Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal   作:しゅーがく

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どうも、しゅーがくです。約1ヶ月ぶりの更新となります。
最近思い出したのは、『パソコンで投稿しているが、原稿は携帯で書いた方がいいんじゃないか?』とか思い出しました。まぁ、既にそうするつもりなんですがね。


episode 12

結局、5分経っても三野と岩岳は現れなかった。その間に押していた前線は少しずつ後退を始めていた。戦域データリンクに表示されていた約2個戦術機甲連隊は約2個戦術機甲大隊程まで損耗していた。

後方からの増援も2分前から止まっていて、上空を飛ぶ無人偵察機や無人爆撃機、有人攻撃機の数は増えつつあった。その理由はとても簡単だった。広範囲に侵攻したBETA群に対応できる十分な戦術機が無いからだ。

戦術機とBETAが交戦する音と共にヘッドセットのスピーカーから声がした。

 

『ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ。合流を断念し、前線に合流する。全機、楔型壱にて長距離跳躍っ!』

 

それはみちるの声だった。

 

『『『了解。』』』

 

そう言ってただ無言に陣形を取り、武は大空へ舞い上がった。

______________________________

 

『ぐうぅぅ......隊長っ!加賀笠間守備隊はもう我々だけですっ!!旧北陸本線防衛戦が持ちそうにありませんっ!』

 

『ダメだっ!増援が到着するまで前線は後退出来ない!持ちこたえろ!近隣の手の空いてる部隊に援軍を頼めっ!』

 

『此方加賀笠間守備隊!松任守備隊へ、応答をっ!......ダメです、通じません!』

 

『後方の部隊は!?』

 

『どの部隊も彼方此方の援軍に行ってて居ないそうです。敵がこの数では捌ききれませんよ!』

 

武にはその会話から彼らの置かれている状況が理解できた。きっと、割り振られた守備地帯、加賀笠間一帯に残っている兵力が戦術機2機しか無いのだろうというのはすぐに分かった。

 

『ヴァルキリー1よりヴァルキリーズ。前方、加賀笠間守備隊残党と合流する。彼らを一時的に我らの指揮下に置く。』

 

みちるから武の思っていた通りの言葉が出てきた。戦域データリンクでは、周辺の部隊、特に後方には戦術機が必要最低限だけ残っているだけで、その大部分が前線の援軍として突入している様な状況だった。

だがそんな前線でも、加賀笠間一帯にだけ兵力が明らかに足りていなかった。みちるは後方にBETAを通すまいとそう命令したのだ。

 

『『『了解。』』』

 

みちるは全員の返事を聞いた後、加賀笠間に残っている戦術機に通信を入れた。

 

『此方極東国連軍横浜基地所属の戦術機甲部隊である。貴官らと合流する。』

 

『援軍かっ!?』

 

『そうだ、前線に着いたかと思えば、突破されてしまいそうだったからな。』

 

『有難い!感謝する。』

 

『我々の指揮下に入れ。』

 

『了解。』

 

そう言って、加賀笠間守備隊として参加していた極東国連軍横須賀基地第207戦術機甲大隊所属の中尉と少尉をみちるは指揮下に置いた。

 

『これより前線を押し上げる!全機突撃!』

 

『『『了解!』』』

 

みちるの号令で14機の戦術機は一斉に飛び上り、BETAが押し寄せて、蹂躙されている旧加賀笠間駅周辺に突進した。

_______________________________

 

みちるの命令で国連軍所属の戦術機2機を指揮下に置いて、加賀笠間の確保の為に乱戦を開始してから10分程経っていた。

駅周辺には突撃級や要撃級の死骸、小型種が踏みつぶされたり、120mm滑腔砲の爆風でミンチになっているのが地面一面に広がり、地面を紅く染めていた。だが、未だにBETAは武たち目掛けて突進してきていてキリが無かった。

個々の戦術機からばら撒かれる劣化ウラン弾は一本の線を描き、BETAに吸い込まれる様に飛び、当たったBETAは息絶えていた。

 

「補給コンテナは周辺に無いんですか?!あんな量相手にこんな高機動戦闘を続けてたら推進剤が持ちませんよ!」

 

武はそう叫んだ。眼下に網膜投射で表示されている画像に推進剤残量減少の警告表示が出ていた。タンク内残量パラメーターには推進剤残量約23%と表示されている。約23%ならば、武の行う高機動戦闘には精々30分が限界だった。

戦域データリンクも確認したが、加賀笠間周辺には補給コンテナは無く、隣の松任には補給コンテナがあったみたいだが、ついさっきアイコンが消えたところだった。だが、後方の跳躍したらすぐのところに福井鉄工所跡に突撃砲のコンテナと多目的VLS、推進剤があることがすぐに確認できた。

 

『白銀!推進剤が無いのはどの機体も同じだっ!ここで補給しようとも加賀笠間の補給コンテナは18分前にBETAに壊されたらしいんだ!』

 

水月はそう叫んだ。武が戦域データリンクを確認すると、丁度武たちが密集隊形でBETAを迎撃している辺りに在ったという表示がなされていた。武が下を向くと足元には36mmチェーンガンの薬莢と粉々になっている補給コンテナの外壁、突撃砲の残骸が転がっていた。

 

『先ほど後方の鉄工所跡に補給コンテナを発見しました!』

 

戦域マップに武はアイコンを打って、戦闘を続行した。だが、推進剤が心持たない状況なのは変わりなかった。中隊内のステータスにも残弾が少ない機体や、同じく推進剤が少ない機体、武装が長刀のみの機体様々だった。

 

