プリキュア4   作:皆笠

1 / 9
プリキュア4 #01《You're myself,I'm yourself》

「嫌っ、見んといてっ」

「嘘だっ、あたしは信じないっ」

「貴女なんか、私じゃないっ」

「違うっ、違うもんっ」

「そんなの嘘クルッ」

………

 

「みゆきぃぃぃっっっっ!!!!!」

 

………

 

「おっと、少し先を視過ぎてしまいましたな。これは失礼致しました」

 

………

 

ガタンゴトン、と電車は音を立てて線路を進んでいく。

その音を聞きながら、少しずつ変わりゆく窓の外を眺めていた。似てはいても同じものは無い、そんな景色を楽しんでいた。

「みゆき、おにぎり食べる?」

「うん」

お母さんの声に頷き、おにぎりを一つ貰う。

鮭のおにぎり、程よい塩味が効いていて、とても美味しかった。

 

これから知らない町で暮らすことになる。前に住んでいた所は本当に田舎だったけど、これから住むのはそれなりの都会らしい。そこで暮らすのがいつまでなのかは分からない。でも、なんとなくだけど、ウルトラハッピーの予感がする。

 

窓を隔てて入ってくる春の陽気にまどろむと心地よい……。

「ん?みゆき、寝ちゃったのか?」

「仕方ないわよ、ずっと電車に乗ってるんですもの」

「それもそうだな」

 

 

……目の前に青色の扉が現れた。

「!?」

自然と手が動き、青色の扉を開けた。カチャ、でもなく、ギギィ、でもない、ただ無音で扉は開く。

その先に在ったのは一つの部屋、蒼色を基調とした部屋である。壁から床、家具の一つ一つに至るまで全て蒼。

その部屋のなかに唯二つだけ蒼では無い者が居た。一人は鼻の長い老人、もう一人はあやふやな存在でよくは見えない。

「ようこそベルベットルームへ。此処は夢と現実、精神と物質の狭間に在る場所」

老人は高い不気味な声で話しかけてきた。

「おお、これはまた変わった運命をお持ちの方がいらしたようだ。ふっふっ」

老人は笑う、不気味に。

「失礼しましたな。ところでお客人、私の隣に立つ者をよく視てくださいますかな」

「え?」

目を凝らしてあやふやな人を見ると、途端三人が視界に入っては通り過ぎていった。一人目は髪の短い女性、二人目は髪の短い男性、そして三人目は髪の長い女性。そして、その三人が過ぎた後残ったのは三人目の髪の長い女性。

 

「……そう、私が“視えた”のね」

女性は呟く様に言った。

「彼女はマーガレット、そして私はイゴール。お初にお目にかかります」

「私はお客様の旅のお供を勤めさせていただきます」

「……旅?」

ようやく会話に参加が出来た。

「ええ、最初は長くとも過ぎてしまえば短い旅でございます。此処は本来、何かの形で契約を果たされた者のみが訪れる部屋。貴女には近く、そうした未来が待ち受けているのやもしれませんな」

「は…はあ……」

そういうしかなかった。

「そう身構えなくとも良いですよ。貴女はただ運命に身を任せておけば良いのです。いまのところは、ですが」

マーガレットさんは妖しい笑みとともに口を開き、更に言葉を続ける。

「今回は挨拶程度です。では、再びお会いするその時まで」

「ごきげんよう」

意識が遠のく中、マーガレットさんとイゴールさんの声が頭に響いていった。

 

 

「ううん」

目を開けると、目の前には両親の姿。

「あら、やっと起きたの?」

お母さんの声。

「丁度良かったな。みゆき、そろそろ着くぞ」

「え?」

飛び起き、窓の外を観た。窓の外に広がるのは観たことの無い町。町の中央部には大きな川が流れているのが見えた。

『ええー、次は七色ヶ丘市、七色ヶ丘市です』

………

 

 

【SmilePrecure!×Persona4】

 

 

The first episode.

