BanG Dream! ~輝きの向こう側へ~   作:イノウエ・ミウ

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3~4話

3話 星の鼓動を聞いた少女

 

元気ないっぱいな少女の声が聞こえ、振り向くと、そこには目を輝かせながらこちらを見ている少女がいた。

茶髪に頭に猫耳?が付いている少女は元気よく達己に話しかける。

 

「凄かったねさっきの歌!どうすればあんな風にキラキラになれるの!?」

 

「・・・別に。普通にギターを弾きながら歌っただけだよ」

 

「噓!?だって、あんなにキラキラしてたんだよ!?絶対に有り得ないよ!」

 

なんだこの子は。達己は目の前で騒いでいる少女にそんな印象を抱いた。

 

「有り得ないも何も、俺は普通にギターを弾いて歌っただけ。何の種も仕掛けもないよ」

 

「そうなの!?それじゃあ、君は歌を歌うだけでキラキラになれるんだね!すっごーい!」

 

なんか変な認識をされた。

未だ呆然と見ている達己をよそに、少女は何か思いついた表情をした。

 

「あ、そうだ!私、戸山香澄。花咲川女子学園の一年生。君は?」

 

何がそうだなのか分からないが、とりあえず、自己紹介をしてきた少女にこちらも一応自己紹介をする。

 

「幸畑達己。鈴ノ宮学園の一年生」

 

「えぇ!?君も一年生なんだ!なら、私と同じだね!よろしくね、たつ君」

 

「たつ君?」

 

なんか変なあだ名を付けられた。

これ以上、向こうのペースに乗られるのはマズいと思った達己は一旦、話題を変えようと香澄と名乗った少女に質問した。

 

「ところで戸山さんはこんな所で何してるの?」

 

「私はね、キラキラドキドキを探しているの」

 

「キラキラドキドキ?」

 

キラキラドキドキの意味が分からなかった達己だったが、キラキラと聞いて、ふと、ある質問をした。

 

「・・・ねぇ戸山さん。戸山さんって輝きの向こう側を見たことがある?」

 

「輝きの向こう側?・・・見たことないよ。星の鼓動なら聞いたことがあるけど」

 

「星の鼓動?それって輝いているの?」

 

「勿論!私も星の鼓動みたいにキラキラドキドキしたくてそういうのを探しているんだ!あ、星の鼓動っていうのはね、星がキラキラってして、ドキドキってして、それはもうキラキラドキドキ」

 

「ごめん、もういい」

 

とりあえず、香澄が輝きの向こう側を見たことがないことだけは分かった。考えて見れば、星が輝いているのは当然だし、大方、山とかに行って夜空に浮かんでいる無数の星々を見たのだろう。

そんなことを考えていると、香澄が声を上げた。

 

「あ!私、そろそろ行かなくちゃ!またね、たつ君」

 

「・・・またね」

 

香澄は達己に一言言うと元気よく去っていった。

残った達己も不思議な子だったなぁ~と思いながら家に帰るのであった。

 

 

 

 

「凄かったな~たつ君、とってもキラキラしてたし・・・」

 

帰路についていた香澄は先程の少年の姿を思い浮かんでいた。

 

「私もなれるかな。たつ君みたいにキラキラドキドキに・・・」

 

そんなことを思いながら歩いていると

 

「ん?これは・・・シール?」

 

香澄は道に落ちている星のシールを見つけた。

それが後に彼女のバンドの芽が芽吹くきっかけになることを香澄はまだ知らない。

 

 

 

 

鈴ノ宮学園の昼の教室で達己は相変わらず一人で過ごしていた。

いつもなら授業が終わった後は、バンドメンバーを探し学校中を歩き回るか、一人で昼食をとるかの二択であるが、今日は違った。

 

「えっと・・・立川伊吹君・・・だっけ?」

 

「ん?おう、お前か。ああ、俺の名前は伊吹だ。合っているぜ。達己・・・でいいんだよな?」

 

昼食を済ませた達己は机に座っている伊吹の下へやって来た。

 

「うん、合ってるよ。それで、昨日のバンドの件なんだけど一つ聞いていいかな?沖立君」

 

「おう、いいぜ。それと伊吹って呼んでくれ。後、君付けもいらねぇよ」

 

「うん、分かった。それじゃあ、一つ聞いていい?」

 

達己は「すぅー」と一旦、呼吸を整えると、伊吹に問いだした。

 

