そろそろ家を出なければならない時間だ。正午よりかなり前だが、ヒロトは準備を始める事にした。
今日、GBNにダイブする場所はいつものG-CAFEからではなく、ELバースセンターにあるダイブ機からだ。
強制ログアウトの可能性を下げる為にトーリを通して運営に掛け合うと、ヒロトのみ特別に許可を受けダイブ機が用意される事になった。運営側にもここまで準備に協力して置きながらいざ当日に強制ログアウトなどされてはたまらないと判断されたのだろう。
ELバースセンターの所在地は彼の住むところから少し離れているが、全てがうまくいった後イヴを迎えに行かなければならないので一石二鳥、ヒロトからすると運営の配慮が凄くありがたかった。
彼は立ち上がって服着替え準備を手早く済ませる。ガンプラを入れるためのポーチを腰につけて、机の上に置かれたコアガンダムとネプチューンアーマーを手に取る。
「一緒にやろう」
ヒロトはポーチの中にコアガンダムとアーマーを入れ、他の準備物が入ったカバンを持って自分の部屋から玄関に向かう。
リビングで寛いでいたオサムとユリコは息子が出てきたのを見て、彼に向かって笑いかけた。
「「がんばれ!」」
「行ってくる!」
ヒロトは両親からの応援に笑って答えると、そのまま家から出ていった。
「いい顔をするようになったなぁ」
「そうね。でも――――」
オサムは感慨深い気持ちで呟いた。
ユリコはそんなオサムの言葉に微笑み、彼の肩に手を置いた。
「とりあえず身嗜み整えましょうか」
ユリコは普段ならオサムの格好に文句をつけたりはしないが、今日は特別な日になる。家族が増える、その最初くらいはきっちりとした姿をして欲しかった。
オサムは返事も許されないまま、ユリコに連行されていった。
◆◆◆
ヒロトは前もって念入りに道順を調べていたおかげで道に迷うことなく、かなり余裕をもってELバースセンターへと到着する。施設の前ではコーイチ、『ナナセ・コウイチ』が待機していてすぐに彼を迎え入れた。
軽く自己紹介を交わして、ダイブ機のある一室に案内してもらってる最中にヒロトは気になっている事確認する。
「ナナセさん、モビルドールはどうでしたか?」
ヒロトからの当然の質問にコウイチは笑って答える。
「システム側の準備は万端、いつでも彼女を迎え入れできるよ。身体の方は言うまでもないくらい、本当によくできてる」
「ありがとうございます、作業の方よろしくお願いします」
「勿論」
そのままコウイチからの激励を受けている間に部屋に着き、ヒロトはその部屋にあるダイブ機を使うように促され、そこにガンプラと小さくなってしまったイヤリング、使うカプセルをセットする。
「あ、その小さいイヤリング、そうだ、どこかで見た事あるなとは思ってたんだ」
コウイチはメイがこの世界に生まれて来た時の不思議な現象を思い出す。彼女はなぜか用意していない筈のイヤリングを元から手に持っていた。常識外れのELダイバーにもう数えきれないほど関わった事のある彼でも、更に常識外の展開について行けず酷く混乱する事になった。勿論原因を調査する為に大騒ぎになったが、結局それらしい事は見つからずただ徒労に終わったという事実を含めて印象深く記憶に残っている。
イヴの画像を見た時に、彼女の耳にあるイヤリングにコウイチは既視感を覚えたが、サイズ比に差が大きくあるので思い出せなかった。
「メイの物です。持って行けって以前に会った時に渡されて」
ヒロトがこの小さくなったイヤリングを受け取ったのは以前のオフ会の解散間際、メイにはオフ会のついでと言わんばかりに渡された。小さくなったイヤリングを見てヒロトは思わず感傷的になってしまったが、その気持ちはすぐに振り払っている。
コウイチは首をかしげてヒロトに質問する。
「そのイヤリングはヒロト君が彼女に送った物なのかな?」
「はい。自分で作って彼女に送りました。……前はもっと大きかったですけど」
彼の答えにコウイチは何か壮大な意思の様なものを感じざる得なかった。