《You're myself,I'm yourself》

 

 

………

「………」

駅から町を見回す。本当に前とは違うなあ。

 

前に住んでいた場所は本当に何も無い田舎だった。ほとんどのことが自給自足で、周りの人と助け合いながら生活していた。この前までは両親は東京の方で互いの夢を追い求めて共働きをしていて、そのことから仕事が忙しく、面倒を見切れない、との理由で先日までおばあちゃんの所で住んでいたのだった。

だが、母親が十分に好き勝手をしてきた。これからは娘と生活をしたい、との理由から仕事を辞め、父親も納得し、東京ではないけど、この七色ヶ丘市に転勤して三人で暮らすことになったのだった。

 

前に住んでいた周りの皆と繋がっている感じがした田舎も好きだけれど、この様な都会はそれはそれとしてワクワクした。

 

 

……

それからの数日は何事も無く、ただただ過ぎていった。

………

 

[?]→[4/11]雨/曇

 

………

部屋の段ボールを片付け、ようやく部屋らしくなった。

そんな中で布団に倒れ込む。

「疲れたな……」

寝そべったまま、窓の外の曇った空を見る。

「これから、ここで暮らすのか……」

自然と不安と期待の混じった言葉を呟いた。

 

 

霧の掛かった場所に一人立っていた。

……夢?

そう結論付けた時、どこからか声が聞こえた。

 

ー真実を知りたいか?ー

 

真実?

 

ーそう、真実だよー

ー知りたいなら、僕を捕まえてごらんー

 

霧の中に人影が一瞬現れて、走っていった。

追いかける、追いかける。

けれど、辿り着けない。

あと少しなのに、と思い走るのを速くすれば遠ざかり、もう無理だ、と思い走るのを止めれば相手も止まる。

その繰り返しを幾度も続けていた。

………

 

[4/11]雨/曇→[4/12]雨/曇

 

……

目の前にあるのはまだ見慣れないが自分の部屋の壁。決して霧だらけの世界ではない。

「ん……やっぱり夢、だったんだ」

布団からのそのそと抜け出した。

 

 

本日は転校初日の登校日。

新しい町に迷わない様に同じ制服を着た子達を追いかけていた。

 

ようやくたどり着いた学校へは職員玄関から入る。それからとりあえず用務員さんに話を通し、校内へと入った。

「あら、貴女が転校生の星空さん?」

恐る恐る職員室の扉を開けようとしていると、後ろから声を掛けられた。

「はっ、はいっ」

驚いて少し声がうわづってしまったかもしれない。

「そう、丁度良かったわ」

後ろから声を掛けてきた大人の女性は今度は微笑み掛けてくる。

「私は佐々木なみえよ。貴女は今日から私のクラス。ほら、着いてきて」

「は、はあ」

そうだったのか、と納得した。

 

教室には佐々木先生が先に入っていった。なんでも、紹介をしてくれるらしい。

「今日から新しいクラスでまだ戸惑ってる子も多いと思うけど、更に新しい子も来るからね。ほら、入って」

「はい」

先生の声に教室がざわめく、そんな中、私はガラガラと扉を開け、入っていった。

「星空みゆきさんよ、仲良くしてあげてね。ほら、星空さん。自己紹介して」

「はい、私は星空みゆきです。私は絵本を読むのが好きで、特に好きな絵本はシンデレラです。絵本って最後はいつもハッピーエンドなので、私はいつもハッピーを探しています。そんなわけで、よろしくお願いします」

クラスから拍手が起こる。

「先生、星空さんの席って私の後ろで良いんですよね?」

クラスの窓際後ろから二番目の席に座っていたやや暗い赤色の髪を束ねた女の子が声を上げた。

「そうね。星空さん、あの窓際の一番後ろに座って」

「はい」

 

