「家族とヤッちまった……母さんになんて言えば良いんだ……。」
シエスタからロドスに帰って来た俺はかなりテンションが下がっていた。だって、好きだと言われても家族だってずっと思うようにしてたし……もう家族としては見れないよなぁ。
「はぁ……クロージャ、持ってきたぞ。……いねぇし。」
クロージャに頼まれて荷物を持ってきたのに本人がいねぇとどこに置けば良いかわかんねぇじゃん。
「テキトーに置いとくか。」
ダンボールを机に置くと、隣に小さなボトルがあった。
「なんだこれ。【飲むな】?へぇ〜、ほ〜?」
飲むなって事は飲めって事だよな!
グイッと一気に飲む。
「んげっ!まっず!?」
なんだこのきもっち悪ぃ味!!
「んぉっ?急に……眠く……。」
ドクターからの急な呼び出しでほとんどのオペレーターが集められた。
「えー、あー……急な呼び出しで来てくれてありがとう。それでだな……。」
おや?あのドクターの後ろの男の子は……?
「ねぇ、ドクター。その子もしかしてラック?」
白い髪にサンクタの特徴である輪と羽。そしてあの顔はずっと昔に見ていた顔だ。
「ちょいちょい、髪の色が一緒やからってそんないきなり子供になる訳「そうだ。」嘘ぉぉ!?」
周囲がざわつく。
「ほら、自己紹介だ。」
「あ、あの、ラック。八歳です。」
それだけ言ってすぐにドクターの後ろに引っ込む。
「あれがラック?にわかに信じ難いな……。」
「へぇ、昔のラックは恥ずかしがり屋なのかな?」
私はラックの近くに行ってしゃがんだ。
「ラック、私の事分かるかな?」
ほら、とツノを指差す。
「……モスティマちゃん?」
「うん、そうだよ。」
「モスティマちゃんだぁ……!」
ジャンプして抱き着いてくる。大人の時にこれくらいしてくれたらなぁ。
「あそこにエクシアもいるよ。」
「エクシアちゃんも?」
エクシアの方を向くと、走って行った。
「エクシアちゃんだぁ!なんでこんなに大きいの!?この前歩けるようになったばっかりなのに!」
「あ、あはは……そんなに小さい頃なんだ……。」
エクシアが苦笑いをするとドクターが咳払いをする。
「ラックがクロージャの薬を飲んだ結果、子供になってしまった。クロージャはケルシーに説教されている為、俺が代わりに連れてきた。
そして、ラックがいつ元に戻るかもわからない。その間、誰かに世話をしてもらいたい。誰か立候補はいるか?」
ばっ!と私を含めた何人かが手を挙げる。
「……俺が決めると喧嘩しそうだから、みんなで仲良くやってくれ。では、解散。」
みんなで話合って決まるかな……?
「チェンおねーさん、おはようございます。」
「ああ、おはよう。朝食の前にストレッチをしよう。」
思わず立候補をして朝の当番となった。子供の頃のやつだと聞いてやんちゃかと思ったが……大人の頃よりも礼儀正しいのではないか?
「んっんっんっ……。」
「あまり反動は付けない方が良いぞ。」
「はぁい……。」
少し人見知りなのだろうか?今じゃ考えられないな。
「和食と洋食、どちらが良い?」
「洋食っ!」
手を繋いで食堂へ向かう。珍しいのか周りをキョロキョロと見ている。……可愛いな。
「いただきます。」
「天に召します我らが主に感謝を……。」
い、祈り始めただと!?
食堂がざわつく。前に自分にとっては酒が主だと言っていたのに……。
食べている間も礼儀正しかった。
「メランサおねーさん。何して遊ぶの?」
午前中の遊び相手になったけど、何をすれば良いんだろう。こんな時メイリィならすぐに思い付くのに……。
子供の頃……おままごと?
『メランサー、結婚しようぜ!』
あの言葉を思い出して、パタパタと顔を扇ぐ。
い、今は子供だから、気にしないようにしないと。
「大丈夫……?」
私の額に手を当てて、心配そうな顔をする。
「うん、大丈夫。ありがとう。
ラックくんは、良い匂いとか好き?」
「よくわかんない……。」
「あ、そっか。わからないよね。」
「でも、メランサおねーさんの匂いは好きだよ!」
「はうっ……!」
きゅっと胸を押さえる。とっても可愛い顔で口説かないでほしいかな。……ラックさんは昔からのこうだったのかな?