ヒロトがイヴに送ったイヤリングが、メイが生まれた時に実体化し、そのメイはイヴを知らずにヒロトと出会い、今こうしてイヴを取り戻すために協力している。
運命的だ、とコウイチは感じたが、口には出さなかった。それだとまるでヒロトとイヴが別れたのは当然だと、ヒロトに聞こえる気がしたからだ。
「頑張って!僕もうまくいくように全力祈ってる!」
「はい……!」
ヒロトがGBNにダイブする姿を見送り、コウイチは念のため再度ELバースシステムのチェックを行う事にした。
◆◆◆
ヒロトはGBNにダイブすると、早速自分のハッチへと向かう。
彼がダイブしたのを確認次第、トーリがヒロトのハッチへカプセルの回収に向かうと事前に話があったのだ。
ヒロトがハッチにワープして、端末でコアガンダムとネプチューンアーマーの調整を再度確認しているといつの間にか来ていたらしいトーリが端末の端に降り立った。
「こんにちは、ミスター・ヒロト」
「こんにちは、トーリさん。今日はよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ。カプセル、見せてもらいますね」
トーリは挨拶もそこそこに早速カプセルの方に飛んでいく。
ヒロトがついて来るまでに、トーリは滞空しながらじっとカプセルの方を見つめシステム面でのスキャンをかける。
その結果を見てトーリはあら?と声を上げた。
「中はベットのような形になっていると思いましたが、これは椅子ですか?材質は……石かしら?」
「はい、そこにイヴの身体を座らせてください。その椅子、召喚台はエルドラにある物をモデルに作ったんです」
「召喚台?……なるほど、何か意図があるのですね。分かりました、ではその様に」
ネプチューンアーマーのコア部分をモチーフにして、イヴの身体を寝かせるカプセルを作ろうと発案したのはヒロト。それに対してパルがエルドラの古き民を呼び寄せる召喚台を中に入れてはどうかという意見を出し、採用されて今の形に落ち着いた。ともかく少しでも上手く行く様、手を尽くした結果だ。
ヒロトもトーリに聞くべき事があるので、その件について確認する。
「トーリさん、例のディメンションの準備はどうなってますか?」
「すでに星々を各ディメンションへ繋げる工程に進んでます。正午前までには必ず準備が整う様にします」
「ありがとうございます」
「いえ。では私は仕事に戻ります……頑張って」
トーリは自分のするべき事を済ませると、ヒロトに応援の言葉を残し転移した。
◆◆◆
ヒロトがミッションカウンターのあるホールに戻ると、カザミ・パル・メイの三人が連れ合って近づいてきた。
「よぉ、ヒロト」
「おはようございます」
「ヒロト、忘れ物などないだろうな?」
メイはヒロトに限ってそんな事はあるまいと思いながら、念のため確認する。
彼は頷いて、手に持ったイヤリングを掲げる。
「大丈夫、これもある」
「よし、AVALONのフォースネストで待機させてもらえるんだったな、移動するぞ」
メイの言葉に三人が頷き、ヒロトがウィンドウを操作してAVALONのフォースネストにワープした。
同盟を組んだことで一時的にではあるが、AVALONのフォースネストのほぼどこにでも直接ワープできる権利がヒロト達には与えられている。
今日自由に使っていいと言われている一室にワープすると、部屋の中にはキョウヤと副官のエミリア、カルナが居た。
「やぁ、BUILD DiVERS」
「キョウヤさん、お疲れ様です」
「何を、まだ始まってもいないよ」
ヒロトの挨拶にキョウヤはハハハと朗らかに笑い返す。
エミリアが眼鏡の位置を少し上げて、現状の説明をする。
「大会の準備はつつがなく、各地にGNアブソーバーとGNドライブを扱うダイバーの配置準備もすでに。ただまだ時間は近づいていないので、ダイバーは各々ポジション付近で適当に過ごしている様ですね」
