ほむらちゃんを保健室へ送り届け。
足取り軽く教室へ戻り。
さやかちゃんに軽くアイアンクローをキメて。
いつもとはちょっと違うものの、普通の中学生らしい平凡な1日を過ごした。
放課後には、さやかちゃんと仁美ちゃんと一緒にカフェへ。
軽い食事を取りながら、女の子らしく2人と楽しくおしゃべり。
「で、まどかどうだったの!?
あの転校生!」
「ん?
普通に電波さんだったよ」
「……えぇー!?
何それ!?
文武両道で才色兼備かと思いきや、実はサイコな電波さん……
クゥゥゥゥ!
どこまでキャラ立てすれば気が済むんだあの転校生は!!
萌えか、そこが萌えなのかー!!?」
「萌えても燃えても何でもいいけど、私を見捨てたさやかちゃんというレッテルは一生剥がれない」
「勘弁してつかぁさい」
そう言ってテーブルに突っ伏すさやかちゃん。
私だからこの程度で済んでるんだよ。
魔理沙さんなら容赦なくマスタースパークが飛んでくるからね?
「ふふふ。
……まどかさん、本当に暁美さんとは初対面ですの?」
「……常識的には」
「何それ、非常識な所で心当たりでもあるの?」
幻想郷関連は非常識と言っても間違いないよね?
いやでも、博麗大結界を超えられるのはシノさんと幻想郷の管理者さんだけって言ってたしなぁ……
でもでも、あの非常識集団を本当にその物差しで測れるのかな。
うぅぅ、胃が痛い。
霊夢さん、本当にしばらくは異変なんて起きないんですよね?
「なるほど。
まどかもキャラが立ち始め……てもないか。
まどかのキャラは、いつでもぶっ飛んでる」
「ギルティ(有罪)」
「仁美ちゃん、弁護を!!」
「負ける弁護はしない主義ですの」
異議が出ない所で。
処刑執行。
教室でやったアイアンクローでもう1度さやかちゃんを沈める。
人をぶっ飛んでるとか言うもんじゃありません!
「容赦ないですわねぇ、まどかさんは。
……あら、もうこんな時間」
そんな私たちのじゃれあいを見ながら携帯で時間を確認していた仁美ちゃんが、もう帰らなくちゃと席を立つ。
いつものお稽古の時間なんだと思う。
「今日はピアノ?
日本舞踊?」
さやかちゃんの問いに、今日はお茶のお稽古ですの、と応える仁美ちゃん。
お嬢様だ。
お嬢様がいる。
同じ質問を私がされたとして。
「今日は剣術?
魔法理論?」
「今日は弾幕ごっこですの」
お嬢様感ゼロ。
どうやら仁美ちゃんには、私が逆立ちしても勝てない女子力が備わっていそうだ。
仁美ちゃんが帰るなら、タイミング的にも丁度いいし私達も店を出よう。
そう言って、紙コップ類が乗っていたお盆を所定の位置に戻す。
そのまま仁美ちゃんは、先に店を出て行った。
鞄を持って、今日は帰ったらなんの特訓をしようかなーなんて思っていたら。
突如、さやかちゃんが後ろから耳打ちしてくる。
「ねぇまどか。
帰りにCD屋、寄ってもいい?」
「いいよ。
また上条君の?」
「えへへ。
まぁねー」
上条恭介。
さやかちゃんの幼馴染で、ヴァイオリンを弾くのがとても好きだったらしい。
でも、以前事故にあってしまい手に障害を抱えてしまう。
そのため、上条君の好きなヴァイオリンとかのCDを持って行って、彼女なりに励ましてあげようと考えている。
ようなのだけど。
「んー
今回は大丈夫だろうけど、そろそろ控えた方がいいかもよ?」
「え、何で?」
「だって上条君、ヴァイオリン好きだったんでしょ?
それが今、ヴァイオリンが弾けない状態でさやかちゃんにCDを聞かせてもらう訳で。
仮にさやかちゃんが今、死ぬほど空腹だとして。
目の前にとっても美味しそうな食べ物を持った私がいます。
でも手を伸ばしても届くことは決して有り得ない。
私は食べ物をほらほらーって見せるだけ。
そんな時、どんな感情を抱くかな」
「まどかをぶっ飛ばす!
……あ」
「ん、分かってもらえたかな?
最初はいいんだ、親切だなって思ってもらえるから。
でも、そればっかしてると自己満足になっちゃって、相手の事が見えなくなるから。
上条君に好かれたいのなら、それだけじゃなくて色々な方面からアプローチしないとダメだよ?」
「……ちょ、やめてよまどか!
私と恭介はそんなんじゃなくて……
大体、まどかは人の事言えるの!?
