〜t7s if story〜 真夏のストレイシープ   作:なごむ

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第一幕
t7s if story 真夏のストレイシープ First day


First day Ⅰ

203■/06/30 07:30

 

事務所に入って最初に気付いた違和感はポスターが貼られていない事だった。

すぐに目につく、誰もが知ってるレジェンド。

セブンスシスターズのポスターが無かった。

他にもたくさんあった昔のアイドルグループのポスターも無くなっていた。

他にも目立っておかしくなっていたのは、レッスンルームと配信ステージ、それに倉庫。

レッスンルームには机と椅子、観葉植物に自動販売機が置かれていて、さながら休憩室のようだった。

配信ステージには長机と椅子、レッスンルームを見た時と同じような感想を述べるのであれば、会議室のようだと言うしか無かった。

倉庫は……空だった。何も無かった。衣装も小道具も何もかもアイドルに関連するモノが何一つ無かった。

部屋の間取りやデスクの位置などは全く変わっていない。それどころか、片付け忘れていた湯呑みが置きっぱなしだった。

それがただただ不気味だった。

 

自分のデスクに戻り、デスクに置きっぱなしにしていたホロコンをようやく開いた。

もう8時になっている事に驚いた。誰も来ていない。

今日は10時からテレビ出演のリハがあるはずなのに、あのムスビでさえ、事務所に来ていない。この状態を異常と言わず何と言うのだろうか。

困惑しながらも、連絡をしようとして……そして、手が止まった。

 

だって、777☆SISTERS全員はもちろん、ナナスタのアイドル全員の連絡先もメッセージの履歴すらどこにもないのだから。

 

203■/06/30 11:30

 

『すりーせぶん?何だそれ。パチスロか?ナナスタなんてハコスタも知らん。どうして俺を名指ししてくるのか気にはなるが、今日はビッグなゲストが来るから忙しいんだ、イタズラなら他所でやってくれ』

 

9時になっても状況が変わらず無理矢理連絡先を調べ、先方に遅れるかもしれないと伝えようとした結果がコレだった。

一体何が起きているんだ。

知らないはずがない。だって777☆Sをオファーした本人なのだから、知らないはずがないんだ。

コレは夢なのか?頬をつねっても痛いだけで何も起きない。

 

もちろん、女子寮にも行った。

誰もいなかった。

どの部屋も整理だけはされていたが、生活感はまるで感じられなかった。

いつもあんなに賑やかだった共同スペースにも静まりかえっていた。

灯りも家具もカーペットもない。そこには、剥き出しのフローリングだけがあった。

 

戻ってきて、ただただ呆然とデスクトップを眺めていた。画面に映っているのは、何も入っていないメールボックス。

僕が支配人になってやってきた記録や成果、痕跡すらどこにも無かった。

全て無くなっていた。

 

203■/06/30 13:07

 

『私、私は……アイドルなんて、アイドルなんて……!大っ嫌いです……!』

 

ーー僕はまた、彼女の辛そうな顔を見る事になってしまった。

 

話は少し前に戻る。

結局、事務所内でこの状況を説明できる手がかりを見つける事はできなかった。

僕がアイドルをプロデュースしていなかった、という証明はいくらでもできるけれど。

それでも、あの忙しくも充実した日々が嘘であるはずがないという確信は持てる……いや、その言い方は正しくないかもしれない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と表現する方が正しい。

 

とりあえず商店街に行ってみよう。ヒメやサワラさん達が絶対にいるはずだ。話を聞いたら何かわかるかもしれない。

思い立ってすぐ事務所を飛び出した。

炎天下の中を急ぎ足で向かう。

ホロコンが手元にあるのに連絡が取れない不便さを痛感する。いつものように確認しても誰からの通知もない。

それはとても気持ちが悪かった。

はやる気持ちを抑えて信号が変わるのを待つ。額から滴る汗を拭いながら、ふと横断歩道の先に彼女を見つけた。

 

「ハル……!」

 

ハルがいた。

僕たちナナスタのアイドルがそこにいた。

僕がアイドルをプロデュースしていたのは、夢物語なんかじゃない!現実だった!

一人で考え込んでいたから、悪い方に悪い方に考えてしまっていただけだったんだ。

こんな事ならすぐにでもみんなが居そうな場所に行けば良かったんだ。

信号が青に変わる。

彼女の元に走り寄っていく。

 

「ハル!良かった!ナナスタに来ないから心配……」

 

気付いてしまった。

いつもの反応とまるで違う。

ハルの表情には驚きだけでなく、困惑と強い警戒が混じっていた。

喜びから一転、辛い現実を突きつけられた気分だった。

 

「あのー、もしかしたら会った事があるんだと思うんですけど……私、全然記憶になくって」

 

違う、そんな表情をさせたかったわけじゃない。僕はキミにそんな事を言わせたかったわけじゃ……

 

「あなたは誰、ですか?」

 

---203■/06/30 12:00

 

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