」

 

「何が言いてぇんだ?」

 

「……もっと、見てやってほしい。あれでも私の相棒だからな。」

 

少し言いづらそうに言う。口下手かよ。

 

「んなの、わかってるっての。」

 

「二人とも!途中でモスティマ見つけたからみんなでパーティしない?」

 

エクシアがやってきて部屋がまた騒がしくなる。

 

「わかったから、少し落ち着け。」

 

「でも、ラックが来てからまだパーティしてないでしょ?リーダーや他のみんなも呼んでパーッとやろうよ!」

 

テキサスと顔を合わせてため息を吐く。

 

「しゃーねぇなぁ。ただ、ドクターやアーミヤに怒られるだろうから宥めるの手伝ってくれよ?」

 

「そのくらいなら任せてちょ。」

 

よし、これでお叱りが軽くなるな。

テキサスから胡散臭いやつを見る目で見られるが無視無視。俺はめんどくせぇのが嫌なんだよ。

 

「んで、むぐっ、お前はどんだけ菓子を食わせてくんだ?」

 

「何となく。」

 

そうかよ、ならこっちだってやるからな。

差し出されたポッキーに齧り付いて、手を掴むとサクサクと食べて行き、持っていた指を咥える。

 

「っ!」

 

ちゅうちゅうと指を吸ったり、甘噛みをして、最後に軽く舐めて放す。

 

「何を……。」

 

「いんや、指にチョコが付いてたんだよ。ご馳走さん。」

 

舌なめずりをして、手を掴んで引き寄せる。

 

「今度はこっちも食べてみてぇな。」

 

テキサスの唇にぷにりと指を当てる。

 

「こっちにもチョコ付いてるかもしれないぜ。」

 

口を開いて近寄ると顔を押し退けられる。

 

「それは出来ない。」

 

「んじゃあ……こいつはどうだ?」

 

テキサスの持ってきたポッキーを一本取って口に加える。

 

「ポッキーゲームふぁ、こえならパーフィーっぽくていいひゃろ?」

 

それでも顔を逸らされる。

 

「そいつは残念だ。」

 

随分お堅い事で。

 

「じゃあ、こいつは俺が勝手にやり返すだけだ。」

 

手を引いてベッドに押し倒して、手首を押さえ付ける。

 

「久し振りに思ったんだけどよ、俺って結構負けず嫌いなんだよ。」

 

女性に手を出すのは気が引けるが、真正面から、それも剣で負けたせいで珍しく腹が立っているみたいだ。

 

「それじゃ、いただきま〜「リーダー!こっちこっ……って何してるのさ!?」おっと、こいつはまずい……。」

 

言い訳なんて通じる訳ないけど、まあ、とりあえず。

 

「ちょっと足が滑っちまってさぁ。ははは!」

 

「押し倒された。」

 

即言われた。

 

「…………まず、テキサスは美女だ。ドクターもそう思うだろ?」

 

「え?あ、ああ、それは分かるが……。」

 

「そんな美女を押し倒さない理由があるかぁ?いや、それはねぇだろ?

つまり、これは不可抗力であり、必然ってことだぜ。」

 

「そう……なのか?」

 

「ドクター、騙されちゃダメですよ。

ラックさん、覚悟はよろしいですか?」

 

「……お手柔らかに頼むわ。」

 

そして、今日二度目のブラックアウトを経験した。

 

 

 







一話を短くして投稿頻度を短くしていくスタンスで。

今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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