席に座った直後、前の席の女の子が話しかけてきた。

「うちは日野あかねって言うんや、よろしくな。転校生」

「星空みゆきです」

「ははっ、知っとるよ」

手短に挨拶を済ませると、

「これでホームルームを終わります。明日から通常授業だからね」

と言う先生の声と共にホームルームが終わった。

ふと窓の外を見る。

「……霧?」

外は白く染まっていた。

 

 

……

「今日はゲームの発売日~」

一人の男子生徒は走って家へと向かっていた。家々が列なる住宅地で男子生徒は見つける。

「…なんだよ…アレ……」

男子生徒は口をつぐみ、そして、目を擦ってからまたその上を見上げる。

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

一軒家のアンテナにはコードに絡まっている老人の遺体があった。

……

 

 

ホームルーム後はクラスメイトから質問攻めにあった。

「ねえねえ、どこから来たの?」

「趣味はやっぱり本を読むこととか?」

「星空さん可愛いね、今度遊びに行かない?」

「今度星空さんの書いた絵本見せてよ」

……相手が多すぎる。

「ええと……」

戸惑っていると、日野さんが助け船を出してくれた。

「ちょっと、ストーープッ。星空さん困ってるやろ?」

「そうそう、少し落ち着きなよ」

やや暗い緑色の髪の子も助け船を出してくれた。

「一人一人、順番にしましょう」

やや暗い青色の髪をした子も続く。

こうして場は収拾を付き、対処をすることが出来た。

 

 

日が傾きかけた頃、ようやく質問攻めは終わり、皆が帰っていった。最終的に残ったメンバーはさっき助けてくれた三人。

「さて、転校生。星空さん、やっけ?今日は一緒に帰ろうや」

日野さんはどうやら関西から来たのかな。関西弁で話す日野さんは一緒に帰る誘いを掛けてきた。

「あ、私たちも良い?」

緑色の髪の子も一緒に帰りたい様だ。

「別にええよな、な?星空さん」

「う、うん」

とりあえず頷く。

 

帰り道、最初に口を開いたのは青色の髪の子。

「言い忘れました、星空さん。私は青木れいかです。そしてこちらは緑川なお。……日野さんのことは既にご存知でしたよね」

自己紹介の様だ。

「私は星空みゆきです」

「知ってるよ、さっき自己紹介してたでしょ?」

「あっ、そっか」

「さっきとおんなじことしてどないすんねんっ」

自己紹介を終えてからは他愛のない様な話をしながら帰った。

 

 

「みゆき、買い物行こっか」

帰宅後、お母さんからそう告げられた。

「うん、分かった」

荷物を置き、手短に着替えてからお母さんと外に出た。

 

『少し待っててね』

そう言い残し、タイムセールに行ってしまったお母さんを待つため、デパートのベンチに座っていた。

そこへ、1人の若い男性が近づいてきた。格好から店員の様にも見える。

「見ない顔だね、迷子?」

どうやら迷子と誤解してる様だ。

「ううん、お母さんを待ってるだけ。見たこと無いのは最近引っ越してきたばかりかな」

そう答えると、男性はははっ、と笑う。

「そっか。ま、何にせよよろしく。僕は結構この店にいるからさ。困ったら相談くらいは受けてあげるよ」

「うん、よろしくね」

男性の差し出した手に応じ、握手をした。

「それじゃ、また」

「うん」

男性は以前マーガレットさんにされた様な妖しい笑みを浮かべて去っていった。

「…ううっ」

その姿を見送っている内に、酷い頭痛に見舞われる。 だが、不思議と頭痛は一瞬のみ訪れただけで、すぐに去った。

そこでようやくお母さんは帰ってきた。

「ふう、どうにか買えたわ。ん?どうしたのみゆき」

「ううん、何でもないよ」

「そっか、じゃあ帰ろっか」

コクン、と頷いた。

 