「じゃ、じゃあ、一緒にアロマ作ってみない?」
「あろま?」
「えっと、とってもいい匂いがするものだよ。」
「作る!!」
元気よく言って、一緒にアロマを作っていき、時間はかかったけど、なんとか出来た。
「はい!」
「え……これは?」
「メランサおねーちゃんにプレゼント!一緒に遊んでくれてありがと!」
ぎゅっと抱き着いてくる。子供特有の高い体温がぽかぽかして落ち着いてくる。
「どういたしまして、私からもありがとう。」
今なら、大丈夫。そう思って抱き締め返した。
「お昼ご飯の時間だよー!」
「やったー!」
「ラックくん、何食べたい?グムがなんでも作ってあげるよ!」
「本当?じゃあオムライス!」
「まっかせて!」
前も思ったけど、ラックさんってオムライス好きなのかな?じゃあいつもは包んでるけどこっちの作り方してみようかな。
チキンライスを更に盛り付けて、その上にぷるんとしたオムレツを乗せる。
「よぉ〜く見ててね!」
スッとオムレツに縦に包丁を入れると、お花が開くように広がって、チキンライスを覆い隠していく。
「グム特製オムライスの完成!」
「すっごーい!!」
ぺちぺちと拍手をしてくれる。
えへへ、こんなに喜んでもらえると嬉しいなぁ。
配膳をすると、朝ご飯と同じく祈ってから食べ始めた。
綺麗に食べるなぁ、好き嫌いとかないのかな?
「ラックくん、苦手なものってある?」
「ん〜、苦いの……。」
あ、そっか。子供だからピーマンとか苦いのはダメなんだね。
ラックさんの時はなんでも美味い美味いぅて食べてたから気付かなかったよ。
「ご馳走様でしたー!」
「綺麗に食べてくれてありがとう!」
頭を撫でると嬉しそうにする。
可愛いなぁ。こんなに可愛いのに、大人になると、かっこよくなるんだから不思議かも。
「グムおねーさんのご飯美味しかった!」
満面の笑みで感想を伝えてくれる。
「そっかそっか!」
お昼は終わっちゃったけど、もう少しお話しても良いよね?
昼過ぎ、のんびりしたくなる時間。
「フロストおねーさん。この曲は?」
「ん、最近の私のお気に入りだ。」
ゆっくりする為に膝にラックを乗せて音楽を聴く。
ラックも音楽が好きなのか、リズムに乗って鼻歌を歌う。
「僕も歌うの好きなんだぁ。お母さんが、よく寝る時に子守唄を唄ってくれるんだよ。」
「そうか。」
ああ、知っているさ。酒を飲んだ後に私にもよく唄ってくれていたからな。
曲を止めて……うろ覚えだが、確かこうだったか?
「〜♪」
「あ、そうそう、それ。モスティマちゃん達にも唄ってあげてるんだぁ……僕が一番お兄ちゃんだもん。」
そういうと目を擦り始めた。眠くなったんだろう。
「膝を貸すから、眠いなら寝ると良い。一時間くらいで起こそう。」
「うん……おやすみ。」
以前に見かけた、グムに膝枕をしている時のように頭を撫でながら子守唄を歌う。
ああ、こんな時間も悪くない。
「サクサクサクサク……。」
子供とは、案外可愛いものだ。
大人のラックに食べさせるのも悪くないが、小さなラックに食べさせるのはまた新鮮味がある。
「テキサスおねーさんも、お菓子食べ過ぎたら夜ご飯が食べられなくなるからあんまりたくさん食べちゃダメだよ?」
「ああ、そうだな。」
そんな事を言うが、ポッキーを差し出すとぱくっと咥える。
「あんまり、食べちゃ、ダメなんだよぉ……。」
子供の頃は裕福じゃなかったと聞いていたから、あまりこういうものを食べた事がなかったんだろう。差し出した分だけもりもりと食べていく。
「おいしぃぃ……。」
食べている時にサンクタの輪が目に映る。
エクシアにもあるが、触った事はない。そもそも触れるのだろうか?