「各都市や人口密集地のモニターは時間になったらうちの大会の中継に切り替わる手筈になってるぜ」
カルナが説明の補足を入れる。
AVALONには頼りっぱなしになっているBUILD DiVERSは四人揃って恐縮するしかない。
「助かります」
「いいっていいって」
カルナが朗らかに笑って答えると、扉がノックされる。
エミリアが扉を開けて、ノックした団員から事情を聞くとキョウヤとカルナに目配せした。
「ちょっと出てくるわ」
「また後で」
三人はそのまま部屋から出ていった。
カザミは頭を掻くと、居心地が悪そうしながらとりあえずソファに座った。
「まだなんかできる事ないかって思っちまうな」
「僕たちの今日やる事はヒロトさんのお手伝いですけど、ああやって忙しそうに動いている人を見ると落ち着きませんね」
「彼らを動かしたのは私たちだ、力の入れ所を間違えるな」
カザミとパルが落ち着かない気分で話すと、メイはいつも通り落ち着いた返事をする。
手持ち部沙汰になったヒロトがメッセージウィンドウを開けると、また大量に新規メッセージが届いていた。どれもこれも応援メッセージだ。
「あ、マサキさんからスタンプ来てる」
「あー、熊か?」
「……ベアッガイがファイトーって叫んでる」
「かわいいスタンプ使ってますよね、マサキさん」
マサキの特有のペースに皆が和んだところで、カザミが声を上げる。
「ヒナタは?」
「まだダイブしてない、もう直に来ると思うけど」
「そっか」
カザミはまた一人助力がもらえれる事実に安堵する。
パルは動画サイトを開いて、感嘆の声を上げる。ライブ映像でスタジアムの周りが映されている動画で、集団がそこら中にできていた。
「わぁ、まだ時間前なのにスタジアムかなり人が集まってますね」
「流石トップフォース主催の大会だな」
◆◆◆
「お、いたいたー!」
男性ダイバーがスタジアムの近くで友人を探していると、後ろから声が掛かった。
声に反応して男が振り返ると、友人が人を避けながら近づいてくる。
「よぉ、すごい人の数だな」
「ホントに、エクシアの足元に居るってメッセージが無かったら分からなかったぜ」
大会スタジアムの出入り口前のモニュメントとして実寸大のガンダムエクシアが堂々と立っていた。目印としてはかなり役に立つ物だ。
「お前どっから回って来たんだ?」
「いやーそれが出店が結構あって、ぐるっと一回りしてきたんだ」
友人は楽しそうに報告する。
「西出入り口にガンダムDXが立ってた、北はEz8、東がゴッドガンダムだったな」
「ああ、どこも目印があるんだな。……ん?」
「どうした」
友人が見たものを聞いて、なるほどと相槌を打っていた男は違和感を感じて首をかしげる。
友人の怪訝な視線に、男は気が付いたことについて話し始める。
「今日のイベントって今流行ってる動画上げたやつの応援なんだろ?」
「うん」
「DXもEz8もゴッドも主人公の乗機でヒロインを求めてるからな、配置する理由もわかる。けどエクシアはどういう事だ?OOって見た事ないけど、なんかわかりやすいヒロインいなかっただろフェルトだっけマリナだっけ?」
「……は?お前何言ってんの?ここにいるじゃん」
「え、いや何処に?」
「ガンダム」
「は?」
「ガンダム」
「……マジで?」
「うん」
「えぇ……」
男は何か深い闇の様なものを見た気がした、それに対して友人は声はごく真面目に振舞っていたが徐々に顔が半笑いになる。
その表情を見た事で男は友人にからかわれたことに気が付いた。
「お前からかったな!」
「ごめんごめん!でも割とマジなんだって!見たらわかるって!……まぁ実際は今日はGN粒子を撒いて一緒に願い事するイベントのついでの大会なんだろ?だからエクシアなんじゃね?」
「GN粒子で、なんだっけ、意識共有?ニュータイプ的な?」
「まぁ、大体あってる。でもこれをガチでやるとはなぁ……」
飽くまで設定の話だろ?と二人は同時に思いを同じくするのであった。
◆◆◆
