「ようこそ、我がベルベットルームへ」
いつか見た青い部屋。
「見事ワイルドの能力を発揮されたようですね、流石です」
マーガレットさんが称賛の言葉をくれる。
「やはり私の目に狂いはありませんでした」
そして、イゴールさんは自画自賛に浸る。
「お客様でしたら、新たに芽吹いた絆も使いこなせることでしょう」
マーガレットさんは一枚のカードを見せつけながら続ける。
「『女帝』のアルカナ、この力は貴方の未来にどのような影響を及ぼすのでしょうか?」
イゴールさんはいつもの不気味な笑みを浮かべ、
「じっくりと拝見させていただきます」
意識は水の中にいるかの様に妙な浮遊感を持ち、現実へとゆったりと引き戻してゆく……
………
【SmilePrecure!×Persona4】
The fourth episode.
《 Slave for the perfect beauty 》
………
[4/17 日]雨→[4/18 月]晴
………
「ペルソナッ!!」
なおちゃんは目の前に現れたカードを力強く蹴りつける。
ハヌマーンは現れたシャドウ達を伸ばした如意棒で一気に叩き、如意棒を基点として回転して別のシャドウを蹴り抜く。
「「ペルソナッ!!」」
一瞬遅れて私たちも召喚。
今回はマリアでは無くゾウチョウテン。
弱いが多くのシャドウ相手にハマは疲労が大きすぎる、かといってマリアには物理攻撃の手段がないのが理由だった。
ゾウチョウテンは剣を手にシャドウを斬り、フェニックスは炎の纏う羽を飛ばしてシャドウを穿つ。
「行くよっ!!」
「うんっ!!」
「了解!!」
示し会わせたかの様に私たちはパクトを前に出す。
「「「プリキュアスマイルチャージ!!」」」
シャドウの相手をペルソナにさせ、その間に変身を済ませる。
ハヌマーンが身体の速度を高める支援魔法『スクカジャ』を各々に掛けた。
「さっさと片付けるよっ!!」
「うん!!」
日曜の朝から三人集まり、城の攻略を再開した。
広い城を縦横無尽に駆け回る。
一つ一つ扉を開いては現れたシャドウを蹴散らし、宝箱を開いては傷薬などを回収する。
プリキュアとしての身体能力の高さとペルソナとのコンビネーションを発揮させ、効率の良い攻略を進めていった。
とある部屋の扉を開いた時、中央に人影が見えた。
他の部屋よりも広い部屋を進み、人影に近づくにつれ、その姿はより鮮明になっていく。
「青木さんっ!!」
その姿はマヨナカテレビで観た通りの青いドレスに身を包んでいる。
「いや、違う……あれはれいかじゃない」
この場にいる誰よりも望んでいた他ならぬマーチが否定をした。
「つまり……あれはもう一人のれいかっちゅうことやな?」
「多分そう思う」
二人の見解だとアレは青木さんの影らしい……確かに、雰囲気は青木さんと言うよりは今まで会った影の方に近い気がする。
「れいかはどこ!?」
『れいか?私はここにいるじゃないですか』
「そうじゃなくて……」
そう、ある意味ではアレも青木さんであるから、間違ってはいないのだ。
影は気にも止めず、美しいダンスを踊る。一人であるのに、まるで相手がいるかのような完璧なダンス。
思わず魅入り、いつしかそのダンスも終わりを迎え、その時に影は私たちを指差しながら、
『フフ、ビューティーチェック!!』
と不気味な笑みを見せながら宣告した。直後、私たちの足元に魔方陣の様なものを発生した。
「!?」
「何やこれ?」
「これはっ!!」
マーチだけは心当たりがあるようだが、さっぱり分からない。
とにかく嫌な予感がするからその魔方陣から抜けようと移動を試みるが、無意味。陣は抵抗も空しくどんどん体に沿って上昇していき、顔を通りすぎると消滅した。
影は思案顔を浮かべ、右手を自らの顎に付けた。
『ふむ……70点、60点、68点と言ったところですね……完璧ではない、失格です』
ガッカリとした顔をオーバーなまでに表現し、宣言する。
