Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal   作:しゅーがく

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どうも、しゅーがくです。
16話まで来ましたよ。やっと(汗)
取り敢えず更新します(笑)


episode 16

 

 

 

 

2月8日になった。武が『この世界』に来てから6日が経っている。

7日丸々を迎撃作戦に参加していたが、思ったほど疲れていない様に感じていた。

むくりと武は起き上がると、BDUに着替え、PXに向かった。

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PXはいつも通り賑わっており、せわしなく人が出入りする。

武が朝食を受け取ると空いてるテーブルを探すために見回し、見つけた。そこの席の前には武のよく知った顔、まりもがこめかみを抑えながらコーヒーを啜っていた。

 

「おはよう、まっ......神宮司軍曹。ここいい?」

 

「おはようございます、白銀少尉。どうぞ。」

 

しかめ面しているまりもを正面に箸を進めつつも、しかめ面をしている理由をそれとなく聞きたくなった武は聞いてみた。

 

「なんか悩み事?」

 

(しまった、ストレート過ぎたか?)

 

「えぇ、訓練小隊連中の総戦技演習の時期を早めろと夕呼が仰いまして......。」

 

武はその理由を聞いてすぐに訳が分かった。A-01に早く取り込ませたいのだという事に。

 

「総戦技演習する程の練度は?」

 

「3ヶ月の促成プログラムですが、十分以上に。」

 

「じゃあ良いんじゃないか?早いに越したことは無いし、戦術機実習は時間が掛かる。」

 

そう武が返事するとまりもは考え込んでしまった。だが、すぐに答えは出た様子でコーヒーを飲み切ると武の顔を見た。

 

「来週にでも総戦技演習をやりましょう。少々急ではありますが。」

 

「おっ、おう。偉く急で.....。」

 

武がまりもの勢いに少し圧倒されると、まりもはある事を思いついたのか、武に頼み事があると言い出した。

 

「戦術機実習を行うにあたって、初期段階から訓練装置にXM3を搭載して頂ける様、香月副司令に頼んで頂けないでしょうか?」

 

武も大方予想はしていたが、まさかドンピシャで当てるとは思わなかった。なので、武はまりもが拍子抜けするかもしれないが、それに返事をした。

 

「夕呼先生は元よりそのつもり見たいですよ?」

 

「えっ......あっ......ですよね。ありがとうございます。それと、実機教習の際に分隊単位でのAH戦で特別教官として来ては頂けませんか?」

 

「あー、構わないけど、伊隅大尉に聞いてみないと分からないなぁ。」

 

「存分に使ってやってくれと伊隅大尉が仰いました。」

 

「そっちは決めてたの!?」

 

という様なやり取りをし、結局最初に言った通りに総戦技演習は次週からで、武の特別教官の件はそのままやる方向に話は進んでいってしまった。

PXを出る時にはまりもは今朝武が見たときのしかめ面は無くなり、いつも通りに戻ったまりもは座学があると言って行ってしまった。

武もPXを離れると、いつも通り、A-01はブリーフィング室に集まり、今日の訓練の有無や作戦の有無などの確認を行った。今日はどうやら、それに昨日小隊長にのみ明かされたA-01の解体と創設に関して他の部隊員にも知らせるようだった。

それと、それに合わせて着任する部隊の指揮官の紹介だった。

武はそのブリーフィングに向かった。

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「では今日のブリーフィングを始める。」

 

いつもの面々の揃ったブリーフィング室ではいつも通りにブリーフィングが始まった。

 

「任務は無し、訓練はAH戦想定訓練が1回だ。質問は?」

 

みちるがいつも通りブリーフィングを済ますと、いつもならここで訓練開始時間を知らせるタイミングに、全く別のことを話し出した。着任する部隊の指揮官の紹介だというのは武や小隊長を任されている水月と冴子以外は知らない。

 

「まず連絡だ。香月副司令。」

 

「はーい、かたっ苦しいのは無しで。」

 

みちるに呼ばれて現れた夕呼に目を丸くする部隊員は、全員が顔が強張った。

 

「昨日は急な出撃で連絡出来なかったけど、A-01、解体になったから宜しく。」

 

夕呼がそう言うと知らされていなかった他の部隊員は少し動揺したみたいだったが、まっすぐ夕呼の方を見た。

 

