「コアガンダムの警告の意味について、何か考えがある者は居るか?」
脱線した話を元の話に戻す為、メイはまず最初に意見を募った。
カザミは唸りながらともかく思い当たった疑問を言う。
「あー、そもそもなんでコアガンダムはイヴさんが危険だって報せて来たんだ?そりゃ心配してくれてるのはあるだろうけどよ」
ヒロトも彼と同じ疑問を浮かべていたので、頷いて自分の見解を述べる。
「イヴが、……現状好ましい状態でないくらいは俺、いや皆も分かってる事だ。それを踏まえて危険を伝えている、ということになる」
「……真っ暗な中、良くない場所に向かっている気がする、ですよね」
コアガンダムの警告内容を推測しようと四人の意見が集まってくると嫌な連想にヒロトが行き当たる。
ヒロトは苦い感情に捕らわれながら、一つの推測を口にする。
「イヴにはもう時間が無いのかもしれない」
「……つまり急げって事だよな。……?いやでもAVALONにも力を借りれたし、むしろ今のところ好ペースなくらいじゃねぇの?」
もしかしたらタイムリミットが近づいているのかもしれない、ヒロトの言葉にカザミも思わず苦い感情に捕らわれる。 だが、ふと今の現状を思い出し、これ以上早く進む手段があるのかとカザミは首をかしげる。
パルもカザミの疑問点に同意する。
「カザミさんの言う通り、今の僕達って決して遅い事は無いですよね」
「軌道に乗り始めた処ではあるが、動き始めた当初から比べたら差は歴然だな」
メイも頷く。そんな三人の様子を見ながら、ヒロトは2年以上も前に消えてしまったイヴを取り戻そうと足掻いている現状を再認識し、思い直す。
「いや、俺に遅いとコアガンダムが伝えてきたというのはやはり変だな。伝えられるまでもないんだ、俺が遅い事なんて」
それは自分に対して呆れている様な言葉ではあった。しかし彼の顔に自己否定の色は微塵も無い。気にせずに足掻いてやり切るともう決めたのだから。
「……イヴを助ける事に時間制限があるという解釈は間違っていそうだ、自分の推測をすぐに返す事にはなるが、そういう気がしてきた」
「へー、ちょっとはマシな顔するようになったな。……ま、そんじゃあ考え直しだな」
ヒロトの顔を見ながら、カザミは感心して彼の意見に頷く。パルとメイもヒロトの前向きな変化に好感を抱くが、あまりその点を指摘すると話がまたズレてしまいそうな事もあり、黙って頷くだけに止めた。
コアガンダムの警告が意味する所を理解しようとして四人が思案にくれる。そうしている内に、場の空気に翳りが見え始めた事にパルが気づいた。
「コアガンダムもイヴさんの事絶対助けたいって思ってる筈ですよね?」
「ああ、そうだろうな」
メイがパルの言葉に頷いた。
「なら、今のままだと失敗するかも。なんて否定的な報せは不自然じゃありませんか?」
「……まぁ、弱気になっても仕方ねぇよなー」
場の空気を読んだパルなりの気遣いに、カザミはご尤もと苦笑しながら答える。それを察したヒロトもネガティブな思考を一度仕切り直し、明るい解釈の流れに乗る。
「じゃあ、イヴの復活は上手くいくとコアガンダムは感じている、という事にしよう」
「……なるほど、復活した後に対して警告を向けているかもしれないと言う事だな?」
「ああ」
「戻ってきた後かぁ。あー、……気を抜くな!とかか?」
カザミは話を聞いてともかく思いつくことを口に出す。
パルはカザミの思い付きに頷きはするが、すぐに首を傾げた。
「あ、確かにそれらしいですね。……?……でもイヴさんが戻ってきてくれたら、後はモビルドールに入ってもらうだけですから、そこまで危険は――――!?」
無いと思いますが、とパルが言おうとして言葉が遮られた。ガタンと、ヒロトが音を立てて立ち上がった事に驚いてしまったからだ。
他の二人も同様で、目を丸くしながらヒロトに視線を向ける。
「イヴは───戻ってこないかもしれない」