正午まで15分を切った時、ヒロトにトーリからのメッセージが届いた。
素早く彼が目を通すとディメンションの準備が整った、そちらから返事がきたら転送するという内容だった。
「トーリさんから準備できたって、行こうか」
「よっしゃぁ!行こうぜ!」
カザミの声にパルとメイが頷く。
全員の意思が確認できたので、トーリに準備完了とメッセージを送ると、四人の身体を光が包み込んだ。
その次の瞬間には各々が星の海ディメンションで漂っているガンプラの中に転送される。
ヒロトは機体の状況を確認して、プラネッツシステムに異常が無い事を確かめる。
「コアチェンジ・ドッキング・ゴー」
ヒロトの操作によってコアガンダムにネプチューンアーマーが装着されていき、コアガンダムからネプテイトガンダムへと静かに切り替わった。
「各部異常なし、ヴォワチュールリュミエール、起動可能、よし」
まだネプテイトを動かす時ではないが、ヒロトの確認作業に余念はない。
他の三人も各々の機体のチェックを終えて、四人で通信回線を開いた。
「私は問題ないぞ」
「イージスナイトも大丈夫だ。ま、俺とメイはやる事ないけどな」
「僕の方も機体の状態レックスバスターも含めて、オールオッケーです。……といってもネプテイトガンダムの非常用加速補助ですから、やる事ない方がいいんですけど」
「カプセルはまだ出てないか、トーリさん聞いてますか?以前に話した――――」
「はい、カプセルを配置したら、一度近くに貴方のガンプラを転送します。カプセルにガンプラで触れれば貴方はその中に移動します、テスト代わりに今話した手順でカプセルの中に移動してください。……あとカプセルの中の空間は少し広げてあるので息苦しくない筈です」
ヒロトが聞きたい事を言い切る前に、その答えになる事をトーリが先回りして全部答えてきた。
彼女はアバターが鳥なので表情や動作が見えないが、いつもより気持ち早口で答えてくるところからヒロトが考えるに作業をまだ他に何かやっているのかもしれない。
「ごめんなさい、その時が来たらまた声をかけます」
「あ」
トーリの通信はそれきり切れてしまった。ヒロトが謝る暇もなかった。
「あっちもこっちも修羅場だな」
「……僕らの出番は後ですし、申し訳ない気もしますけど、待つしかないですね」
そうしてやれる事もなく長いようで短い時間が過ぎると、トーリが再度ヒロトに通信をつないでくる。
「やっと落ち着きました、ミスター・ヒロト、ガンプラを転送します」
「お願いします」
「行ってこい」
メイの見送りと共にネプテイトガンダムはディメンションの中央で漂うカプセルの元へと転送される。
ネプテイトの推力だけでも時間は掛かるがたどり着く事はできる、今回の転送は単純に時間短縮が目的だった。
ネプテイトガンダムはカプセルの元へと転送された後、その腕を伸ばし優しくカプセルに触れる。
その瞬間ヒロトはカプセルの中へと転移した。
「……イヴ」
彼女の身体はまるで眠っているだけの様に、召喚台に背中を預けていた。
ヒロトはイヤリングを懐から取り出して、イヴの左耳へとつける。このイヤリングがイヴに対する手助けになる事を願いながら、丁寧に。
「もう少し待っててくれ」
グッとヒロトが手を握る、握り返してくれる動きはない。
「……戻しますね」
「はい」
トーリの声が響いて来て、ヒロトが頷くとすぐにネプテイトガンダムに戻されてイージスナイトたちが居る元の場所へと転送された。
◆◆◆
イベント開始時刻。
スタジアムはざわざわとどこもかしこも騒がしかった。ダイバーたちは各々に話し合い、その中の多くがヒロトたちに付いて話している。
「――――AVALON主催イベント大会にご来場の皆さま、本日はお越しいただき誠にありがとうございます。開催前にフォースリーダー、クジョウ・キョウヤより挨拶をさせていただきます」
エミリアの声がスタジアム全体に響き渡る。
その声にダイバーたちのざわつきは一瞬止まり、壇上にキョウヤが立つことで歓声が大きく上がった。