ほんのちょっとした興味で輪に触ってみると、ビクッと大きく跳ねた後に少し離れる。
「……あんまり、触っちゃダメ。」
「なぜだ?」
「だ、だって、お母さんが、輪と羽に触って良いのは、結婚する人とかじゃないとって……。」
みるみるうちに顔を赤くして俯く。
エクシアは蛍光灯と言っていたあれにそんな役割があったのか。
「すまない。代わりに、そうだ、私の尻尾に触れてみるか?」
レッドが触りたがるから、それなり触り心地は良いはずだ。
「良いの……?」
もしかして、輪や羽と同じだと思っているのか?
「ああ、構わない。」
恐る恐る尻尾に触れる。多少違和感があるが、優しく触られているから気になる程ではない。
「ふわぁ……気持ち良い……。て、テキサスおねーさん。」
「ん?」
「ちょ、ちょっとなら、輪と羽触って良いよ……?」
ぷるぷる震えながら言う。自分だけ触らせてもらうのに気が引けるのだろうか。
「わかった。」
改めて輪に触れる。意外にも弾力があるらしく、指が奥に沈んでいく。
「あっ……あっあっあっ……。」
ラックが尻尾に抱き着いて震える。少しゾワゾワしてくる。
それにしてもこの輪、なかなか癖になる手触りだ。
そうだ、羽はどうなのかと反対の手で羽を触る。
「ぅあんっ……!」
……?今のは、ラックの声か?
羽は思っていたよりも硬いな。形によって手触りも違うのだろうか?
カリッと爪が引っ掛かる。
「んにっ……!?」
尻尾に顔を埋めて先ほどと違い、細かく震えるのではなく、大きく震える。
カリカリと弄り続けているとどんどん声が大きくなる。
「あっ……やっ……あっ……!!」
ドーナツに見えてきた。大丈夫かと思いつつ甘噛みしてみる。
「やっやだっ……テキシャスおねーひゃんっ……!」
無味だ。しかし、食感は悪くないかもしれない。
「は……ぁっ……!」
「二人ともー!パーティの準備できたよって何してんの!?」
ラックを取り上げられた。温もりが消えて少し寂しいような。
「テキサス!サンクタの輪と羽に触っちゃダメじゃん!ラックもなんで触らせてたの!?」
「い、いや、ラックが良いと言ったから……。」
「ラック……本当?」
「んっ、ふぅ……ちょっとなら、良いかなって……。」
「お母さんにも言われたでしょ!そんな簡単に触らせちゃダメだって!」
「ぅう〜……ご、ごめんなさぁい……。」
エクシアが叱りつけるとグズグズと泣き始めてしまった。
「あ、ち、違うんだよ!?ただ、ラックの為だと思って……!」
ふざけて非難の目を向ける。
「も、もー!テキサスが発端なんだから手伝ってよー!」
仕方ないな。
「パーティだー!」
「だー!」
あー、泣き止んでくれて良かった!
一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなって一安心!
「ラックー!って、あー!?」
ラックの周りには人集りだ出来ていて、みんなが自分の好きな物や作ってきた料理を食べさせてる。
私だってアップルパイ作ってきたのに!
「美味しいですか?」
「うん!ありがと、アーミヤおねーさん!」
「これはどうかな?」
「わあっ、これクーリエおにーさんが作ったの!?凄いね!」
「こっちもどうだ。」
「美味しいよ、アッシュおじさん!」
「お、おじさん……わ、私はまだ……。」
もごもごと忙しく口を動かしてるのがハムスターみたいで可愛いなぁ。
「もぐ……もぐもぐ……もぐもぐもぐ……。」
あ!いけない、このままだとみんなの料理でお腹いっぱいになりそうだ!
「ラック!これも食べて!」
ズボッと口に突っ込んだら一瞬苦しそうにしたけどすぐに口を動かした。
「これ、エクシアちゃんが作ったの?」
「う、うん、美味しい?」
「うんっ……お母さんのアップルパイと同じ味だぁ。」
今までで一番の笑顔を浮かべる。
「へへっ、やっぱり私が一番だね!」
……テキサスが触ってたんだし、私も触って良いよね?