「そして新たに『オルタネイティヴ第六計画専属部隊 オルタネイティヴ第六計画戦術機甲特別攻撃部隊』を正規にて設立。アンタたちにはその第1大隊第1中隊としてマルッと転属して貰うわ。」

 

「「「了解です。」」」

 

「んで、鎧衣。1個大隊には何個中隊が必要でしょうか?」

 

「はっ、はい!3個中隊です!!」

 

美琴がそう夕呼に訊かれた質問を返すと夕呼はにやけて正解だと伝えると、横にいたイリーナに目配せすると、ブリーフィング室のドアを開け、廊下にいたであろう眼帯をした壮年の男性が入ってきた。

 

「日本帝国軍から転属になった、真田だ、宜しく頼む。」

 

その真田と名乗る男性、昨日武が月虹と共に救助した衛士かも知れない男だ。

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「という事だから、伊隅よろしくー。」

 

そう言ってツカツカと夕呼は出て行ってしまった。

 

「はっ、では新設されて部隊の概要について説明する。」

 

みちるは夕呼がブリーフィング室から出て行くのを確認するとこっちに向き直って、口頭で説明を始めた。

 

「オルタネイティヴ第六計画戦術機甲特別攻撃部隊とは......」

 

オルタネイティヴ第六計画戦術機甲特別攻撃部隊。オルタネィテイヴⅣ、オルタネィテイヴ第四計画が成功に収まり、それの延長線上に構想された計画だ。概要は、オルタネイティヴⅣの際、使用したXG-70d 凄乃皇四型を主軸としたハイヴ専門攻略部隊とするオルタネイティヴ第六計画戦術機甲特別攻撃部隊を設立し、国連軍を主軸とした部隊と共に世界各国のハイヴを攻略し、人類の元の生活圏を取り戻す計画だ。

武はその時、それを『元の世界』で習ったレコンキスタ、国土回復運動と似ていると思ったが、もうそのものだと直感的に思った。人類にとっての生活圏、国土は地球、月。これを奪還するものだ。

オルタネイティヴ第六計画戦術機甲特別攻撃部隊はXG-70d 凄乃皇四型を主軸とした部隊で、現在予定している部隊概要は、完全に機能しているXG-70dを中心によ選りすぐられた衛士を集め、戦術機甲連隊を編成。これを以ってハイヴ攻略を迅速に行うというものだ。

それの説明から武には幾つか疑問が浮かんでいた。

まず、1個連隊編成の部隊だという事。現時点では1個大隊しか用意出来ていない。残りの2個大隊はどうするのかという所だ。

もう1つは、もし地球上のハイヴ掃討に成功し、いざ月へとなった場合、運用出来る兵器が装甲駆逐艦とラグランジュ点にて建造されているであろう移民船しか無いという事だ。移民船に関しては、改装すればどうという事は無い。だが、装甲駆逐艦は桜花作戦にてかなりの数を失っている可能性があった。

そういった疑問がポンポンと武の脳内に浮かび上がってくる。

 

「......という事だ。真田大尉は第1大隊の指揮下に入ってもらう。」

 

みちるが新設された部隊の説明を終え、晃蔵の配属を伝えると、解散を告げ、其々AH戦の訓練の準備に部屋を出て行ってしまった。

ブリーフィング室に残っているのは、武と晃蔵。晃蔵は黙ったままだ。

 

「さっ......真田大尉?」

 

「むっ。何だ、ヴァルキリー10。いや、白銀 武少尉。」

 

武は調べた事を聞こうと思ったが止めた。

 

「AH戦の訓練には出るんですか?」

 

「あぁ、出るとも。俺直下の1個小隊だけだがな。」

 

武は少し晃蔵の一人称に疑問を持ったが、そうですか。とだけ答えて武も準備に向かった。

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格納庫には既に全員が集まり、AH戦の訓練の概要が説明されるのをまっていた。どうやら、JIVESの設定に手間取っているらしい。

 

「タケル。」

 

「ん?何だ?」

 

そうやって待っている最中、冥夜が不意に武に話しかけてきた。

 

「機能の月虹の衛士と今日、着任された真田大尉の声が似ているのは私の気のせいであろうか?」

 