『では、罰です。ルールは魔法縛りでどうでしょう?』
突如、宙から大量のシャドウが現れた。
『またのチャレンジを期待しますね』
影は奥にある扉を開き、出ていってしまった。
慌てて追いかけるが、
「くうっ!!」
多くのシャドウが邪魔をし、進行をさせまいとしてきた。
「しゃあない、一気にいくでっ!!」
手早く片付けるためにサニーがフェニックスに『マハラギ』を発動させようとした。
……が、出なかった。
「何で!?魔法が使えへん!!」
サニーは驚きに顔を染めるが、マーチはどこか考え込む……が、すぐに答えを出してマーチはペルソナを呼び出す。
「魔法縛り……なるほどっ、ハヌマーン!!」
マーチのハヌマーンは昨日観た様な恐るべき速さでシャドウを打ち倒していった。物理攻撃スキル『電光石火』、私のペルソナには無いスキル。
瞬く間にシャドウは一匹、二匹と次々に討伐されていく。
その様子を見て、ようやく気づいた。
「あっ!!」
なるほど、今は魔法が使えないだけで、ペルソナ自体が使えないわけではないのか。
気づいてからは簡単だった。
フェニックスは翼を活かした『スラッシュ』を、ハヌマーンは速さを活かした『電光石火』を、ゾウチョウテンは剛力を活かした『金剛発破』を駆使し、戦況を逆転させる。
自身も蹴りや拳を駆使してシャドウの応対をする。
プリキュアとしての必殺技もあるが、それはエネルギー消費も激しく、この先に控えるであろう青木さんの影のことを考えると中々出すことも出来ない。
プリキュアとしての力は強大ではあるが、それでも元は英雄や神であるペルソナに比べれば、まだまだ劣る。これからの成長次第で同等になるかもしれないが、今のところ頼らざるを得なかった。
……勿論、ペルソナは便利だが、万能と言うわけではない。
魔法スキルを使えば精神が疲れるし、物理スキルを使えば肉体が疲れる。
単なる斬撃や打撃ならば、問題はないが、この量を相手ともなると、スキルを使わざるを得ない。
耐えきれなくなった疲労は実際に身を切ることにもなる。
現に、今私たちは重ねたスキルにより、切り傷が何ヵ所か生まれていた。
その部屋を出れば、その制約からも開放され、マリアの『メディア』で回復して、また先へと進んだ。
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体が重く、ぐったりした状態のままどうにか青木れいかは意識を起こした。
そこは見たことも無い場所で、どこか中世ヨーロッパの城を彷彿とさせる。
「ここは……玉座の広間?」
趣味の悪い青色だらけで装飾されてあり、玉座の置かれている場所はちょっとした階段の上にあり、どこからも狂気を感じた。
勿論、こんなところに来た覚えなど無い。ならば、夢なのだろうかとれいかは思った。
れいかはあまりにも動じなさすぎていた。
いかなる時も冷静に、それがれいかが求められた人物像の一つだった。
鍛えられた精神はこの状況でも発揮され、れいかは冷静に状況を分析していった。
そんなとき、シャンデリアの光に反射をする何かを見つけ、れいかは近づいた。
「これは……」
それは幼少時に度重なるお稽古から逃げた時に無くしたと思っていたお祖父様に頂いた大切な鋏。華道用の持ち手が大きく、刃が小さい鉄で作られた先から先まで汚れを知らぬ銀色の美しい鋏。
確か……この逃げた時になおと会ったんでしたっけ……。
懐かしさに浸りながら、れいかは鋏を持つ。
そんなときだった。
『完璧でなければならない、そう言われ続けた。物心ついた頃にはもう期待がされていた』
よく知ってる様な声がした。
『だから、私は完璧、完璧なのです』
声の聞こえる元を追い、見上げた先、玉座の置かれている位置に……
「…………え?」
『だから、なおやあかねなんて私の完璧を損なう危険性のあるものは要らない……そうよね?