うおおおお!という大きな声がいろいろな場所から上がり、キョウヤはそれに手を振ってこたえる。
「皆来てくれてどうもありがとう!」
彼が手を横に払うと、会場が静まり返った。
「やぁ、気を使ってくれてありがとう。そう長く話す気はないんだが、今日は皆に私から少し聞いてもらいたい話がある」
キョウヤが後ろのモニターを指すと、イヴが写った唯一の画像が大きく表示される。
「今回AVALONが大々的にイベントを開かせてもらった理由は、ある一人のダイバーの切なる想いを示した事がきっかけとなる。ここに居る皆の大半は、彼の動画を見てくれているだろう。その動画内容をかみ砕くと、GBNを守る為に消えてしまったELダイバーを取り戻したい、と彼は言っていた」
キョウヤは一呼吸おいて、言葉を続ける。
「彼の発言について言及するために、今この場に私が立っているわけではない。勿論、彼の言う事は全面的に信用し、手助けするために行動はしているが、それはさておいてね。……私がここに立ったのは君たちの一つの疑問に答える為だ。その疑問とはすなわち奇跡は本当に起きるのか?」
キョウヤが示したその疑問はこの場に居るダイバーの大半が感じている事だった。
ざわざわとスタジアムが再度騒がしくなる、どのダイバーたちも一緒に来た仲間たちと顔を見合わせたり、この件に関して意見を交わしている。
「奇跡は起こせる!それが私の答えだ」
キョウヤが疑問に対してはっきりと答えた。
観衆の目はもう一度キョウヤの方に向き直る。
「その考えの根本にある事は、私がこのGBNのチャンピオンであることは毛頭関係が無い。数々の困難を打ち破って来たからと出た意見でもない。第一次有志連合戦の折り、あの光の翼を見た者も少なからずこの場にいるとは思うが、あれとも関係ない、もっと以前に私たちは奇跡を起こしている。とてつもなく大きな奇跡に、今もこの場に居る全員が関わっている」
観衆は、彼が言う事はいったい何の話かと首をかしげる。思い当たる節があるダイバーは一人もいなかった。
「今回の奇跡を起こす際にGN粒子を使って人の想いを束ねる事に、疑念を感じたダイバーは多いだろう。それはそうさ、GN粒子なんて言ってはいるが、結局はそういう設定を持っただけの光の粒、思い込みでしかない」
キョウヤはあえて今回の奇跡の手段に対し否定の言葉を並べる。
彼の言っている事が反転しつつあることに気が付いたダイバーたちは、また騒めき始めた。
「――――ところで、君たちはガンダムが好きかな?どの作品でもいい、ちなみに私はガンダムAGEが大好きだ」
キョウヤの発言に、大半のダイバーはそんな事は知ってると思った。
「ガンプラはどうだろうか、私は自分の作ったガンプラについて丸一週間話し通せる自信がある」
キョウヤは笑った。
「不思議な物だと思わないか?ガンダムだ、ガンプラだ、とは言うがそれこそカタカナ四文字に対するただの思い込みじゃないか」
キョウヤの言葉に、観衆の多くは引き付けられ、すこし考えざる得なくなる。
「思い込みで良いんだ、それで奇跡は起こせる。その思い込みがこの世界が作られる大事な要因になった、多くの人たちの熱意が感動が、想いが詰められてこのGBNができた。世界一つ作り上げるくらい私たちはガンダム、ガンプラが大好きなんだ!想いは集まって、こうして奇跡はすでに起きている!君たちはその一員だ!君たちのおかげでGBNは続いているんだ!奇跡を私たちはすでに起こしている!」
シンッと静まり返る、誰もが息を呑んだ。
同時にスタジアム直上に居るダブルオースカイメビウスがトランザムインフィニティを発動させ、GN粒子で会場を包みこむ。GN粒子はキラキラと瞬きながら、ダイバーたちの周囲を舞う。
「たとえ思い込みでも、世界は変えられる!奇跡は起こせる!難しく考える必要はない!皆で大声で叫ぼう!GBNを守ってくれた彼女に伝えよう!私たちは世界を作ってしまえる程にガンダムが、ガンプラが大好きだと!このGBNが大好きだと!」