「気のせいじゃ無い。アレに乗っていたのは真田大尉だと俺も思うぞ?十中八九な。」

 

武が周りに聞こえない様、小声で言うと冥夜も周りに聞こえない様細心の注意を払いながら言った。

 

「今日のAH戦の訓練。真田大尉との戦闘なのではと私は思うのだが。」

 

「そうだろうな、楽しみだ。」

 

武は少し心が躍っていた。真田大尉との模擬戦は何故だか知らないが、とても興味が湧き、自分も戦ってみたいと思ったからなのであろう。

 

「AH戦の編成を発表する。」

 

みちるは何処からかJIVESの設定が終了したのを知ったのか、突然編成の発表を始めた。

 

「編成初の訓練だ。元A-01と真田大尉の部隊とでやりあってはどうかと思ってな。A小隊!速瀬、御剣、白銀、彩峰。B小隊!真田大尉、古川、東成、山波。」

 

「「「了解!」」」

 

そして、JIVESを使ってのAH戦訓練を始める為に各機搭乗を始めると、晃蔵から声を掛けられた。

 

「貴官と手合わせしたいと昨日から思っていた。こんな早くに叶って良かった。」

 

そう言って行ってしまった。

そして武は晃蔵の歩み行く先に見えた灰色の帝国軍仕様の不知火が武にある事を連想させた。

 

『......私は、本土防衛軍帝都守備第1戦術機甲連隊所属の沙霧 尚哉である..................。』

 

「沙霧大尉......。」

 

武はそう呟くと、自分の機体に向かった。

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『状況開始っ!制限時間は30分だ!』

 

瓦礫だらけになってしまった旧柊町の街に開始を知らせるブザーが鳴った。

 

『ヴァルキリー2より各機、菱形陣形にて移動開始。音感振動探知を密にせよ!』

 

『『『了解っ!』』』

 

全周囲警戒をしながら4機の不知火は前進していた。

 

『相手は日本帝国所属の不知火だ。気を抜けば狩り取られるぞ!』

 

行動中の不知火に喝を入れる水月の声を聞きながら、音震センサーやサーマルセンサーを睨んでいる武は相手が何処から現れるか気を立てていた。

 

(激戦だったと言われている京都防衛戦で生き残った真田大尉の腕前なら昨日見た。俺の機動に合わせて連携をしていた。相当な使い手の筈だっ!)

 

そう言い聞かせていた。

 

『音震センサーに感ありっ!バンデット2機捕捉っ!』

 

異常に気付いたのは冥夜だった。隊列の2時の方向に現れたのは、晃蔵の識別番号ではない不知火だった。

 

『ヴァルキリー2より各機、ヴァルキリー10はヴァルキリー11と発見されたバンデットの殲滅!彩峰は周囲警戒。』

 

『了解。』

 

「了解、冥夜っ!」

 

『応っ!』

 

小隊が2つに分かれ、武と冥夜の不知火は戦闘速度で匍匐飛行した。

倒壊したビルを横目にバンデットを捕捉した地点に飛んでいく。

 

『7時に敵機っ!バンデットインレンジっ!』

 

跳躍ユニットの方向を転換し、バンデットの方に向いた。その瞬間、突撃砲の掃射を食らうが、瓦礫が上手いこと壁になり、被弾する事が無かった。

 

「ヴァルキリー10、フォックス2っ!」

 

武は弾幕の和らいだ一瞬の隙に突撃砲を瓦礫の間から出し、掃射した。

次々と吐き出される弾は、一向に当たる気配が無かった。

そして、その瞬間、高速接近している別のバンデットを捕捉した。匍匐飛行で速度を落とさずに接近してくる機体、不知火には晃蔵が搭乗している。

 

「ヴァルキリー11っ!7時方向500mにバンデット!」

 

そう武が叫んだものの間に合う様には到底思えなかった。既に射撃態勢に入っていた不知火の銃口から火花が散るのはコンマ何秒、武は無意識に突撃砲の120mm滑腔砲を3発撃っていた。

 

『ヴァルキリー2よりヴァルキリー10、そっちにバンデット1が。』

 

「遅いですよ!」

 

