プリキュア4   作:皆笠

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プリキュア4 #03《 Suffering of the prince of the happiness 》

「ようこそ我がベルベットルームへ」

いつか見た青い部屋。

「ペルソナ能力は心を御する力、心とは絆によって満ちるもの」

「お客様は絆を築かれたことによって、新たに『戦車』のアルカナを手に入れられました」

「貴女の力は絆によって育ってゆきます、よくよく心しておかれますように……」

 

「では、再び見えます時まで、ごきげんよう」

 

 

夢はまた終わりを告げる。

意識はより深い所へ沈んでいった。

………

 

 

【SmilePrecure!×Persona4】

 

 

The third episode.

《 Suffering of the prince of the happiness 》

 

 

………

 

~数年前~

 

………

「はあっ、はあっ……」

青木れいかは走っていた。

度重なるお稽古によるとてつもない疲労から、そして家族を含めた者達からの途方もない期待から逃げるために。

一心不乱に走り続けた。

そうして、息も出来なくなるくらいに走った先にあったのは見知らぬ風景。

太陽がまだ高いのが唯一の救いであった。

「どこでしょう?此処は……」

息を整えてから状況を整理するために辺りを見回した。

辺りは一面緑の草原が広がっている、奥の方には森があるが、ここは開けた場所らしい。

少し進んでみると、自分の住んでいる町が見下ろす形として現れた。

そこでれいかはここが丘であることに気づいた。

「町からはそんなに遠くないようですね」

ひとまずホッと息を吐いた。

「道は分かりませんけど…」

困りつつも、トボトボと歩いてみる。

そんな時、後ろから声を掛けられた。

「ん?そこでなにしてんの?」

れいかは振り向いた。

そこには一人の少女。

「私は緑川なお、君は?」

「わ、私は青木れいかです」

「ふーん。で、ここで何してたの?君も町を眺めに?」

「いえ……その、迷ってしまい、ここに来ただけなんです」

れいかは申し訳なさそうに告げる。

「そっか…案内してあげようか?町までなら案内出来るけど」

その言葉に青木れいかは歓喜した。

「本当ですか!?」

「まあ…困ってるようだし、急いでるならすぐ案内するけど……私も丘から町を眺めたいんだけどいいかな?」

「構いません、こちらはお願いするのですから」

「そっか」

れいかは元来た道を戻り、丘へと緑川なおと向かい直した。

 

「ところで、れいかちゃんだっけ?」

風に髪をなびかせながら、なおは聞く。

「あ、はい」

「れいかちゃんは何でこんなとこに来たの?」

「それは……」

れいかはあからさまに暗く沈んだ顔をなおに見せる。

その様子から察し、なおはれいかに再度聞く。

「言いづらいこと?」

れいかは少し悩んだ後にゆっくりと口を開いた。

「いえ。実は私、色んなことから逃げてきたんです」

なおはふーん、とれいかの言葉を考える。

「そっか、そういうこともあるよね。でもさ、辛いもんから乗り越えた達成感ってのもあると思うんだよね」

なおには分からない、分かる筈も無い、れいかがこれまで幾度辛いことを乗り越え、達成感を得てきたのかを。そして、その達成感を束の間の休息として、すぐに更なる難題を渡され続けるという生き方をしていることを。それを強いられていることを。

だが、それでもれいかはなおの言葉に少し救われた。

……そう思った。

だかられいかは静かな声で答えた。

「……そうですね」と。

 

………

 

[4/16]雨→[4/17]雨

 

………

連続の雨は気分を落ち込ませる。

そんな時だからこそ、笑顔を作り出さなくては。

 

 

「見た?」

「うん、見たよ」

登校からHRまでの間に前の席のあかねちゃんとマヨナカテレビについて話し始めた、そこで緑川さんは教室に走って入ってきて、

「れいか来てる!?」

と聞いてきた。

「青木さん?いや、まだ見てないけど」

「嘘……どうしよう……」

緑川さんは少し顔を青くさせながら近づいてきた。

「どうしたん?」

「昨日のマヨナカテレビ」

「ああ、今丁度その話してたんだ」

緑川さんはふっと一息吐いて、

「映ってたの……れいかだと思う」

そう言った。

「何度もメールしてるんだけど、全然返事来ないし……」

「電話は?」

……そう言えば、携帯持ってるけど、家族しか登録してないなぁ、少し寂しくなった。

「ずっと留守電のまま」

「まさか、れいかは!?」

あかねちゃんと私の考えは一致する。

「やめてよっ!!!」

緑川さんは急に声を荒げた。

その言葉に反応してか、クラスは少しざわつく。

「……ま、まぁまぁ、何か用事があったのかもしれないし、ひとまず落ち着こうよ」

「……うん、ごめん」

緑川さんが頭を下げたその時、ピピピピ、と電子音が聞こえた。

緑川さんのポケットから聞こえるそれは、

「はい」

緑川さんの携帯電話だろう。

緑色のカバーの付けられたスマートフォンだった。

「あっ、れいか!?」

!?

