また一緒に笑い合えるように   作:ハルノブ

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AVALONのフォースネストにて

「……実際来てみるとさらにでかく感じるな」

 

 カザミはあんぐりと口を開けてAVALONの所有するフォースネストの門を見ていた。

 一方彼と同じように緊張していたパルは建物大きさ自体にはそこまで驚く様子はなかった、現実の方で何度も豪華な建物を目にした事があるからだ。パルの緊張は自分が粗相をしてしまわないかという不安が大きな原因となっていた。

 何度も来たことのあるヒロトと物怖じしないメイはカザミの背中を小突いて前に進ませる。

 

「進め、カザミ」

「行こう、中でカルナさんが待っている」

「おう!」

 

 カザミはここにきて覚悟が決まったのか、ずんずんと三人の前を進み始めた。

 ヒロトはカザミの背中を見ていつもの調子に戻ったなと、安心する。

 

 開かれている門を通り抜けて、城の大きな正面口にたどり着いた。

 正面口の両端に長槍を携えた衛兵二人が直立しており、こちらに声をかけてくる。

 

「お名前と要件を伺っても宜しいでしょうか」

「BUILD DiVERSのカザミだ、副隊長のカルナさんに呼ばれて来た」

「貴方方が!話は聞いています。すぐにカルナへ連絡します、中でお待ちください」

「おう、じゃあ入らせてもらうな」

「んくっ」

 

 カザミとパルはその対応にちょっと感動して声を漏らしそうになるが冷静に振舞う。

 メイはこのやり取りに意味があるのかと首を傾げ、ヒロトは必死で笑いを押し殺している。

 

「衛兵なんているんですね。ダイバーですよね、あの人たち。……え?」

 

 少しだけ雰囲気にのまれ感動していたパルであったが、玄関ホールに入ってすぐに今の衛士の存在そのものが不審だと気が付いた。

 ヒロトもAVALONの相変わらずの様子に笑いそうになりながら、パルの違和感に答えを示す事にした。

 

「そういう役割に乗っ取って遊んでるんだよ、あの人たち」

 

 パルがその答えにやっぱりと頷き、カザミの方はヒロトとパルの会話に首を傾げた。

 そんな話をしている間に目の前にカルナがワープしてくる。

 

「よく来てくれたな、BUILD DiVERS。……あいつらまた遊んでやがったのか、すまん」

「相変わらずですね、ここ」

「どういう事だ?」

 

 カルナの少し居心地悪そうな苦笑いに、ヒロトは思わず笑って答えた。

 そして未だ事情が呑み込めていないカザミはなおも首を傾げたままだ。カルナはそんなカザミに対して申し訳なさそうに頭を掻くと

 

「門番にダイバー2人を配置する意味なんてないんっすよね……」

「……?あぁー!!」

「あいつらもカザミさん達を馬鹿にしてるわけじゃないんだ。なんというか、自分達の遊びを優先してるだけで、いや、ほんと申し訳ない」

「うわー、雰囲気でやられちまった。いや、それにしてもなんだあの演技力」

「いやー、申し訳ない。……あいつらクオリティは妙に上げてくるから腹立つんだよなー。注意しても自分達は真剣に業務を遂行しているだけであります!とか答えてくるからエミリアさんでも途中で笑っちゃって」

 

 一応来客の肩の力をいい感じで抜かせるという意味で、あの妙に演技力のある衛兵達は一役買っており、そういったメリットもあるので本気で禁止される事が無い。ヒロトはさらに内側の事情も知っていたがわざわざ補足はしなかった。

 カルナはほぼ半笑いで四人に頭を下げて、エホンッと空咳をして表情を引き締め直す。

 

「改めて、AVALON副隊長カルナです。BUILD DiVERSの皆さん、お待ちしていました。どうぞこちらへ案内します」

「お邪魔します!」

「って言ってもそんな硬くならないでいいし、見た通り変なのが普通にいるフォースだから」

 

 カルナは少し硬くなるカザミに笑いかけ、目的地まで案内するため四人を促して歩き始めた。

 カザミは廊下にちらほらある装飾品や吊られたシャンデリアなどを見て、一々凝ってるなぁと感心していた。

 ヒロトは少し懐かしく気持ちで居たが、目についた花瓶でふと思い出したことがあってカルナに聞いてみる事にした。

 