周りの人混みに紛れて、つつっと輪に指先で撫でる。
「ぴっ!?」
驚いて周りを見る。誰がやったのかわかってないみたい。
ちょんっと羽をつつく。
「ひゃんっ!?だ、誰ぇ、輪と羽触ってるの?」
不安げに周りにいる人に聞いているけど、みんな違うって言ってる。
外から撫でたりつついたりしてみる。
「も、もー!僕の輪と羽触んないでよぉー!」
ぎゅっと丸まって泣き出した。あ、あれ?やり過ぎちゃった?
「エクシア?」
「も、モスティマ?」
「ちょっと、話そうじゃないか。」
「……や、優しくしてね?」
「もちろん。」
優しくなかった。嘘つきぃ!
さあ、やっとボクの番だ。白熱したじゃんけんに勝ってお風呂に入る権利を手に入れる事ができたよ。
肝心のラックはさっきのエクシアのイタズラのせいでぐずってるけどね。
ああ、でもそんな君も可愛いと思える。
「ほら、早く服脱ぎなよ。」
「……触らない?」
チラッとこっちを見る。輪と羽の事かな?サンクタにとってはかなり重要な事みたいだね。
「君の許可が無いなら触ったりしないよ。」
頭を撫でるとふわりとした感触がする。大人の彼の髪は硬いけど、子供の頃は柔らかかったみたいだ。
「まずは髪を洗おうか。目が痛くなるから目を瞑るんだよ?」
「んっ。」
子供とはいえ、ラックがこんなに大人しくしているなんて意外だね。もっと好戦的な性格なのかと思ったよ。
髪と体を洗って、自分の方を洗おうとすると、ラックが声を上げた。
「じゃあ、ラップおねーさんは僕が洗うね!」
「ああ、いいよ。」
自分がやってもらったから相手にお返しって事かな?
精一杯やってるみたいだけど、子供の力だからこのくらいが丁度良いかな。
そう思ってたら耳を思い切り掴まれた。
「んっ……!」
「あ、ご、ごめんなさい……大丈夫?」
不安げにボクを見てくる。
寧ろラックになら触ってほしいくらいだよ!
「ボクの事は気にしないで。」
「う、うん。」
それからも何度がぐにぐにと耳を弄られる。
ああ……!子供の頃から才能みたいなものはあったんだね!
シャンプーを流すと、ラックがタオルを手に取る。体も洗ってくれるのかな?
「……ラック、タオルは使わなくて良いんだ。」
「え?でもさっきおねーさんが使ってたし……。」
「男の子と女の子は違うからね。手でやってほしいな。」
「そうなの?」
「うん。」
「わかった!」
ふふっ、とても純粋な子だね。
ボディーソープを手に付けると、まず背中を手で洗い始めた。
「その調子、上手だよ。」
「ほんと?えへへ……褒められちゃった。」
そのまま張り切って腕も洗ってくれて、前へ来た。
「えっと……こ、こっちもするの?」
「当然だよ。どうしたの?」
わざとらしく胸を揺らすと顔を真っ赤にしてしまう。とても可愛いね。まだ成人女性は母親しか見た事がないのかな?