「あ、うん、いや、大丈夫大丈夫。また後でメールするから」

先程までの不安と心配の入り混じった表情から一転、緑川さんは笑顔をこちらに向けてきた。

「良かった、急に家の用事で忙しくなったんだって……。今日は休みっぽい」

ふむ……。

「そっか。でも、青木さんじゃないとすると……」

「マヨナカテレビに映ったんは誰なんやろな……」

謎は深まるばかりで、チャイムはマイペースにHRを告げていた。

 

 

その日の帰りも私は日野さんの家に寄った。

緑川さんはサッカー部の活動がある、と放課後に別れた。

「ひとまず行ってみよか。誰かいるかもしれへんし」

コクりと頷き返した。

 

ぐにゅっ。

二人でテレビに飛び込んだ。

 

 

「ほんで、誰か落とされたりしてへんか?」

キャンディに日野さんが単刀直入に聞いた。

「だーれも来てないクル」

「ほんまに?」

しつこく聞き返すあかねちゃんにキャンディは怒り、

「キャンディは嘘なんて吐いてないクル!!」

と声を大にして言った。

「ご、ごめんね。疑ってるわけじゃなくて……」

 

簡単に説明をした。

マヨナカテレビに映った人間はこの世界に来るであろうこと。

そして、そのマヨナカテレビに新たに人が映ったことを。

 

全てを聞き終えたキャンディは、

「ふーん、外の世界ではそんなものがやってるクル……」

「うん、だから誰か来てないかな、と思ったの」

「もう一度聞くけど、ほんまに誰も来てないんやな?」

「だから、キャンディは、嘘なんて吐いてないクル!!!」

来てない……?

そもそも、マヨナカテレビに映れば此処に来る、なんてこと自体間違っていたのかもしれない。

「うん。ありがとね、キャンディ。今日のところは帰ることにするよ」

「……せやな」

 

キャンディに出して貰ったEXIT用テレビを前にして、一度キャンディの方を向いた。

「キャンディってさ、いつもは何してるの?」

私達が行ってしまえば、キャンディは一人ぼっちの筈……。

ふと、そんなことが気がかりになった。

「キャンディはずっと、ずぅっっと、一人ぼっちクル」

キャンディは切ない笑みを浮かべて、返した。

「気づいたら此処にいて、それからずっとクル……」

どうしようもない悲しみが胸に広がる。

この子は今……いや、会う前からずっと我慢してる……。

「さ、そろそろ行くクル」

話は終わり、と言わんばかりにグイグイと押し込んでくる。

鞄から一冊のなぞなぞ本を取り出して、投げた。

「キャンディにそれあげる!!」

テレビから抜け出す寸前で送れたことを感謝した。

 

せめてもの暇潰しくらいにはなるだろう。

何も出来ないけど、このくらいならしてやれる。

一人ぼっちのあの寂しい子に。

 

 

自分の部屋で少し考える。

マヨナカテレビとは何なのか。

あの電柱に吊るされる悲惨な事件とは関連があるのか。

ペルソナとは、そしてプリキュアとは何なのか。

考えることだけは幾らでもあった。

答えは幾ら考えても出せなかったが。

 

 

そうこうしている内に日を跨ぐ時間となり、テレビの前へと移動した。

 

ジジジ……

テレビが鮮明に映り始めた。

「………………………………………!?」

ゴフッゴフゴフッ、とつい咳き込んでしまった。

だ、だって……

 

『この世界は全て私のために!!』

清純な青いドレスに身を包み、鉄仮面を付けた青木さんがスポットライトを当てられながら演技をしていた。

『美しいものこそが正義です、醜いものは認めません』

テレビの中の青木さんはサッと斜め下に視線を下げる。

『秀麗なのは義務なんです。果たせてますか、義務ですよ?』

ニッコリと恐ろしい笑みを浮かべた後、華麗なターンをして、スタスタと青木さんは奥の方へ歩き、進んでいった。

 