__________________
そこから先しばらくは青木さんの影も出てこず、ついに最後と思われる壮大な扉の前に着いた。
おそらくはここが玉座の広間、普通の城ならばそうなる筈。
やはり……ここにいるんだろう。
ラスボスみたいな存在は必ずしも一番奥に居る法則。
一応全ての部屋を開放して確認してきた。隠し通路でもなければ、ここが最後の部屋。
重い扉を三人で押し込んで開いた。
『あら、意外に早かったのね。そこは評価してあげる……それでも完璧にはほど遠いけれど』
影は玉座に座り込みながら、笑みをはっきりと浮かべて言った。
『……で、ちっとも完璧ではない貴女達ははっきりに言って目障りなのよね……ねぇ、消えてくれる?』
「っ、なんてことを……」
影は椅子から立ち、不快を露にしながら私たちを責め立てるが、それを青木さんは否定する。
『あら?他ならぬ私が否定するつもり?完璧であること、それが私の道でしょう?』
「………」
自嘲めいた笑みを影が浮かべる。
『でも、本当は道なんてうんざり。道、道、道、そんなもの、全部私が周りの操り人形になる都合の良い言い訳……私も、いつまでもそんな逃げは止めなさいよ』
「ち……ます……」
青木さんは声を必死に出す。
しかし、恐れとの葛藤があるからか、声は小さい。
『ハッ、言いたいことがあるならはっきり言いなさい。今、自分自身を裏切ってるって自覚はあるのかしら?』
挑発に挑発を重ねる影。
「っ!!」
『目の前にあることからは逃げない、それが信条……
影は諦めを混じらせて溜め息を出す。
「……違いますっ」
青木さんは敢えて目を逸らしていた影を見つめて言った。
……その声は誰が聞いても震えていた。
「私はそうじゃない、私は変わっていける、貴女は……」
自分に言い聞かせる様にして感情を昂らせていく、
「私なんかじゃないっ!!」
その一心な行動を、止めることなど考えられなかった。
影は笑う。
『ウフフフフ、良いわ。力がみなぎってくる』
影は前と同じように闇と化し、そこには身の毛もよだつ程恐ろしいが美しい銀色の毛並みを持つ狼が四本の脚を地に揃えて立っていた。
『ウォオオオオオ!!!!』
氷狼は高らかに咆哮をすると、巨大な鏃の様な氷の固まりを幾つか眼前に現し、それらを一度に飛ばしてきた。
『アンタはそこで傍観してろ、今不必要なモノを消し去ってやるから』
意地の悪い声がかろうじて耳に届く。
「!!」
そして同時に青木さんは氷で出来た牢に閉じ込められた。
その氷は飛ばした氷塊とは比べ物にならない程の純度であり、到底破壊等は不可能とさえ思わせる。
「くっ!!」
サニーは手から火の玉を作り出し、それを投げつけて氷塊を昇華させる。
マーチは持ち前の身体能力の高さから高く前方に跳び、氷を回避する。
彼女らに続いて私も氷を難なく回避し、ホッと一息吐こうとして、すぐ気合いを入れ直した。
また嫌な声が聞こえる。
『まさか、それで終わりだと思って?』
氷狼は素早い動きで駆けて、こちらに近づく、その途中にまた氷塊を充填し射ち直す。
マーチは突攻し、飛んできた氷塊を即座に呼び出したハヌマーンによる棒術で迎撃し、
「はぁぁぁぁぁ!!」
自身はそのまま氷狼へ拳を向けた。
『甘い』
高速のマーチの拳を身体を翻して回避、そしてその動作と共に後脚をマーチに打つ。
鋭利な爪と恐るべき素早さの組み合わされた凶器はマーチの拳を切りながら壁へと吹き飛ばした。
「マーチ!!」
サニーは壁に打ち付けられる直前のマーチを救出に向かう。
「はぁぁぁぁぁ!!」
マーチを抱えたまま、飛んできた氷塊を炎を纏う蹴りで打ち消し、氷塊から離れる様に跳んだ。
私は氷狼がこちらに向かってくるのをしっかりと確認してからマリアをマーチの回復に向かわせる。
飛ぶ複数の氷塊を避け続け、
「ぐっうっ!!」
眼前に現れた氷狼の突進を何とか両手で防いで衝撃を緩和させながら後方に飛んだ。
油断も隙も無く、マーチを凌ぐほどの機動力による近距離、当たれば一堪りも無い程の氷塊による全方位完備の遠距離、完璧なまでの行動により戦況はすぐに氷狼の優勢となる。
『ねぇ、どんな気持ち?』
氷狼は興奮したかの様に艶かしく声を出す。
その言葉が向けられる先はこちらではなく、青木さん。