「……いやそれはさっき否定したばっかりだろ」
ヒロトの言葉にカザミは先ほどの時間制限の話を思い出しながら反論する。
だがヒロトは強く首を振る。
「違う!戻ってこない事を選ぶかもしれないんだ!……コアガンダムの警告はこういう事だったのか……!」
「何?……ヒロト、分かるように話してくれ」
「……ああ、すまない、俺が考えた事は――――」
ヒロトが話を聞く中、三人は徐々に彼の言わんとすることを理解する事が出来た。
パルが最終的にはモビルドールに入るというゴールを示した時、ヒロトの脳裏を過ったのは、忘れもしないイヴとの別れの間際。
イヴがシステム自体に干渉して外部からコアガンダムを操作し、彼女自身を撃ち抜かせた瞬間だ。あの時のイヴの言葉は当時のヒロトからすれば意味が分からないものだらけで、会話はほぼ成り立っていなかった。
それは当時の彼女が、身体的にも精神的にも追い詰められていた事を示している。
そうでもなければ、イヴはヒロトに消されたいと望まない。
そうでもなければ、二人で作り上げたコアガンダムに、自分を撃たせない。
彼女が涙を流していたのは、別れたくない気持ちとヒロトとコアガンダムを追いつめてしまった自分を責める気持ちが入り混じっていたのではないか?
イヴの身体が無く、精神が散ってしまっているのは、ある意味幸運ですらある。彼女に自分で自分を消す力が今はないからだ。恐らく彼女が自分を取り戻した時、かつてのヒロトとコアガンダムへの仕打ちを悔いて、改めて自身を強く責めるだろう。
消えてなくなりたい気持ちが、自分を追いつめる気持ちがどんなものか───かつて引き金を引いてしまったヒロトは苦しい程に良く知っている。
コアガンダムは彼女の心に触れ、知った。真っ暗な中でイヴが何か良くない場所へと足を進めていく夢は、彼女の心の行末を示した、ヒロトへの強い警告だ。
そしてそれは、彼女を助ける最後のチャンスだと、同時に伝えてもいた。
カザミは全てを聞いて、敢えて明るく笑い飛ばす。
「んだよ、色々聞いたけどやる事は結局変わらねぇ。……助けに行く!そうだろ、ヒロト?」
「ああ、もう迷わない!」
「そう来なくてはな」
「僕たち全力で応援しますから!」
三人はヒロトの決意に対し更なる応援の意思を固めた。
メイは更に話を進めていく。
「姉さんを救出する最後の決め手はヒロトだ。私たちができるのはそこまでの膳立てと、後の迎え入れになる。それを踏まえて詰めていくぞ」
「おう!」
カザミの威勢のいい返事で、さらに議論は加速する。
一連の話が決着を迎えたのは、その数時間程度後の事だった。
◆◆◆
「終わったー、疲れたー」
「自分達で考えて言う事じゃないですけど、この計画かなり滅茶苦茶ですね」
「……運営に力を借りる事は、どうあれ必須だったな。まぁ、ある程度修正は指摘されるだろうが、ともかく話さなければ始まるまい」
「そうだな、まず先にキョウヤさん達に伝えてみよう。……お疲れ様、皆ありがとう」
「礼は全部終わった後に取っとけ。あー、腹減ったなぁ」
時間をまるで気にしていなかった四人が時計に視線を向けると、正午はかなり前に過ぎ去っていた。
カザミのお腹からグゥと大きな音が鳴った。
パルはその気の抜けた音に思わず笑う。
「どこか食事に行きます?この後G-CAFEに移動して作業、て、あっ」
「勘弁してくれよ、どこ連れていかれるかわかんねぇし。テーブルマナーとか俺分かんねぇよ」
「時間ももったいないし、適当なファストフード店で食べた方がいいな」
「そもそも私は食べれない」
メイの当然の発言で場が凍った。
パルは自分で言ってる最中にその点に気が付いたのだろう、途中で言葉が尻すぼみに消えた。本来なら言葉にしないで良い事を考えず話してしまう辺りパルも少し疲れていた。
彼女は三人が押し黙った事に気が付いて、その理由を察した。