1秒くらい後に水月が知らせてきたが、もう遅かった。だが、そんな位ラグがあるなら、相当離れたところにいると思ったが、そうでもなかった。

 

「ヴァルキリー10、前方の2機食うぞ!」

 

『了解!』

 

そう言って武は瓦礫から跳び上がり、跳躍ユニットの出力を上げた。

__________________

 

小刻みに機体を揺らしつつ、回避行動も加え、相手の不知火に肉薄していくが、長刀で斬り合う距離にまでは接近出来ずにいた。

マニューバで距離を取られ、再び肉薄するまで突撃砲を撃ち合う。

あらゆる方向から体に負荷がかかり、体に負担がかかる。

 

「中尉!そっちで2機引き止めて下さい!」

 

『やってるわ!ちゃっちゃと潰しちゃいなさいよ!』

 

戦域データリンクでは少し離れたところで水月と慧がバンデット2機と膠着していた。一触即発の睨み合いだ。

 

『タケルっ!先に1機落とす方が先決だ!私が1機抑える!』

 

「了解っ!」

 

冥夜の不知火が跳び上がり、逃げ回りつつ射撃している不知火の1機を捉え、追いかけ出した。

 

(背中に着いて低空に持ち込めばこっちの物だ!)

 

そう考えた武は威嚇射撃をし、地表に追い込んだ。

バンデットは地表に追い込まれると、接地し、構えた。

 

『2番機、貴官の名は?』

 

「2番機?俺の事ですか?白銀 武、少尉です。」

 

『私は元日本帝国陸軍帝都守備第2戦術機甲連隊、古川だ。貴官は甲21号作戦に参加していたな?その不知火で。』

 

古川と名乗った目の前に構える不知火の衛士は跳躍ユニットを蒸し、砂塵を舞わせた。

 

「はい。」

 

『あの奇怪な戦術機動、私には真似できん。だが!私は貴官を圧倒して見せよう!いざっ!』

 

そう言って古川は飛び上がり、急接近してきた。突撃砲も持っている様だったが、撃ってこない。接近戦で勝負しようという事だという事は武にも分かった。だが、古川は逃げる様に飛び上がった武に肉薄する。

 

「振り切れるけどすぐに背後につかれる!?」

 

武は突撃砲を撃ちながら逃げ回った。隙を伺うためだ。

 

「当たる訳無いかっ!だがっ!」

 

武は不知火の身体を捻らせ、跳躍ユニットの噴射を機体前面に向けて一瞬吹いた。機体を急停止させ、飛び続ける相手の不知火の背後に着くためだ。

 

『何っ!?』

 

古川が気付いた時には既に時は遅かった。武は突撃砲のトリガーの引き絞っていた。撃鉄が落ちるのもコンマ何秒かの世界だった。

刹那に爆音が鳴り、武の目の前の不知火は炎に包まれた。

 

『アルタ3、コクピットブロックに被弾。大破と認定。』

 

遙の声で目の前の不知火が大破したという報せを受けた。

 

『くっ......。』

 

古川は唇を噛み締めた。

 

「ヴァルキリー11へ、そっちはどうだ!」

 

『もう少しでっ......はあぁ!!...よしっ!』

 

『アルタ4、右脚部切断、右跳躍ユニット大破。重心を左へ移動。』

 

遠くで格闘戦をする不知火2機が見えた。青いUNカラーの不知火は少し減速したみたいだが、相手の不知火は跳躍ユニットを取られたのでよろめいている様だった。

そして、その奥で光が見えた。マズルフラッシュだ。

 

『ヴァルキリー11、コクピットブロック大破。』

 

それは相手の不知火の狙撃だった。冥夜がやられてしまった。武は急いで片脚の無い不知火に肉薄し、トドメを刺したが、確認し忘れていた戦域データリンクを確認すると、慧のアイコンが消えていた。

 

『ヴァルキリー2よりヴァルキリー10、コッチと合流しろ!分隊でなら何とかなる!』

 

そう言って気付いた武は戦域データリンクを見たら、バンデット1、晃蔵に追いかけられている様だった。そしてすぐに冥夜を狙撃した不知火もそこに加わる。

 

「ヴァルキリー10了解!」

 

武はすぐに水月の所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 




ここを節目に話を進めようと思います!

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