森の臆病者のサマー・ストラグルハート   作:椚木

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蛇足2・アオイ甘える

【蛇足2・アオイ甘える】

 

「サレンさん。ユニさーんそろそろお昼休みが終わりますよ~。ぎょっ」

 

 もう数日目となるツアーの昼休み。

 間もなく午後の部がスタートということで集合場所で待っていたアオイだが、ロッジでお昼寝をしている子どもたちとそれをあやすサレン。それに付添のユニが、何時まで経ってもやって来ない。

 ということで、自ら迎えに行くことにしたのだ。これは珍しくアオイの方から見せる積極性であった。

 

 そして目撃したのが目の前の光景。

 

「もう、みんなが待っているから早く起きなさい」

 お昼寝が終わっても中々起き上がらずぐずつく子どもを懸命になだめるサレンと、

 

「抱っこ。抱っこ。起こして~~」

 彼女相手に抱っこを要求。それが叶うまでダダをこね続ける子……。「テレ女のヤベー奴」ユニであった。

 

 来訪者を到来に気が付き、寝転んだままそちらを向く18歳児。

 

「アオイ君。これはだね……」

「あ……あ……あ…………」

 

 ユニの二面性。と言うか甘え癖を知っている人ならば、目の前の光景は「あー、またか」でしか無いだろう。

 

 しかし、アオイにとっての彼女は、かつて特別講座で多大に恩恵を受けた、「知的」で「頼りになる」、憧れの女性だったのだ。

 そしてアオイにとっては、どこか安心できる、「同類」の匂いを感じる人でもあった。

 

 そんな人が、目の前でかような振る舞いに及ぶとは。アオイの受けた衝撃は計り知れなかった。

 そして、アオイが次に取った行動は、

 

「サ、サレンさんー」

「私?」

「あ、あの……」意を決してアオイは大きく腕を広げ訴えた。「私も抱っこ! して、くださああああい」

 

 全く。アオイが見た光景を正常に「処理」するためには、それが「正当」な行為であったと結論づけるしかない。

 然らばユニと同類のボッチである己も、彼女と同様に振る舞わなければならないのだ。

 それがパニクった頭で出した、アオイの結論である。

 

「えーーーー!」

 新たな幼児化の「刺客」を前に、驚くサレン。

 

「アオイ君。待て。落ち着くんだ!」

 ちょうど迎えにやって来たなかよし部の残る2人もアオイの絶叫を聞き届け、

「ちょ、待ちーー」、「アオイちゃん落ち着いて!」

 一同が、パニックに陥った。

 

 結局アオイが落ち着いて我を取り戻すまで、ツアーの昼の部は、ちょっとの間開始を遅らせることになったのだ。

 

 

 ツアー後のある日。海の学校で講習中のミサトと会合で話す機会のあった【サレンディア救護院】のサレンは、ミサトから「アオイちゃんは上手くやっているか」と聞かれた時こう答えたという。

 

「ええ。あの子なら万事問題なかったわ。……ただね。あの子母性に飢えてるみたいね。ずっと先生に構って貰えなかったみたいで、凄く寂しがっていたみたいだから。帰ったらちゃんと構ってあげないと駄目よ」

 

 それを聞いたミサトは

「あらあら。アオイちゃんってばしっかりと期待に答えてくれて、ミサト先生とても嬉しいんだけども。独りにして寂しがらせちゃったのは、悪いことをしたわねー」

 そう悩ましげに考えるのだった。

 

 それからアオイは特別講習から帰ってきたミサトにより、とにかくもうウルトラCな目に遭わされることになるが……。それはこの夏が終わってからの話である。

 

【終】

 

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