「ふ〜む……」
ロドス内でぼんやりと通路を眺めながら思案する。さて、どうしたものか……
「あれ、ラックどうかしたの?」
「ん、フランカか。……ほほぉ」
じっと上から下まで見る。
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「ちょっと酒でも飲みに行かないか?」
「お酒?別に良いけど……」
「まあ、その前にちょっと面倒なパーティに参加する必要があるんだけど、良いか?」
要するに付き人みたいなもんだ。
「それ、あたしが偶然通り掛かったからよね?」
「そうとも言う。でもフランカが適任とも思ったぞ。美人で強くて礼儀作法とかなってそうだし。しかも美人」
「二回言う必要はあった?」
「大アリだろ」
「ふ〜ん……わかったわ、行くわよ。それで何時から?」
「これから」
「え?」
フランカの手を掴んでロドスを出ると、待たせていた車に乗り込んだ。
「えぇ〜!?」
ドアを閉めると車が発進して、エンジン音とフランカの叫び声だけが響いた。
「ちょ、ちょっと、急に着替えさせられたんだけど……」
「おお、よく似合ってるな」
スーツに着替えて、フランカを待っているとドレスを着たフランカがやって来た。源石が見えないようにはしてくれているな。
「行くぞ」
「……うん」
肘を曲げるとフランカが腕を組み、エレベーターに乗り込んだ。
「おお、ラックさん!遅いから来ないかと思いましたよ」
エレベーターが着いて会場に入ると、小太りの男が護衛を連れて歩いてきた。
「すみませんね、ちょっと色々と用事が立て込んでいまして」
「ははは、大変な様ですな。おや、そちらのお嬢さんは本日の付き人ですかな?」
「ええまあ、そんな所です。」
「いつも違う女性を連れていて羨ましいですなぁ、私もあやかりたいものです」
「ははは」
フランカに向けて舐めるような視線を向ける男から守るようにフランカの腰を抱き寄せた。
「では、一先ずこれで。他の方への挨拶もあるので」
「ああ!申し訳ないですな。それではまた。お嬢さんも」
「え、えぇ」
男の視線が外れるのを感じるとため息を吐く。あ〜〜〜めんどくせぇ〜〜〜。
「これってどういう事なの?」
「面倒なパーティがあるっつったろ?龍門にある企業の社長やらとの集まりだ」
「ゆっくり飲めなさそうなんだけど……」
「テキトーな所で抜けっから、少しだけ我慢してくれ。ここ、良い酒があるんだよ」
「今回だけにしてよね?」
「わかってるよ。流石にこんな面倒な事に二回も呼ばねぇ」
「お、ラックさん!是非こちらへ」
急いで笑顔を貼り付けると声を掛けられた方へ歩を進めた。
それからも入れ替わりで色々な人と話していると、給仕の少女が歩いてきて俺とぶつかってトレーの上の酒がスーツにかかった。
「きゃっ!?……ぁ、も、申し訳ございません!」
「おっと……ふむ」
これは……使えるな。
「大丈夫ですか!?」
「ええ、ただ酒がかかっただけですので」
「貴様、何をしている!」
周囲にいた金持ちの一人が少女に手を上げようとして、その手を掴んだ。
「まあまあ、その辺にしておいてください」
「しかし……」
「この娘への罰は私が与えておくのでご安心を。しかし、流石に汚れたスーツでは皆さんの前に立てませんね。本日はこれにて失礼させていただきます。」
口早にそう言って、少女の手首を掴んで会場を後にした。
「あ、あの……ラック様、本当に申し訳ございません……!」
今にも土下座しようとする少女を抑える。
「よぅし、偉いぞ!よくやった!」
頭をガシガシと撫でる。
「ふぇぁ……?」
「ただの口実でしょ?」
「当たり前だろ、あんなつまんねぇパーティにいつまでもいれるかよ」
やっぱりフランカはわかってたか。
「そう言えば、君は俺が拾った子だよな?」
「そ、そうです。覚えていてくれたんですか……?」
