愚者と白猫の子は化け猫姉妹?!助けてエルレイねえね!※大人のリィエルの事です。 作:エクソダス
私は……俗に言う所の、天才らしい。
私は魔術の才能をある程度持ち、魔術もある程度できるつもりだ。父と母が魔術に精通したスペシャリストだからだ。
みんな私が頑張るとほめてくれるし、父親も母親もそんな私を『誇りだ』と言ってくれる。
でも…そんな良い人生と、胸を張って言えるはずなのに。
それなのに
退屈だ。
退屈。面白くもなんともない。
ただ人形のように、普通に普通なそれっぽい人生。
魔術も、生きてるのも、何もかも。
退屈。
そんな時だ。《あの子》にあったのは。
「………」
私は何となく、本当になんとなくだ。
3歳か4歳くらいで自分の家を抜け出した。今思うと、あれは完全に家出、というやつだったのかもしれない。
「……ふぁ………ぁ…」
暗い夜道、誰もいなくて静かで、どこか怖いと思えるそんな夜中。私はあくびをして散歩をしていた。
家出したかったわけじゃない。でも、夜に歩いたら、何かいいことあるかな。その程度の気持ちだった。
「………」
ない。何もない。予想以上に何もない。
真っ暗な不気味な公園も、何開いていない商店街。変な空気を醸し出している図書館。どこにも楽しいことはなかった。
「…つまんない」
今思うと、子供のくせになんで夜に出歩いたんだろう。と考えなくもない。
でも、そのおかげで。
「…?」
突然、物音がした。どうやら小さい裏道の所から聞こえてくるらしい。
なんだろう。猫?それとも。やばい人でもタムロってるのかな?
興味本位に、私は危険と思っていても、足が勝手に動いていた。
「……んっ………んぐっ………」
そこにいたのは。ボロボロな布切れを着ていて、ぼさぼさな黒髪のショートヘアー。年は私と同じくらいだろうか……。
その少女は、黒いごみ袋をがさがさとあさり、腐ってしまったパン。を食べている。
「………なに?」
その少女が私に気付いたのか、じっと私のことを見つめてくる。
「……え……と」
なんと答えたらいいかわからなかった。自分でも何となくこの場所に来たからだ。
「……質問くらいきちんとこたえろよ」
「ぁぅ……ごめんなさい」
素直な反応が気に入らなかったのか、その少女は舌打ちをし、近くの水たまりを泥が入っているなどお構いなしに片手にすくって飲む。
「オマエ。多分良いところのオジョーサマだろ?とっとと消えろ」
その少女はシッシと目障りと言わんばかりに腕を動かす。
「………」
私は何となく、その少女の隣に座った。
「……なんだよ」
「ともだちに…なろ?」
「は?」
少女は変な声を上げた。
「何言ってんのオマエ」
「わたし…レミエル=レーダス。あなたは……?」
今思うと、なんであんなにずいずい突っ込めたのか。まったくわからない。けど、あの時はこう思ったのだ。この子なら、物足りないものを埋めてくれるって。
楽しいを教えてくれると。
「……マコロン。ファミリーネームはしらん」
だってこの子は見た目が汚くても
目はとっても光っている。
──────
「どっせいやああああぁぁぁぁ─────っ!!」
マコロンは、勢いよく女王が今いるらしい城に殴りこみに行った。
HAHAっ!マコロンちゃんキャラ崩壊したと思った?
だいじょーぶ!してないぜぇ!
「わっ……!な、なに!」
目の前の眼鏡をかけた清楚な女性が驚いた声を上げる。
しかし、すぐにマコロンとわかるとほっと溜息をつく。
「って、マコロンちゃんか……」
「やっほー!エルザさん!」
この人はエルザ=ヴィーリフ。現在の女王の護衛隊の一人で、リィエルの部下らしい。レミエルはよく知らないが。
「エルザさん、すんません。うちの馬鹿が」
「バカって誰さ!」
「お前」
「むきーーーー!!!」
ハイテンションでキリガに噛み付いているマコロンをほっとき、レミエルはコホンと咳払いをする。
「え、えっと……その……。女王様は……いらっしゃいますか?」
「? ルミアさん?いるけど……どうしたの?」
突然の来訪が予想外だったのか、エルザは目を点にしてレミエルに聞き返す。
「え……と……」
「魔術の件、話したい」
口をモゴモゴさせているレミエルを見かね、エルシュが眠たそうな目で助け舟を出す。
「あ〜、なるほど……」
エルザは、少し困ったように腕を組む。
「残念だけど、今は会わせられないかな」
「……無理っすか」
「うーん……」
エルザはエルシュの頭をなでながら困っている。
「こっちでも、いろいろ試行錯誤しててね……。今はちょっと…ルミアさん忙しいから」
「……そう……ですか」
会えないとわかり、レミエルは少し落ち込んだ表情を見せる。
「ごめんね、でもこの事態が収まったらかなら───」
「ああああああ!トイレどこかなあああここかな!!こじ開けええええええええええええる!!」
どがああああああぁ─────っ!!!