「伊吹、君はどうしてギターがやりたいと思ったの?バンドがやりたいのなら他のパートでもいいはずだ?」

 

「そうだな・・・かっこいい、と思ったからだ」

 

「・・・はい?」

 

「だから、かっこいいって思ったんだよ。ほら、ギターを弾ける奴ってなんかスゲーかっけーイメージがあるだろ。他のパートも中々いいけどよ、俺は断然ギターが一番だぜ!」

 

「・・・・・・」

 

熱く語る伊吹を達己は冷めた目で見ていた。

正直に言えば、たとえ初心者であってもギターなら自分が教えれるし、高みへ目指す強い意志があれば加入させようと思っていた。

しかし、結果は達己の望む形にならず、残念な答えだけが返ってきた。

貴重なメンバー加入のチャンスを逃したことにため息をつきながら達己は伊吹に不合格であることを伝える。

 

「・・・悪いけど、伊吹、君をバンドに入れることはできない」

 

「な!なんでだよ!?」

 

驚きながらも加入を断った理由を問いだす伊吹。

それに対して、達己は冷静に話し始める。

 

「俺が目指している場所は輝きの向こう側って行って言わば、頂点にたどり着けないと見ることができない場所なんだ」

 

「輝きの向こう側・・・」

 

「でも、そんな考えじゃ輝きの向こう側どころか頂点にすらたどり着くことができない」

 

「それは!やって見ねぇと分からねぇだろ!」

 

「それだけじゃない。伊吹、君は頂点に立つことの意味が丸っきり分かっていない」

 

「な、何が分かってないんだよ・・・」

 

普段と違う達己の雰囲気に戸惑いながらも伊吹は問いだす。

それに対して、達己は普段では滅多に見せない真剣な表情で語り出す。

 

「頂点に立つ、確かに聞こえはいい。でも、誰か笑えば誰か泣く・・・どの世界でも頂点に立てるのは一人だけだ。頂点に立てた人は当然嬉しいだろうし、満足して辞めることができれば、更なる高みを目指して続けることもできる。でも、頂点に立てなかった人たちは悔しい思いをして続けるか辞めるかの二択だけだ。だからこそ、みんな頂点に立とうと毎日必死に・・・それこそ、命をも懸けて挑み続けているんだ!」

 

「!?」

 

達己の言葉に伊吹は何も言わない。いや、言えなかった。

達己が目指している場所がどれ程過酷なのか・・・どれ程残酷なのか・・・一度、挫折を経験している達己の言葉は伊吹にとって重すぎた。

 

「俺が目指している場所は楽観的に考えていい場所じゃないんだ!・・・この大バンド時代には夢を持ってもそれを叶えることができずに涙する人たちもいる。そんな人たちがいることを踏まえて聞くよ。立川伊吹、お前は頂点を目指す覚悟はある?」

 

「・・・・・・」

 

達己の言葉に伊吹はしばらくの間、無言であったが

 

「・・・俺には中学の頃にバンドをやっていた幼馴染がいるんだ」

 

「?・・・やっていたっていうことはその人は辞めたの?」

 

「ああ、家庭の事情でな・・・でも、聞いてほしいのはそこじゃねぇ」

 

ふと、喋り出した伊吹を達己は表情を変えずに聞いていた。

 

「バンドをやってた時のあいつはスゲー楽しそうだったんだ。バンドの仲間たちと一緒にドラムを叩いているあいつの姿は生き生きとしてた。でも、辞めちまって、しばらく経ったある日によ、バンドの話題になった時あいつ、スゲー悲しそうな顔をしてたんだ。きっと心の中ではスゲー後悔しているんだと思うんだ」

 

顔を俯きながら喋っていた伊吹だが、ふと、顔を上げ真剣な表情になると

 

「だから、確かめてぇんだ。あいつが辞めても尚、未だに未練を残している場所がどんな所なのか・・・そのためならギターの腕がどうとか関係ねぇ。俺はたどり着くだけだ。あいつがいたステージ・・・いや、それ以上の場所にな!」

 

伊吹の言葉を達己は黙って聞いていた。

この少年もまた、自分と同じだ。ただ興味範囲でバンドをやろうとせず、バンドに対する理想を掲げている。そして、それを実現しようとする信念がある。

伊吹の信念を正面から受け止めた達己は

 

「・・・今日の夕方、CIRCLEって場所に来て。場所は後でLINEで送るから」

 

