「ああ。―――おう、こっちは順調だ。―――いや、いいからお前は休んでろって。―――まだ声がぼんやりしてるから駄目だ。―――おう。―――よし、こっちも例の件詰めたら報告するからよ、ちゃんと休めよ。―――ああ、また電話する」
カザミは電話を切って携帯をバックの中に入れると、持ってきたものがすべて入っているか確認する。財布、イヤホン、スケジュール帳、イヴ復活の為の情報を自分なりにまとめたノート、全部ある。
GBNにダイブしている最中は、現実側から仮想空間へと意識が飛ぶ事になる。
ダイブしている人間が他人に触られるとセーフティが働いて意識が強制的に現実へと戻る仕組みになっているが、身体に触らずに手荷物だけを器用に奪い取られる事件が起きニュース沙汰になった事があった。
それ以降はGBNダイブ機が置かれている店にはサイズはまちまちとは言え暗証番号付きのロッカーがセットとなって整備され、今はそこに手荷物を預けておくのがルールになっている。
店に入り、利用申請を済ませて手早くロッカーに荷物を詰め、しっかりロックする。
準備完了、あとはイージスナイト共にGBNへダイブするだけだ。
手の中にあるイージスナイトをちらりと見て、カザミはふと最近の会話を思い出す。
「ガンプラに、心がある、か」
馬鹿げた話、とカザミは思わない。
今の仲間たちと出会う前、あの話を聞いたらどう感じていただろうか。
「ま、そんな事はどうでもいいか。……一緒に頑張ろうな、悪いけどしばらくバトルは我慢してくれや」
イージスナイトに聞こえる様にだけ呟くと、気合を入れ直してカザミはGBNにダイブした。
◆◆◆
ログイン地点は各ダイバーそれぞれの設定による。
フォースネストを所持していないBUILD DiVERSメンバーはミッションカウンターのあるロビーをログインの初期位置に設定しており、その場で合流する事が大半だ。
「あ、カザミさん!こっちです」
「お、パル!」
ロビーの混み具合によってはパルは小さくてどこにいるのか分からない時がある、しかしカザミが大柄で目立つアバターをしている為、毎回問題なく合流できている。
今日もパルがカザミを見つけて声をかけ、しばらくすれば何処からともなくメイが寄ってくる。
「来たぞ」
「よう、メイ」
「こんばんは、メイさん」
パルが尻尾を振ってメイを迎える。
普段なら大体と同じようなタイミングでヒロトも来るのだが
「じゃあ、事前報告な。俺からはヒロトは今日も休ませた、そんだけだ」
「……ヒロトさんの具合はどうでしたか?」
「まだ疲れてそうな雰囲気、って感じだったな。電話越しだが、声の張りが気持ち弱い目の気がした」
そもそも落ち着いた声だから判断難しいけどな、とカザミは笑う。
少なくとも悪化はしてなさそうだと、パルは安堵した。
「私からも一つ、例のモビルドールの制作依頼が通った。できれば外見資料がもっと欲しいとは言っていたが、ヒロトが居ないなら後回しだな」
メイの報告は吉報だった。外見資料はメイの言う通り後回しにする他にない。
「なら、とりあえずはまた一歩前進ですね!」
「よぉし、じゃ、もう一歩進めに行くか!」
「ああ、二人はフォースネストの船に居るようだ、行くぞ」
三人は手早くウィンドウを開くと、BUILD DIVERSが所有するフォースネストまで転移する。
フォースネストの初期転送位置は船着き場の上だ。
「僕たちもいつかフォースネスト手に入れたいですね」
「だよなー」
海に浮かぶ大きめの島はのんびり過ごすもよし、人を呼んで催しを開くもよしのなかなか良い条件のそろったフォースネストだ。
いつか自分たちも手に入れたいな、と思うのは自然だった。
それはともかく先の事として、リクとサラの二人は船の中に居るらしい。
「そこまで大きく無いがいい船だよな」
「秘密基地って感じが伝わってきますよね、こういうの僕も好きです」
「情緒という物か?まだよくわからないな」
三人は話しながら船に上がり船室のドアをメイが迷いなく開けた。
ノックぐらいしろよ、とカザミは思ったが開けてしまったものはもう仕方がない。
メイを先頭に次にカザミが中に入ると
中ではソファに二人並んで腰かけながら、なぜか両手をお互いに握り合っているリクとサラの姿があった。
リクが素早く反応してドア側に視線を向かわせ、結果カザミとばっちり目が合ってしまう。
「ぁ失礼しましたぁ!」
