『人生で一番○○』という言葉があるが何でもかんでもに使うものじゃない。だが俺は今人生で一番運がいい。なぜなら
「へぇ昨日までアメリカに居たんだ。」
あの百城千世子と一緒に車に乗ってるんだ!
さっき道端で会った時に話しかけられて退散しようとしたら引き止められてあれよあれよという間に「車で送ってあげるよ」なんて言われちまってびっくりしたわ。
千世子が電話を取り出してすぐに車がやってきた。撮影が終わったあとなのかやってきた車はミニバスで、心の中ではリムジンとかすげぇのがくるかと思ったのに、純水な心を返してくれ。
そんでさっきから千世子はいろんな質問をしてくる。
その時計かっこいいねとか、好きなスポーツは?とか朝ごはんの話とか。そんなことを聞いてくるわけがよくわからんが、まぁ日本のTop女優の考えることなんてわかるわけないか。
「一つ聞きたいんだけど、いいかな?」
「なんなりと」
「どうして私の変装が分かったの?」
どうしてって言われてもなぁ。どうやって言おうと考えてる間に今までバレたことないのにと、呟いてる。どうやら単純な疑問というよりも悔しいからこそ気になるって感じだ。
「そりぁ、背丈、声、立ち方、存在感、その他諸々かな」
「なんか漠然としてるね」
「あと何より胸がn」
「は?」
おっとっと地雷だった。
「なに?むねがなんだって?」
凄い笑ってるのに怖い。漫画とかでよく見る後ろに般若がいるように怖い。女の人に胸と年齢の話はタブーだったの忘れてたよ。
「胸が鳴るほど緊張して、えっといろいろあったんだ」
「わぁ下手くそないいわけだ」
ふむ、本気で怒ってるわけじゃなさそうだ。でも千世子マネージャーが、いや長ったらしいから省略しよう。略してチヨマネが睨みをきかせてる。もう黙っとこうかな。
「こっちも聞きたいんだが、なんで俺を送ろうと思ったんだ?」
「目的地の途中にそこに寄るからついでにって感じかな?」
「そうか実を言うとすごく助かった。歩いて行こうと思ってたからな」
「うわ何キロも歩こうとしてたんだ。バカなのかな?」
「すごい言うな。そんなキャラじゃないだろ」
「今は毒舌な役をやってるからかな」
嘘をつくな。
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「やっと着いた」
俺はあまり乗り物酔いをするわけじゃないが、やはり地に足をつけたほうがいい。生きてるって感じだ。
「はい、これあげる」
「なにこれ?」
渡されたのは名刺?みたいなやつ
「私専用のものだからとってもレアだよ。世界で持ってる人は両手で数えられるぐらい」
「おぉ売ったらいい値がつきそう」
「そんなことしないでよね」
冗談に決まってるだろ。余程のことがない限り。うんたぶん。
ニコニコしながらまたねと言って千世子は車に戻っていった。やはり天使は天使だ。今日の事をネットに書き込んだとしても『妄想乙』とか言われそうだ。
あ!サイン貰うの忘れた!
まっいいか次会うときにもらお。
そう思いながら振り返り目的地へ歩く。
さぁ行きますか。桃源郷!!
大手芸能事務所"スターズ"だけど
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千世子から貰ったらこの名刺みたいなのはとても素晴らしいというのが分かった。受付に行ったてこの名刺みたいなのを見た途端態度が急変した。やべぇブラックカードを持ってるみたいな気分だ。ふはははは、誰も俺に敵わない!!あっにやけてると変な目で見られた。違うんですよ。僕は変な人ではありません。
エレベーターに案内され真っ直ぐ言ったところの大部屋にいるらしい。わかりづらい。廊下の床は綺麗に掃除されていて、さすが大手芸能事務所といったところだ。申し訳程度の広告ポスターも嫌いじゃない。これは見た。まだ見てない。知らない。の3つの部類に分けられる。うん暇つぶしに最適だ。
しばらく進むとそれっぽい部屋が見えた。
その部屋の前に立ち耳を澄ますと中から声がする。どうやら今オーディションをやってるようだ。
ふむふむ、パンツスマイル?いやパントマイムか。
我ながらひどい聞き間違いだ。それに一斉に演じるってきつくね、可哀想だなぁ。テーマは野犬?俺にはムリだな。入ろ。
そして俺は本日二度目の『人生で一番』を使うことになる。
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夜凪side
「野犬よ」
「?」
「あなた達の前には一匹の野犬がいるわ」
どうしよう野犬なんて見たことないわ。
演じるにも演じれないわ。せっかくのチャンスなのに。
「あぁ...そいつ腹を空かせてるぞ」
「ッ!」
その声を聞いた瞬間鳥肌が立つ。目の前の犬を見据える。こいつは敵だ。
だから守らなければ。家族を。大切なものを。そのためなら私を犠牲にしたっていい。
あいつは私に飛びかかってきてる。このまま仕留めるのが一番いい、でもこのままだと力負けする。なら!
腕に噛ませて動きを止める!よしこれでとどめっ!
「あっ...」
逃した!まずいそっちに行くな。手を出すなッ!!まだ間に合う走れ、走れ!もう誰も失わせない!!