そう言うと、達己は自分の席に戻った。

 

 

 

 

4話 星の王子様

 

ライブハウス、CIRCLE

伊吹は学校が終わると、達己からLINEで送られきた場所であるここに来ていた。

ライブ会場には人だかりがあり、その人だかりは会場の外まであった。

 

「(スゲー人だかりだな・・・あいつは今日ここで歌うみてぇだけど・・・)」

 

その人だかりの中、伊吹は腕を組みながら準備中のステージを眺めていた。

すると、周りの人たちの声が聞こえてきた。

 

「ねぇ、知ってる?今日のライブ、星の王子様が出るらしいよ」

 

「嘘っ!?あの星の王子様が!?」

 

「ホントよ。はぁ~素敵だわ。歌が上手くてギターも引けて輝いていて、それに気遣いもできて、オマケに可愛らしい顔をしてかっこいいし」

 

「正に王子様ね!」

 

そんな少女たちの会話が聞こえてきた。

 

「(星の王子様って・・・あいつ、王子様ってガラじゃねぇだろ)」

 

少女たちの会話を聞いた伊吹は普段の達己の様子を想像しながらそんな風に考えていると

 

『キャーーー!!』

 

会場にいる女子たちの歓声が響き渡り、伊吹はステージの方を見た。

そこにはギターを持っている達己がいたが、その姿は普段の達己とは全く違っていた。

普段のおとなしめな雰囲気は全くなく、普段ならどこか覇気のない赤い瞳には真っ直ぐな炎が宿っていた。

 

「(マジかよ・・・いつもより違うって言うよりかはもはや別人じゃねぇか!?)」

 

「・・・幸畑達己です。今日は来てくださってありがとうございます。それでは、早速ですが一曲目」

 

伊吹が普段と違う達己に困惑する中、達己は軽く自己紹介を済ませるとギターに手を当て息を吸いそして、歌いだした。

 

「!」

 

その時、世界が輝きに包まれた。

達己の言葉の一つ一つがギターの音色と共に会場中に響き渡っていく。

達己の歌声に静かだった会場が一斉に歓声に包まれる中、伊吹は声を上げずに、ただ黙って達己の歌声を聞いていた。

会場全体をも変えてしまう歌声とそれを奏でている達己の放つ輝きに伊吹は圧倒されていた。

そして、ライブはあっという間に終わりを迎えた。

 

「・・・ありがとうございました。また、見に来てください」

 

歓声に包まれる会場に達己は一言礼を言うとステージから下りた。

 

「これが、バンドなのか・・・?」

 

周りが歓声に包まれている中、伊吹は達己がいたステージを見続けるのであった。

 

 

 

 

「すっごーい・・・」

 

達己がいたステージを香澄は目を輝かせながら見ていた。

つい先日、公園で出会った少年がここでライブすると学校で聞いた香澄は早速、ライブハウスへとやってきた。

そして、達己のステージから放たれた初めて出会った時以上の輝きに香澄は目を奪われていた。

 

「スゲー、完璧すぎるだろ・・・」

 

その隣で金髪ツインテールの少女、市ヶ谷有咲もまた達己に魅了されていた。

香澄に強引に連れてこられた有咲はライブが始まる前は嫌々とステージを見ていたが、ライブが終わると今まで聞いたことのない完璧な歌声に言葉が出てこなかった。

 

「(これが・・・たつ君のキラキラドキドキ・・・!)」

 

達己のキラキラドキドキを感じ取った香澄は未だステージを見続けている有咲に力強く声を掛けた。

 

「やろう有咲!私たちもキラキラドキドキになれるように!」

 

そして、いつか彼みたいに輝ける存在になりたい。

香澄はそう決心するのであった。

 

 

 

 

幸畑達己に魅了された少女は戸山香澄だけではなかった。

 

「・・・・・・」

 

美しき銀のロングヘアの少女、湊友希那は先程まで達己がいたステージをマジマジと見ていた。

 

「これが星の王子様・・・なるほど・・・あなたが練習を早めてまで見ようとした理由が分かりました」

 

その隣でエメラルドグリーンのロングヘアの少女、氷川紗夜がつい先日、バンドを組んだボーカルに静かに語りかける。

バンドを組み始めてから、いつも通り二人で練習をしていたが、今日は自分の気になっている人がここでライブするとのことで、それを見るために練習を早めに切り上げると友希那が言ってきた。