「なんだ、今更気にする事か?お前たちが食事している間私は車で休んでいれば良い話だ」
「いやそれは寂しすぎるわ、のけ者みたいじゃん」
「余計なお世話だ」
カザミはメイの言葉に首を振って否定するが、メイにとってカザミの気遣いは彼女の忌諱に触れるものであったらしく、クールなメイにしては珍しく眉を顰める。気遣いを受ける様ではそれこそ本当にのけ者ではないか、と少し傷ついたからだ。
ヒロトは不穏な雰囲気を感じ始め、パルはこのままだと口喧嘩になりかねないと焦る。
「落ち着け二人共」
「メイさん、僕はほら、小食なんで一緒に休みましょう、軽食で十分ですし。ヒロトさんとカザミさんはお腹が空いているでしょうから二人で行ってきてください」
「そうだな、行くぞカザミ」
パルの必死の視線にヒロトは一二もなく頷く。ここは二人を一度引き離す事が最善だと彼もすぐに察した。
カザミの腕を掴んで二人の荷物を取ると、足早にこの場から去る。
二人が見えなくなると、メイはため息をついた。
感情を少し荒立てた自分に少し呆れた。どうという事は無いカザミなりの思いやりを、上手く汲み取れなかった事がなんだか複雑だった。
「メイさんも少し疲れていたんですよ、最近考えてばかりですから」
会議が盛り上がる中、興奮が上手く収まらなかったという事もあるだろう。普段ならこんな妙な空気にはなる事は滅多にない。エルドラで出会った当初の雰囲気を考えると、今は本当に上手くやっていけているくらいだとパルは考えている。
メイはパルの優しい言葉に頷きながら呟く。
「人間は難しいな」
「そうですよね。……僕も長生きしてるわけじゃないですけど、色々な人と接してきたのでわかります」
「何を言う、パルは少なくとも私の5倍以上は生きているではないか」
「あはは、そうでしたね」
パルは会話がひと段落したところを狙って、執事にメッセージを送り適当に食事を買って来てもらえるように指示する。
彼女がカザミの気遣いに対して複雑な思いを抱いていしまう気持ちはパルには少しわかった。身体が不自由であるという大枠だけで囲うなら、彼とメイは一緒だったからだ。
食事できるようになるかはともかく、費用や技術の面がクリア出来ればメイの身体の大きさはどうにか出来るだろうとパルは考えた。
「身体、大きくしたいですか?」
「む、当たり前だ。タクシーすら止めれないんだぞ、この身体は」
「あー、もう懐かしい、そんな事もありましたね」
「とは言っても――――」
メイはぴょんと飛んでパルの肩に上り、腰かける。
「こういう事はできなくなるからな、これはこれでいい物だ」
「確かにそうですね。それに小さいメイさんも可愛らしくて僕は素敵だと思いますよ」
「……本当に事あるごとに褒めてくれるな」
パルの淀みない誉め言葉にメイも少し目を丸くする。
彼女はなんとなくパルの頬に手を当てて話す、少しパルについて心配する点があった。
「パルは他人を褒めるが、自分を褒めているか?」
「……え?」
「ヒロトもそうだ、お前たちは他人に優しいくせに、自分にやけに厳しい。カザミは自分に甘すぎる気がするが、そちらの方がいっそ健全な気がする」
メイは淡々と、少しつまらなさそうに話す。
パルが答えあぐねている間に、メイの話は進む。
「ヒロトは変わり始めているが、すぐには無理だろう。本人もそう言うくらいだからな。お前はどうだ?自分に優しくできているか?例えばママは適当に記念日を作っては、自分へのご褒美と称して美味しい物を食べたり、お酒飲んだりしていたぞ」
「……どうなんでしょうね」
身体が車椅子を必要としてからというもの、そんな事をした記憶がない。自分達を褒める事があっても自分、まして『パトリック』に関しては。パルは自分でも良く分かっていたが、口に出したくなかった。
メイはそんな彼の様子に呆れてため息をついた。
「やはりか、では私がパルを褒めよう」
「えっ、何でですか!?」