「まあな。弟と一緒にいた子だろ?ここでの生活はどうだ?」
「えと、皆さん優しいですし、とても可愛がってくださるので、楽しいです」
「そりゃあ良かった。にしてもさっきはどうしたんだ?」
「い、いえ、なんでもありません。私がどんくさくて……」
「おいおい、誤魔化さなくてもいいんだぞ?別に怒ってる訳じゃねぇんだ。ほら、言ってみな」
「あの……今日、弟の誕生日でして、祝ってあげたかったんですけど、仕事がありますし……」
「なるほどなぁ」
端末を見ると、もう遅い時間だった。
「よし、わかった。じゃあ俺が話つけとくから今日はもう帰りな?呼び止められても俺が許可したって言えばいいから」
「で、でも皆さんがまだ働いているのに私だけ抜けるなんて……」
「俺が良いっつったら良いんだよ」
そう言ってサイフを取り出して札を何枚か抜いて手に握らせた。
「それでケーキとか買って帰れ。まだ一応開いてる店はあるだろ。後ご馳走もな」
「う、受け取れません!こんなに!」
「受け取りなさい。命令だ」
「で、でもぉ……」
真面目な子だな。たまにはこんな日があっても良いだろうに。
最終手段として端末を取り出して電話をかける。
「あ、もしもしローニン?俺だ。今から送るホテルに車で来て女の子の荷物持ちをしてやってくれ。その後は好きにしてくれていい」
『わかった』
「だ、ダメです!ローニン様にも迷惑がかかってしまいます!」
「残念、もう切れた」
通話が切れた端末の画面を見せる。
「じゃあローニンに得意料理でも食わせてやってくれ。いいか、命令だぞ?腕によりをかけて作るんだ」
「うぅ〜……わかりました……」
「よしよし、良い子だ」
何度も振り返って手を振る少女を二人で手を振って見送る。
「良い子ね」
「だろ?俺らもそろそろ行こうぜ」
フランカの手を握り、エレベーターに乗って更に上階へと向かう。
「勝手にいいの?」
「ああ、ここのとは前から仲良くてな。一室だけプライベートで使わせてもらってんだ……上に上がるの面倒なのが玉に瑕だけど」
「相変わらず顔が広いわね」
「まあな」
エレベーターが開いて部屋に着いた。
「本当に私室みたいに色んな物があるのね〜」
「なんでもロドスに置いておく訳にもいかねぇしな。適当に座っといてくれ」
ジャケットとシャツを脱いでカゴに投げる。色抜けねぇだろうから捨てかなぁ。ちょっと気に入ってたんだけど。
なんて事を思いつつワインセラーから一本のワインを取り出す。
「これこれ、良いの見つけたんだよ」
コルクを抜いてワイングラスに注いでフランカの前の机に置く。
「ツマミは何が良い?保存が効くやつしかないけど」
「うーん、じゃあジャーキーでお願い」
「わかった」
ジャーキーを取って机に置き、自分のワインも注ぐと隣に腰を下ろす。
「んじゃ、乾杯」
「えぇ、乾杯」
チンと軽い音が鳴り一先ず匂いを楽しむ。いい香りだ。そして一口飲む。
「……うん、良いな」
「わ、飲みやすいわね」
ジャーキーを一つ齧ってまたワインを飲む。フランカもそれに続く。
気が付けば二人とも何度もおかわりをしてボトルが空になってしまっていた。
「もう無くなったか」
「え〜、残念。もっと飲みたかったわ」
残念そうにしてフランカが頭を俺の肩に乗せる。
「どうした?」
「ちょっと火照ったのよ」
「そうか」
フランカを抱き上げて膝に乗せる。
「前はもっと初心だと思ったんだけどな」
「……お酒が入ってないとこんなの無理だよ」
赤くなった顔を俯いて見えなくした。
「じゃあ酒を飲ませれば、また可愛い姿が見れるんだな」
「またそういう事言うんだから……刺されても知らないわよ?」
「今そんな話したってしょうもねぇだろ」
そう言って首にキスをする。フランカが身動ぎして俺の首に手を回す。そのまま首や胸もとに何度かキスを落とし、ドレスを脱がしていく。