まだそのシノさんって人と付き合ってないんでしょ!?」
私かぁ。
「さやかちゃん。
一緒に日向ぼっこして膝枕してもらって。
時には一緒に料理したりもして。
悲しいときは優しく撫でてくれて、嬉しい時には抱き合って。
買い物したり、ご飯食べに行ったり、お散歩や遊びに出かけたり。
私には後何が足りないと思う?
もう正直、体を差し出すしか思いつかないんだ」
「むしろ何故それで付き合っていないんだ」
ほんと、訳がわからないよ。
「……まぁ、その。
まどかの言うことも、もっともな訳で。
次からは、ちょっとアプローチ変えてみるよ」
「うん、それがいいね。
体差し出さなくても付き合えたら、参考までに聞かせてね」
「相当切実なのね……」
さて、そろそろCD屋、向かおうか。
遠い目をしている私と、悶々と悩んでいるさやかちゃん。
奇妙なオーラを醸し出す2人が店を出るとき、注目を集めていたのは当然の結果だろう。
CD屋に着くと、さやかちゃんと別行動をとることに。
まぁ、私は特に欲しいCDも無かったので、柱に掛かっている視聴用ヘッドフォンで時間を潰す事にする。
端末を操作し、視聴楽曲一覧へ。
『コネクト』なる曲を発見。
コネクト……繋がるって意味だっけ。
何と繋がるのか聞いてみようじゃないですか。
再生ボタンを押して。
ヘッドフォンを耳に当てる。
『助けて……』
吹き出した。
変な声が聞こえる。
そっとヘッドフォンを外し、思考。
私は今、何と繋がったのだろう。
首を傾げつつ、もう1度ヘッドフォンを装着。
『助けて……まどか……』
「…………」
再びヘッドフォンをそっと外す。
斬新な曲だとは思うが、これは如何なものなんだろう。
そもそも、曲の一部に私の名前を入れるとは。
きっと作詞者は私のストーカーに違いない。
『僕を……助けて……』
あれ。
ヘッドフォンを装着しなくても声が聞こえる。
しかも、今気付いたがこの頭の中に語りかけてくるようなエコーのかかった声。
これは念話とかテレパシーとか、そういう類のものじゃなかったっけ。
パチュリーさんが何回か使ってたし。
魔法なんか無いはずのこの外の世界で、念話が聞こえる。
即ち。
厄介事。
吐血しそうです。
ヘッドフォンを柱に戻し。
さやかちゃんの下へ。
ヘッドフォンをつけて曲に集中している彼女の肩をポンっと叩き。
私の存在に気付いたさやかちゃんに告げる。
「ユーノくんが呼んでるから行ってくる」
「誰!?」
分かんないけど、頭の中に声が響くこと。
助けてって言ってること。
私は電波じゃないことを伝える。
放置してもいいんだけど、それはそれで面倒事になりそうと幻想郷で培った勘が言っているので。
とりあえず自分から巻き込まれに行くことに。
いや、まどかって名指ししてた時点で、既に巻き込まれているのかも。
幻想郷でもそうですが、異変の予兆が欲しいです。
どこでフラグを立てたのかすら分からないとか。
避けようも無いのはムリゲーと言うんです。
「よし、よく分かんないけどまどかを呼んでるんだよね?
私もついて行くから、確認しに行こう!」
「元気だねーさやかちゃん。
その元気を分けて欲しいかも」
「や、だって面白そうだし。
何かあってもまどかと一緒なら、大概の事は何とかしてくれそうだし」
「あはは。
……あながち間違いじゃないけど、そういう状況は心の底から遠慮したいかな」
そんな軽口を叩きながら、未だに聞こえるヘルプの声に従いCD屋から出る。
右へ左へ道を曲がり、着いた先は薄暗い階段。
『店舗改装のお知らせ。
改装中のフロアはCLOSEいたしました』
そう書かれた立札があるその先から呼ばれている気がする。
立ち入り禁止の鎖を跨ぎ。
階段の上にある扉を開く。
開けた先は、奥の方にある外が見えるガラスの壁以外光のないフロア。
足元には資材が至る所に固められて置いてある。
声は、そのフロアの中央辺りから聞こえるようだった。
不本意ながらこういう状況に慣れている私は、特に気負うこともなくズンズンと進む。
さやかちゃんはそんな私の後ろを、おっかなびっくりついてきているようだ。
「……ここだ」
恐らく念話の発信地。
でも、辺りを見回しても何もいない。
と言う事は、上かな。
見上げると、タイミングよく天板の1枚が外れて落ちてきた。
その影に隠れていた、1匹の白い生物と一緒に。
「ホントにユーノくんだったよ」
「だから誰!?」
「リリカルでマジカルななのはちゃんが最初に出会う小動物。
首に掛かってる、見た目赤い宝石のレイジングハートって名前の魔法の杖を手に入れてから、魔王への道を歩み出す魔法少女」
「……あぁ、何かそれ漫画コーナーで見たことあるかも。
でもこの子、宝石どころか何も持ってないよ?」
「ジュエルシードの暴走体に奪われたのかも」
「とりあえずまどか。
あんた、その漫画思考から1回帰ってこい」
キョロキョロと辺りを警戒する私にキツイ突っ込みを入れるさやかちゃん。
まぁ、本当にジュエルシードがあるなんて訳ないけどね。
でもこのユーノくんもどきが念話したのは事実で。
私にはこの小動物が、厄介事の塊にしか見えない。
「うーん、まどか。
結構酷い怪我してるよ、この子」
「ん、大丈夫。
私もさっき見たけど、痛そうなだけで致命傷は無いから。
傷薬は持ってないし、野生なら下手に包帯巻くと後々大変だし。
放置がベストじゃないかな」
「なるほど。
……あれ、でもこの子、まどかに電波送ってきたんだよね?