「他人は褒めるのに誉め言葉は受け付けないのか?」
「いやそれは」
「だとしても知らないがな、勝手に言わせてもらう」
「あ、もう決定事項なんですね……」
既に気恥ずかしい気分になったとはいえ、手の平サイズのメイの身体を押しのけてしまう訳にもいかず、パルは諦め半分で身構えるしかなかった。
「パルは紳士的、というやつだな。前に初めて会った時も私の服装を褒めたり、小さい身体をうまくフォローしてくれていた、意図もすぐ汲める察しのいい奴だ。今日も椅子を用意してくれたり、机を用意してくれたり、色々と気を回してくれたな、ありがとう。普段から場がうまく回る様に話してくれているな――――」
「……メイさん、後どのくらい続きます?」
「私の気が済むまでだ、決まってるだろう。まだあるぞ」
パルはすでに限界が近かった。お世辞の類なら色々厄介な生まれもあり、それこそ耳にタコができるほど彼は聞き飽きている。しかし、メイの場合は全て彼女自身が感じた事をそのまま述べているだけだ、良く知ってる仲間の事なので余計に伝わってくる。肩に陣取られてる事もあって当たり前だが声の位置がものすごく近い、声がどこにも逃げずに直接脳にぶつかってくる。
「あ、あの!ヒロトさんも褒めてあげてくださいね。僕の後でいいんで!」
自分と同じ目に遭う人がいたら気が楽だ、とパルは気恥ずかしさと投げやりな気持ちで身近な人間に被害を波及させようとする。性根から優しい彼からすれば、道連れを作ろうとするのは珍しい行為だったが、それもまた彼なりの仲間への信頼感と言えるのかもしれない。
しかし、メイは迷うことなく首を振った。
「いや、しない」
「なんで!?」
無情なメイの言葉に、パトリックではなくパルとしての口調が出てしまう。
「ヒロトには姉さんが居るからな。こういうのは姉さんとやるべきだ」
「……またマギーさんですか?」
「そうだ、良く分かったな、やはり察しがいいな。恋人を持つ男性に、あれやこれや誉め言葉をかけるな、とか言っていた。まぁ今はどうでもいい、続けるぞ」
「はい、お手柔らかに……」
パルは全てを諦めた。執事が食事を持ってくるまでの僅かな時間が、彼には待ち遠しかった。メイの発言はパルを色々誤解させかねないものだし、指摘しようかとパルは思ったが、したとしても通じなさそうなのでやめた。
◆◆◆
その一方で、ヒロトに腕を掴まれて部屋から引きずり出されたカザミもため息をついていた。
「あーあ、また言い方間違えちまった……。この口どうにかならねぇかなぁ」
すぐに後悔して変わろうと悩める事が凄い、カザミの発言を聞きながらヒロトはそう思った。自分にはここ最近になってようやく出来るようになってきた事ばかりだというのに。
今思った事をそのまま言えばまた怒られるだろうとヒロトは予期して、フォローの言葉を探す。
「思った通りに行動できるのは悪い事じゃない」
「まぁ、俺は単純だからな」
ヒロトの気遣いにカザミは苦笑して、礼代わりに彼の肩をポンと叩いた。
「自分で使い分けできないっていうのが結構問題なんだよ、つい口が滑っちまう」
「カザミも悩むんだな」
「……お前もメイもフォローしてるのか馬鹿にしてるのか良く分かんねぇこと言うよな、そこはどうかと思うぜ」
フォローとか純粋な関心のつもりなんだろうけど、とカザミは一人思った。
悩む事は彼にも勿論ある。イヴ復活の件とは別に頭の片隅で常に考えていることがあるのだが、自分だけではなくBUILD DiVERS全員に当てはまる問題でもある為、どのタイミングで話したらいいのか分からなくなるような事だ。
消化しきれない思いを抱えているカザミを見て、ヒロトも何か彼の雰囲気がおかしなことに気が付く。
「悩みがあるなら、この際話してしまったらどうだ?」
「あー、バレたか」
カザミは頭をガシガシと掻いて、聞かれた以上は悩みを打ち明ける事にする。