ジジジ……

マヨナカテレビは終わりを告げた。

 

…………

 

[4/16]雨→[4/17]晴

 

…………

「ちょっと出掛けてくるね」

こっちに来てから買った少しオシャレな服を着て、玄関で靴を履きながら親に向かって言う。

「ああ、遅くならないようにな」

両親を相手にするのはまだ苦手だ……。

 

 

モグモグ。

「んまい……」

「やろ?」

今日のあかねちゃん家は流石に混んでいた。

まったりと客としてお好み焼きを食べていると、ガラガラッと誰かが急いでる様に入ってきた。

「あかねっ!!星空さんっ!!」

来たのは緑川さんだった。

「れいかがっ!!」

……さて、本題に入ろう。

「場所変えよか」

 

店の奥、あかねちゃんの部屋にて話を再開した。

「流石に客の迷惑になったらあかんからな」

実に店員らしかった。

「それで、青木さんはどうなったの?」

「っ!!れいかがいなくなった!!」

「えっ!!」

「なっ!!」

予想はしていたけど、流石に驚いた。

「……助けに行かなきゃ」

「せやな」

「うんっ!!」

 

 

流石に店の大きなテレビから行くのは厳しそうだったので、場所を変えることにした。具体的には場所を移動せず、あかねちゃんの部屋のテレビ。

安全性を確認するために、そっと頭だけを入れる。

 

ぐにゅっ。

 

……つもりだったが、急いて押してくる緑川さん、それを抑えようとするが失敗したであろうあかねちゃんもろともテレビに落ちた。

 

「うわぁっ…ぐへっ」

一番下なだけに二人に潰されて、意識が飛びかけた。

潰されたまま目をキョロキョロと動かす。

見覚えがあるような……。

だが、ちっとも思い出せなかった。

「ここ、見覚えない?」

「うーん……駄目、思い出せへん」

あかねちゃんは首を振る、てかどいてよ。

「……ここ、星空さんが怪物倒したところじゃない?」

「ああっ!!」

そう言われればそうだった。

ついこの前のことなのに忘れていた。

「ひとまず、キャンディに会いに行こう」

だからさ……早くどいてよっ!!

 

しばらく歩き、いつもの場所に着いた。

「キャンディー!!」

呼び掛けてみる。

「「キャンディー!!」」

後ろの二人も呼び掛けてみる。

「呼んだクル?」

とぼとぼと歩いてきた。

片手には以前あげたなぞなぞの本。

「キャンディ、おんなじこと聞くけどさ……誰か来てない?」

「?んーと……っ!!誰か来てるクル!!」

「ほんとっ!?」

一番に食いついたのは緑川さんだった。

そのまま首を掴んで脅迫……ないし、強迫しようとしていたので、それをなんとか抑えて、

「案内してくれる?」

と優しくお願いした。

「分かったクル」

キャンディはコクっと頷いた。

 

 

何分か歩いた先に、城にも似たものがあった。

全体的に青色に染められた、一種の狂気すら感じるそこは、昨晩の青木さんの映っていたマヨナカテレビを思い出させる。

「ここにれいかが……」

「そのれいかって人かは分からないけど、ここには確かに人がいるクル」

キャンディはでも……、と続ける。

「でも、ここにはシャドウって言う黒い怪物もいるクル……」

!?

「シャドウってあかねちゃんの時みたいなの?」

「あれほど大きくも強くもないけど……それでも、何の力も持たない人には十分危険クル」

「……れいかが危ないっ!!」

 

余りにも唐突で反応が遅れてしまった。

 

ボソッと呟いた緑川さんは単身、城に乗り込んで行った。

「あのバカっ、何の力も持たない人には十分危険過ぎるって聞いてなかったんか!?」

私たちも後を追った。

これは追う途中で聞いた話だが、緑川さんはサッカー部で、現在転校直後で絶賛帰宅部の私はおろか、バレー部に入っているあかねちゃんでも追うのは困難、とのこと。

……それでも、追うことを諦めたりなんてしないけど。

この時、私たちは忘れていたのだった。

生身じゃなくて、プリキュアで追えば簡単だったのに……と。

プリキュアは忘れていたが、ペルソナは召喚し、シャドウに応対しながら緑川さんを追った。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

