Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal   作:しゅーがく

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お久ぶりです。しゅーがくです。
前回の投稿より、かなり時期が開いてしまいました事を先にお詫びさせていただきます。約2か月ですかね?前回より。それまで色々あったので、書けずにいました。
まぁ、言い訳は置いておいて、自分もどういう流れで話が進んでいたかも余り記憶に残っていないので、慎重に前回以前のを読み返しながら書きました。
色々辻褄の合わないところがあれば指摘していただきたいです。


episode 11

武は何かに囲まれている訳でもないハンガーを見て思った。

 

(本当に仮設なんだな。建物らしい建物があまり見当たらない。)

 

不知火の機内でふとそんなことを考えた。

今は推進剤の補給で、待機命令が出ていて、機外に出ることが許されてなかった。機外で作業している整備兵らしき人は何故だが防毒マスクに酸素ボンベを背負って作業していた。きっと、BETAから発せられる硫黄臭が残っているのだろう。横浜基地では戦闘後直ぐに除染作業が行われていた為、死骸が積み上げられている場所以外はそんな臭いは一切しないまでになっていた。

 

『BETAとの交戦域はこの旧飛騨仮設基地の北、旧石川県金沢辺りだ。』

 

補給を行っている最中も次々と戦術機や輸送機が仮設基地の滑走路に降り立ち、飛び去っている。地上では整備兵や輸送車、運搬車、作業用機械化歩兵などが目の前を通り過ぎていくのが目で追えない程の人数が慌しく仕事をしていた。

 

『C小隊、補給完了。』

 

唐突に入った通信は補給の完了を知らせるものだった。

 

『B小隊、補給完了だ。』

 

『A小隊も完了。』

 

次々と補給が終わった報告をそれぞれで行うと、みちるは号令を出した。

 

『ここからは帝国軍・極東国連軍より交戦区域に指定されている。気を抜かず、奴らを殲滅せよっ!』

 

『『『了解!』』』

 

みちるは号令の返答を聞くと、不知火の各所に繋がれていたパイプを切り離す指示を出し、使用許可の下りた滑走路に向かい、ロケットエンジンにて滑走し、飛び立った。それに続くかの様に、続々と不知火が飛び立っていった。

戦術データリンクには戦術機や往復する輸送コンテナ、輸送機、無人偵察機などが行き来し、慌ただしかった。

______________________________

 

『旧石川の金沢付近に到着した。各機周辺警戒。』

 

みちるはそう言うと、戦域データリンクを凝視した。BETA群の位置、味方の位置、補給地の位置、司令部の位置......確認する事が山ほどあったからだ。

武は武で戦域データリンクを最大にまで縮小して見ていたが、物の行き来でどこに何があるのか、アイコンがどんどん消えていき、戦線が後退している事だとか、目には入っていたが、膨大な情報を整理出来ずにいた。

 

『戦闘区域に侵入した国連軍所属の戦術機一個中隊の指揮官に命ずる。応答しろ。』

 

『国連軍横浜基地所属の伊隅大尉だ。』

 

『こちらは臨時CP白川郷インターだ。貴様ら戦術機中隊は各地より派遣された部隊であるな。話は聞いている。』

 

『了解。』

 

CPとのやり取りを聞かされている時、武は全く別の事を考えていた。

 

(鉄原ハイヴからの侵攻。『こっちの世界』に来るまでの経緯から察するに、仕方の無い事象だけど、パンクするほどのBETAが地下茎構造内に居たとするなら、警告が周辺国家に出されている筈だ。)

 

そんな事を考えていた。

 

『ヴァルキリーマムよりヴァルキリーズ。随伴していた横浜基地所属の中隊はそれぞれ与えられた任務の為散開します。ヴァルキリーズは野々市防衛線に参戦し、白川郷インターCPに接近しようとするBETA群を殲滅せよ。その際、周辺部隊と連携を取れ。』

 

『了解。ヴァルキリー1より、ヴァルキリーズ。これより野々市市市街地に向かう。楔形1にて防衛線に突入する。』

 

『『『了解!』』』

 

BETAの侵攻が未だ軽微な金沢市市街地を離れる事になった。今や激戦区となっていて、戦術機が密集している為かBETAもそこに集中していた。表示されている戦域の地図も所々赤くなっていてそれだけのBETAが前進している事が目に見えて分かった。

反して、味方部隊の配置は指揮系統の混乱は無いが、頻繁に配置の移動があるのだろう。混乱している様にも見られた。

 

「味方、かなり混乱してますね。」 

 

『白銀もそう思った?今回の鉄原ハイヴからの迎撃作戦は普段、1つしか設置されないCPも今回に限って複数転々と設置されているわね。前線の混乱の原因はそこでしょうね。』

 

武と同じ違和感を水月も感じていたらしい。ボソリと呟いた武の一言も聞き逃さなかったようだ。

現状、CPが複数あるが故の混乱が前線各地で起きていた。補給コンテナが無い、援軍が来ない、支援砲撃が来ない、陣地変更命令が頻繁に下り、唯一の戦域データリンクもそんな状況で混乱している戦術機部隊が右往左往していた。

 

「どこの部隊と連携を取るつもりですか?」

 

武はみちるに聞いてみた。戦闘区域には入ったが付近にはBETAの存在が確認されず、どこかで乱戦しているところに突入しなければならない状況だったのだ。

 

