Muv-Luv Alternative Preliminary Ideal   作:しゅーがく

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どうも、しゅーがくです。
エイプリルフールですねー。あんまりこの時期を楽しむ人では無いのですが、楽しむ方はほどほどに。


episode 17

 

 

 

 

『ヴァルキリー2よりヴァルキリー10。この市街地の倒れずに残ったビル群を利用する!方向転換には脚部をビル側面に設置して蹴ると速い。』

 

「了解。」

 

武は水月と合流すると、近くのビル群には入り、主機を最低にまで落として、停止した。

音震センサーには感がなく、相手も動くのを止めた様に思えた。

 

「中尉、どうします?」

 

武は少し額を汗で濡らしながら聞いた。状況が芳しくない。追い回されて逃げ込んだたちなので、出てこようものなら、蜂の巣にされる可能性が高い。

 

『白銀、ここでアンタの変則機動を見せる機会だわ。』

 

「じゃあ俺が囮やります。中尉は1機お願いします。」

 

『何なら囮してる最中に1機食っちゃってもいいわよ〜。』

 

「善処します......。」

 

武は苦笑いを浮かべて通信を切った。

呼吸を整え、マップを確認し、息を合わせてカウントを始めた。

 

「......2...1...今っ!」

 

跳躍ユニットに火を灯し、戦闘出力まで一気に上げた。機体は接地していたとことから一気に上昇し、加速する。

上昇する最中、音感センサに反応があった。バンデット2機を補足したのだ。

一方水月はと言うと、タイミングを合わせたが、そこから更にカウントを取っていた。遅れて飛び出し、武との格闘戦で集中したバンデットに奇襲する為だ。その為には武に自分のいる場所に接近してもらわなくてはならない。

武もその事は分かっていた。

だが、バンデットの追劇は想像以上だった。どちらかが晃蔵だというのは分かっている。腕の立つ方だという事も。

 

「あんまり逃げ回ると......推進剤がっ......。」

 

ステータスを確認した時、推進剤の減りがおかしかった。それだけ、逃げ回る際に使ったという事だ。

 

「だったらっ!!」

 

武は跳躍ユニットを反転させ、急速降下し、上昇させ、急停止した。

付いて行こうとバンデットもやるが、武よりもキレがない。その一瞬を突いて、突撃砲を兵装担架から射撃しつつ、長刀で斬りつけた。

 

『バンデット2、胴体断絶。大破と認定。』

 

バンデット1、晃蔵には避けられてしまった。だが、切返し、反転させ視界に入ったバンデット2は斬る事が出来た。

 

「残るは1機ですっ!」

 

武はバックステップをとると、離脱した。晃蔵は追いかけてくるが、どうも振り切れない。

昨日の今日でここまで付いて来れるのかと、武は称賛と同時に恐怖も抱いていた。

そして、誘導する事を思い立つ。

 

「中尉、準備を!」

 

『終わってて暇なのよね〜。』

 

武は回避を取りながら、水月の頭の真上まで誘導した。

幸い晃蔵はそれに気づいていない。

 

『掛かったっ!』

 

そう叫んだ水月は脚を曲げつつ跳躍ユニットに火を灯した。

そして一気に飛び上がる。

 

『その首貰ったっ!』

 

その瞬間武の網膜投影に水月のアイコンは消えた。刹那にそれを察知し、武は反転させ、突撃を試みる。

丁度晃蔵が体勢を直しているところだった。

 

「うおおぉぉ!!」

 

120mm砲が6発放たれ、全部が外れた。

もう突撃砲の弾薬はそれだけしか残ってなかったので、使い切った突撃砲を投げ上げると、両手に長刀を握り、突進した。回避によろめいたのか、晃蔵は武が突っ込んでくるのを回避出来るのか否かというところだ。

そして、決着はついたのだった。

 

『バンデット1、腰部断絶。頭部破損。大破と認定。』

 

咄嗟に武は長刀を投げ、それが頭部に突き刺さると、コンマ何秒かで腰部を加速しながら斬り、そのまま飛び去ったのだ。

_________________________________

 

AH演習は第1大隊の勝利に終わった。

最終的には一騎打ちになったが、武の突飛な発想で精鋭の晃蔵を撃破することが出てきた。

その結果に半分納得、半分不満を抱えてた水月が武にちょっかいを出したのは言うまでもない。

武は散々水月に煽られた後、ふとした思いつきで、純夏の寝ている部屋に足を運んでいた。

機器に繋がれた純夏は殺風景な部屋で寝ていた。

 