時折現れる黒い怪物……シャドウだったか……を回避しながら奥へと向かう。

廊下を走り、扉を開き、階段を一段飛ばしで登り、また走る。

肺が酸素を求めてバクバクと鼓動を激しくするが、それさえも無視して進んだ。

そうしている内に、開けた場所に到達した。

『ビューティーチェック』

どこからか青木れいかの声がした。

「れいかっ、そこにいるの!?」

キョロキョロと回りを見ている内に、いつの間にか足元には魔方陣の様なものが現れ、その魔方陣は緑川なおの体を包むように上昇していく。

頭を過ぎた頃、再び声がした。

『75点……失格です』

呆れの混じる声、

『なお……貴女は私にはふさわしくない』

「れいか!?」

思いもよらぬ言葉に混乱する。

『迷惑なんです、私に構わないで下さい』

「れ……いか……」

呆然としていくなか、視界に誰かが写り込んだ。

『あはっ、今まで頼ってきたってのに今さらポイッだなんて寂しいね~』

「……誰?」

その姿は見覚えがあって、いや、むしろなおが一番知っている姿だった。

『むしろ、迷惑だと思ってたのはこっちだっつの!!誰かの世話したりすんのはもうごめん……そうよね?()()()

 

 

緑川なお(わたし)だった。

 

 

__________________

 

「緑川さんっ、無事……っ!?」

ようやく追い付いた頃、緑川さんはもう一人の緑川さん……影と対峙していた。

『本当は何もかもがめんどくさかった。家族にしろ、学校にしろ、いつだって頼られる立場……疲れるだけで損な立場、うんざりしてたでしょ?』

あかねちゃんの時の様に辛辣な言葉を投げ掛けられる。

『でも、弱音なんて吐けないし、ただ独り溜め込む日々の繰り返し……もう嫌だって思ってたでしょ?』

「……がう……」

『んー?聞こえないよ?いつもの直球勝負とやらはどーしたのー?ちょー弱気じゃない』

「違うって言ったの!!」

この流れは……。

「緑川さん!!」

「なおっ、あかん!!」

だが、何もかもが遅かった。

緑川さんは全てを否定するために既に呼吸を整え終えていて、

「アンタなんか、私じゃないっ!!」

と、悲痛な叫びをした。

 

『アハ、アハハハハハハハハ。そうね、もう私は縛られてるだけのアンタじゃないっ!!私は……自由なんだっ!!!』

あかねちゃんの時の様に影はいつしか闇に変わり、終いには黒い竜巻と化し、そして竜巻が消えるとき、化け物が現れた。

『我は汝、汝は我』

化け物の姿は例えるならば風を纏う猿。

黒い霧で出来たストールの様なものを肩から垂らし、右手には長い棒がある。その棒からは特に風が吹き出している。

風猿は舞うように棒を回す、それはどこか孫悟空を彷彿とさせる動きで、起こす風は神風、その場に止まっていられず、ジリジリと壁に追いやられていった。

「くっ」

風猿の舞はどんどん速さが増してゆき、風は更に強くなる。

『どうしたの?全然気合いが足りないよ~?』

「これじゃあ、近づけへん……」

あかねちゃんは炎属性の魔法『アギ』をフェニックスに使わせるが、火は風によってすぐに打ち消されてしまった。

『あはっ、卑弱な炎ねっ』

「あかねちゃんっ!!」

一瞬の目配せ、その意図に気づいたあかねちゃんと同じタイミングでパクトに手を伸ばした。

 

「「プリキュアッスマイルチャージ!!」」

 

光に包まれ、風はその光によって妨げられた。

 

…………

 

その時、私の心に直接語り掛ける声が聞こえた。

「貴方は絆により、新たなアルカナを手に入れました」

意識は完全にあの蒼い部屋へと向けられる。

外界とは完全に隔離された世界でイゴールさんの言葉を聞いた。

「複数のペルソナを操れる力……それがワイルド」

イゴールさんは微笑みながらこちらを見つめる。

「言うなれば、選ばれし者」

選ばれし……者……。

意識はそれを機に現実へと急速に引き戻される。

 

………

 

体の望む通りに動き、新たに現れたカードを握りつぶす。

「チェンジ、『ゾウチョウテン』」

マリアは光に帰し、新たに武骨な戦士が現れる。

そして、ゾウチョウテンは片手を振り上げ、雷属性の魔法『ジオ』を発動させた。疾風属性に雷撃属性はよく効く。

さぁ、ここからは反撃の開始だ。

 