「カルナさん、花瓶って前と同じですか?」

「おー、覚えてたか。AVALONの奴から見たらあれは投票箱だ、変わってねーよ」

「投票箱?」

 

 パルが話の展開について行けずに思わず声を上げると、カルナは少し笑う。

 

「実はな、あれ触るとうちの談話室で流す予定のBGMのタイトルが5つ出てくるんだ。その中で来週流してほしい奴を皆で決める為に毎週投票してんだよ、日曜日集計月曜日BGM変更で」

「へぇ、素敵ですね!いかにもフォースらしいです!」

「だろ?……この中へどうぞ。隊長!BUILD DiVERSの皆さんをお連れしました!」

 

 AVALONのブリーフィングルームに入ると中に居たのはカルナと同じ副隊長のエミリア、そして隊長のキョウヤだった。

 他に人は居ない、その事実にカザミは内心ほっとする。名目の上は同じ立場とはいえ聞き手にしたい三人以外に退室を促す行為はやはり反感を招いてしまいそうで気が進まなかったからだ。

 

「やぁ、あの時の打ち上げ以来だな。来てくれてありがとう、BUILD DiVERS。AVALONの隊長として歓迎させてもらうよ」

「こちらこそAVALONに声かけてもらって、本当にありがたいです!」

 

 四人がキョウヤと直接会って会話するのはアルスとの決戦後にAVALON主催の打ち上げパーティーが盛大に開かれた時以来だった。

 流石のカザミもいつもの口調は鳴りを潜め、かなり固い言葉遣いになっている。

 二人はしっかりと握手を交わし、お互いに席に座る。

 

 まず口を開いたのはキョウヤの方だった。

 

「さて、同盟を結ぶ前の情報交換を始めよう。先にこちらからエミリアが主体になって見解を話すが、BUILD DiVERSは誰が話すか決まっているかな?」

 

 キョウヤに聞かれたカザミはヒロトに視線をやる。

 視線を受けたヒロトは、カザミに頷いて返事をする。

 

「自分が」

「わかった、エミリア」

「はい」

 

 エミリアは立ち上がってボードの前の方に出ていく。

 すでに見知った仲ではあるが、エミリアは奇麗に一礼した。

 

「AVALON副隊長、エミリアです、よろしくお願いします。お互いの情報共有の効率化を図るため以降の会話は録音させてもらいます、ご了承ください。」

 

 エミリアはウィンドウを操作して、ボードにヒロトが上げた動画を映し出した。

 

「AVALONが今回の件でBUILD DiVERSと同盟して全面的に支援しようと思った切っ掛けは、この動画です。我々はこの動画を見るまで第一次有志連合戦の後から第二次有志連合戦の間に、ELダイバーの犠牲者が出ていることを認識していなかったわ」

 

 エミリアは淡々と説明を続けていく。

 

「でも当時の状況では運営ですら助ける事は叶わなかったでしょう。ELダイバーサラの騒動は今更説明するまでもなくBUILD DiVERSの皆さんはご存じと思います。我々は当時ELダイバーを削除するために動いていました。ですが、今回は貴方たちに力を貸す事でELダイバーを救おうとしている。行動の逆転に至った理由は、時間制限の有無」

 

 ボードに表示されている情報が切り替わり、第二次有志連合戦直前に起こっていたバグによる影響が示される。

 

「当時我々はGBNを守る事を最優先にしました、なぜならELダイバーサラからサーバーへの浸食が止まらずGBNが遠からず崩壊してしまうのではないかというほどに時間が無かったから。ですが今回は、すでに散ってしまったELダイバーの救出が目的で、時間制限は特に無い。探索に成功すればそれで良し、復活させるならば反動が起こる事を最初から念頭に入れて準備できます」

 

 エミリアは表情にまで感情を浮かべる事は無かったが、少し申し訳なさを込めてヒロトの目を見た。こうして過去を振り返りつつ説明しても、2年程前のヒロトに当時のAVALONの立場が負荷をかけていた要素は消しきれない。

 しかし、この場で深く言及するべきではない。今回情報交換の場に立ち会うAVALON側のダイバーの総意は事前に決まっていた。

 BUILD DiVERSが話し易い様に、彼ら、特にヒロトと少なからず行動を共にしたことのある幹部だけでこの場を固めたのはせめてもの謝意だ。

 