カザミは素っ頓狂な声を上げてメイの腕をつかみ、後ろから来たパルの身体を押し戻し、船室のドアを勢いよく閉めなおす。
「メイお前ノックぐらいしろよ!」
「姉さんは遠慮せずに入って来いと前に言ってたじゃないか」
「ああいう場面に出くわさないようにワンテンポ入れるべきなんだよ!」
「なぜだ、出くわしたらダメなのか?」
「気まずいわ!」
「え、中で何が起こってたんですか?」
あまりの居心地の悪さに声を荒げるカザミ、怒っている理由が納得できずに困惑するメイ、パルはカザミの背中に防がれて船内はほとんど見えなかった。
何か二人は中でとんでもない事をしていたのかとほんのり顔を赤くする。
騒いでいると、船の中からドアが開いた。
「あの、もう大丈夫です」
カザミと同じようにすごく居心地の悪そうな顔をしたリクが、三人に声をかける。
ほんの少し頬が赤い。
「う、うっす。お邪魔します」
「入るぞ」
「お、お邪魔します?」
リクは中に引っ込み、足早にサラの近くへと戻っていった。
席を手で勧めつつ、リクはあれ?と小首をかしげる。
「ヒロト、今日は来れなかった?」
「ああ、あいつはちょっとな」
「……?そっか」
今のヒロトの事情をリクに説明する気にはなれず、カザミは言葉を濁した。
そんな様子に何か事情があるのだな、と察したリクは頷くだけでそれ以上深く聞いてこない。
「姉さん、さっきは何をしてたんだ?」
「おいぃ!?」
メイの疑問に対し、せっかく空気が戻りかけていたのに!と言わんばかりにカザミが叫んだ。
聞かれたサラの方はふんわりとほほ笑むと
「リクのアバター、現実のリクの身体に合わせて調整してるの。またちょっと掌が大きくなったから確かめてたの」
「なるほど」
カッとリクの顔が赤く染まる。
そんな彼の様子にカザミは、見られた実感が強ければ流石に恥じるんだな、と今更実感した。
パルはそんなことしてたんだ、と苦笑する。
片やメイとサラはまるで気にしてないし、止まりもしなかった。
「それでね、手を合わせてたらリクが私の手を握ってきてね、小さくて、って言った時にメイたちが来たの」
「ああああぁあ!!サラ!それダメだって!」
リクが絶叫する。
そんなリクにサラはきょとんとすると
「ダメ?」
「いや、その」
ここで説明すれば恥ずかしさはさらに増える。
思わず言いよどむリクの様子に、サラは何を思ったのか青ざめた。
「……私の手がダメなの?」
まるでこの世の終わりが来たかのようなサラの様子に、今度はリクはギョッとする。
「え!?いや、そんな事ないよ!」
「本当?リクが気に入ってくれないなら、私……」
「本当、本当!さっきは小さくて可愛い手だね、って言おうとしたくらいだし!」
「そうなの?ならよかった」
サラはめっぽう機嫌が良くなった。彼女の花開くような笑顔にリクは思わず微笑む。
急にできた二人の世界に置いてけぼりを食らったカザミとパルはどうしたらいいのかわからずに、もう無言でなり行きを見守るしかない。二人は部屋の一部となり、努めて無に徹した。
一方メイはうむ、と頷くと
「ほら、仲が良いのは良い事ではないか」
「そこ蒸し返すんじゃねぇ!」
「……ごめん、どこかに穴は無いかな、飛び込みたいんだけど」
「危ないよ?リク」
「落ち着いてくださいリクさん!」
この後、騒ぎは結構な時間が経ってようやく収まったが、その間に男三人はひどく疲れる羽目になった。
◆◆◆
「改めて、今日はどうしたんですか?ミッション協力とか対戦申し込みって様子には思えないけど」
「えーっと、あれ?……ちょっと待ってくれ」
カザミはどこから話したらいいのか予定をしっかり考えて来ていたが、今の騒ぎで全部真っ白になってしまった。
「第一次有志連合戦でリクさんとサラさんが起こしたかもしれないっていう、奇跡の話ですよね」
「……奇跡?俺達が?」
自分達が起こしたかもしれない奇跡、と言われてリクは首をかしげるも、第一次有志連合戦という条件からすぐにそれらしき事を思い出す。
「あ!あの翼の事?」
「そうそう。光の翼が出てバグを一気に押し返したって奴。今日はその話を聞きにできるだけ状況をも含めて詳しく聞きたい」
「なるほどね、懐かしいなぁ」
リクはその時を思い出して、しみじみと感傷に浸ってしまう。
しかしそれはほんの少しの間の事で、カザミの質問に答える為に記憶を掘り起こすことに集中し始めた。
カザミたち三人は緊張した面持ちで彼の言葉を待つ。
