Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal   作:しゅーがく

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どうも、しゅーがくです。
BETAの攻勢は2話ほどで終わらせるつもりでしたが、かなり長引いてます(汗)。
まぁ、物語的にはいい分岐になるのかと考えているのでいいと思うのですがね......。

最近、photonmelodies、photonflowersを買うか買わないかかなり悩んでます。みなさんは買ったのでしょうか?


episode 13

『ほっ......補給終わりました......。』

 

絨毯爆撃を行う爆撃機中隊が目と鼻の先まで来ていて、既に爆撃が始まった頃、最後に補給していた少尉が補給完了を武と冥夜に知らせた。声には明らかに怯え、後悔の感情が入り混じっているのが通信している武にも判る程、怯え後悔していた。

 

「分かった。もう爆撃は近い。一気に跳ぶぞっ!」

 

『了解。』『りょう......かいっ...。』

 

冥夜と気の入っていない少尉の返事を聞くと、武は跳躍ユニットの出力を上げ、飛び上った。

______________________________

 

武達は鉄工所跡から後退予定地だった白川郷インターCPまで匍匐飛行で向かい、到着した。

CP周辺に設置されている補給コンテナの周りにおよそ80機程の帝国軍・国連軍の戦術機が集結していた。簡易的なハンガーも用意されていて、そのハンガーには痛々しく損傷した戦術機が何十機と修理を受けていた。

 

「ヴァルキリー10よりヴァルキリー1。到着が遅れて申し訳ないです。」

 

『爆撃が始まってからヒヤヒヤしていた処だ。A-01所属の戦術機が爆撃に巻き込まれてKIAなんて私は副司令に報告したくは無いんだ。』

 

『そうですね。まぁ、こんなところで死ぬ様なヤツじゃないってのは分かってたんですけどね~。』

 

『あら、速瀬中尉。先ほどと言っている事が違うではありませんか。『白銀が戻ってこないわ。もしかして間に合わずに爆撃に巻き込まれたのでは!?』とか言ってすごく取り乱してたではありませんか。そんな言葉、どの口から出るのでしょう?』

 

武は絨毯爆撃から逃げる為に必死で飛び、精神状態が不安定な少尉を気にしつつ飛んできた為、かなりの緊張状態だったが、白川郷インターCPで待っていたのは、いつものA-01だった。そのことが武の心を落ち着かせた。

 

「えっ!?速瀬中尉、そんな事言ってたんですか!?」

 

『言ってないわよっ!?むぅ~なぁ~かぁ~たぁ~??』

 

『と、涼宮少尉が言ってました。』

 

少しの間、横浜基地で交わす様な会話をした後、みちるが咳払いをしたので、全員話すのを止め、気持ちを切り替えた。

 

『今は作戦行動中だ。休憩とはいえ、私語は慎め。絨毯爆撃が全域まで行き渡ったら、白川郷インターCPと小矢部浜破波インターCP、周辺の守備隊の戦術機部隊で前線を海岸線まで押し返す。』

 

「A-01も弾薬補給が完了して、合図があればまた加賀笠間に戻るのですか?」

 

武は率直な質問をした。先ほどまで、処理しきれないBETAと戦っていたが、絨毯爆撃によってかなり数が減らされたはず。その加賀笠間に絨毯爆撃から生きながらえたBETAを各個殲滅を行うと思っていたからだ。

 

『いいや。先ほど絨毯爆撃中に爆撃によって観測される揺れ以外に違う揺れが検出された。その発生源がここから西にある旧尾口CPからだという事が分かった。CPは無くなったが、指揮系統を無くした機械化歩兵部隊、戦術機部隊がまだ、地下で戦闘をしている可能性が高い。しかも、救出作戦を命令したのは香月副司令だ。何か助けなければならない理由があるのだろう。』

 

みちるから『香月副司令』という単語が発せられた瞬間、武は頭に衝撃が走った。

夕呼は意味のない事はせず、利用価値がなければ捨てる人間が、指揮系統を失って地下でのたうち回っている部隊を救出する作戦を命令するなんてありえないからだ。考えられる事は幾つかあった。旧尾口CPに何らかの有効な情報があるか。若しくは......。

