〜t7s if story〜 真夏のストレイシープ 作:なごむ
First day Ⅱ
203■/06/30 13:00
せっかく……せっかく会えたのに、何も覚えていないだなんて。
目の前にいる少女は決して冗談など言っていないとわかってしまう。
春日部ハル、僕がナナスタで最初にプロデュースしたアイドルだ。見間違えるわけがない。
「……どうして、どうしてなんだ。一緒に頑張ってきたじゃないか!」
しまった。やってしまった。
彼女は酷く怯えていた。
当然だ。彼女にとっては知らないおじさんが突然自分の名前を呼んで、迫ってきた。
それは恐怖以外の何物でもないだろう。
「いや、ごめん。違うんだ。僕が言いたかったのはそんな事じゃなくて」
冷静になれ、聞かなきゃいけない事が他にあるはずだ、僕のことは忘れていても良い
「ナナスタを知らないかな。知らないなら、知らなくても良いんだ。僕が知りたいのは……キミは」
彼女が、ハルが
「アイドルだよね?」
そうであって欲しいと願った。
僕は精一杯に表情を偽って笑顔を作った。
僕がプロデュースしていた事実が無かったとしても、彼女はアイドルだ。
どこにでもいる普通の少女。けれども、誰かの背中を押せるそんな
だから、
「何を言っているのか……わかりません」
彼女が顔を強張らせ、声も身体も震わせて、
「いきなり、何を……だって、だって私は……」
静かに、強く強く、まるで
「私は……アイドルなんて、アイドルなんて……!大っ嫌いです……!」
初めて会ったあの頃のように彼女が悲痛に叫ぶ姿を、僕はただただ呆然と見ている事しかできなかった。
203■/06/30 14:22
ハルはその場に居づらそうにしながら、予定があると言ってどこかへ行ってしまった。
商店街にも行ってみたがヒメは配達中。魚晴にはカジカとシンジュがいた。
声をかける勇気がないまま、ひとまず店の前を通ってみた。
『へいらっしゃい!お兄さんどうですか?今日は良いウナギが入ってるんですよ〜』
『新鮮だからな、蒲焼きにすると絶品だぞ』
全く嬉しくない予想通りの反応。
また今度必ず買いに来るよ、と笑顔で断るのが精一杯だった。
カジカは何かに気付いたような素振りを見せたけれど、僕のぎこちない笑顔に対してだと思う。
僕のことについては、聞くまでもなかったし、聞きたくもなかった。
みんなに会うのが怖くなってしまった。
知っているはずの人間から知らない人のように扱われるというのは、想像以上に傷付く。
いや、一番辛いのは僕が一番大好きなアイドル達がいない事だ。
その事実を突きつけられる事が、どんな事よりも僕を打ちのめした。
いつのまにか、公園のベンチに座っていた。
暑さのせいで周りに人影は見えなかったが、何も変わりない、いつもの公園だった。
色んな記憶が蘇る、去年のこの時期は花火だってしたし、話を聴いたり、遊んだりした。
公園だけじゃない、商店街に行って帰ってくる途中も、この街の至るところに思い出がある。
あるはずなのに……その全てが否定されている。
どうすれば良いのだろう、わからなくなってしまった。
頼る相手がいない。
絶望的だった。
今までだって沢山どうしようもない事があった。それでも、
それじゃあ、今の僕は……
「支配人!やっと見つけた!」
久しぶりに、呼ばれた気がした。
聞き馴染んだ彼女の声に思わず泣いてしまいそうだった。
ずっと探してくれていたのだろう。
膝に手をついて、息を整えている彼女は全身汗でびっしょりだった。
何度かの「大丈夫?」「大丈夫」のやり取りと、何度かの深呼吸をして、ようやく息が整うと、彼女はいきなり切り出した。
「ほら、行くよ。支配人」
「行くって、どこに……」
「どこって。私たちが一緒に行くべき場所なんて
そう言って歩き出してしまう彼女に、慌てて付いていく。二つ結びの彼女の背を追いかける。
その
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