「……やっぱり、恥ずかしいわ」
「すぐに気にならなくなる」
頬に手を当てて唇にキスをして抱き上げるとベッドへと運ぶ。
真っ白なシーツの上でフランカが誘うように熱っぽい視線を飛ばしてきていて、堪らず服を脱ぎ捨てて上に被さった。
翌日、二人してぼけっとした顔でロドスに戻った。朝早くだからまだ誰も起きていないはずだ。
フランカを支えるように腰を抱いたまま歩く。部屋まで送った方が良いだろう。
「あなた達……何をしているの?」
「「あっ……」」
リスカムとばったり出会ってしまった。
「昨日二人共見かけないと思ったら……!」
「ま、待って待って!これは……ね?」
「そ、そうそう、フランカにはちょっと仕事に付き合ってもらったんだよ!」
「なるほど……仕事でそんなに親密になるのね」
リスカムからバチリと音が聞こえた。
「まずっ!?」
フランカを横抱きにして逃げる。
「待ちなさい!」
「ご、ごめんってばー!?」
結局捕まって二人して正座で説教されてしまった。
・ある日の一幕
「……ねぇ、暑いんだけど」
「奇遇だな、俺も暑い」
ある日、俺が一人で歩いていると向かいからWがやってきて、そのまま流れで二人で歩いていると謎の箱に閉じ込められてしまった。
四角形の小さな箱で俺とWはほぼ密着状態になってしまっていた。
「どのくらい経った?」
「さあ?分からないわよ」
互いに互いの肩に顎を乗せて喋る。汗が流れてWの肩に染みる。
「連絡とか取れない訳?」
「取れたらとっくにやってる。サヤも持ってないしな」
「そう」
はぁ、とWがため息を吐く。呼吸や体を少し動かす度に胸が俺に当たり形を変えていく。
「えっち」
「なんとでも言え」
言われて少しムカついて背中を抱き寄せて更に密着させる。
「んっ……もう、乱暴ね」
「乱暴なのが好きなんだろ?」
そう言うと黙り込んでしまった。
なんか頭がぼうっとしてきたし、もうここでヤッちまってもいいんじゃねぇかなぁ。なんて思い始めてしまった。ただ、こんなにも狭いと服も脱げねぇ。
「おい、顔こっちに向けろ」
「何……んっ」
こっちを向いた瞬間に口を塞ぐ。逃げられないように後頭部に手を置いて、舌を絡める。
「ちょっ、と……んんっ……」
「黙ってろ」
「……ふふっ」
Wが目を弧にして笑った。
だめだ、Wを相手にするとどうしてもやり過ぎちまう。
次の瞬間、ばきりと音がして天井が開いて襟首を持って引き上げられた。
「よ、よう……スカジ」
「楽しそうだったわね」
「あーあ、残念。もうちょっと楽しめると思ったのに」
つまらなそうにWも箱から出てくる。
「……ん?まさかお前」
「なんの事かしら?」
や、やりやがったこの女!?自作自演か!?
「何の為だよ。普通に部屋に来てくれりゃあ俺は別に……」
「だってそれだとラックに余裕があってつまらないじゃない」
「……今度覚えてろよ」
「はいはい」
Wが去って行って、スカジと二人になる。
「ん?そういえばスカジはよく気付いたな」
「ラックの部屋に行ったらサヤが教えてくれたわ」
「そっか。助かった、ありがとな」
「良いわ。それじゃあ行きましょう」
「え、どこに?」
「訓練室よ。元々その為に探していたわ」
「……お手柔らかに頼むぜ?」
「ラック、大丈夫!?私の事わかる!?」
結局ぼっこぼこにされて通りがかったススーロに助けてもらった。
……当分二人には近寄らないようにしよう。
リクエスト回でした。大人の付き合いってこんなんで良いんか……?まあええか!くらいのふわっとした感じで書きました。
今後の読みたいと思う内容
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ラックの過去話や異格イベ等
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このままで構わん