ジオは風猿の腕を掠め、棒を手から落とす結果を導いた。

風猿はその棒を拾いに跳ぶが、その棒に向かってフェニックスがアギを発動した。

『ガアッ!!』

燃え盛る風猿に向かい地を駆け、横凪ぎの蹴りをぶつける。それだけで風猿は壁まで一度に吹き飛んだ。

まだだ、私はそこでは止まらずに力を溜めて癒しの光で形成された光線、プリキュアの必殺技『ハッピーシャワー』を放った。

 

 

そのまま光に飲まれて終わりと思えた戦闘も、私たちがしたように一瞬で形勢は逆転した。

『邪魔だぁっ!!!』

その叫びと共に竜巻が発生し、ハッピーシャワーは打ち消されてしまった。

「くうっ……」

そこからはワンサイドゲーム。

ギリギリでマリアにチェンジし、弱点を狙われずに済んだものの、先程のような奇策も無い、ただただ風によって体力を削られ、風属性の魔法『ガル』によって傷つけられていった。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

星空みゆき、いやキュアハッピーとキュアサニーが化け物と対峙しているのを、緑川なおは部屋の端で呆然と眺めていた。

非常な空間に怖じけているのではなかった。

本音を次々と言い当てられ、その現実は厳しく自分に跳ね返ってきた。

「アレは……私なんかじゃない……」

ぼんやりと呟くそれは、否定と言うにはあまりに貧弱だった。

……確かに、頼られる立場に疲れていた。

でも、だからと言ってそれが嫌だったわけではない。

違う、でも、否定しきれない言葉がなおを責め立てていく。

『直球勝負なんて馬鹿みたいっ!!』

影が言う。

『もう、逃げても良いでしょう!?』

影の言葉に……頷きかけた。

心が折れかけた。

 

「違うよ……まだ会ってから日はそんなに経ってないけど分かる……それは違うっ!!」

「え……」

でも、折れさせてくれなかった……。

「緑川さんがそうやって来たのは……大事だったからでしょ?人と人との関係を大事にしていたから、いつだって一生懸命で直球勝負だったんだ!!」

「星空さん……」

「そうやな、なおはいつだって真剣やった。だから誰かが傷つけば人一倍悲しんでた。誰かが笑えば人一倍楽しんでた。なおはそういう奴やった」

「あかね……」

友達がそう言ってくれたから。

そこで、なおは一つの結論に辿り着けた。

「そっか……そうだった。二人ともありがとね」

ニッと二人に笑顔を向けて、なおは立ち直った。

そう、緑川なお(わたし)は頼られてるだけじゃない。

__________________

 

「私だってみんなに頼ってきたんだっ!!」

意を決したかのように緑川さんが叫んだ時、彼女の体から光が溢れた。

「プリキュアスマイルチャージ!!」

現れたパクトを片手に持って、変身をしながら緑川さんは宣言する。

「私はそうやって生きてきたんだ、これからもそうやって生きてゆく。私はこれまでも、そしてこれからも、いつだって直球勝負だっ!!」

『グゥッ!!』

眩い光に圧され、風猿も動きを止める。

その後、緑の新たなるプリキュアが生まれた。

「勇気凛々直球勝負、キュアマーチ」

「緑川さんっ!!」

「かたっくるしいなぁ……なおで良いよ」

緑川さんは照れくさそうに頬を掻いた。

『疲れるだけのくだらない関係をいつまで続けるつもりだっ!!』

風猿はようやく棒を持ち、仕掛けてきた。

っ!!速すぎるっ!!