ってことは、結構賢いんじゃないの?
包帯とか巻いといても自分で処理出来るんじゃ……?」
そうかなぁ?
床に倒れているユーノくんもどきの前足を持って、広げてみる。
ダランとしているが、やっぱり命に関わる怪我はしていない。
視線を下に向ける。
ない。
メスかな。
「まどか。
あんたどこ見てるのよ」
「いや、この部分の有無によって、淫獣かどうかが決定する大事な所……!?」
さやかちゃんの質問に答えていたその時。
ぞわり、とした感覚と共に、私達がいたフロアの空間が歪み出す。
先程まで居た資材の散らばる仄暗いフロアは消え去り。
代わりに辺りには、子供の落書きのような色鮮やかな景色が広がった。
加えて何者かは分からないが、丸い灰色のボールの下に棒を一本突き刺し、その根っこに蝶がくっついた不思議生物が何匹も出現する。
「ホントにジュエルシードが暴走した」
「……ごめん、今回はまどかに突っ込めない。
何この状況」
「んー、私にも何が何なのかは分かんないけど。
このユーノくんもどきが原因であると、私の勘が言っている」
「いや、それは勘じゃないから。
ほぼ全ての人が予想できる事だから」
「ぬぅ。
それは兎も角。
どうしよっか」
「まどかでもどうにもできない?」
「んー……出来る。
けど極力したくないかな。
だからユーノくんバリアとか」
「瀕死状態の小動物を壁に使うのか……!」
でも多分、この空間って誰かが作った結界だと思うんだよね。
脱出するためにマスタースパークとか、スターライトブレイカーもどきとかしたらさ
結界を破る自信はあるけど、代償にさっきまでいたCD屋やカフェが吹き飛んじゃうかもだよ。
というか、この建物自体倒壊しちゃうかも。
どうしよっかな。
弾幕を出してみるのもいいかもしれない。
さやかちゃんもここにいる時点で、非常識の世界へようこそーな状態だから。
それにしても、と辺りを見回す。
蝶付きボールは、先程よりも数が増えている。
どこから湧いて出てきているのだろうか。
「ここは魔女の結界の中。
周りにいるのは魔女の使い魔よ」
呆然と周りを見渡していたら、次々と何かに撃ち抜かれて消えていく蝶付きボール。
そして聞き覚えのない声。
その方向に視線を向けると、そこには金髪ロールで巨乳の女の人が居た。
巨乳の。
大事なことだから2回言ったよ。
危なかったわね、2人とも。
女の人はそう言うと、マスケット銃(って言うんだっけ?)を構え。
残った蝶付きボールも撃退していく。
「自己紹介をしたいけど、ちょっとその前に!」
金髪さんが腕を横にひと振り。
それと同時に現れる大量のマスケット銃。
自分たちの危機を悟ったのか、あちこちに隠れていた蝶付きボールが金髪さんに襲いかかる。
「ちょっとひと仕事、片付けちゃっていいかしら!!」
その声に合わせ、大量のマスケット銃の同時発射。
蝶付きボールは、1匹も残すことなく銃弾に貫かれた。
「まどか……」
「うん……あれは、ノーマルかな。
イージーにしては難しいと思う。
けど、ルナティックシューターの私には通用しない」
「まどかぁ……!」
さやかちゃんの1回目と2回目の『まどか』の意味合いが違う気がするのは何故でしょう。
さて、蝶付きボールを殲滅した金髪さんはというと。
ドヤ顔してこちらに歩いてきている。
その間に、辺りの景色は落書きのような世界から、元の無骨なフロアに戻っていた。
「キュウべえを助けてくれたのね。
ありがとう、その子は私の大切な友達なの」
私たちの数m前に立ち止まった金髪さんは、私が持っているユーノくんもどきを見てそう言う。
前足を持ってブランブランしてるこの状況が、助けたように見えるのだろうか。
公園で猫に同じことしてる子供を見かけたら、十中八九その子がいじめてると思うけど。
面倒事になるのは嫌なので黙っておく。
「あの!
