BanG Dream! ~輝きの向こう側へ~ 作:イノウエ・ミウ
基本的に2話ずつ書いていこうと思います。
1~2話
1話 かつて見た景色
五年前、ライブ会場舞台裏
「凄かったね、兄さん。お客さんがいっぱいいて、とてもキラキラしていた」
ライブが終わり、舞台裏に戻った兄弟の弟が兄にライブの感想を伝える。
しかし、満足気な笑みを浮かべる弟と違ってどこか満足していない兄。
「こんなもんじゃないさ。俺の求めるステージはキラキラのその先のステージ、輝きの向こう側だ」
「輝きの向こう側?」
「ああ、頂点に立った者だけが見える特別な景色さ。」
兄の話を聞いて、弟は輝きの向こう側に興味を持った。
今日のステージはとてもキラキラしていた。しかし、頂点に立てばキラキラよりも更に上の輝きの向こう側が存在するのだと。
そのステージから見える景色はどんな景色なのだろうか。
見てみたい。弟は純粋にそう思った。
そんな弟の気持ちを悟ったのか、兄は弟の肩に手を置いて、笑みを浮かべながら喋る。
「達己。お前はいつか、輝きの向こう側を目指せ。そこにはお前の想像を超える素晴らしい景色が待っているはずだ」
「兄さん・・・うん!俺はいつかたどり着いた見せるよ。輝きの向こう側に!」
それが、幸畑達己が輝きの向こう側を知った出来事だった。
あれから五年の月日が流れた。
四月
春の始まりを伝え、各学校では新たに入学してくる生徒を祝う月である。
ここ、鈴ノ宮学園も今日、入学式が行われるのであった。
鈴ノ宮学園。創立五十年以上も経って尚、未だに生徒の数が1000人以上いるこの学校は、正にマンモス高校と呼ぶに相応しい学校であった。
その学校の正門前に一人の少年が立っていた。
「ここが鈴ノ宮学園・・・」
青い制服を着て、白い髪に赤い眼を持つ少年は、今日から通う学校を見上げた。
「・・・行こう」
決意を固め、少年は正門をくぐった。
入学式を終えて、それぞれ指定された教室に入る生徒たち。
一年一組の担任は自己紹介を済ませた後、自身が担当するクラスの生徒たちに自己紹介をさせた。
「次!」
担任の言葉と共に一人の少年が席に立った。
白い髪に赤い眼を持ち、無表情でどこか不思議な雰囲気の少年。
担任はその少年を見てそう思った。
そんなことを思っている担任をよそに、少年は自己紹介をした。
「幸畑達己です。趣味はプラモ作り。特技は・・・ないです。部活は今のところ入る予定はありません」
特に何の変哲のない自己紹介をしていた少年だが、最後にクラス全員に伝えるかのように喋った。
「最後に一つ・・・バンド募集しています。興味がある方は、俺に声を掛けてください」
初めて輝きの向こう側を知って五年経って尚、幸畑達己は未だに輝きの向こう側を求め続けていた。
2話 たった一つの望み
入学式が終わって二週間が経った。
この時期になると、新しい友達を作ったり、どの部活に入ったりなど、忙しくなるばかりである。
しかし、周りが新しい友達を作っていく中、未だに達己には友と呼べる者がいなかった。
入学式以降、ポスターなどを作って学校中に貼ったりしながら、バンドメンバーを募集していったが、声を掛ける者はいなく、こちらから声を掛けても、断られるか無視されるかの二択で、ポスター自体も剝がされたりしていた。
それでも、達己はバンドメンバーを集めるべく、日々、学校中を歩き回っていた。
そんなある日のこと
「ちょっといいか?」
「!?・・・何?」
席に座っていた達己に、一人の少年が声を掛けた。
入学してから一度も声を掛けられたことがなかった達己は、少し驚いたが冷静に返した。
「ポスター見たぜ。お前、本気でバンドを組むらしいな?」
少年の言葉に頷く達己。
見た感じ、達己より背が高く茶髪のツーブロックの少年は「そうか」というと
「もし良かったら、俺をお前のバンドに入れてくれないか?」
「!?・・・本当?」
