やはり俺の青春ラブコメはまちがっている(独)   作:あきカン

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姉らしく、川崎沙希は微笑んだ。

冬の遊園地の魅力とはなんだろうか。クリスマスイルミネーションぐらいしか思いつかないんだが、誰か教えてほしい。

 

受験生であるにも関わらず、こんな受験期真っ只中に遊園地に遊びに行くことへの罪悪感たるや、世の浪人生たちに申し訳が立ちません。しかしこれは兄としての矜持。妹のワガママを聞いてやれるのは兄の特権なのです。

 

曇り空を見上げて俺は呟く。

 

「暗いな。雨でも降るんじゃないのか」

「雨はないと思うよ。天気予報にあったし」

 

天気予報といえども100%当たるわけではない。天気予報が晴れだと言った日に限って朝から雨だったりするし、それがたまたまプールの日で地獄を見た者も少なくないだろう。だから非常時に備えて折り畳み傘を常備しておくのは当然の備えだ。

 

「そんなこと言って、雨が降ったらどうすんだよ」

「コンビニで傘買って帰ればいいじゃん」

 

そんな手があったか。なるほど名案だ。忘れたら今度からそうしよう。

 

一回の外出で風邪を引いてしまったのでは元も子もない。体温をきっちり正常に保つように三枚ほど重ね着をしてきた。首も冷えないようにマフラーを巻いていわゆる完全防備である。

小町はGパンにダウンと、ほぼ俺と同じ格好をしている。

 

すでに園内には入っているが、まだ昼前だからか人の数は思ったより少ない。園内を回りながら、小町と同じ方向に足を向けていた。

 

「待ち合わせ場所は?」

 

聞くと小町は指を差す。

 

「えっとね、中央の広場のベンチに座ってるってさっき連絡来てたんだけど。……あれかな」

 

示した先には三人の人影、あからさまに身長の大きな影と小さな影、ベンチに座る影が見えた。

 

「あれだな」

 

近づくと向こうも気づいたのか、身体を正面に向けてくる。見ると三人とも同じ格好で、川崎はダウンのサイドポケットに手を入れていた。

 

「よう」

「アンタも来たんだ……」

 

ぶっきらぼうに告げると、川崎沙希は小町に視線を向けた。

 

「悪いね、大志のワガママにつき合わせちゃって」

「いえいえー。うちの兄も昨日死んだフリとかしてたんで、良い息抜きになると思いま

ます!」

 

平然と兄の黒歴史(エピソード)を話す妹、どうせならもっとかっこいいエピソードにしてほしい。ほら、そのあと初めてみかん4つでのお手玉に成功したこととか。

 

「ならいいんだけど……」

 

川崎は肩を竦めた。首まで伸びた襟のせいで口元は見えない。

 

「ひ、比企谷さんっ」

 

すると、川崎の後ろから立ち上がる影がある、大志だ。

 

「今日は来てくれてありがとう」

「ううん。こっちこそ、誘ってくれてありがとね」

 

「全然っ」と慌てて取り繕う大志。見ていて涙ぐましいが、これで奴が犯人であることに確信がいった。俺や川崎を利用してまで小町と近づこうとする小賢しさと周到さに免じて、今回は許してやると目で伝える。すると大志と目が合い、なんとなく「こっちはこっちの好きなようにやらせてもらうっす」的な目をしていた。そこまでわかるなんて俺ってエスパー? 霊能者になった方が人生楽できるまである。

 

まあ冗談だが。一昨日の今日でこんな展開になるのは、間違いなく大志の思惑が働いているに違いない。

 

「八幡おにいちゃん!」

 

そんななか、わっと飛び出してきた天使が一人。ああなんという麗しさだろう、もう一人妹がほしくなってしまうではないか。

 

「よう京華、誘ってくれてありがとな」

「ううん、ついでだから、大丈夫!」

 

ついで? うーん、どういう意味だろう……。わからないでいると、後ろから手が伸びる。

 

「京華、ほら、二人の邪魔しちゃだめだろ」

 

ふわりと身体を持ち上げた。かわいいモコモコの耳当てをつけた京華を持ち上げ、川崎大志は告げる。

 

「京華は俺が面倒見とくから、姉ちゃんは比企谷さんと遊んできなよ」

 

言われて川崎はベンチに腰を下ろした。何してもかっこよく映ってしまうのって反則だと思います。

 

「いいよ、これだけでも十分気分転換になるし。アンタの方こそせっかく来たんだから行って来たらいいよ」

 

そんな風に冷静な対応をする。こいつはこいつで長女としての役割を果たそうとしているのだ。そこまで威厳を見せつけられると、大志は何も言葉を繰り出せない。

 

「あ、うん。そうだね。わかった……」

 

そう呟いて、とぼとぼどこかへ歩いていく。行き先にはジェットコースターなどがあるアトラクションエリア。一人でこれらを回るのはボッチの俺でもかなりキツイ。というかボッチはこんなとこ来ないからね、普通。

 

「大志くんどうしたの?」

 

気づいた小町が見つめながら言った。今ここで最善の言葉は何だろうか、考えずともわかる。

 

「小町、悪いんだが大志に付いてやってくれるか」

「お兄ちゃんは? みんなで回るんじゃなかったの?」

 

当然の疑問だろう。しかし俺は身震いしながら川崎の隣に腰を下ろして言った。

 

「俺はここで地蔵になってるから。あと頼む」

「もう、しょうがないなあ」

 

これ以上動く気配のない俺を見て、小町はびしりと敬礼をする。物分かりの良い妹でお兄ちゃんはたいへん嬉しく思います。

 

「小町かしこまりー」

 

なんて言いながら、すったったと後を追いかけていった。

 

 

 




遊園地
一人で回るの
マジ地獄
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