瓦礫を盾にして進み続けるBETAを撃ちつつ撃ち漏らしたBETAを駆除する事はいつもしていることとは変わりがないが、BETAは数に物を言わせ、撃ち漏らしが目立つ様になっていった。

 

『加賀笠間を守備中の国連軍戦術機甲部隊より後方の部隊へ、BETAが多すぎて撃ち漏らしている!処理を頼む!』

 

『こちら鶴来守備隊了解!』

 

みちるはBETAの波がほんの少し弱くなった数秒間の間に、撃ち漏らしてしまったBETAの処理を後方の部隊に委託していた。

既に辺りの瓦礫はBETAの体液で赤黒くなり、周辺には今にも鼻腔を付くような臭いがしてきそうな程のBETAの死骸が転がっていた。中にはまだ動いている個体もあったがソレを気にする暇など誰にも無かった。ただ、目の前にいる生きたBETAに向かって心持たない残量の弾が込められた突撃砲を撃ち続けた。

______________________________

 

どれくらい撃ち続けただろうか。既に中隊と2機の国連軍の戦術機の14機の半分が突撃砲を投棄して、長刀や短刀で戦っていた。UNブルーの不知火は既に瓦礫と同じ色になっていた。すべてBETAの返り血によって赤黒くなっていた。

武は早期から長刀に持ち替えていたので、かなり耐久値の有しているが、長刀のステータスは半分を切っていた。

 

『ぐぅぅぅぅぅ!!こいつらキリ無い!』

 

『既に交戦を開始して25分も立ってるわ!幾らなんでもこんな物量が多いとはいえ、多過ぎるわ!!』

 

武はそんな先輩や同輩の声を聴き、戦域データリンクを確認していた。

現在、旧北陸本線を軸とした防衛線は武達のA-01と帝国軍の2機が乱戦をしている加賀笠間守備隊だけで、他の守備地域は全滅、若しくは後退していた。その後退した後方でも交戦は続いていた。そして、旧尾口CPは陥落していた。つい6分前だった。

 

『旧金沢周辺に展開中の帝国・国連軍部隊に告げる。我々は帝国軍前橋基地所属第13爆撃中隊だ。帝国・国連両軍の要請で旧金沢一帯を再度絨毯爆撃する。5分後に爆撃開始だ。』

 

音声と共に戦域データリンク上の右下から楔型隊形で進むアイコンが表示された。表示は『13cp bomber』の表示が出た。

絨毯爆撃を行うという事は自軍らが損耗し過ぎたという事だという事は誰にでも分かった。だが、爆撃を行うのには少し遅い様にも武には思えた。

 

『聞いたか!すぐに陣地変換!旧鉄工所跡にある補給コンテナで補給を行う。』

 

みちるは絨毯爆撃の知らせを聞いてすぐに陣地変換をする命令を下した。

 

『『『了解!』』』

 

その場にいた全員は迷いなくその言葉に賛同するかのようにお互いを庇いながら空に舞い上がった。

_____________________________

 

『補給の際、分隊単位で行え。絨毯爆撃予想範囲外に出られるだけでいい、その分だけ補給しろ!』

 

みちるはそう言い放ち、周辺警戒をし始めた。

既に補給は半分を終わっており、ほんの30秒で終わるという時に、警報が鳴り響いた。爆撃機進路に入っているのだ。

 

『終わり次第分隊単位で戦線を離脱!一旦白川郷インターまで引く!!』

 

その号令に従って、補給の終わった分隊は次々に飛び上っていった。だが、まだ4機残っていた。武と冥夜、撃震だった。

 

『タケルっ!!先に行け!すぐに追いつく!!』

 

静まり返った戦場に響いたのは冥夜の声だった。それは武に先に白川郷インターに撤退をさせる催促だったが、武はそれを断った。

 

「分隊単位で動くんだろ?待っているさ。それに、帝国軍の方も心配だ。」

 

そう言って武の見た方向には、腕が?げた撃震が佇んでいた。爆撃の知らせを聞いて気を抜いたのか、分隊単位で攻撃していた帝国軍の少尉は迫っていたBETAに気付かず、それに気付いた中尉が少尉を庇って要撃級の前腕によってコクピット部が潰された。ステータスに中尉の心拍を示す波も表示されなくなったのだった。

 

『いえ......自分は。............自分が気を抜いてしまったせいで、中尉がっ!!中尉がっ!!』

 

武と冥夜との交信を聞いてしまったのか、帝国軍の少尉はいきなり泣き始めてしまった。見た目は武たちとあまり年の差は感じられない位若い衛士だ。だが、この言動から察するに少尉はまだ任官したてだというい事が分かる。

 

『少尉、戦場とは常に死と隣合わせだ。その戦場で中尉が殉職されたのはどこの戦場でも当たり前の様に繰り返される事。それでも中尉の死に納得が往かず、憎しいと思うのであれば、その憎しみを糧に奴らを殺して殺して殺し続ければよい。そして帰還したあかつきには、中尉の話を生き延びた仲間に誇らし気に語ればよい。そなたが悲しむところなど中尉も見たくは無いだろう。』

 

冥夜はそう言い放ち通信を切り、武の秘匿回線に繋いだ。

 

『あの少尉はまだ戦場に出たことの無い新兵だった様だな。』

 

何故だかそう言った冥夜の表情には曇りが見えた。




これ以前の投稿も最近は4000字前後で投稿させていただいてます。正直ここまで書くのに1時間もかからないのですが、取れる時間があまり多くないので仕方ないです。
コツコツ書いていくのが一番ですね(笑)

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