また一緒に笑い合えるように   作:ハルノブ

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同盟準備

 AVALONの隊長にBUILD DiVERSとの同盟を結ぶ意志あり、現在団員の意思を確認中だが期待大。短く纏めるとそんな内容のメッセージがカルナからヒロトに届いたその日の夜。

 ヒロトは夕食を食べて風呂に入って楽な格好に着替えた後、ベランダに出て考え事をしていた。

 

 いつも落ち着きを保っているヒロトもAVALONとの同盟が結べるかもしれないというメッセージに強く動揺し、パルとカザミはそれ以上に興奮して結局息抜き処ではなくなってしまった。メイがそんな三人の様子を見ると一度頭を冷やす為に今日は解散するべきだと自分の考えを話し、三人に何も言わす事無くそのまま解散になった。

 フレディはまるで話題に着いて行けてなかったが、そんな状況でもめげず自分に何かできる事があれば遠慮なく言ってくれと応援し4人を見送っていた。

 

 普段通りの生活を流している間にヒロトの動揺は完全に収まった。

 

 カルナのメッセージには団員の意思を確認中だという記述があった。

隊長のキョウヤは自分の意向だけでフォースを動かす事は滅多に無い、日頃から団員達と丁寧に意思疎通を図る性格しているからだ。

 なので、普段ならAVALONの全ての団員たちの意向を取り纏めるにはそれなりに時間がかかる。

 少しの期間とは言えAVALONに所属していた事のあるヒロトは、その事を知っていた。そして隊長が部下からの慕われている様子も。

 

 今回のように普段自分を出さない隊長の意向が示されれば団員たちは一二もなく頷く筈、と自然に予想もできる。

 となれば、AVALONが動き出すまで時間はそう多くないだろう。

 

 AVALONとの同盟が叶い全面的な支援が受けれるならば、今までよりさらに大きな規模で物事は動かせるかもしれない。

 同盟を組んだ後どうするべきかを考えようとしたが、その前に情報共有の準備をしていなけらばならないとヒロトはすぐに思い直した。副隊長のエミリアは間違いなくBUILD DiVERSが持つ今の詳しい考えや状況の把握を優先するはずだ。

 

 ヒロトは携帯を操作し、仲間たち3人に同盟する際に提示する今までの行動をまとめた資料を明日作りたいとメッセージを送る。

 すぐにそれぞれから返信が来て、明日やる事は決まった。

 

 ヒロトがそうしていると、隣の部屋の窓が開いてヒナタが出てきた。

 彼女はベランダの縁に持たれ、横にヒロトが居る事に気が付いた。

 

「今日も一日お疲れー、ヒロト」

「ああ、お疲れ、ヒナタ」

 

 二人で今日一日を労い合う、別に大した事はしていないが夜にここで会うと稀にこんなあいさつをする時があった。そのままヒロトは携帯をしまい、小さくあくびをした。

 ヒナタはそんなヒロトを小さく笑う。

 

「もう眠いんなら、本当に疲れてるんだね」

「うーん、俺は大した事してないんだけど」

 

 フレディからの説教とか、カルナからのびっくりメッセージとかいろいろ大きな事はあった。心境と状況が入れ替わる出来事がほとんど同時に起こり、ヒロトも多少の気疲れしてしまった。

 

「あー、色々あったの?」

「まぁ、そんなとこ」

「ふーん」

 

 ヒナタは何があったのか深く聞くことはなかった。ヒロトの顔を見るにトラブルではなく良い事があったのだろうと何となく察する事ができたからだ。

 

「最近ガンプラ作りの調子はどうなの?」

「……母さんから聞いた?」

「うん、遅くまで何かやってるーって」

「やっぱり。まぁ、焦らずにやってるからどうって事ないよ」

 

 モビルドールの制作は先が長い。

 イヴが復活した後にその意識を宿す器になる事が決まっているのでどうしてもあれこれ細かく考えてしまう。関節の可動範囲と強度を両立させる、重心バランス、デザインはこれで良いのか、少し考えるだけでも課題は多くある。パーツの一つ一つをあらかた作り出すだけでもかなり時間がかかる。

 コアガンダムの調整とはまた別の心持で、ヒロトは真剣になおかつ楽しく作業しているためつい遅くまで作業にかかりきりになっていた。その辺りを母親が気付いて、ヒナタと雑談で話したのだろう。

 

「あの子は見つかりそう?」

 