 

(指揮系統を失ってそれでも戦い続けている部隊に利用価値があるのか......。)

 

それだけだった。

 

『香月博士が?珍しい。』

 

などといった声がA-01から次々に挙がっている。他の人もその事に関して何かを感じたのだろう。

 

『もうすぐ一斉突撃の命令が各CPから下るはずだ。我々以外の戦術機部隊が飛び去った後、我々は旧尾口CPに向かう。』

 

『『『了解。』』』

 

みちると武以外の全員が納得が往かない様だったが、それに従う様な意思を表した。その時だった。

 

『白川郷インターCPよりヴァルキリーズ。命令は行き届いているだろう?何故突撃しない。答えろ。』

 

白川郷インターCPのオペレーターから何故飛び立たないのかという理由を言うように催促された。

 

『白川郷インターCPよりヴァルキリーズ!何故貴様らは突撃しないのだ!?次言わせたら極東国連軍司令部に命令違反として報告するぞ!』

 

『それは困るわねぇ。』

 

突然、聞き慣れたみちる以外の声が通信に介入してきた。その声の持ち主は夕呼だった。

 

『貴様は何者だっ!』

 

白川郷インターCPのオペレーターは声を張り上げて言った。

 

『国連軍第11軍横浜基地副司令の香月よ。A-01部隊は前線の押し上げに参加しないわ。』

 

夕呼はいつもと変わらない表情でそうオペレーターに言った。

 

『指揮権は我々にあるのだぞ!?命令違反では無いのか?!』

 

オペレーターは変わらない口調でそう言った。

 

『いいえ。今回の迎撃作戦の司令部にも既にこのことは伝達済みよ。正当な命令によってA-01は突撃には参加しないわ。A-01に突撃させた場合、あなたが命令違反って事になるわねぇ~。ご愁傷様。』

 

そう言って夕呼は通信を終えてしまった。

 

『くっ......。A-01は当初の予定通り、作戦を続行せよ。』

 

『ヴァルキリー1了解。全機、長距離跳躍。』

 

『『『了解。』』』

 

まだ納得の往っていないオペレーターだったが、夕呼の言われるがままにみちるに指示を出した。

__________________________

 

戦域データリンク上には周辺にA-01以外の機影は1つも表示されずに4分程経った頃、武の不知火に秘匿回線で通信が入った。夕呼からだった。

 

『旧尾口CPに向かう理由は伊隅にしか教えてないけど、白銀にも教える必要があると思ったから、今回の事に付いて説明するわ。』

 

夕呼は武の返事も聞かずに淡々と言葉を進めた。

 

『旧尾口CPは元々帝国軍が使っていた地下要塞を再利用したことによって機能しているわ。先に今回の迎撃作戦に投入された部隊は帝国軍と国連軍だけだと表向きでは発表されているわ。だけれど、本当は帝国斯衛軍も参加しているわ。』

 

「まさかっ!?」

 

『そうよ。旧尾口CPは斯衛軍が迎撃作戦がされた時にCPとして確保していたところだわ。』

 

武はそれを聞いた瞬間、いろんな思考が脳内で入り混じった。

 

(今回の侵攻は別段征威大将軍のいらっしゃる第二帝都にまで迫る様な脅威はさっきの絨毯爆撃で可能性が0に近くなったのに、どうしてだろうか。それ以外にも......まさか!!)

 

そんな思考に辿り着いた瞬間、夕呼は口を開いた。

 

『旧尾口CPの地下で指揮系統を失っているにも関わらず、戦闘を続行しているのは帝国斯衛軍の戦術機部隊と帝国軍の機械化歩兵部隊よ。』

 

武の最後に建てた予想は当たっていた。だが、その斯衛軍を救出する意図が全く計れなかった。

夕呼の事だろうから、斯衛に貸を売って何かに利用する気だという事は容易に想像出来たが、斯衛がそんな事を良しとするようにも思えなかったからだ。

 

『こっちで調べたんだけど、現在地下で戦闘を続行しているのは斯衛軍約2個大隊と帝国軍機械化歩兵約5個中隊、それに本国で試験を行う予定だった《試作機》よ。』

 