「今やってる事とはあんまり関係ねぇよ、妙に気に病んだら悪いから、ちょっと黙ってただけで、いずれ話そうとは思ってたんだ」
歯切れが悪いな、とカザミの声を聞きながらヒロトは思う。よほど言いにくい話らしい。
「ほら───エルドラっていつまで行けんのかなぁ、ってさ」
「……確かにな」
「あんまり驚かねぇって事は、お前も考えてたのか」
「ああ、まぁ、少しは」
カザミの悩みは、ヒロトも頭の片隅で考えていた事だった。
GBNとエルドラが繋がった事は、ただの偶然、それこそ奇跡の産物の様な話でしかない。
二人はパルがクアドルンから同様の指摘を受けていることを知らないが、カザミはマイヤと過ごすうちに否応なく考えざる得なくなり、ヒロトは持ち前の状況に対する観察眼が既にこの考えを導き出していた。
「でもこれ、心配になるだけで、それこそ解決策なんて思い浮かばねぇだろ」
カザミはヒロトに話しながらも、不安定な現状を打破できる可能性がある人物について内心で心当たりがあった。……イヴなら古代文明に纏わる遺産を理解し操作できるかもしれない、そのくらいの可能性は既に思いついていた。ただそれをやると彼女がどうなるかわからないので、カザミはこの手段は口が裂けても言うつもりはなかった。
ヒロトも同様の可能性を考慮していたが、イヴに及ぶ危険性を考えると当然取りたくない手段になる。
「そうだな。……今回の件が終わったらクアドルンさんに聞いてみようか」
「あ、そりゃいい手かもな、なんか知ってるかも」
「フレディや皆に会えなくなるのは寂しいからな」
「だよな!」
二人が取りたくない手段は一緒だったが、だからと言って諦める気が毛頭ないのも一緒だった。
◆◆◆
「ただいま」
「戻ったぜー」
「おかえり、話があるんだが」
ヒロトとカザミが外で遅めの昼食を取り、元の会議場に戻るとメイがパルの肩に座った状態で早速話を振ってくる。
パルはなんだか焦っているようだが、メイに思いっきり頬を押し込まれており、どうやら一応黙らされている様だ。
「パルが悩んでる」
「あー、エルドラに居た時パルなんかおかしかったよな、そういえば」
「俺もあの時の事は近いうちに聞こうと思ってた、どうしたんだ?」
「ばれへましたか」
ヒロトとカザミは以前エルドラに息抜きに向かった時、一度各々で散って再度合流した際にパルが挙動不審になっていたことを思い出す。パルは自分の表情を隠せていなかったことに、ちょっと呆れて呻くも、メイに頬を押し込まれて変な発音になってしまう。
カザミはそんな様子にけらけら笑いながら聞く。
「隠す気あったのかよ、でどうした?」
「掻い摘んで言うとエルドラに移動できなくなったらどうしようという話だ」
メイの言葉にヒロトとカザミは思わず顔を見合わせ、二人とも同時に吹き出した。
笑い始めた二人をパルは怪訝な顔で見る。
「いやすまねぇ、ちょうど今さっきその話したばっかりなんだ」
「すごい偶然だな」
「……お二人はどう思います?」
パルがおずおずとした質問をする、メイの方は腕を組んでなり行きを見守る事に決めたようだった。
ヒロトとカザミは自然と声をそろえて言う。
「「諦めない」」
「ぁ」
「ほら、私の言った通りではないか。……待て何故泣くんだ、パル」
「おおう、どうした!?」
パルは首を振って平気だと示す。メイはその肩の上でぐらぐらと揺れていたが、必死でバランスを保ちきった。
「大丈夫です、なんだか嬉しくて、僕も同じ気持ちでしたから」
パルはあの時自分がクアドルンに返した言葉が間違いでなかったことに深い喜びと安心感を得た。感激して少し涙が出てしまったが、すぐに笑顔に戻る。
パルの気持ちを聞いて、メイも微笑む。
「嬉しい涙はいいものだ」
「ええ、そうですよね、メイさん。でもこの件は後回しにしましょう」
「ああ」
「じゃあ、G-CAFE行って残りの作業頑張るぞ!おー!」
「おー!」
「「おー」」