無駄なことに時間を使いたくない紗夜は、わざわざ練習時間を早めてまで見る必要があるのかと考えていたが、その考えは先程のステージを見てすっかり消えていた。

 

「ギターの腕はまだまだなところはありますが、それを凌駕する歌声・・・もし、それに更なるギターの技術や他のパートが加われば、彼は将来、最強とも言えるバンドになりかねませんね」

 

ライブの純粋な感想を友希那に伝える紗夜。

ギターの腕は自分より劣っているが、彼のボーカルの力はかなり上だ。あの日、友希那の歌を聞いて感じた時と似たようなものを紗夜は感じていた。

紗夜は幸畑達己を評価すると同時に将来、自分たちの前に立ちはだかる障害になるだろうと危惧した。

そして、友希那も

 

「・・・彼は間違いなく私と同じくらい音楽に対する熱意があるわ・・・いいえ、熱意だけじゃない。それを証明できる実力も彼は持っているわね」

 

達己の実力を評価していたが、「でも」と言いながら言葉を続ける。

 

「相手が誰だろうと私たちは高みを目指すだけよ。彼が高みへの壁になるのなら、それを押し倒して進むだけ」

 

「・・・そうですね。今日はもう見なくてもよろしいのですか?」

 

「そうね。元々、彼を見るために練習時間を早めたのだから、他のバンドを見る暇があるのなら帰って自主練をした方が効率的だわ」

 

そう言うと、友希那たちはライブ会場から出た。

そして、外に出ようとした瞬間

 

「友希那さん!バンドに入れてください!」

 

紫のツインテールの少女が友希那たちを待ち構えていたかのように立ち塞がり友希那に自分をバンドに入れて欲しいとお願いしてきた。

この少女、友希那たちがバンドを結成した後、いきなり現れてバンドに入れて欲しいとお願いしてきたのである。

完璧なバンドを目指している友希那は世界で二番目に上手いドラマーだと自称する中途半端な少女のお願いを断ったが、それ以降、少女は何回も友希那の前に現れてはこんな風にバンドに入れて欲しいとお願いするのであった。

そんな何回目かも分からない少女のお願いを友希那は

 

「断るわ」

 

いつも通り断るのであった。

 

 

 

 

ライブが終わり、ライブハウスから出た達己を伊吹が待ち構えてたかのように立っていた。

 

「・・・どうだった?今日のライブ」

 

「・・・スゲーの一言しかねぇ。音楽なんて今まで何回も聞いたことがあるからステージで歌ったところで大したことないと思ってた。でも、あのステージで輝いているお前を見て、俺はお前のことを本当にスゲー奴だと思ったぜ」

 

「そう・・・でも、こんなもんじゃないから。俺の目指している場所は」

 

伊吹の感想を一言で返しながら達己は口を開く。

 

「俺が目指している輝きの向こう側はそんな輝きすらも凌駕する最高のステージだ。そこにたどり着くためには最高の歌と演奏技術が必要だ。生半可な気持ちで挑んでも絶対にたどり着くことはできない」

 

そう言うと、達己は学校の時と同じように真剣な表情になり

 

「改めて聞くよ。立川伊吹、お前は持てる力の全てを掛けて輝きの向こう側に行く覚悟はある?」

 

正面から伊吹に問いかける。

それに対して、伊吹はしばらく顔を下に向けていたが、ふと、小さく笑みを浮かべた。

 

「いいね・・・男だったらそりぁでっけぇ目標を持つよな・・・輝きの向こう側か・・・面白れぇ!」

 

そう言うと、達己を正面から見つめ

 

「いいぜ!その輝きの向こう側って場所に行くために、お前のバンドのギター、俺が引き受けてやるよ!」

 

伊吹の力強い決意を聞いた達己は、笑みを浮かべると握り拳を伊吹の前に差し出した。

 

「合格だ。よろしく伊吹」

 

「おう!やってやろうぜ、達己!」

 

伊吹は達己から差し出された握り拳を己の握り拳で合わせた。

こうして、初のバンドメンバー。ギター、立川伊吹が加入するのであった。




<自己紹介>
星1「星の王子様」幸畑達己

「えっと・・・幸畑達己・・・です。Beyond'worldのギターボーカルです。輝きの向こう側を目指しています・・・後は・・・趣味はプラモデル作りで特技はありません。え?歌を歌うことは特技じゃないのかって?プロの人たちに比べたら俺なんてまだまだだよ」
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