夕呼の言った理由はとてもじゃないが、思いつかない様な内容だった。武の知らない所で最新鋭機の開発が進んでいたのだ。

 

「その試作機というのは?」

 

武は興味本位で夕呼に問いかけた。だが、返答は武の期待を裏切った。

 

『言えないわ。だって、私も知らないもの。教えてほしいくらいだわ~。』

 

夕呼はそう言ってニヤッと笑った。

 

「分かりました。何故試作機が斯衛軍の処にあるのか分かりませんが、今回の救出作戦に関しては了解しました。」

 

『物わかりが良くて助かるわ~。じゃ、このことは他言無用で。とか言っても、救出の時にバレるだろうけど。』

 

そう言って夕呼は通信を切った。

武は一向に変わらない景色を見て、少し息を整えた。今は試作機に関して考えている場合では無いからだ。とは言っても救出対象はその試作機なので、どうしようもなかった。

 

(お願いだから、推進剤が切れてて動かないとかやめてくれよー?)

 

そんな事を心で思っていた。

_____________________________

 

『地上の入り口で屯しているBETA共を吹き飛ばしてやれ!』

 

みちるの号令を合図に多目的VLSが一斉発射された。それぞれの弾頭はレーザー誘導でBETAの塊に指定した場所に狂い無く着弾し、吹き飛ばしていった。

 

『全機兵器使用自由!入り口に穴を開けて中に突入するっ!』

 

『『『了解!』』』

 

一斉に上空から急降下しながら36mmチェーンガンをBETA目掛けて降り注いだ。地上を埋め尽くす程の個体数だったので、一々目標をロックせずとも命中していった。

次々と紅い体液を吹き出しながら息絶えていく様は今までに何べんも見たのもなので、今更何とも思わなった。

数分も撃っていたら入り口のBETAに穴が空いて、戦術機が通れる程の幅が空いたので、次々と入り口にから中へ入っていった。

_____________________________

 

入り口から続く数本に枝分かれした通路にはどこも床はBETA小型種の死骸で埋め尽くされていた。そして彼方此方に戦術機や機械化歩兵が大破した状態で転がって行った。主機も落ちていてKIAしているのは確認するまでもなかった。

戦域データリンクによれば、BETAとの戦闘が続いているのは枝分かれした通路の真ん中を進むとある突き当りの広間だという事が分かった。現在はその広間に夕呼から知らされていた斯衛軍の戦術機約1個中隊と更に通路で小型種と戦闘している帝国軍2個中隊の存在を確認した。

戦術機は殆どを、機械化歩兵はここに向かってくるまでの間に約半分にまで損耗していて、前線を維持するので精一杯の機数しか残っていない状況だった。

 

『広間にて戦闘中の斯衛軍戦術機部隊、帝国軍機械化歩兵部隊へ告ぐ。広間から通路へ出る入り口に突破口を開く。全速で通過しろ!』

 

みちるはそうオープン回線で言うと、中隊に指示を出した。

 

『全機停止。前方のBETAの壁に大穴を開ける。全機兵器使用自由!』

 

『『『了解!』』』

 

みちるのカウントに合わせてそれぞれはBETAに照準を合わせ、号令と共に一斉にBETA目掛けて銃撃した。不意を突かれたのかBETAは悉く死に絶え、入り口に大穴が開いた。その瞬間、戦術機が一糸乱れぬ縦一文字で飛び出してきた。それに続き、後方に射撃しながら機械化歩兵が殿として出てきた。

その戦術機の中に見慣れぬ風貌の戦術機が独特なオレンジ色のラインが暗い通路を照らしていた。それは何処となくF-15、日本帝国の陽炎にそっくりだった。

 

 




今回の話を書き上げるのに初めからだいたい2~3時間かかってます。いつもなら1週刊以上かけるのですが、時間的に余裕があったので、一気に書いてしまいました(笑)。
投稿用のあとがきを書いている時点で次話も書き始めているので、かなり短いスパンでepisode 14を投稿できるかもしれません。

ご意見ご感想お待ちしてます。

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