……

辺りを検察官がうろつく。数メートル離れた所には黄色のテープが貼られていて、一般人の侵入を拒んでいた。

此処は紛れもなく事件現場。

「ひでえことしやがる…」

一人の警察である男は電信柱に吊るされて死んでいる遺体を見て呟いた。

「ちっ、嫌な予感がしやがる」

男は警察としての勘でまだ事件は続く予感をしていた。

……

 

………

 

[4/12]雨/曇→[4/13]曇

 

………

そして次の日。

その日は朝から雨が降っていて、春先だと言うのに少し冷えた。

 

授業を終えて放課後。

「さ、今日は帰ろうか。星空さん」

昨日と同じ様に日野さんが帰る誘いをしてきた。

「うん、分かった」

了承し、荷物を片付け鞄に積めてから学校を出た。

 

「星空さんはこの町の名物って知ってるか?」

「ううん、来たばっかりだし全く知らないよ」

首を振りながら応答する。

「それはな、うちのお好み焼きやっ」

自信満々に言う。

「お好み焼き屋やってるの?」

「そうや。そのせいかうちの焼くお好み焼きの味はおとんに負けないでー」

「ふうん」

お好み焼き、か。ちっちゃい頃に一度だけ食べたことあるような、ないような。味は当然、思い出せる訳もない。

「そや、今日はうちに寄ってってーや。一枚食わせてあげるわ」

少し俯けて思い出そうとしていた顔を一気に上げる。

「良いの!?」

「かまへんかまへんって、一枚くらいなら問題ないしな」

笑って日野さんは流す。

その時、

「あっ、その話私たちも良い?」

後ろから二つの走ってくる音と声が聞こえてくる。この声は緑川さんかな。

「ちょっと、なお。急に走り出さないで下さい」

息を荒く吐きながら少し遅れて辿り着く青木さん。

その姿を横目で見つつ、日野さんは右手の人差し指を顎に持っていった。

「んーと、三人分くらいなら大丈夫かな。ええよっ、ほな行こか」

「美味しいんだよね、あかねん家のお好み焼き」

「お好み焼きなんて久しぶりです」

各々に楽しそうにしている。

「……どんな味なんだろう…」

一人、誰にも聞こえないように呟いた。

 