「ほら、早く湯船に入らないとボクも風邪引いちゃうよ?」
「あっ、う、うん……。」
遠慮がちに首に手を当てる、そこから鎖骨、そして胸に手を滑らせる。
「わ、わわわ……。」
ふにふにた控えめに胸を触られる。
「んっ、もっと力を入れてくれないと綺麗にならないよ。」
「ご、ごごごめんなさいっ!」
ぎゅっと小さな手で胸を揉まれる。それから何度も胸を揉むうちに背けていた顔をこっちに向けてじっと見ながら揉み始めた。
アハハッ!あのラックがボクの胸に夢中になってるよ!ああ、これは良いね、素晴らしいよ!きっと頭の中はボクの胸の事でいっぱいになっているんだろうね。
「……くちゅっ!」
おっと、つい興奮してしまったみたいだ。そろそろ湯船に浸からないとラックが風邪を引いちゃいそうだ。
「ありがとう。じゃあ、お湯で洗い流したらお風呂に入ろうか。」
「ぇあっ、う、うん……。」
どこかぼーっとした顔で頷くとシャワーで流してくれて、湯船に浸かる。
もちろん、ラックはボクの膝の上に座らせてるよ。
抱き締めると後頭部が胸に当たって、その度にラックが驚いたみたいに跳ねる。
「ボクの胸、気になる?」
「ご、ごめんなさい!」
「ふふっ、怒ってる訳じゃないよ。
ただ、女の子の胸は輪と羽くらいに大事な所だからね。」
「え……?でも僕さっき……。」
「ボクがラックの事が大好きだからだよ。
ラックはボクの事好き?」
「……うん、好きぃ。」
照れているのか頬を押さえて顔を揺らす。
「嬉しいね。じゃあ、ボクの胸を触らせてあげるから、輪と羽、触ってもいいかな?」
「え?う〜ん……。」
うんうんと悩み始めた。
テキサスとエクシアが触ったのにボクが触れないなんてズルいじゃないか。
「お願いだよ、ダメかな?」
「……ん。」
こくんと頷く。
ラックをこっちに向けて抱き着きやすいように手を広げる。
「さあ、おいで。」
恐る恐る抱き着いて来る。
ハハッ、やっとラックが自分からボクの所に来てくれた。
ラックを抱き締めて、手が使えないから口を大きく開いて輪に噛み付く。
「あっ……!?や、やだやぁだ、やっぱりいやぁ……。」
胸の中で暴れるラックを見て口を離す。
「そっか……ラックはボクの事が好きじゃないんだね……?」
わざとらしく鼻を鳴らす。もちろん嘘泣きさ。
そうすると、ラックの瞳が揺れる。
「ううん、好き、好きだよ。好きぃ……。」
さっきよりも強く抱き着いて来る。子供を動かす事なんて簡単だね。
また大きく口を開けて噛み付く。たまに声を出すだけで何も言わなくなった。
「うぅ〜……。」
ちょっと可哀想かなって思って口を離して頭を撫でてあげると安心したのか、体を預けてきた。
「……ぉかぁさん。」
「っ……。」
きゅんっと何かを感じた。これが、母性ってやつなのかな?ふふっ、なかなか悪くないんじゃないかな。
それからはお風呂から出るまでずっと頭を撫でてあげたよ。
「モスティマちゃぁん……。」
眠そうに目を擦りながら甘えて来る。
今日は初めての事がたくさんあったから疲れたんだね。
一緒に布団に入るとラックのお腹に手を当てて、一定のリズムで叩く。
「今日は楽しかった?」
「うん……みんな優しかったもん……。」
ふにゃりと微笑む。よっぽど楽しかったみたいだ。
「……ねぇ、ラック。あの事覚えてるかな?」
「なーに?」
八歳って言ってたから、もう言ってるはずだ。
「えっと……結婚するって話。」
「……うん、覚えてるよぉ。僕ね、モスティマちゃんが大好きだからね。大きくなったらモスティマちゃんと結婚するんだぁ。」
そう言って、抱き着いて来る。
やっぱり、子供のラックはちゃんと覚えててくれたんだ。大人のラックは忘れてるみたいだけど。
「でもね、今モスティマちゃん大きいから、僕が大きくなるまで待っててほしいなぁ……。」
「ふふっ、分かってるよ。」
「ほんと?絶対絶対約束だからね……?」
「絶対絶対約束だよ。」
「じゃあ、早く大きくなるね……。」
そう言って、眠ってしまった。
あーあ、大人のラックは酷いなぁ。私は約束覚えてるのに。
「まあ、ラックが出て行くまで私も忘れてたけどね。」
子供の頃に約束して、それが嬉しくてラックのお母さんと花嫁修業だってよく手伝ってたっけ。
それから大きくなるにつれて忘れていって、ラックがいなくなってからアルバムを見てたら思い出したんだ。
子供の頃はただ好きだって気持ちで言ってたけど、今は本当に愛情を持って好きだって言えるよ。ラックのお嫁さん、これが昔から変わらない私の夢だよ。
「……懐かしい夢見たな。」
ガキの頃の夢だ。……にしてもロドスのやつらがいた気がするけど、気のせいか?
「ぅん……。」
「……あ?」
なんだってモスティマが俺の部屋で寝てやがる?