「客観視すれば彼女の身体が崩壊しデータが四散した時点で状況は最悪でしょう。とは言っても諦めるには早すぎる、最悪の状況なら後は上がりきればいい。AVALONとしての見解は以上です」

 

 エミリアが話すべきことを話し終え、続けてキョウヤが発言する。

 

「カザミ君に送ったメッセージにも記載したが、我々の目的は君たちの支援、つまりはELダイバー・イヴの探索の人員貸し出し。もしそれが望みなしとなれば、君たちの言う『奇跡』を起こす為の支援とそのコントロール手段の模索となる。それを踏まえた上で、BUILD DiVERSには君たちが今抱えている問題点を聞かせてもらいたい」

「……!はい、分かりました」

 

 キョウヤは暗にBUILD DiVERSのイヴ復活に馳せる想いを肯定し、特に後者のあり得ないと言える手段を有効であると認めていると、ヒロトに伝えていた。

 復活目的の奇跡が現実的であるかどうかの話し合いが要らないのであれば、説明するべき事はグッと短く分かり易く済ませる事ができる。

 エミリアとヒロトがボードの前に立つ位置を交代する。ヒロトはウィンドウを操作して、自分達が作った資料をボードに表示し、同時に聞き手三人にも同様の物を送る。

 送られた三人は彼の相変わらずの準備の良さに少し感心していた。

 

「質問の回答前に、キョウヤさん達には伝えなければならない事があります」

「わかった、聞かせてもらえるかい?」

「BUILD DiVERSとしては、イヴを探索するという方法に関してはほぼ望みがないと感じているという点です」

「……なるほど、その根拠はなんだろうか?」

 

 キョウヤの問いにヒロトはイヴと自分が写った写真をボードに表示する。

 そして指し示すのは、ヒロトがイヴにプレゼントしたイヤリングだ。

 

「これは二年程前に、イヴが消えてしまう前に、俺がイヴに送ったイヤリングです。メイ」

「ああ、私がELダイバーだというのは、動画を見てもらったならもう知っているとは思う。そして私が生まれた時にはこのイヤリングは手元にあった、当時はなぜこれが私の元に現れたのか良く分からずに居た。ヒロトと会うまで姉さ、いや、イヴの存在も当然知らなかった」

 

 メイは普段腕に括りつけてあるイヤリングをキョウヤたち三人に見え易い様に手で翳す。この説明をするのは決まっていたので、彼女は事前に自分の手でイヤリングを持っていた。

 キョウヤはそのイヤリングを見て、写真で示されたものとメイが持っている物はどうやら同じものらしいと判断する。

ここでふと思い出したのはGBNのプログラマー、トーリから聞いたELダイバーが生まれるきっかけになった『何か』についての事だ。

 

「……ELダイバー・イヴのデータ片が彼女の生まれに関わっている、かもしれないと言う事か?」

 

 今から話すべき事の一端をキョウヤが今の僅かな話だけで早く察したことに四人は少し驚いたが、ヒロトはともかく頷いた。

 

「そうです。……ここからお話しするのはそもそも彼女たちELダイバーがどこからきたのか、そしてイヴが消える間際に何を言ったのか。前者は特に推測混じりで話も少し長い、信じられない様な事も説明しなければいけません、それでも探索にほぼ望みがないと感じた根拠を示す事はできます。聞いてくれますか?」

「うん、思うように話してくれ」

 

 キョウヤの了承を得てヒロトは話し出す。

 

 エルドラが紛れもない異星であると言う事、そこで戦う中で知った事、イヴの散り際に発した「データの海に帰るだけ」「私はどこにでもいる」という発言からくる推測と、その結果。

 なるべく分かり易く、余計な隠し事はせず。

 

 ヒロトの言葉は淀みが無かった、中には以前思い出した時より更に詳しくイヴの消滅間際の事に振れている内容もあったが、以前ほど強烈な反動が無い。

 

 イヴともう一度会って、聞きたい事を聞き、今のGBNを見せたい。例え目の前にどんな困難があっても諦めないという意思は、彼をより強くしていた。

 