『なんてことを……と、否定しておきながら、自分自身は何も出来ない。ただ見てるだけ……悔しいでしょう?』
氷狼は明らかに余裕を魅せながら、サニーに蹴りを浴びせる。
素早い袈裟斬りのそれをサニーは回避し損ね、防御に即座に転換するまではよかったが、凶悪な脚は炎の壁をも打ち砕き、サニーへと襲いかかる。
「がぁぁぁ!!!」
氷狼は地を蹴って一回転しつつ後ろに跳び、氷牢の近くに気高く降り立つ。
『逃れられない?そうよね、結局嘘ばっかり。道道言ってるけど、
否定してみろ、とでも言うような責める口調。
『いつだって自分の正義を持っていた。でも、周りを気にして自分を殺して、自分が間違っているとした。自分の無いのが私でしょう?』
狼の表情など分かるわけもないのに、どこか寂しげに見える。
「わた……私は……」
僅かに見える青木さんの顔は見るからに青く染められている。
「違うっ!!」
応えたのは影でもなく、青木さんでもない。
マーチ……緑川なお。
『………』
氷狼は気分を害した様に、マーチを睨み付ける。
視線は一切の温かみが排除された絶対零度の様なソレ。
しかし、マーチは怯みなどしなかった。
「れいかはそんなんじゃない……いつも一緒にいた私が証明するよ」
毅然として言い放った。
しかし、氷狼は軽くマーチを見据え、
『アンタに……』
睨みながら苛立ちの籠った声で口を開く。
「なおに私の何が分かるんですかっ!!」
しかし、その影を遮り、影に続くように青木さんが叫んだ。
「そうです、私はいつもそうやって生きてきたんです。望む道から逃れ、望まれた道に生きてきたんです」
青木さんは吐き出す様に言う。
「今だって皆さんが苦しんでいるのを助けたくとも助けられない。結局……結局私は」
…………。
「変わりたいなら変われば良いんじゃないかな」
………私は続ける。
「今までがどうだったか、なんて最近知り合ったばかりの私は知らないけどさ。変わりたいなら変われば良いんじゃないかな?」
あくまで提案として言う。
「それが出来たらっ!!」
青木さんは氷牢を掴みながら、手を凍えさせて赤くしながら、叫ぶ。
「それが出来ないからこうしているんじゃないですか……」
「やっても出来ないから諦める、それが青木さんなの?」
「それ……は……」
『邪魔をするなァッ!!!』
氷狼は鋭い牙を剥き出しに駆けてくる。
腕を犠牲にして防ぐ。
「ぐぅっ!!」
氷狼は噛み千切る様に顔を捻る。
ブチブチと音が聞こえ、腕から血が噴き出す様に飛び出してきた。
意識が飛ぶような痛みに目を背けかける。
だけど……
「どちらにせよ答えを出さなきゃ」
恐い、痛い、苦しい、逃げたい、帰りたい。
色々考えた。
でも、今の私にそんな選択肢は無い。
「決めるのは……『青木さん』だよ?」
そう、この問題は青木さんしか答えを出せない。
幾ら本人だと、自分自身と語る影でさえもそれは出来ないんだ。
「私……は……」
青木さんの目にはいつの間にか涙が溜まっていた。
『ヤメロォォォォォ!!!』
氷狼は腕から牙を抜き、氷牢へと駆け戻る。
しかし、結論は既に出された。
青木さんは美しさなど微塵も感じさせぬただ一人の少女として泣きながら答えを口から出す。
「私は、変わりたい。救いたい。こんな檻なんかで止まってなどいられないっ!!」
青木さんは檻を両手で掴み、破ろうと力く引っぱる。
その時、青木さんの体から光が溢れた。
「これは……」
青木さんは一瞬困惑するも、即座に理解して、檻から手を離す。
そして、宙に現れたパクトを握り、宣言する。
「プリキュアスマイルチャージ!!」
光は更に増し、眩い程になり、そして……
「深々と降り積もる清き心、キュアビューティ」
青木さんはプリキュアへと成った。
ビューティは細長い氷の固まりを作り出し、破壊を不可能とさえ思わせる氷牢を切り裂き、そのまま突っ込んできた氷狼の喉元に向けた。
『ッ!!』
ビューティは真剣に影を見つめた。
「ありがとうございました。貴女がいなければ、私はきっと全てを他人任せで人生を、道を終えていたことでしょう」
感謝を述べる。
『うるさいっ!!』
氷狼は後方へと遠く跳ぶ。
マーチに仕掛けた様に爪を向けるが、ビューティはそれさえも読み解き、手に持つ氷で弾いた。