「美味しいっ」

それがおそらく初めて食べるお好み焼きの感想だった。

「そうやろ?」

日野さんは笑顔をこちらに向ける。

「うんっ、ウルトラハッピー」

「良かったわー」

一息吐くために水を飲んだ。

「あかねの焼くお好み焼きも美味しいね」

「そうですね」

「そんな褒めんといてー、照れるやん」

日野さんは頭を掻いて照れ隠しをする。

「ふぐふぐ、そういえばさ、はぐはぐ、マヨナカテレビってひってる?もぐもぐ」

お好み焼きを口に入れたまま話し出す緑川さん。

「ちょっとなお、食べ物を口に入れたまま話すのは行儀悪いですよ。食べるか話すかのどちらかにしてください」

「ごくん」

「そっちかいっ」

青木さんが礼儀を正し、それを緑川さんが青木さんの意図とは別に実行する。そこへ間髪入れずに日野さんのツッコミ。この三人は普段から仲良しなことを自然に教えてくれた。

「ま、とりあえずこの漫才は一旦閉じて、マヨナカテレビについて話そっか。知ってる?」

自分で巻き起こして自分で閉めにいく、自由な人だなあ、緑川さん。

「ええと、雨の日の深夜零時に一人でテレビを見ると勝手に映り出す、という噂でしたよね」

「そうそう、流石に知ってたか。結構有名になっちゃってるもんね」

「うちも聞いたことあるな。映るのは運命の人、とかなんとかって噂付きやけど」

「ふうん」

お好み焼きを食べる手を一旦休め、会話に参加することにした。

「面白そうだね、丁度良いから今日見てみようよ」

「せやな」

「そうだね」

「それまで起きていられるでしょうか?」

それぞれの反応を取っている。

その時、店の入口が開き、一人の男子が入ってきた。

制服から、同じ中学だと悟る。

「よっ、日野。お好み焼き食わせてくれよ」

その男子が入ってくるなり、日野さんは顔を少し赤らめた。

「う、うん。ええよ、ちょっと待っといて、広瀬先輩」

日野さんは気のせいかはりきってお好み焼きを焼き上げた。

「おっ、旨そう。いただきまーすっ」

広瀬先輩と呼ばれた男子はお好み焼きにがっつく。

「うんっ、うめえ」

「そ、そう?」

日野さんは照れつつ言う。

そこで、青木さんが耳打ちをしてきた。

「日野さんは広瀬先輩のことが好きなんです」

ふうん、そういうことか。

それからワイワイと話した後、解散した。

 

時刻は日が変わる直前となった。

結局は単なる噂に過ぎないだろう、と高を括っていたが、少しは興味が引かれていたために頑張って起きていた。

こっそりと音を立てないように気を付けながら布団から出て、部屋にあるテレビの前に立つ。

コツ、コツ、と言う時計の秒針だけが音と時を刻んで行く。

そして……

 

ジジジ……

「!?」

テレビは勝手に付き、砂嵐を映し出す。

「!?」

……誰かいる。

期待はずれと肩を落としたその直後、砂嵐の中には誰かが映り込んでいた。結局、と砂嵐だらけで見にくいから分からなかったけど、どこかで見たことがあるような姿をしていた。

そのとき、

 

ー我は汝、汝は我ー

ー汝、扉を開く者よー

 

頭に直接誰かが語りかけてきた。

同時に頭痛が走る。

左手で痛む頭を押さえ、そして右手は勝手に動き、手を伸ばしていた。右手はテレビへと向かってゆく。

そして、右手はテレビの画面に当たった瞬間、テレビに穴が現れ、ぐにゅっと埋まりこんだ。

「!?」

必死に左手を頭からテレビの端へと移動させ、手を引き抜いた。

 

その後、様々な疑問を抱きつつ布団に入り、睡眠を取った。

………

 

[4/13]曇→[4/14]雨

 

………

朝のHR前は時間が少ないことから、マヨナカテレビの話をすることは出来なかった。

 

そして、昼休み。

「なあなあ、昨日のマヨナカテレビ見た?」

唐突に切り出すのは日野さんの会話の仕方みたいだ。どうにも、まどろっこしいのは嫌いらしい。

「私は……すみません」

青木さんは見ていない様子。

「見た見た、突然テレビが付いて驚いたよ」

とりあえず、同意する。

「うんうん。それよりもさ、もっとおかしなことが起こったの」

嬉々として昨日起こった不可解なことを語った。

「はあ?そんなわけあらへんやん。人影らしきもんは見えたけどな」

「そうそう。私も人影らしきものが見えただけ」

「…にわかには信じられませんね」

と三人は返してくる。

……まあ、当然か。

 

だが、その日の放課後も何故か日野さんの家に来ていた。

昨日のメンバーとは違い、今日は青木さんがいない。と言うのも放課後に青木さんだけは先生から呼び出されたらしくて先に帰っても良い、と言われた。後に聞いた話だが生徒会関係らしい。素直に適任だなあ、と感じた。

「まあ、とりあえず見してもらおえかなあ、って思うたんや」

「へ?」

「だから、テレビの中に手を入れられる、なんて面白そうじゃん。夢なんだろうなあ、なんて思ってるけど一応、ねっ」

二人から視線を送られる。断ることは難しそうだ。

 

ドキドキしながらテレビへと手を近づける。

「ほら、誰か来てまうで」

「う、うん」

 

ぐにゅっ。

 

入った!!