まどかが、キュウべえ?の声が聞こえたって」
「その子が?
……ふぅん、なるほどね。
見たところ、あなたたちも見滝原の生徒みたいだけど。
2年生?」
「は、はい!」
「……そう。
……ところでそこのあなた。
魔女は逃げてしまったわよ?
仕留めたいならすぐに追いかけなさい。
今回はあなたに譲ってあげる」
さやかちゃんと話していた金髪さんだったが。
突然、私たちではない第三者に話しかけ始めた。
どうでもいいけど自己紹介はどこへ行ったのかな。
そう思いつつ金髪さんの視線の先を見る。
そこには、いつの間にやら資材の上に立っているほむらちゃんが。
「さ、さやかちゃんどうしよう!?」
「どうした!?」
「ほむらちゃんが、コスプレしてる……」
「よーし、今から顔面パンチするから歯ぁ食いしばっとくんだ!」
そう、ほむらちゃんの今の恰好は、見滝原中学校のものではなく。
全体的に紫色を連想させ、それでいて下品ではない、リボンを可愛くあしらった魔法“少女”っぽい恰好なのだ。
視線はほむらちゃんのまま、横から『うおおおぉおぉ!!』って叫びながら放ってくるさやかちゃんのパンチをグレイズ(かすり避け)し、カウンターにアイアンクロ―をかまして沈めておく。
「私が用があるのは、そこのキュウべえ……」
「飲み込みが悪いのね。
見逃がしてあげるって言ってるの。
本当なら、友達をこんな風にされてお咎めなしなんて事にはしないけど。
今回はこの子たちもいるし、お互い余計なトラブルは避けたいと思わない?」
そう話しているのは、私にとってのトラブルという存在そのものが服を着た人。
言わないけど。
ほむらちゃんはしばらく黙り込み、殺意を込めてキュウべえ?を睨みつけた後。
資材の山の奥の方に歩いて消えていった。
床に寝ているキュウべえに手を翳す金髪さん。
みるみるうちに怪我が治っていくその様子を見て、一言物申したい。
自己紹介はまだですか。
未だにこの金髪さんの、職業どころか名前すら知らないんですが。
何とも言えない目で金髪さんを見つめていると、どうやらキュウべえの治療が済んだようで。
キュウべえは真っ赤なまん丸の眼を開け、体を起こしその場に座った。
「ありがとうマミ!
助かったよ」
今の、ゲームなら太字か赤字で表示される部分だからね。
この金髪さんの名前はマミさん。
自分から名乗りなさい。
「お礼はこの子達に。
私は通りかかっただけだから」
マミさんがそういうと、キュウべえはクルリと体をこちらへ向ける。
「どうもありがとう!
僕の名前はキュウべえ!」
「苗字はスクライア?」
「え?」
「あー、ごめんキュウべえ。
まどかの言葉は半分無視していいから」
さやかちゃん、それは酷いと思います。
「……あ、そういえば私を呼んだのは?」
「僕だよ!
鹿目まどか。
美樹さやか。
僕、君たちにお願いがあって来たんだ」
「お願いってどんな?」
それはね、と一拍ためる。
「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ!」
『俺と契約して、魔法少女になってもらおうか!』
何かダブってみえた。
誰とは言わないけど。
「へぇ、魔法少女かぁ……
だが断る」
「え!?」
だから私は、その言葉を受けた1年半の波乱万丈な日々を思い出し。
力いっぱい否定する事にしたのだった。
魔法少女は、シノさんの所だけでお腹いっぱいなんです。
お久しぶりです、ホワイトロリータです。
この妄想爆発な作品をお気に入りしてくれた方がいらっしゃったようで。
感謝の気持ちが絶えません。
次話に続く糧とさせてもらっています。
さて、今回でようやくアニメ1話分となりました。
元々表現力に乏しいと定評のあるホワイトロリータですが。
アニメの、魔女の結界を見た時には発狂しそうになりました。
どう表現しろと。
さて、この作品をお待ちしている方がいらっしゃるかは分かりませんが。
そうでなくても、もしフラリと立ち寄った方でも読んで頂けたらと思います。
現実逃避に書き始めたこのSS。
立ち寄って貰っただけでもありがたや、です。
気が向いた時にでもまた、まどかの中学生活をよろしくお願い致します。