「いいえ、これが私の道です。貴女が言ったんでしょう?目の前にあるものから逃げない。私は貴女からもう逃げない。他人を頼ることはあっても、物事を他人任せにはしない。自分の生き方には責任を持つ」
ビューティは言葉を並べ続ける。
「それが私の本当の『道』です。今までの偽りのものではない、本物の道」
『そんなものがあるはずがない、お前は『完璧』からは逃れられないっ!!』
「ええ、逃げませんともっ!!しかし、貴女の言う完璧は完璧ではない。ただ独りよがりなだけ、そしてただ責任転嫁をしてるだけっ!!」
氷狼は氷塊を幾つも発現する。
ビューティはそれに対して一つの塊のみ。
氷と氷がぶつかり合う、激闘が始まった。
マーチとサニーが呆然とした状態から立ち直り、駆け寄ってきた。
「大丈夫か、ハッピー?」
「大丈夫じゃ……ないかな?」
血はまだ溢れんばかりに流れ出るし、痛みは全然収まることがない、むしろ増していく。
マリアのディアも掛けてはいるが、回復が追いつかないのが現状だった。
意識も遠くなりつつさえある。
「無茶して……」
マーチが心配した顔を見せる。
いや、貴女が火付け役だったでしょ。
……まあ、それがトリガーとなって青木さんの本心を引き出せたからプラマイ0ってことにしておこう。
「私のことは良いから、ビューティの力になってあげて」
二人を急かし、向こう側へと追いやろうとする。
氷狼はビューティに注意し過ぎて、こちらは一切見ていないから、危険性は今のところ薄い。
「………分かった、今のれいかの戦力になるかは分からんけどな。よっしゃっ!!」
サニーがまず跳んでいった。
「ごめんね、みゆき。私、れいかのこと分かってるつもりでちっとも分かってなかった。ありがとう」
マーチはそう言い残してから戦場に戻った。
入ってきた扉に一番近い柱に寄り掛かり、そっと腰を下ろした。
心なしか、マリアの顔が心配してる様に見える。
「だいじょーぶ、マリアが回復してくれるから死んじゃったりなんてしないよ」
にっこりと必死に笑顔を作ってマリアに見せる。
その時、回復の光が増し、流れ出る血液も次第に少なくなっていった。
………
心に語りかける声。
「思いはプリキュアを、ペルソナを、力を強くするのです。お客様のマリアは『ディア』が『ディアラマ』へと進化しました。回復力は飛躍的に上がることでしょう」
いつの間にか、ぼんやりとした意識はあの青い部屋へと入っていた。
「これから行く先々、様々なことがありましょう。しかし、それらは全て貴女にとって何かしらの意味があるのです」
イゴールさんはいつか聞いたあの言葉で締めくくる。
「そのことをゆめゆめお忘れなきよう……」
意識は急速に引き戻される。
………
気づけば、マリアの回復は終わり、腕は鈍い痛みが残るのみとなっていた。
氷狼は押されており、三人は団結して圧倒している。
「さてと、私も忘れちゃ駄目だよっ!!」
強く床を蹴り、右肘を前に出すようにして氷狼へとぶつかりに行った。
『ゴゥフッ!!!!』
「さてと、形勢逆転。一気に暴走を止めてあげるよっ!!」
「良いとこ持ってったな~ハッピー?」
「まぁ、良いんじゃない?」
「別に気にするようなことでもないと思うのですが……」
呆れた様な声を三人から受けとる。
「……プリキュア」
まずは私から。
一度溜めてから、両手をハートの様にして、思い切り突き出す。
手からは桃色の光が溢れ、その光は一直線に氷狼へと向かっていった。
『ハッピーシャワー』、私だけのプリキュアの必殺技。
「……プリキュア」
サニーは炎の球を生み出し、それを投げ上げてから自身も跳び上がり、バレーボールのアタックの様に打ち込んで氷狼へと送る。
『サニーファイヤー』、サニーにしか使えない必殺技。
「……プリキュア」
マーチは風を纏めた球を宙に発生させ、自分も跳び上がり、その球をサッカーのシュートの様に力強く蹴り込み、氷狼へと向かわせる。
『マーチシュート』、マーチにしか使えない必殺技。
そして、
「ええ、貴女は私ですね。見たくないと、認めなくないとしてしまってすみません」
ボロボロに傷ついた
極めて優しく、極めて感謝を込めて。
「ありがとうございました。貴女のおかげで私は私の『道』をようやく歩み始めることが出来ました」