「ええっ」

「本当だったんだ…」

二人はきょとん、とした。

そこへ、

「今日も日野さん家のお好み焼きでも食おーぜ」

と声が聞こえてきた。

やばい。

「ほ、星空さんっ、はよ抜いてーな」

「そ、そう言われても」

テレビが右手を引っ張る力は強く、抗えなくなっていた。

「やばいよっ」

緑川さんはテンパったのか、何故か私たちを押した。

 

ぐにゅっ。

 

私たちはテレビの中へと入り込んでいった。

何だかこの展開は不思議の国のアリスっぽいなぁ。

……こんなときにそんな考えが働くのは絵本好きだからだろう。

 

「うわああああーー!!」

「何でこうなったんーー!!」

「知らないよっーー!!」

 

ドスン。

お尻から地面に着いた。すごく痛い。

お尻を擦りながら顔を上げる。

「!?」

そこに広がっていたのは以前夢で見たような霧だらけの世界。

「ここ、どこや?」

「知らないよ」

「帰れるん?」

「知らないってば」

二人も困惑していた。

「とりあえず、少し移動してみようよ」

「ええっ、嘘やろ」

「何か見つかるかもしれないよ」

緑川さんはうぬぬ、と悩んだ末に結論を述べる。

「……そうだね、このままじゃどうしようも出来ないし」

「そんなあっ」

「ほら、行くよ?」

日野さんは緑川さんに引きずられて移動をした。

 

一行は歩き進み、一つの部屋にたどり着いた。カチャ、と鍵のかかっていない扉を開ける。

「!?」

その部屋の中にあったのは生徒の写真ばかり、男子女子見境なく大量に貼られていた。集合写真の様なものだけは額縁に入れられていた。

「誰の部屋なんだろう…」

「分からない。でも、生徒が大切だったんだろうね」

「せやな…」

日野さんは立ち直り、いつも通りに振る舞っていた。

「この部屋には何もなさそうだし、別のところ行こうか」

「うん」

「ほいほいっと」

部屋を出て、また歩き出した。

 

「そこで何してるクル?」

「「「!?」」」

歩いているとき、突然後ろから声を掛けられた。

「だ、誰っ!?」

「き、キャンディはキャンディクル」

キャンディ?

「君たちはこんなところで何をしてるクル?」

「私たちは帰るための方法を探索してるんだ。君、知らないかな?」

最初に応答したのは緑川さん。

「帰る?何を言ってるクル?」

「あの、ここから出たいんだけど、知らない?」

緑川さんが困った顔を浮かべながら言うと、キャンディさんは急に叫んだ。

「奴等が来たクル。この眼鏡を付けて逃げるクル」

「へ?」

何故か眼鏡が渡された。

試しに掛けてみる。

 

「おおっ」

さっきまであった霧が晴れた。この眼鏡は霧を消す眼鏡なのかな。

色々聞こうとキャンディさんの声がした方を見ようとしたが、そこには誰もいなかった。

 

私がキョロキョロと辺りを見回した刹那、

「ウゥゥッ」

と、呻きながら空飛ぶ化け物が現れた。

その化け物はピエロさんとかの乗っているボールに口を付け足しただけの様なものなのだが、凄く気味が悪い。口からは舌を出して、それを垂らせている。

一体どころではなく、二体、三体、五体にまで増えた。

明らかにそれらは襲おうとしてくる。

 

嫌だ、死にたくない。私にはまだ叶えたい夢があるんだ、もっと色々なことがしたいっ。

 

そう思った直後、体が熱を発し始める。

 

「!?」

化け物の舌が触れる直前に、体から熱ではなく光が出て化け物に衝撃を与えた。

光が収まると手には謎めいたパクトが一つ。

それを視た直後、自然と口は動く。

「プリキュアスマイルチャージ」

先程の比じゃない光が体から溢れる。

 

「キラキラ輝く未来の光、キュアハッピー」

光が収まる頃、気づけば妙な服装に変わっていた。

何故かは分からないけど、やれる気がして化け物に向かっていき、一撃を与えた。

化け物は吹っ飛び、地にぶつかる。

 