『一番部隊の損耗が激しいところに援軍として突入する。ふむ............2時の方向にてBETA群と交戦中の1個分隊のところに行こう。群がっているBETAの数もかなり多いみたいだからな。』

 

そう言ってみちるはマップにマーキングをした。マーキングをした地点と戦域データリンクを照合すると、最もBETAの集まっているところだった。それに、交戦中の戦術機にも片腕がもげていたり、跳躍ユニットの不調を訴えるアラートも出ていた。

 

『ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ。楔型にて2時方向のBETA群に攻撃を仕掛ける。奴らのケツに劣化ウラン弾をたらふく食わせてやれ。』

 

『『『了解』』』

 

みちるの号令で武達は楔型の陣形に変更しつつ、先頭をB小隊にしてBETA群に向けて突進した。

______________________________

 

戦術機1個分隊に群がっていたBETAは幸いにも光線級や要塞級が居なかった事もあり、光線級や要塞級の存在する状態での戦闘よりかは少し楽だった。だが、武達に続いてBETA群に突進してきていた戦術機1個小隊は、乱戦が終了した突入後20分後にはアイコンが見当たらなかった。

 

『援軍感謝します!私は帝国軍宇都宮駐屯地所属の三野少尉です。もう一人は同じく宇都宮駐屯地所属の岩岳少尉です。』

 

そう言って挨拶をしたのは、さっきBETA群に囲まれていた戦術機1個分隊の衛士だった。

彼らは笑って話すが、乗っている機体は武たちが援軍として突入してから約20分間戦闘をした為、援軍として突入する前よりも損傷が酷くなっていた。三野少尉と名乗った衛士の乗る戦術機、撃震は片腕がもげている状態から更に、跳躍ユニットが破損していた。もう一人の方は肩部に戦車級が取り付き、已むを得ず左肩部をもぎ取っていた。

 

『2機であれ程の大群をどう相手していたか気にはなるが、取り敢えず後方の仮設補給基地に向かうといい。あそこなら予備の戦術機もあるはずだ。』

 

みちるはそう言うと白川郷インターCP付近にある仮設集積場にアイコンを打った。

 

『ありがとうございます。私たちはこの辺りの死守を命じられておりました故、その任、代わりに遂行してはいただけないでしょうか。戦術機を交換したら直ぐに戻って参ります。』

 

そう言って、2機の撃震はお互いに支えあいながら後方に飛び去って行った。

 

『ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ。あの撃震の請け負っていたこの辺りの死守の任、代わりに遂行する。各自周辺警戒のまま待機せよ。』

 

そう言ってみちるは通信を終えた。

______________________________

 

撃震が飛び去って10分が経過していた。一帯のBETAを殲滅したので、BETAと戦う事無く、町の中央で待機していた。開けた場所があったからだ。

辺りを見渡すとそこらじゅうに戦車級、要撃級、突撃級などの死骸が山積みになっており、理由不明の靄がかかっていた。周囲の音を拾うマイクからは近い処から遠い処。さまざまな場所から突撃砲の発砲音が途切れなく響いていた。

 

「前線を押し上げている様ですね。この辺もそろそろ前線ではなくなりそうですね。」

 

武は何気なく小隊無いで通信をした。

 

『その様だな。戦域データリンクからの確認からも見て取れるな。』

 

武の受け答えに応じたのは冥夜だった。

 

「乗り換えに行ったあの人たちもさっき戦術機の反応が消えたから、無事について乗り換えれたんだろうね。」

 

『そうだな。この先はどうする御つもりなんだろうな。伊隅大尉は。』

 

『合流した後に押し上げている前線に入るんじゃないの?ただ突っ立ってても暇だし。』

 

水月が話に入った。

 

『無論、そのつもりだ。そろそろ乗り換えの整備も終わらせてデータリンクに表示されるだろうな。』

 

「ですが、行きでは残りの推進剤残量を考えずに上空に上がった途端、出力最大で飛び去っていきましたのに、一向に出てくる気配がありませんね。」

 

武は先ほどから思っていた事をみちるに伝えた。

どう考えてもおかしかったのだ。乗り換えも想定されていた今回の迎撃作戦なら集積場に乗る衛士の居ない戦術機が用意されていてもいい筈なのに、全く出てくる気配すらないからだ。更に、集積場に向かった戦術機のおよそ3分の1が未だに飛び立っていない事も不思議だった。

考えられるのは、既に予備機が出払って、待機になってしまった。若しくは、桜花作戦から戦術機の製造があまり追いついておらず、予備機までは用意できなかったかだ。

 

『これは、帰ってこないと考えた方がよさそうね。』

 

水月は言った。確かに、これだけ時間かけていたら、常に人手不足の前線に戦術機が安定した状態で供給ができないし、その間に前線が瓦解してしまう場合もある。それは何としても避けなければならない事だった。

 

『では、あと5分以内にデータリンクに表示されなければ我々だけで先行する。』

 

みちるはそう言い放ったが、どこか雰囲気がいつもと違っている様に武は感じた。

 




ここまで書くのに3日かかるとは思いもしませんでしたよ(汗)
後半は指が吊りそうでした(笑)

次回も遅れて投稿させていただく可能性があるのをご了承ください。

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