「純夏、また嫌な思いするかも知れないけど、我慢でしてくれよ。」

 

そう言って武は純夏の頭を撫でた。感触は人間そのもので、これが進んだ医療技術と夕呼の研究の結晶だととても思えなかった。

それ程人間らしかった。

純夏は武の手の中で殆ど聞こえない寝息を立てている。

目を覚ましたら、再び凄乃皇に乗せ、戦場に赴く。

武はそれが人類の勝利への近道だという事を1番良く知っている。

だが、戦場に赴く以上、死は付き物だ。『2回目のこの世界』では、部隊の皆が散っていった。『この世界』では違うとは限らないし、未来を知っている訳でもない。どうなるか分からないのだ。

そんな戦場に純夏を何回も連れ出すのは正直に武は嫌だった。

だが、それは仕方の無い事だった。どんな因果か00ユニットになった以上、戦いは避けられないのだ。

せめて、近くで守ってやらないといけない、そう武は心に誓った。

 

「すぅ......タケル、ちゃん......。」

 

「純......夏っ?」

 

自閉モードに入っているはずの純夏が意識を取り戻したと言っていいのかあやふやな状態になった。

自閉モードの説明は甲21号作戦の時に夕呼から説明を受けていた。自閉モードとは人で言う気を失った状態だ。

それが自閉モードと言うのなら、気を戻したのなら起きると思っていたが、言葉を発した純夏は自閉モードから抜けたと考える事が出来る。

武は近くの内線を引っ手繰ると、純夏のいる部屋を監視しているであろう監視室に繋げた。

 

「00ユニットが自閉モードから脱しました。」

 

『今此方でも確認しました。副司令はすぐに到着します。』

 

監視室の対応は監視していただけ、速かった。すぐに夕呼が到着し、純夏を確認した。

自閉モードから脱し、覚醒する訳でもなく、そのままスリープモードに入ったとのこと。人でいう睡眠状態だという事だ。

思い返せば武は『この世界』に来て、殆ど純夏の元に足を運んでいなかった。忙しかったと言うのもあるが、最優先任務であるはずの純夏の調律を少し疎かにしていた。それだけ、調律に時間を割く余裕が自分の心と時間に余裕がなかったのだ。

 

「アンタが部屋に入ったら一発だったわね。」

 

夕呼はそう言いながら部屋に入った。

確かに思い返せば、そうだった。純夏が生きていると言わてから1度も足を運んでいない。

 

「すみません。最優先任務の筈だったのですが......。」

 

「いいや、コッチとしても助かったわ。今日までキッツキツだったから。」

 

夕呼は壁に持たれた。確かに表情に疲れが見えないが、少し窶れている様にも思える。

 

「キッツキツでしたか......。新設される部隊の事とかですね?」

 

「凄乃皇もだけど。アンタのXM3を天秤に色々取引してたわ。この際だから色々教えとくわね。丁度ここは私の執務室と同様、機密レベルも高いし、人がいるとはいえ音は取っていないから。」

 

そう言って脇に抱えていた資料を武に手渡した。

 

「ソッチはつい最近まで斯衛軍と帝国軍でテストしてた99式電磁投射砲。まだ実戦配備は遅れてるけど、02式戦術歩行戦闘機 不知火・弐型。あとは部隊配置図ね。」

 

武にとってよく分からない言葉があった。電磁投射砲とはどういうものなのか。配置図以外は極秘文書だと言うことを示す印刷があって、開いてみると、概略が書かれてる。

 

「帝国工廠で戦術機用装備として開発した初の実戦用レールガン......ほぅ......レールガン!?」

 

「そ。120mm砲弾を毎分800発撃つバケモノよ。ボディと機関部は工廠製だけど、コアブロックは私お手製。まぁテスト中のものは1回撃つたびにオーバーホールする見たいだけど、テスト終わる前に改良されたみたいで、2、3回は撃てるわ。あと、レールガンっていうくらいだから仕組みは分かってるわよね?」

 

夕呼の話した電磁投射砲の事は話しがぶっ飛んでいた。120mmを毎分800発連射するだけでも凄いというのに、1回撃つたびにオーバーホールしてた。

 

「......って、欠陥兵器ですよね!?」

 