プリキュアとしての力だけではないのか。

熱い、熱い、熱い。

体がどんどん熱くなっていく。

まるで、私と言う【殻】から何かが【生まれよう】としている様な。

そんな感じがする。

 

さっきの様に自然と体が動き、目の前に現れたカードを握り潰す。

「ペ…ル…ソ…ナッ 」

呪文の様に告げられた言葉に反応する様に体の熱は一気に抜け、私の前に一人の白く薄い服を着た女性が現れた。

 

分からないけど知っている。

これは、『マリア』。

かつて、神であるイエス・キリストを産んだ母とされる人。

彼女が得意とするのは攻撃ではない。むしろ補助的な癒しの力。でも、彼女に唯一出来る攻撃がある。

聖なる攻撃魔法『ハマ』。

これは相手を成仏させる力がある。

 

「ハマッ」

マリアへと告げる。

マリアは片手だけを上げ、言葉にならない言葉を告げた。

 

「ウゥゥゥッ」

化け物の近くに光が差す。

化け物は一頻り呻いた後に消失した。

 

一仕事終えたからか、マリアはパアンッと消えた。

カードを握り潰した手を見る。

「……これが私の力…」

『プリキュア』と『ペルソナ』。

何のために授かったのかは分からない。けど、とても強くて、素敵な力だと言うのを感じた。

 

「星空…さん?」

「あっ」

二人がいることをすっかり忘れていた。

とりあえず、二人に向かって笑ってみせた。

 

「いやあ、凄いクル」

いきなりキャンディさんの声が聞こえたので、後ろを振り向いた。

「……」

キャンディさんは人だと思ったら妖精さんでした。小柄な体で、黄色の耳をクルクルと巻いてある。

「どうしたクル?」

「な、何でもないよ」

「君がこの世界の霧を晴らすと言う伝説のプリキュアだったクルか」

「え?」

「……うーん、伝説のプリキュアがいなくなるのは少し困るクル。でも、この世界は君たちには良くない、そして君たち自身も出たいって言ったクル。だから、出してあげるクル。もう二度と来ちゃ駄目クル」

キャンディさんは手をパンッと一度叩いた。

 

ゴゴゴゴゴ、と空から大型のテレビが落ちてきた。

「ここから出ていくクル。さよ~なら~クル~」

キャンディさんに押されて、三人もろともテレビに入っていった。

 

「うっ」

いきなり眩しい光が目に来たため、目を瞑ってしまった。

ゆっくりと閉じた目を開いていく。

「帰ってこれた?」

目の前には日野さんの家のカウンター式のキッチン。

「帰ってこれたんか、よかったぁー」

「良かったぁ、弟たちの面倒見なくちゃいけないのにあんなとこでくたばんのも嫌だったからね」

緑川さん、兄弟いるんだ。

「無事帰ってこれたし、そろそろ解散で良いかな?何か疲れちゃった」

「ええんちゃう?うちも寒気してきたし」

二人が帰ったので帰路に着くことにした。

 

#01《You're myself,I'm yourself》fin

 

………

Loading…loading…loading…

………

 

『なあ、れいかぁ』

『なあ、日野』

『本当、悲しいよね、あたし』

「違うっ!!コイツはうちなんかやないっ!!」

 

#02

《 I whom deceive me,I which deceive all 》

 




本編は修正の可能性あり

こんなところで言うのもなんですが、私がこのクロスを書こうと思った理由は某2525な動画サイトでスマイルプリキュア ×ペルソナ4のOPパロを見させて頂きまして、両作の好きな私は書こうと思い立った次第でございます。
何かと至らぬ点などは多いとは思いますが、感想などを頂けたら幸いです。
↑3/13

何ヵ所か修正しました。
あかねの家から行ったのに出口がデパートとか……。
ついでに、最後の予告部分も変更。
次話に無いフレーズが出てた……。
↑3/20
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。