 キョウヤは先にGM達からある程度情報を回されている事もあってそれを基にした疑問を投げかけはしたが、ヒロト達の推測を否定する事は無かった。

 アルスの襲撃、あの戦いを経験したカルナとエミリアは大規模ミッションにしてもエルドラ関連には随分不審な点がある事に気が付いていたのだろう、同じ様に真剣に最後まで聞くことを選んでくれたようだった。

 

◆◆◆

 

「うーん、色々衝撃的な話題だったな。……まぁ、異星人とかそういう話はともかくとして続けるか。要は探索は奇跡って単語を柔らかく伝えるための前菜みたいなもので、本命は復活ってことか。」

「はい、俺達の目的は最初からそうです」

 

 カルナは長い話を聞いて色々思う所は有ったが、ともかくヒロト達の伝えたいところは理解できた。カルナは頷いて、 キョウヤたちの方へ意見を伝える。

 

「人集めるってだけならそんな難しい話でもないですよね、隊長」

「うん、まぁそうだな」

 

 キョウヤはカルナの意見に頷く。

 

「AVALON主催で大会でも開ければいい、エミリア、何か賞品でも見繕っておいてくれ」

「はい。後は目玉イベントでも考えておきますね」

「……軽い提案ですでに規模がすげぇ」

 

 カザミは目の前で繰り広げられているAVALONの影響力を改めて感じた。

 キョウヤはそんなカザミの様子に少し笑った。

 

「使えると思うなら遠慮なくどんどん使っていけばいい、やりがいのある話になって来て燃えてくるだろう?」

「ありがたいです」

 

 カザミは神妙にお礼する。

 話の流れが進む中、ヒロトは改めて抱えている問題点を示す。

 

「今の問題点の一つとして動画のコメント欄はアンチ側に偏ってます、そこは――――」

「ああ、それは心配しなくていい」

 

 ヒロトが示した問題点に、キョウヤは強く断言する。

 

「私がカザミ君の動画をフォローして、それらしい応援コメントを残しておこう」

「同盟締結と同時にコメントを残せば、一気に応援側に流れが来るはずよ」

「……チャンピオンって本当にすごいんですね」

 

 キョウヤの案をエミリアが補足する。

 パルはその影響力に慄きながら感嘆の声を上げる、するとキョウヤは苦笑いした。

 

「影響あり過ぎて、気に入った動画を気楽にフォローできないのが僕の悩みなんだ。良くも悪くも荒れてしまうからね。でも、今回はその悩みが功を奏すという事になる」

「しょうがないっすよ、隊長、諦めましょう。で、あとは復活の反動か?」

「はい、頼ってばかりで申し訳ないですが、俺達もその点に関してはまだ案が出せていません」

「だよなー……」

 

 カルナの指摘にヒロトも固く頷き、現状を報告する。

 どうしたものかと、カルナが考え始めると同時にキョウヤがふと机の上にあるシャンデリアを見上げた。エミリアはそんなキョウヤの様子に首を傾げた。

 

「隊長、どうかしましたか?」

「……部外者は立ち入り禁止だ」

 

 見たところ何もないシャンデリアをキョウヤは睨みつけ、まるでそこに誰かが居るかのように警告する。

 全員が何事かと視線を向けると同時に、シャンデリアの上に金色の鳥が姿を現した。

 

「ミスター・キョウヤ、貴方実はXラウンダーなの?明らかに私のこと見てたでしょう」

 

 驚きと呆れを入り混じらせた感情を呟きながら、金色の鳥は机の中央へと降り立った。

 

「まさか、カマかけですよ。貴方の事だ、件の動画もすでに見てるんじゃないかと思ってね」

「……だとしても外したら一生の恥になりかねないのによくやるわね、思わず出てきてしまったじゃないの」

 

 トーリはキョウヤの胆力に呆れながら、ヒロト達の方を向いた。

 

「盗み聞きなんてしてごめんなさいね」

「えっと、貴方は?」

 

 唐突な登場とマイペースな発言にヒロト達は未だついて行けなかった。

 声を掛けられたらしいヒロトは、戸惑いながらも返事をした。

 

「私はトーリ、GBNのプログラマーよ。以後よろしく、BUILD DiVERS。」

 

 トーリはそのフォース名に因果を感じながら、キョウヤ以外にとっては衝撃的な自己紹介をするだった。

 

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