酒を飲んで、女を抱く   作:黒色エンピツ

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五十六話:サウナ、それはまるで永久機関のようで

 

 

 

 

突然だが俺は今イェラグでサウナに入っている。

他のメンバーはいつものアンセル、バイソン、カランド三人組、ミヅキ、ドクターだ。

サウナに入っている経緯としてはロドスがイェラグで少し滞在する事になり、俺がサウナ作ろうぜ!と言ったらじゃあ作ろうという話になりマゼラン達エンジニアも巻き込んで立派なサウナが完成した。

当然ながら男女に別れているが、たまにニェンとかが全裸で入ってくる事がある。ちなみに事前に伝えれば貸切も可。

 

「そろそろ一旦出るか」

 

ぐったりとしたミヅキを抱き上げて外に出ると雪の中にミヅキを投げ入れてから自分も飛び込む。

 

「気持ち良いね……」

 

「そうだなぁ……」

 

火照った身体を雪が冷やす。しかしながら身体の芯はまだ温もりを持っている。

このままここで眠りたいくらいだが、それは流石に死んでしまうので数分してからサウナに戻る。

外気浴?残念ながら空気が無茶苦茶寒く、水風呂と同じくらいなので推奨しない。

 

「にしたって俺がいるからってついてこなくてもよかっただろ」

 

「だって、ラックさんがあんなに楽しみにしてたんだから僕だって気になっちゃうよ」

 

そう言うと笑みを浮かべる。

いちいち男心を擽る言動をするやつだ。

ペチンと軽いデコピンをして抱え上げる。

 

「戻るぞ。あんま外にいても体が冷え過ぎる」

 

「これがサウナの作法?って事はわかるけど、変なの。僕にはまだわかんないや」

 

「最初は大体そんなもんだ。ハマっちまうと自分からこのループを駆け回る事になるぞ」

 

サウナのドアを開けるとマッターホルンがクーリエとエンシオを抱えて出てきた。

 

「なんだ。もうへばったのか?」

 

「……うるさいぞ」

 

「今日は俺の趣味として主に付き合ってもらったんだ。仕方ないだろう。俺達はロドスに戻る」

 

「おう。あ、ピリ辛なスープとか作ってもらってもいいか?」

 

「ふむ……わかった。多めに作っておこう」

 

「んじゃ、また後で」

 

「ああ」

 

……全裸の男二人が全裸の男を抱えて向かい合うって冷静に考えたら変だな。

 

「へくちゅっ!」

 

「おっと、急げ急げ」

 

ミヅキがくしゃみをし事で慌ててサウナに入る。

 

「あ、おかえりなさい」

 

「おか……えり、なさい」

 

「……」

 

「アンセル、無理せず雪に飛び込んでこい。死ぬぞ」

 

「ま、まだまだ。まだ先が……」

 

「先見る前にポックリ逝くぞ。大人しく飛び込め」

 

「あい……」

 

「ついでにドクターも連れてってくれ」

 

アンセルが無言でドクターの足を掴むとそのまま歩き出す。座っていたドクターが引き摺り落とされて角で頭を打って動かなくなった。……生きてるよな?

 

「お前は相変わらず強いな」

 

「あはは、マッターホルンさんには敵いませんけどね」

 

「あれは別の生きもんだ」

 

ミヅキを座らせて被っているサウナハットを整えてやる。

それからまた数分。そろそろまた外に出るか。

 

「バイソン、お前も一旦出とくか?」

 

「んー、そうですね」

 

またしてもぐったりしたミヅキを抱き上げて外に出ようとすると先にドアが開いた。

 

「お、やってんな」

 

「ニェン……いい加減女性用の方に行けっての」

 

「あっちは私には温いんだよ」

 

前から俺の首に腕を回したニェンに座っていた場所へと押し戻される。

 

「バイソン、ミヅキの事よろしく」

 

「設備壊さないでくださいね」

 

なんで喧嘩するって決めつけてんだよ。

諦めて座るとニェンが水を石にぶっかけると一気に蒸気が部屋に充満した。

 

「まだ足らねぇのかよ」

 