「違ぇ、ここモスティマの部屋か。」
そういえば変な薬飲んでからの記憶がねぇわ。
「とりあえず、顔洗うか……。」
洗面台に向かって鏡を見る。
「は……?な、なんじゃこりゃあああ!?」
俺に真っ黒な輪と羽が出ていた。
・いつかの一幕
「フロストノヴァ……!」
フロストノヴァとの戦いは苛烈を極めたが、辛くも勝利する事が出来た。しかし、彼女の火は今にも消えそうになっていた。
「私も……ロドスへ……。」
「待っていてくれ!今、今ラックの血液から作った試験用抑制剤を飲ませてやるから!そしたらロドスへ行って治療をするんだ!」
携帯している小さなボックスから赤いカプセルを取り出す。まだ人へ対して投与した事はない、結果も不明瞭な抑制剤だ。震える手で彼女の口へカプセルを持っていく。
「なぁ、ブレイズ。ふと思い出した事を語っても良いか?」
「良いけど……今する?」
「丁度思い出したんだよ。良いだろ?
それでな、せ〇液と血液が似ているってのを見かけたんだ。」
ぴたりと手が止まった。
「ちょっと……セクハラよ?」
「……最低です。」
「待て待て、ちゃんとソースがあるんだって。掲示板に。」
「どうして掲示板の情報を鵜呑みにしちゃったの!?」
「他に情報がなかったから……。」
これを、本当に彼女に飲ませても良いのだろうか?
「……ドクター……私の体は汚れても、心は共にある。」
「え、今汚れてるって言ったか、おい!?」
「さっきの話したらそう思うでしょ。」
「このっ、さっきの戦いがしんどかったからちょっと言ってやっただけなのに……。」
フロストノヴァにカプセルを飲ませる。
「すまない……!」
「あり、がとう……。」
「感動の場面だぁ……。」
「最低。」
「最悪です。」
ラックがうんうん頷きながら拍手する。人の気も知らないで……!
通信端末を取り出して、モスティマにメッセージを送る。
『ラックがやらかした。好きにしてくれ。』
『任せてよ。』
秒で返ってきた。
「おい、ドクター、てめぇ何した!?」
横から端末を奪うと画面を見て絶望する。
「ばっ!?このっ、おまっ……!!
……も、モスティマ?いや、違うって、単純にからかっただけなんだって……待て、後ろに何人いる?吐け。……うっそだろ。」
他にも呼んだのか。
「え?どうだったって?
そりゃあ、フロストノヴァもとい、バニーちゃんのおっぱいは最高だったぜ!戦闘中に何回か狙ってみたけど触れなかったのが残念だ!
え、そうじゃない?も、モスティマ?モスティマさん!?……切れた。」
そんな事しようとしてたのか。
「あのー、ドクター。いや、ドクター様。なんとか言って頂けないでしょうか?」
へらへらと頭を下げてやってくる。
「断る。」
「ぶ、ブレ「嫌だよ。」まだ言ってねぇ!」
「CEO様、どうか慈悲をー!」
土下座までするか……いや違う、金をチラつかせているのか!?
「……デザートも付けます。」
「………………ダメです。」
後でアーミヤには何かご馳走しよう。
「やあ、楽しそうな事してるね。」
「ひぇっ、モスティマ……?な、なんで?早くない?もう着いたのか?」
ラックがライオンに捕食される寸前のうさぎのように震え出す。……本当にどうやって来たんだ?
「ご、ごめんなさい!やめろ!許して!
……てめぇ、こっちが下手に出てると思ったらいい気になってんじゃねぇぞ!かかってこい!」
そう言った瞬間、頬を銃弾が掠め、足が凍り、鼻先に杖を突き付けられ、首に刀が当たり、頭上を剣が舞い、胸に剣が軽く刺さった。
……メランサとグムは来てないのか、良かった。
「す、すみませんでした。」
両手を上げて降伏を示すと全員に担ぎあげられて運ばれて行く。
「あー!許してぇ!やめてぇ!俺が悪かったですぅー!あの部屋は嫌だあああぁぁぁ……」
……惜しい男を失ってしまった。
「……良いのか?」
「あれがいつものロドスだ。」
否定したいがな。
ラップランド長いっすね。やはり体はエチエチを求める。
いつかの一幕はいつかなんで次から急にフロストノヴァが出てきても俺は知りません。出す予定ないけど。
今後の読みたいと思う内容
-
ラックの過去話や異格イベ等
-
このままで構わん