「私の家族に何するの」
そして私は思い切り踏み潰した。
気がつけば私は周りから拍手されていて、ルイが私の手を握っていた。どうしよう何が何だかわからないわ。でも
「おねーちゃんすごい!!」
「ちょーおもしろかった!!」
ルイ、レイが楽しんでるならよかったわ。
私はやっぱり家族が好きだ心からそう思う。
「天才だ!」
「素晴らしい!」
「まるで映画だ」
拍手と共に称賛する声が聞こえる。
「決定したわ。オーディショングランプリ受賞者は...」
「ちょっと待ってください。さっき部屋に入ってきた彼は一体なんですか?」
一人の男が何か言ってるわ。何をいってるのかしら?そういえば扉の近くに人がいる。う〜ん彼が入ってきたのは見てないし、気づかなかったわ。
「彼はわたしの知人よ」
「しかしアリサ社長!!」
「彼の件はまた後で話すわ。まずは受賞者を...」
「いやいや流石にそれはないでしょ」
扉の近くにいた彼がそう言って歩いてくる。よくよく見ればスーツですごく汚れてる。顔はどこにも居そうで、髪の毛はウニョウニョしてるわ。その汚れた彼は私たちの方向へ来るのだ。なぜかしら?もしかしてロビーにあったウルトラ仮面のポスターを取ったのがいけなかったのかしら。でもご自由にって書いてあったから大丈夫なはずだけど、もし有料ならどうしよう。返品はできるのかしら。
気がつけば彼は私の前にいて
「えーでは星アリサ社長の知人であるわたくしの自己紹介させていただきます。スタジオ大黒天所属元助監督現役者こと
私の目を見ながらそう言った。ポスターの件じゃなくてよかったわ。
「今日は本当に運がいい。なぁ君の名前を教えてくれ」
私はなぜが彼を見てしまう。
無意識のうちに彼の方を見てしまうのだ。
「夜凪景...」
「うんよろしく景ちゃん」
この出会いが私の運命を大きく変えた。
いや変えさせられたのだ。
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「おい、勝手にうちの名前を出しやがって」
黒いロングヘアに綺麗な肌そして何より、千世子にも引けを取らないぐらいの美少女!!それに彼女の...いや景の演技は素晴らしいものだ。
「てかいつこっちに来たんだよ!」
努力じゃない、才能という言葉じゃ物足りない。言葉にできないあの表現力!!
「おい!聞いてんのか!」
「うっさい、スタジオの名前を使ったのは悪かった、どうせ本当のことになるんだからいいだろ。日本に戻ったのは昨日だよ。」
おい、なんだその顔は。歳か?
「お前...」
「久しぶりだなおヒゲさん」
「その呼び方をやめろっていたはずだがな紫合」
「そんなのどうでもいい、どうせ景を大黒天に入れんだろ。じゃあ俺も入れろ。別に悪い話じゃない。な?」
「ふん...まあいいだろう。ほれ」
このヒゲは手を出してきた。まさか握手か?コイツと!ムリムリありえん。うげぇ想像したら気持ち悪くなった。
「墨さんあんたが結婚しない理由がわかったよ。まさかとは思ってたけど、そっちだったのか」
「勘違いしてんじゃねぇよ!!!金だ!金!入会金を寄越せっててんだ!!」
「はぁ?景からも取るつもりか?か弱い女の子からも金とんのか?」
「ハッ金を取るのはお前だけだよ」
なんだこのオッサン。金しか頭にないのか?
「ついに頭まで狂ったのか。」
「お前の口答えは健在だな。もっと目上の人を敬え」
「ゴホン...」
がみがみ言い合ってると横から声が入った
「おひさだねアリサさん。元気にしてた?」
「貴方のせいで元気にじゃなくなったわ」
「あはは...さっきはごめんって、でも無視しようとしたからさ。自己紹介したくなって」
後ろではおヒゲがまだなんか言ってるが、ナンモキコエナイ。
アリサは『はぁ...』といって頭に手を置いている。思ったより、元気がなさそうだ。
「まぁいいわ。でも紫合、約束を破る気なの?」
うぐっ言葉の弾丸が俺の胸にジャストミートした。そうなのだ、俺は小さい頃アリサさんにいろいろとお世話になった。そのお礼として俺がこっちに戻る時、スターズに入る約束をしたのだ。『約束を破る』という行為は俺にとって悪に等しい、昔友達にゲームカセット貸したら、そんままパクられた。せめての救いはあのカセットは中古だから精神的にダメージは少なかった。その日から約束を破るやつは大体ゴミと心に誓ったのだ。その誓いを俺自ら破るとは、なんたることか。
「初めは約束を守るつもりだったさ。でもあんなの見せられたら、嫌でも惚れるよ。アリサさんが景をスターズに入れるならよかったんだけどね」
「あの子は危険だわ。いずれ身を滅ぼすわ」
「またその話かよ」
また横から声が入った
「黒山、あの子は諦めなさい」
「そうゆうわけにもいかねぇよ。おれは演出家でちんちくりんなこいつでも一応役者だ」
ちんちくりんで一応役者か...
間違ってないな。
「あんなもん見せられたら黙っちゃいねえんだよ。あんたに思い出させてやるよ。役者の幸福ってやつを」
三人以外誰もいないこの部屋に声が響く。
静寂の余韻は気まずい。
次アリサさんに出会った時のほうが気まずい。
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夜凪side
今まで感じたことのない瞬間だった。
誰もが笑ってくれた。
まるで夢みたい。
「おねーちゃんが一番かっこよかったのに!」
「うん!一番凄かったよ!」
レイとルイは私を褒めてくれる。
私は嬉しかった。あの感情は一体なんだろう?
役者を続ければまたあの瞬間を味わえるかしら?
だからこそオーディションに落ちたのがすごくへこむわ。
また一から事務所探さないと……
こんな夜に車の音が近づいてくる。その音は家の前で鳴り止み運転席から一人の男が降りてくる。
「どうしても撮りたい映画がある。そのためにたった一人を探してる」
その男は映画監督と名乗り。
「お前のような奴をずっと待ってた」
その男はこっちに来いと言った。
「黒山墨字。映画監督だ。お前は?」
「夜凪景。役者」
「俺が芝居を教えてやる。お前は...」
その男の言葉が正しいのかどうかは、
今の私にはわからなかった。