「………え?」
一瞬のこと過ぎて、エルザはすぐに反応できなかった。目の前にはバラバラになったドア。そして勝ち誇ったかのような笑みを浮かべているマコロンがいた。
そう、このガキ、軽々しく女王がいるドア壊しやがった。
「たぁぁぁのもおおおおおおおおおぉ!!!」
「え……え…え?」
「…………あのガキ」
「す。すいません……」
「また後で、エルザ姉」
レミエルたちは硬直してしまっているエルザに頭を下げてから、暴虐武人と化したマコロンを追って中に入る。
中はとても綺麗で、いかにも王族の部屋といった雰囲気を醸し出している部屋だ。綺麗な本棚に綺麗な机、見ているだけで神々しい部屋だ。今の王女様の趣味には合わなそうだが。
「おや、思ったより、来るのが遅かったですね」
そんな部屋でぽつんと、椅子に腰かけて来訪者の登場を心待ちにしていた者が一人、金髪のロングヘアーで、キリガの母親。ルミア=ティンジェルだ。
本名は別にあるのだが、ルミアという女性はこの偽名が気に入っているらしい。
「へいへい!ルミアさん!やっほ~~!」
「はい、こんにちは」
ハイテンションでピョンピョンしているマコロンにも動揺せず、ルミアはにこにことほほ笑んでいる。
少し気味が悪い、いったい何を考えているのか。
「母さん、聞いていいか?学院の営業許可取り下げの話」
「だーめっ」
息子のキリガが本題をしゃべろうとするが、ルミアはペロッと舌をあざとく出し、否定の言葉を口にした。
「子供が口を出す事じゃないよ?あの学院は、魔術のない普通の学院になるの」
「………」
キリガは考え込む、何故ならそちらのほうが良いのではないか。そう思ってしまうからだ。
現にキリガは、魔術の恐ろしさは心の底からわかっている。
「マコロン。帰ろう」
「え~~~。なんで?」
「このまま、いても邪魔になる」
エルシュは何となく察する。今は王女のみであるルミア。話せないことも多くあるだろう。
それに息子のキリガにさえ言えないのに、レミエルたちに言えるわけがない。
「……いこう…、マコロン」
「む~~」
レミエルにそう言われ、マコロンは不貞腐れながらも観念したのか、レミエルの隣に陣取る。
「それでは………突然入ってすいませんでした」
レミエルは深々と頭を下げ、この部屋を出ようとしたその時である。
「さて………ここからは、独り言ね」
そんなことを、ルミアがつぶやいた。
「え?」
「魔術が危ないから無くさなきゃだけどー。学院の子たちが魔術が素晴らしいものだと言う功績を残したら。魔術もなくならないかもー」
あからさまだ。あからさますぎる。
おそらく、先程の発言は王女としてで、今の独り言は一人の女。ルミアとしてであろう。
そんなルミアの少し素直じゃないのに素直な行動に、みんなに笑みが戻った。
「よおおおおおおし!」
一番笑みが戻ったのはマコロンだ。両腕を万歳させて、やるぞ!という雰囲気を醸し出している。
「なんかよく知らないけど功績残したら良い気がする!みんな!がんばろー!」
「ノリがうざい」
「うるさい、静かに」
「ふたりともひでぇ────っ!!」
「……ふふっ」
そんなこともありまして、レミエル姉妹は頑張って何かの功績を残す努力をし始めます。
どんな事ができるかはわかりませんが……。
────
──
「よお…」
「………」
マコロンは真夜中、昔の自分のたまり場に来ていた。そのたまり場には悪友が3~4人ほど群がっている。
「久しぶりだな…クソガキ。くっくっく」
「おら、選別だ…食え」
「さんきゅー」
悪友に差し出されたのは腐って捨てられたリンゴだ。マコロンはそんなのお構いなしでリンゴを頬張る。
「はっ。お前ならもうそんなきたねえモン食わなくてもいいだろうに」
「オマエらは腐れ縁だ。そいつ等からのメシを無下にはしない」
そういいながら。マコロンはからからと笑う。
「相変わらず変な奴。んで?今日はどうした」
「手伝ってほしいことがある。手伝え」
「ほう?で?」
「で、とは何?」
「報酬だ。ないのか?」
「ああ。おらよっ」
マコロンは不敵な笑みを浮かべ、小袋を悪友に投げ渡す。その中には金貨が何枚か入っている。
「足りる?」
「十分だ」
「けっけっけ、なあ、久々に喧嘩しようぜマコロン」
「良い提案だけどやめておく、疲れるし」
マコロンは食べ終わったリンゴをポイっと投げ、ごみ箱に入れた。
「んで?最近はどうだ?普通の生活とやらはよ」
「………」
────
──
─
私は親の顔は知らない。生まれた時から一人。俗にいうスラムの生まれってやつ。
人間から金品を奪って、ごみ袋から食べれそうなものを漁って、そうして生きてきた。
でも不幸だとは思ってない、私には仲間もいる。他人からは不幸と思われるだろうが、私からしたら生きがいはある、いい人生だ。
そう、あの《女》と出会うまでは。
「家に…来ない?」
「は?」
私は、目の前の金髪のいかにも優等生な少女に素っ頓狂な声を上げた。
「おま…、バカなの?」
「…そう…かも…ね」
途切れ途切れで答えて、少し笑う少女。なんなんだこいつ。
「……」
この女。何を考えているかわからない。こんなところに居るゴロツキな私を家に招こうとするか?普通。
「へんな奴…。それともすこし、痛い目に会わせなきゃ、今の状況がわからな──」
「やってみて?」
「は?」
「だから、ほら…?」
そういって。女は両手を広げた。
私は、正直金目の物を目当てに、こいつを襲おうとは思った。だが、それを受け入れる……意味が分からん。
「………」
私は、初めて恐怖で息をのんだ。
それに……。こいつ、
綺麗な見た目してるくせに。
「私を 殺してみて?」
なんでこんなに目が死んでるんだ?
───
──
─
「よくわかんないかな」
マコロンは苦笑いをした。