「そんな事言ってもいいのかしら。資料の下、見てみなさい。」

 

武は言われるがままに見てみた。

テストではどういう結果が出た、開発衛士の指摘点、戦術上での使用用途の下に書かれてた事が信じられなかった。

 

「実戦に試験投入した際、約3000体のBETAを殲滅?殲滅ですか。」

 

「ソ連軍カムチャツキー基地にて実戦試験をしてた不知火・弐型の開発主任がカムチャツキー基地に持ち込ませたついでに試験したらしいわ。結果は成功。見ての通り約3000体のBETAを殲滅した。」

 

「現実味ないですねぇ。」

 

「現実味無くても事実は事実よ。1艇でこれだけの戦果だわ。」

 

武は愕然とした。1艇で3000体ものBETAを倒した。その事実に凄いと感心しつつも、それがどうしたのかと考えた。

 

「まさか、部隊に配備されるとか?」

 

「なーにアンタ、冴えてるわね。」

 

そう言って、夕呼は時期に不知火・弐型も配備されるからと言って、資料を渡す様に言った。そして武の手元に残ったのは部隊の配置図だった。

 

「部隊編成が完了したわ。アンタには伊隅くらいには知っておいて欲しかったからね。」

 

そう言われ、部隊編成を見た。

『オルタネイティヴ第六計画戦術機甲特別攻撃部隊 A-01連隊 第1大隊 伊隅 みちる..................第2大隊 真田..................第3大隊 神宮司 まりも』

第3大隊に目を張った。見知った顔の人物の名前があったからだ。

 

「えっ、まりもちゃんが第3大隊?1番上にあるって事は......。」

 

「そ、これからまりもは大尉よ。上官ね。」

 

余りに突拍子も無い事だった。

 

「通達はこの後やるんだけど、多分少し混乱するかも知れないから、よろしく。」

 

夕呼はそう言って武の手から配置図を持っていった。

 

「あとこの話は他言無用って、言わなくても分かってるわよね。」

 

そう言って出て行ってしまった。

武がこの短時間で聞いた話は突拍子も無く、とても大きな話だった。

武の中でも整理がうまくいっていない。

 

「何となくはそう思ってたけど、本当にそうなっちゃうのかよ。」

 

武はそう呟いた。

部屋には純夏の寝息が聞こえる程、静かだった。

_________________________________

 

武は自室で寝転がっていた。士官用の部屋だ。

机があり硬いベットがある。小さい棚があり、洗面台がある。ただそれだけだ。

机には何も乗ってない。棚には少しばかり本が並んでいるだけだ。洗面台には歯ブラシとコップがあるだけ。

思い返せば、寂しい部屋だと武は感じていた。

官給品のナイフと拳銃は壁にぶら下がっていて、殆ど使うことが無い。

そんな部屋で色々と思いを巡らせていた。

『この世界』で武は何を成し遂げなくてはいけないのか。純夏は大丈夫なのか。部隊編成にも気がかりがあった。武の記憶に無い戦術機。オルタネイティヴⅥ。

武にとって大きな疑問は、『この世界』に来た理由だ。

オルタネイティヴⅥを完遂する事が目的なのは何となく分かっている。

地球上のハイヴを一掃し、月を取り返す。果てもない事だ。まだハイヴは23個はあるのだ。

 

「ハイヴ一掃か。」

 

そう天井を見ながら呟いた。

ハイヴ攻略には大量に人が死んでいく。そんなことを繰り返せば衛士が足りなくなるのは目に見えている。

期間を空けて攻略すれば消耗戦だ。

いつオルタネイティヴⅤが再発動されてもおかしくないと武は考えるていた。夕呼がその可能性が無いとは言っていない、あるとも言っていない以上、考えることは愚では無い。

そして晃蔵の言っていた甲20号目標破壊作戦が発動されるかもしれないということ。

時期的には考え辛いが、近いうちにあるのは確実だ。

指揮系統の破壊されたBETAは敵ではないと考えているという可能性だってある。

そうなれば、部隊が完成してからだということは明確だ。

 

「オルタネイティヴⅥ......。」

 

そう呟やくと、睡魔に襲われた。気付けば時刻は11時を過ぎて12時になろうとしている。

視界がぼやけて行き、最終的には真っ暗闇に落とされた。

 

 

 




いやぁ、節目節目言い過ぎな気がします。どうにかこぎ着けたい。

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