グッとキョウヤは一息吸い込んで、大声で叫ぶ。
「GBN、万歳!!!!」
その声は
世界に
響いて
「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!」」」」」」」
「GBN大好きだー!!!!!」
「ガンプラ大好きー!!!!!」
「イヴちゃん帰ってこーい!!!!!」
その時、響き渡る声が、確かにGBNを、世界を包み込んだ。
◆◆◆
「GM!」
「どうした?」
運営の職員が焦った声を上げ、GMは何事かと問いかける。
「やっぱりそうだ!『花』に各地からGN粒子が集まってきています!」
「何?アブソーバーはまだ起動していない筈、いや、すぐにGNアブソーバーを起動しろ!」
ELSが作った『花』をモデルにしたオブジェクトにGN粒子が勝手に集まりつつある、その報告にGMは面食らうも会場の様子を見てすぐに指示を切り替える。
職員は指示を受けて、すばやく各地のGNアブソーバーを起動させる。その収束の速さはアブソーバーの限界を軽々と超え、見る見るうちに『花』にGN粒子が蓄積されていく。
メインモニターに表示された『花』に入り込むGN粒子の量が示されたゲージがMAXを叩きそうになった時に、GMは指令を飛ばした。
「よし、カプセルに向かって放出!」
「放出します!」
GN粒子は奔流となって、イヴの身体が納められたカプセルに勢いよく流れた。
◆◆◆
「リク」
「うん、すごいね」
リクとサラは感動に包まれて、世界を包んだ大きな声を聞いた。
あの光の翼を起こした時以上の奇跡が今まさに起きたと、二人は確信した。
その時、サラが上を向いた。
突然の仕草にリクは驚いて彼女に声をかける。
「サラ?」
「……姉さん?ぅ!?」
ガクンとサラが崩れ落ち、リクは反射的にその体を支える。
サラの頭がずきずきと痛んだ、姉さんが危険だと直感で分かった。
「リク、姉さんが!」
「そっか、でも大丈夫だよサラ、ヒロトを信じよう」
「……うん!」
◆◆◆
四人が花から放出されるGN粒子を見て、意識の収束はうまく行ったと確信した直後、メイが頭に痛みを覚えて蹲る。
「ぅ、なんだ!?」
「メイさん?どうかしたんですか!?」
「おい、どうした!?ヒロトもどうした!?」
パルとカザミが声をかけると、メイはヒロトにともかく伝えようとする。
ヒロトはそれよりもはるかに早くネプテイトガンダムにヴォワチュールリュミエールを展開させる。
強い胸騒ぎが起こり、考える前に腕が動いた。
「ヒロト、姉さんが!」
「分かってる!パル!」
「ッ!?はい!!」
エクスバルキランダーがネプテイトガンダムの後ろに着き、レックスバスターを構えてガンドランザムを起動させる。
パルは尋常ならざる二人の様子に、自分が疑問を挟み込む余地が無いと素早く判断した。
数秒でネプテイトガンダムがヴォワチュールリュミエールを完全に展開し、固有の光が輪の様にネプテイトの推力になっていく。
「ヒロトさん、行けます!」
「よし頼む!」
「ガンド――――」
「まてぇぇい!!!!」
カザミが大声を上げて、二人を制止する。
何事か、とヒロトとパルがカザミの方を見ると、カザミはニヤリと笑った。
「ここ一番大勝負で!今から発進って時に!言う事はそれじゃあねえだろ!」
「……ああ、そうだな」
ヒロトも笑う、焦りすぎた気持ちが凪にのように静まった。
メイとパルも小さく笑う。
「ネプテイトガンダム!ヒロト、出る!」
「行ってこい、ヒロト!」
「よっしゃぁ!いってこい、ヒロトォ!!」
「必ず、二人で帰って来てください!ガンドランザムレックスバスター、シュート!!」
ネプテイトガンダムはエクスヴァルキランダーの後押しを受け爆発的に加速した。
一瞬で三人から離れ、猛スピードでイヴの元へと直進する。
「一緒に行くぞ、イヴの所まで!」
ヒロトの言葉を受けて、ネプテイトはさらに加速していく。