達己は笑みを浮かべた。
二週間バンドメンバーを探し続けて、ようやく訪れたこのチャンスを無駄にするわけにはいかない。
「君、名前は?」
「おう、そうだな。俺の名前は立川伊吹。趣味は筋トレ。この辺りに住んでいるぜ」
「希望の担当は?」
「ギターだ」
「へぇー、ギターは何年くらい弾いたことあるの?」
「いいや、一回も弾いたことないぜ」
「え?・・・今、なんて言ったの?」
「ん?一回も弾いたことないって」
伊吹の言葉に複雑な表情を浮かべる達己。
自分の目的は輝きの向こう側。そのためには、最低限、経験者であることが望ましい。
だが、二週間経ってもメンバーが中々見つからない中、ようやく訪れたメンバー加入のチャンスを捨てるのも勿体ない。
「・・・とりあえず、返事はまた今度で」
「おう!いつでも返事してくれよ!」
悩んだ末、立川伊吹の加入は、ひとまず保留という形になった。
ライブハウス、KINGDOM
二年前から達己はよくここに来て、ギターの練習をする。
今日もまた、スタジオでギターの練習をしていた。
曲に合わせてギターを弾いていきながら一曲歌い終えた。
その時、スタジオに一人の男性が入ってきた。
「よっ、今日も練習しに来たのか?」
聞きなれている声に振り向くと、やはりと言うべきかKINGDOMのオーナー、赤鋼立人がいた。
「まだ、見つかっていないみたいだな?バンドのメンバー」
「・・・まだ、入学して二週間しか経ってないし、これからだよ」
赤鋼の言葉を達己は素っ気なく返す。
「・・・早いもんだな・・・あの日、兄を失ってアイドルの道も閉ざされて、絶望に囚われていたお前を見つけて、もう二年が経つんだな」
「・・・・・・」
独り言のように吐いた赤鋼の言葉を黙って聞く達己。
「・・・まだ、探し続けているのか?輝きの向こう側」
「勿論。だって、それだけが今の俺の求める物だから」
そう言って、達己は練習を再開した。
それを見た赤鋼は、これ以上は何も言わず、無言で部屋を出るのであった。
練習を終えて、家に帰る達己は近くの公園のベンチに座っていた。
ケースからギターを取り出し、黙って見続ける達己。
「(兄さん・・・兄さんは今の俺を見て、なんて言うのかな・・・)」
心の中で、もうこの世にいない兄に語る。
かつて、兄と共にアイドルとして名を上げていた達己。
しかし、二年前に兄を病気で失い、一人で活動していたが、一向に名が広まることはなく、アイドルの道を断念し、絶望しきっていた達己にバンドの道を進めたのが赤鋼だ。
アイドルとして培った歌唱力と二年の間で鍛え上げたギターの力で、達己はソロでライブの場を盛り上げることができるくらいまで成長した。
しかし、未だに共に音楽を奏でるメンバーが見つかっていなかった。
バンドは一人では絶対にできない。
初めてバンドを知った達己に赤鋼が言った言葉である。
この言葉に従い、達己は今でも共に音楽を奏でるバンドメンバーを探していた。
「・・・学校の時のあいつ・・・やる気はあるみたいだけど、だからといって、初心者ってのはなぁ・・・」
今日の学校でも出来事を思い浮かべる。
バンドに入りたいと言ってきた伊吹。しかし、自分の求めるバンドは輝きの向こう側にたどり着くことができる最強のバンドだ。
初心者をバンドに入れて、果たして自分は輝きの向こう側にたどり着けるのだろうか。
「はぁー・・・考えていても仕方ないし、とりあえず、一曲歌おう」
そう言って、ギターを持った達己は座りながら一曲歌った。
ギターの音に合わせて歌を歌っていく。
歌っている曲は、アイドル時代の曲をリメイクしたものである。
一通り歌い終えた達己は、しばらく、無言であったが
「・・・帰ろう」
そう言いながら、ギターをケースにしまおうとしたその時
「スゴーイ!キラキラだ!」
何処からか、少女の元気な声が聞こえた。
一体、どこのスターちゃんナンダ?