「当たり前だ。私を満足させるにはもっと暑くなくちゃな。それとも、もう限界なのか?」

 

「ほぉ〜?俺と張り合うってか?」

 

「戦場から離れてぬくぬくしてるラックちゃんにはキツかったか?」

 

ピキッ、と青筋が立つ。

 

「上等だ」

 

俺とニェンの我慢比べが始まった。

 

「にしても思いつきでサウナを作っちまうとは、ロドスもやるじゃねーの」

 

「だろ?まあ、マゼラン達が手伝ってくれるとは俺も思ってなかったがな」

 

ニェンがさっき水をぶっかけた影響で体感温度が上がり、汗が吹き出す。こいつが入ってくる前からそれなりに長く入っていたからキツイ。

 

「おいおい、もう限界だないて言わないよな?」

 

俺の肩に腕を回して密着してくる。

ニェン自身の体温が元々高く、ミヅキが引っ付いてきた時よりもずっと暑い。

 

「はっ、言ってろ」

 

密着している事でおっぱいが当たっているが、正直感触を楽しむ程の余裕はない。

 

「けほっ……」

 

熱気で喉が乾燥する。

せめて水分補給でも出来れば別なんだが……。

……そこのロウリュ用の水でも飲むか?

 

「なんだ喉渇いたのか?」

 

「お前と違って長く入ってるからな……こほっ」

 

「しょうがねぇなぁ。分けてやるよ」

 

「何を──」

 

顔を掴まれてキスされた。

固まった俺をそのままに舌をねじ込んで唾液を流し込んでくる。

いや、確かに、確かに水分だけども……!

頭をぶっ叩いて押し退ける。

 

「なんだよ折角水分分けてやってるのに」

 

「もういい、十分だ」

 

「つれねぇなぁ」

 

つつっ、と指先で腿をなぞる。

 

「こんなとこで盛るな。お前は大丈夫でも俺が死ぬ」

 

「ちぇっ」

 

「ヤるにしても普通の部屋でヤらせろ」

 

「それだとすぐにシーが察知してきちまう」

 

「自分の妹をなんだと思ってんだよ」

 

「いやいや、マジなんだって。私がラックにちょっかいかけようとする度にシーが邪魔すんだよ」

 

「へー」

 

信じるか信じないかは置いておくとして、シーがねぇ。

今のあいつは俺の羽根に固執はしてないはずだが……ま、ニェンを止めてくれるんならそれでいいか。

ギャンギャン言うニェンは無視してぼんやりしよう。折角のサウナだ。……でも後どんくらいこの中にいる事になるかなぁ……

 

 

 

 

ポタリポタリと汗が滴る。横目でニェンを見ると流石に汗をかいていた。

どれくらい時間が経った……?

ふぅ、と息を吐く。

 

「なぁんかまだ温いなぁ。もっと上げるか」

 

ニェンがまた水を石にかける。

落ち着いてきていた蒸気がまた室内に充満した。

あっつ……

 

「もちろんまだまだいけるよな?」

 

「誰に物言ってやがる」

 

蒸気が体中にまとわり付き、熱気を体内に閉じ込める。

本音を言えばもう外に飛び出したい。でもニェンに負けた気がして嫌だ。

つーか暑いのはニェンがずっと俺に密着しているのも原因だ。

サウナの中でくっ付いてくんな。しかも定期的に誘ってくんな。だからサウナの中は死ぬっつってんだろうが。

かなり際どい所まで触ってきているが今の俺は整いにより意識がワンランク上の場所へと飛んでいっている。そんな事をしても無駄だ。……ずっとこん中だからもう整ってるもねぇけど。

こうなったら目を閉じて精神を整え──

 

「ふぅー」

 

「うひっ!?」

 

──ようとした瞬間にニェンが耳に息を吹き掛けてきた。

 

「お前な……」

 

「精神統一とかいうツマンネー事しようとしたお前が悪いな」

 

「構ってちゃんめ……」

 

ジロリと見るとケラケラと笑った。

相手にするだけ無駄という事はわかっているが、相手にしなかったらしなかったでめんどくせぇ。

ん……マズいな。目眩がしてきた。

クッソ、流石に純粋な肉体じゃニェンには勝てないか……。

 