パクトに力を込める。
『ア……ガ……ッ!!』
ビューティは目の前に右上から左下、左上から右下、最後に縦に一本線を切る。
すると、その軌跡から多くの氷が生まれ出で、雪崩と化す。
ビューティは体は埋もれ、顔のみの残る影の前に立った。
「もう、大丈夫ですから……戻ってきて頂けませんか?」
『……もう自分を見失ったりしない、約束出来る?』
ビューティはコクりと頷いた。
影は眩い光を纏い、そして光が引く頃、辺りの氷は消え、光さえ纏っている様にさえ見える美しい銀色の毛を持つ大きな狼が生まれた。
そこには先程まで漂っていた禍々しさは微塵も残っていなかった。
だから……
「綺麗……」
と、つい呟いてしまったのも仕方ないことだろう。
銀狼は一枚のカードへと変わり、ビューティに吸い込まれる様に消滅した。
「これが私のペルソナ……そう、『スレイプニル』と言うのね……」
バタッ、と音がした。
変身を解いた時、緊張も解けたからか、青木さんは急に倒れ込んだ。
「れいかっ!!」と、なおちゃんは駆け寄る。
その姿を見て………
私も倒れた。
………
「まさかそこまでの馬鹿だったとは……いやはや、意外でしたよ。自分の身を犠牲に覚醒させ、
男は意地の悪い笑みを浮かべ、闇に消えていく。
………
気がつくとそこは、見知らぬ部屋だった。あの城とは全く違った素朴な普通の部屋に見える。
仰向けに寝かされているのか、布団が掛けられていた。
思いきって体を起こそうとするが、重くなった体は中々思う通りに動いてはくれなかった。
「ん?目ぇ覚めた?」
あかねちゃんが扉から部屋に入ってきて言った。
「れいかが倒れたと思ったら、その直後にみゆきが倒れるなんてな……流石に困ったで」
それは悪いことをしてしまった、でも、正直に言って、何で倒れたのかは分からない。
「ここは?」
「ん?……ああ、うちの部屋。運ぶの大変だったで~。おとんやおかんにも説明すんの大変やったし」
「そっか……」
聞けば、遊んでる内にサッカーボールが飛んできて、頭に当たっただのなんだので気絶したことにされていた。
いやいや、そんなのありえないでしょ、とは思うのだが、何故か上手く話が通っているのが謎でならない。
私はどこかでそんなことをしたのだろうか?……まあいいや。
そんなことをグダグダと考えていると、あかねちゃんが持ってきた濡れタオルを絞りながら
「とりあえず、今晩は泊まってき。倒れたんもきっと疲れのせいやから」
「でも、明日は学校だし……」
そうやって反論をしたが、あかねちゃんは、
「ま、なんとかなるやろ。無茶はせん方がええに決まっとる」
との一点張りで帰してはくれなかった。
その夜はあかねちゃんと楽しく過ごした。
話の途中に聞いたのだが、なおちゃんは私と同様に倒れた青木さんを支えて家まで送っていったらしい。
ひとまずの危機は去った。
これからしばらくは平和に日々が過ぎてくれることだろう。
そう、信じたかった。
………
マヨナカテレビは映らなかった。
#04《 Slave for the perfect beauty 》fin
………
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………
『みゆきはなんか部活には入らへんの?』
『いくら良いことをしたとしても、そういうところで信頼を損なってはダメだからね』
『ふしぎ……図書館……?』
「七色ヶ丘中学新聞?」
#05
《 Rest of soldiers 》
色々悩みつつ書いて、まだ納得しきれてないままに投稿しました。
れいかさんの悩み、影との戦いなどなど、この話は前までにも比べても、まだまだ矛盾や問題が山積みなので、いつかは納得したのを書き直し、投稿し直したいと考えてます。
あと、スレイプニルは馬じゃね?と思った貴方、自分を信じてください。
スレイプニルは間違いなく馬です。
何度も調べ、馬であることを私も確認しております。
ただ、狼として書いてたらちょっと困ったので、急遽スレイプニルを狼扱いすることにしたわけです。
この作品ではスレイプニルは狼として見てやって下さい。
色々すみません。
m(_ _)ノシ ではまた、約一ヶ月後に