 ヒナタはヒロトの方を見ずに、ベランダから見える景色をぼんやり眺めながら聞く。

 

「うん、望みはある。きっと見つけられる」

 

 ヒナタの質問に対し、ヒロトは力強く想いを込めて答える。

 そんなヒロトの声でヒナタは彼がまた少し変わった事に気が付いた。

 

「そういえば名前は?」

「ん?ああ――――」

 

 ヒナタ質問しながらヒロトの顔を伺うと、彼は月の方をジッと見つめていた。

 

「名前はイヴ」

「……?イヴさんって言うんだ、なるほど」

 

 長年の付き合いもあってヒナタはヒロトの声・表情・雰囲気で元気だな、悩んでいるな、と彼の体調や心境を何となく察する事が出来た。だが珍しく、今はその感覚が働かなかった。

 違和感を覚えたまま、彼と同じように月を見上げてみる。月には雲がかかっていて、奇麗に見えないとヒナタは感じた。

 

「今日は天気良くないねー、お月様が良く見えない」

「え、そうか?」

 

 雲が掛かってはいるが、月は奇麗だ。ヒロトは首を傾げた。

 

「……私にも手伝える事あったら、言ってね」

「うん、また頼むよ」

 

◆◆◆

 

 次の日仲間四人で集まって、今までの行動をまとめた資料を作成する作業を始めていた。

 場所はいつも通りブリーフィングルームで、ボードに書いた内容もウィンドウに出しながら文章化している。

 カザミは作業が始まって早々に落ち着かなさそうに声を上げた。

 

「AVALONから同盟がほぼ確実に来るかも、なんて今でもちょっと信じられないぜ」

 

 そんなカザミの様子にパルも同意して少し頷いた、ヒロトはそんな二人の様子を見て小さく笑う。

 

「大々的に動くのは珍しいフォースだけど、別に取って食われる訳じゃない。同盟らしく格好つけた乗っ取り攻撃でもないんだから……」

 

 むしろ助けてくれるくらいだし、とヒロトはすでに落ち着き払っている。

 カザミは身体を震わせ、興奮してるのか緊張しているのかよく分からない声を出す。

 

「うぅん、やっぱり落ち着かねぇ」

「同盟の申請はカザミ、お前に届くはずだ。間違って拒否しない様に気をつけろ」

「確かにそんな事したら二度目は無いですよね」

 

 メイとパルが二人そろってカザミの緊張をより煽るようなことを言う。

 カザミは溜まらずヒロトの方に向き直る。

 

「リーダー権限、要る?」

「……情けない事を言うな」

 

 カザミの様子を見てヒロトは気を楽にさせる為に、自分が知るAVALONの事を話そうと決めた。

 

「AVALONはランキングトップのフォースだけあって入団にもちゃんと規定がある。パイロットとしてのセンスやガンプラの出来もそうだけど、それよりも素行とか問題行動を過去に起こしたことないかは徹底的に調べてるってエミリアさんに聞いたことがある」

「……へぇ、そうなのか、管理も一苦労だよなぁ」

 

 何を言いたいかを察するのではなく、単純に感心してしまったカザミにヒロトはもっと分かり易い言葉が必要だな、と思い直す。パルの方は察したのか、少しホッとしていたが。

 

「つまり天狗になった嫌味っぽいダイバーは居ないし、ちゃんと話は聞いてくれるダイバーが集まってる。少しの間しか入ってなかったけど、ミッション前の会議になったら新参の俺にも発言の機会は平等にあった、当然妥当な案なら聞き入れてくれたよ」

「そっかー、いいフォースなんだなー」

 

 これは駄目かも知れない、カザミのぼんやりした様子を見てヒロトはそう感じた。

 だが彼の土壇場での度胸は信用できるとヒロトは知っている、これ以上言葉をかけてもあまり意味がないだろうと判断して作業を続けることにした。

 今度はパルが苦笑いしながら、カザミに声をかけた。

 

「すごく目立てますよ、きっと」

「ジャンルがちげーわ!俺の中ではちげーわ!」

「同盟を結んだからと言って、人が大勢押し掛けてくるわけでもあるまい。なぜそんな気を張るんだ?目的は姉さんの復活だろう?」

 

 メイはいつも通り落ち着いている、そんな彼女を見て上がり気味だったカザミも少し落ち着いた。

 