「ん?おいおい、どうした?限界かよ」

 

「……あ?なんか言ったか?まあいいや。ちょっと俺はもう出る。限界だ」

 

立ち上がった瞬間に膝から崩れ落ちてしまう。

やばい、目の前が歪む。

 

「はぁ〜、しょうがねぇなぁ」

 

誰かに持ち上げられる。多分ニェンだろう。

そのまま歩き始めると意識が落ちた。

 

 

 

 

「……くらくらする」

 

目を開くと目の前にはおっぱいがあった。

 

「起きたか?」

 

ああ、そういえばニェンとサウナで我慢比べしててぶっ倒れたんだっけ。

 

「ここ、お前の部屋か?つーかなんでまだ裸なんだよ」

 

「お前だって裸だぞ」

 

「……確かに」

 

いや、せめてタオルかけといてくれるとかさ。まあ、してくれないだろうけど。

 

「んじゃ、起きたし俺は帰る」

 

「まあまあ、待てって」

 

起き上がろうと体を起こすとニェンが前のめりになり、むにゅりとおっぱいに顔を埋める事になった。

 

「むが……」

 

「くすぐってーな。喋んなよ」

 

体を戻りして膝枕に戻る。

 

「なんだよ。用っつってもお前の目当てはサウナだったろ?」

 

「サウナで気持ち良くなったら次にヤる事と言えば決まってんだろ」

 

ニェンの左手が俺の腹筋で撫でながら下腹部へと滑る。

 

「……せめて飯食いたかったんだけどなぁ」

 

「諦めろ」

 

「はぁ……」

 

ため息を吐いた次の瞬間にはもう堪えきれないとばかりにニェンに襲いかかられた。

 

 

 

 

翌朝、ほぼ夜通し付き合わされ、寝不足の俺は昨夜のニェンの激しい動きにより腰を痛めていた。

 

「……いてっ」

 

眠気と腰痛に耐えながらシャワーを浴びて出る。

あっ、しまった。着替えがない……。

着替えは俺の部屋かニェンが持ってきていないのならサウナの方だろう。

ふ、唐突にスニーキングミッションが始まってしまうとはな。

しかし、隠密においては百戦錬磨のこの俺からすれば余りにぬるいな。……隠密上手くても光る輪のせいで見つかってたけど。俺悪くねぇし。

だが今は違う!輪が無くなった俺の隠密度は俺比50倍!格が違うぜ。

 

「あれ?起きたの?」

 

「どぅえあっ!?」

 

後ろからの声に飛び上がって天井で頭を打って、着地しすると頭を抱えた。

 

「あははっ!すごい跳んだね!」

 

「ミ、ミヅキか、びっくりさせるなよ……」

 

「僕こそびっくりしたよ。なんで裸なの?」

 

「……ニェンにお持ち帰りされた」

 

「そっか。二人はあれからも入ってたもんね」

 

「お陰でゲッソリだ。飯も食えてねぇ。」

 

朝だし、ナスラはいるかな。まあいなかったらテキトーに漁ろう。

曲がり角を覗き込み、誰もいない事を確認して次の角まで走る。これを何度か繰り返す。そしてミヅキがついてくる。

 

「……なんでついてくるんだ?」

 

「楽しそうだから?」

 

「あ、そう……」

 

まあ、一人増えるくらいなら大丈夫だろうと足を進め……進め?なんか地面踏めてないな。

妙だと思って下を見ると、床に絵が描かれていた。ハァ、とため息を吐いて顔をミヅキに向ける。

 

「まただよ」

 

そう言うと絵の中へと落下した。

 

 

 

 

「いってて……少しは優しくしろっての、こっちは全裸だぞ……わぷっ」

 

「だったらそれをさっさと着なさい」

 

「シーか?なんだってまた急に……」

 

渡された服を着る。チョンユエの服に似てるな。

なんとなくポーズを取ってみる。ふ、中々様になってるんじゃねぇの。

 

「変な事してないでこっちに来なさい」

 

「へいへい」

 