「いつまでもだよっ!!」

いくら私たちが反応出来なくとも、マーチならその速さに反応出来た。

『ガァァァァァァァァァ!!!』

「ハァァァァァァァァァ!!!」

棒と手刀の高速の戦闘が行われる。

『そうやって自己犠牲を続けてなんになるのさっ!!結局は捨てられると言うのに!!』

「そんなことはないっ!!いつまでだって続く関係だってあるっ!!」

自分自身と直球勝負で争うマーチに何か手を出すのは無粋、といつの間にか変身を解き、そしてマリアも心に戻していた。

もう完全に傍観者モードである。

……速すぎて参加も出来ないし。

『そう想い続けてきたれいかにだってさっき裏切られたじゃないかっ!!』

「一方的に言われただけっ!!まだ修復出来るよっ!!」

二人の想いに反応するかの様に一進一退は加速をしていく。

『楽な生き方を何故選ばないんだっ!!』

「私は私がしたいようにしてるだけだっ!!」

その時、マーチが一手打ち勝ち、風猿は壁にまで吹き飛ばされた。

マーチは複雑な感情の入り交じった様な顔を風猿()に向けた。

「確かに、私だって楽をしたいと思ったことはあるよ。頼られ続けるのが嫌になってた」

『………』

「でも、そうじゃないんだって、私は頼られるだけじゃなくて、頼ってもいるんだって気付けた」

マーチはゆったりと近付いていく。

「それに気づかせてくれてありがとね。このままだったら、私はいつか本当に逃げ出してた」

『……はぁ、そう言われたら何も言えないじゃない』

マーチは宙に風の球を作り出した。

「だから、今その闇を払ったげる」

その球を思いっきり蹴り込んだ。

球は風猿に当たり、その球が無くなる頃、そこには既に風猿は無く、なおちゃんの影がいた。

「このことを私は絶対に忘れないよ。だから……帰っておいで」

 

なおちゃんの言葉に影はコクりと頷き、光を放って姿を変える。

闇の無い光のストールを纏う風猿、右手には長い棒。そして、何よりもさっきと違うのは……

「……雲?」

そう、雲に風猿は乗っていた。

風猿はすぐに一枚のカードに変わり、そして消滅した。

「これが私のペルソナ……『ハヌマーン』」

 

………

後になんとなくで調べた話だけど、ハヌマーンとは分かりやすく言えば西遊記の孫悟空らしい。

そう考えると、あの棒は如意棒で、雲は金斗雲だったのだろう、と少し思ってみたりもした。

………

 

なおちゃんの影との戦闘に疲弊した私たちは、いつもの場所に戻ってきた。

このまま進んでも救うことはおろか、全滅する可能性すらあったからだ。

それでは青木さんを救えない、と説得してようやくなおちゃんを納得させた。

「本当はすぐにでもれいかを救いにいきたいけど、体が上手く動いてくれない……悔しいな」

「シャドウはそっちの世界で霧の出る日に最も暴れるクル。だから……今日のところはしっかり休んでまた出直すと良いクル」

「そうだよ、無茶はダメ」

「今日は我慢してクル。代わりにこれ、 あげるクル」

キャンディが出したのは緑縁の眼鏡。

「これって……?」

「まあまあ、とりあえず掛けてみてや」

「う……うん」

なおちゃんは恐る恐る眼鏡を掛けた。

「!!これって……」

「そう、霧を透かす効果のある特殊な眼鏡クル」

「へぇ~、これで……」

なおちゃんは眼鏡を外したり着け直したりで眼鏡の効果をしっかり確認してた。

その可愛らしい様子に少し笑いながら、

「さ、帰ろっか」

と提案した。

「明日こそ、救おうな?」

「当然でしょ、あかね」

いつもの調子は出てきたようだけど、やっぱりまだ疲れてるみたいだなぁ……。

 

待っててね、青木さん。

 

 

 

ジジジ……

マヨナカテレビにははっきりと青木さんが映った。

 

#03《 Suffering of the prince of the happiness 》fin

 

………

Loading…loading…loading…

………

 

『何で!?魔法が使えへん!!』

『完璧でなければならない』

『言いたいことがあるならはっきり言いなさい』

「貴女は……私なんかじゃないっ!!」

 

#04

《 Slave for the perfect beauty 》




今回の話は書き終えた後、しばらく熱を出しました。
勢いを切らさぬために一度に書いたために知恵熱にでもやられたのか……そんな馬鹿なっ!!
!!(゜ロ゜ノ)ノ

それはさておき、すみません。
m(_ _)m
投稿が遅れてしまいました。

私はダレて辞めてしまわないように常に一話分は余裕を持っているようにしているのですが、日記(もどき)に書いた通り、次話の展開に困ってしまいまして、悩んで書き直したりしていたらかなり遅れてしまいました。
ですが、どうにか次話も完成したのでこの話を投稿させていただきました。

四話はれいか救出を主として、五話では遊びに徹する予定です。

やよい(ピース)ファンの皆さんにはごめんなさい。
出番しばらく無いです。
最低でも六話までは無いっす。

今度は遅れないように一ヶ月更新を出来るようにしたいです。
では、また。
ヽ( ̄▽ ̄)ノシ
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