「肝の座り方は俺たちの中じゃメイがトップか」

「違いない」

「ですよね、メイさんはいつもクールです」

 

 カザミの言葉に男子二人が同意すると、メイは首を傾げた。

 

「ん?……ああ、誉め言葉か、ありがとう」

「何だと思ったんだよ……いや、気は楽になったし、雑談はここまでだな」

 

 全員の気が引き締め治ったところで、今日の作業の話に変わる。

 

「……今までの俺たちの行動をまとめるって言うがどこまで書くんだ?エルドラの事はどうする?」

「僕はイヴさんの復活にはあまり必要ない情報に感じますね、それに混乱してしまいそうな」

「私もそう思う、ヒロトは?」

「そうだな――――」

 

 三人の話にヒロトは唸る。パルの意見であるエルドラの事を説明すると混乱を呼ぶだけであまり意味がないかもしれない、というのは正論と感じつつ別の考えも浮かんできたからだ。

 

「パルの言う事も分かるけど、聞き手によっては全部話した方がいいかもしれない」

「聞き手というのは?」

「キョウヤさんと副隊長二人、カルナさんとエミリアさんだけならしっかり飲み込んでくれるとは思うな」

「……ヒロトがそう言うんだったら、準備しておいた方がいいか」

「ですね、二つのパターンで」

「……?いや、待て。お前たちおかしな考えになっているぞ」

 

 メイが手を上げて三人の話を遮る。

 

「同盟ならあちらが上の立場と言う訳ではないはずだ、ならば聞き手は指定できる筈ではないのか?」

「あ!それもそうですよね!」

「確かに言われてみれば!」

「……俺の考えも勝手に施される側になってた、ありがとうメイ」

 

 AVALONを自分達より上だと感じるのはGBNで過ごす以上仕方ないことではあるが、同盟とは飽くまで対等な関係であると保証しなければ成り立たない。つい先ほども吸収合併のような話ではないとヒロト自身言った筈なのに、三人纏めて思考が妙に弱気な方へと持っていかれてしまった。

 

「乗っ取り攻撃じゃないって、自分でも言った上でこれか」

「フォースとしての規模が違い過ぎるからな、呑まれちまうのもしょうがねぇ気はする」

「でも、メイさんのおかげで気が付くことができましたし、次は気を付けましょう」

 

 三人で少し申し訳なさを感じつつメイに頭を下げる、彼女は特に気にした様子もなく頷いて続きを促してきた。

 

「おかしくなって来たらまた指摘する、話を進めよう」

 

 その後、話がおかしな流れになる度にメイは自身の宣言通り指摘してくれた。そうして都度話の軌道を修正しする形で、説明用の資料を作り上げるまで2時間ほどかかる事になる。

 

◆◆◆

 

 作業が終了して、資料を見返しながら軽く息抜きをしているとカザミとヒロト同時にメッセージが届く。

 

「うぉおおお!!ホントにチャンピオンからメッセージ来たー!!わかっててもビビるー!!」

「こっちはカルナさんからだな、早く動くだろうとは思ってたけど」

 

 チャンピオンからのメッセージは文章がそこそこ長く固い文面のようでカザミは黙って読み込み始めた。ヒロトに届いたカルナからのメッセージは正式な同盟申請ではなくあくまでフレンドとしての物だったので、少し目を通しただけで内容が理解できるほど文章は単純で分かり易い。

 面倒ならこちらを読めばいいというカルナからの気遣いに間違いはないだろう。

 

 パルとメイも文章の内容が気になるのか、メッセージが送られてきた二人に視線を交互に送っている。ヒロトの方が先に読めてしまったので、文面を説明する事にした。

 

「申請システムを使って明日の0時から同盟スタート、その前に軽く情報交換したいからAVALONフォースネストまで手が空いてるならすぐ来て欲しいそうだ。あと、これをさらに細かく詰めた内容が隊長からカザミに送られてるけど、どうなっても悪いようにする気はないからあまり気にしないでいいとも書かれてある」

「い、今からですか!?」

「手は空いてる、行くしかないだろう、カザミ」

「わ、わかってるよ!」

 

 四人中二人は再度緊張している様であったが、何とか立ち上がる。

 ヒロトはすでにAVALONから脱退しているがフォースネストへのワープ登録を解除していない、色々あって忘れていただけだが期せずしてまた役に立つ日が来たことが少し嬉しかった。

 

「カルナさんには返事をした。ワープするぞ」

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