シーの向かいの椅子に座る。

 

「んで、なんの用だよ」

 

「用事がないと呼んじゃいけないのかしら?」

 

「そんな事ねぇけど」

 

「ならいいでしょう」

 

シーが立ち上がるとするりと俺の膝の上に収まり、俺の腕を前でクロスする。

 

「……飯食いたいんだけど」

 

「今作ってるわ」

 

「今って誰が──」

 

目の前に机が現れ、クヒツムがチャーハンの盛られた皿を机に乗せた。

座る向きを横に変えたシーがレンゲでチャーハンを掬って口元に寄せてくる。

 

「私が食べさせてあげるわ」

 

「だからなんでこんな事してんだよ。似合わねぇぞ」

 

「何?」

 

「うわぁい、俺チャーハン大好きー」

 

口を開けるとレンゲを押し込まれる。

の、喉に詰まる……!けど今吹き出しちまうとシーの顔面に飛び散る!!

咳き込みたいのを我慢して飲み込む。

うん、まあ、味としては普通に美味しいチャーハンだ。変なことされてる感じでもない。

口の中が無くなる度にすぐ次のチャーハンを押し込まれるせいで喋る暇が無い。

結局完食するまで食べさせられた。お次は何かと思っているとシーがまた座る向きを開けて向かい合うと俺の体に腕を回して目を瞑った。あ、もしかして寝るつもり?少しして寝息が聞こえてくる。マジで寝やがったこいつ……

退かそうとすると背もたれごと尻尾で巻き付かれる。

 

「……クヒツム」

 

呼びかけると視界の端からひょっこりとクヒツムが顔を覗かせた。

 

「おいで」

 

クヒツムがぴょんっと飛んで手の上に乗る。

少し重いがこのくらいなら問題ない。

もにょもにょとクヒツムを弄って時間を潰すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

・かつての一幕

 

 

 

「こんにちは」

 

旅の途中、昼間から酒場で酒を飲んでいると急に妙な雰囲気の美人が話しかけてきた。

 

「こんにちは。あんたみたいな美人が俺になんの用だ?」

 

「妹が世話になったから、そのお礼にね」

 

「妹だぁ?」

 

「ニェンちゃんとシーちゃん。会った事あるよね」

 

うげ、と顔を歪める。

あの妖怪背中見せろと激辛女の姉かよ。

思わず距離を取る。

 

「そんなに邪険にしないでほしいな。今日はお礼としてここのお代は私が持つよ」

 

「そんな事言って良いのか?俺は飲むし食うぞ?」

 

「大丈夫、これでもそれなりに持ってるからね」

 

「……んじゃ遠慮なく」

 

言葉通りに遠慮なく高い酒とツマミをポンポン頼み、言葉もなく食べて飲む。その向かいで美人──リィンもマイペースに飲む。

 

「二人の相手は大変だったんじゃない?」

 

「ん、まあ、そうだな。もう二度と相手したくないし会いたくないくらいだ。例えとんでもない美人だとしてもな」

 

「直接伝えてあげればいいのに」

 

「やだね」

 

流石に飲み過ぎたか。頭がぼんやりし始めた。

いつの間にか隣にリィンが座っており、気が付けば膝枕をされて頭を撫でられていた。

 

「……?」

 

「ゆっくりおやすみ」

 

頭の中にリィンの声が反響し、ゆっくりと瞼が落ちる。

次に目が覚めた時には取った覚えのないホテルの中で机の上の手紙には『またね』とだけ書かれていた。

 

 

 

 






久し振りのアークナイツ投稿です。
危機契約、キツイですわ〜〜〜〜!!
そういえばアンケートの結果が20票差くらいで現状維持なんですよね。どうしようか少し悩んでます。
それと最後に書いてる一幕シリーズってどうですかね?元々は一話分にもならない話を書きたいからって事で書いてましたが本編同様最近どうにもネタ切れ感が……好みの話とかIF話もっとみたいとかあれば活動報告の方にでも伝えて貰えると嬉しいです。


今後の読みたいと思う内容

  • ラックの過去話や異格イベ等
  • このままで構わん
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