「あの時、ブレイクデカールで強化された敵はものすごく強かった。俺は仲間たち、チャンピオンやロンメルさん、他にもたくさんの人と一緒に抵抗してたんだ。でも、今振り返って思うよ、あの瞬間はともかく必死だったけど―――」
リクは再度感情を振り払う為にぶんぶんと首を横に振った。
「勝ち目はなかった。それに間違いはないと思う」
チャンピオンや智将ロンメルといった実力のあるダイバーが居る状況下でも絶望的な戦況だった。
ここまでは三人がマギーから聞いてた通りの事ではあった。
「チャンピオンは自分の機体にもかなりダメージを受けてたし、俺よりもっと状況を正確に判断してたと思う。それでも、諦めるな、皆でGBNを守ろうって声を上げてた。俺はそれを聞いて、何が何でも諦めない気持ちが強くなった、俺もGBNが好きだったから」
今もそうだよ、とリクは笑う。
「その時、ダブルオーダイバーが答えてくれたんだ」
「ガンプラが?」
カザミは思わず声を上げてしまう、ガンプラが心を持っているというのはつい最近も聞いた話だ。
リクは苦笑すると
「嘘みたいだけ―――」
「嘘だとは思わねぇ、俺達は、そうは思わない」
カザミは断言する、パルとメイも頷いた。
リクは力強い言葉に思わず目を大きくするが
「そっか、嬉しいな、信じてくれるんだ。……ともかく、ダブルオーダイバーと一緒に全力で戦う為にトランザムを起動して、戦った。でも、駄目だった、相手にはダメージの一つも入ってなかったと思う、武器は折れるし、殴るとダブルオーダイバーの拳が壊れた」
リクのなりふり構わない攻撃でも、ダメージは一つも入らなかった。
でも、
「その後、皆が助けてくれたんだ、皆もGBNが大好きだったから、絶対諦めない!って。きっとあの時、皆の想いは一つだった」
リクはサラを見ると
「サラも、一緒に諦めたくないって言ってくれたんだ、だよね?」
「うん、私も皆と、リクとずっと一緒に居たかったから」
サラは嬉しそうに頷く。
「そうしたら、あの翼が出たんだ。俺は諦めなかっただけで、コントロールしてたとかそう言う訳じゃないよ」
詳しく話せるのはここまで、とリクは締めくくった。
サラはリクの言葉を補足するために言葉を選んで言う。
「その頃私はモビルドールの身体を持っていなかった、自分の事も良く分かってなかった。自分でやろうって思った訳じゃないけど奇跡のきっかけにはなったかもしれない。……もうそういう事はできないけど。それに、私のなんかより皆の想いがあの奇跡を起こしたと思うの」
「なるほどなー……」
カザミは、うーんと唸り仲間二人に問いかける。
「今の話、どう思うよ?」
「……リクさんのダブルオーダイバーに翼が宿った理由って何でしょう?どうあれバグが消失すれば結果は同じですよね?わざわざ一つのガンプラに宿る理由がわかりません」
パルは必死に頭を使って、奇跡が起こった時の納得できない部分を指摘する。
メイはパルの疑問に頷くと、仮説を立てる。
「リクの機体はダブルオーダイバー、つまりGN粒子を使ってる。そこに皆のGBNを守りたいという意思が集まって、奇跡が起こった。ダブルオーが元ならGNドライブは二つ付いてる、メビウスを見る限りGNドライブは両肩にある筈だ、そこに粒子や想いが集まれば翼らしくなるんじゃないか?……これならどうだ?」
凄い速さで話が展開していき、訳も分からず当然ついて行けないリクとサラはポカンとしている。
メイの仮説に、カザミは以前のメイの『奇跡を起こすために理論』が案外しっくり来る事に少し驚きながら頷く。
「有りだな、俺も賛成。……こうなってくるとGN 粒子マジで使えるかもしれねぇな」
「だからそういったろう」
「頭が固くて悪かったな!……パルはどう思う?」
「はい!僕も急に説得力が出た気がします」
三人の意見は一致した、カザミは、おお、と感嘆の声を上げると。
「って事は!皆の想いをGN粒子で集めるって手段は!」
「当然、有りだな」
「すげー!今度は大きく前に進んだぞ!!」
「はい!もっと今の話分析して、使えるところがないか考えましょう!」
イヴ復活のための手段がまるで分らなかったころとは大違い、その事実に三人の興奮は頂点に達していた。
カザミは席から勢いよく立ち上がる。
「こーしちゃいられねぇ!一回ブリーフィングルームで作戦会議だ!あっちの方がやりやすいしな!移動すんぞ!」
「はい!すぐ行きましょう!」
「もう一つか二つ、何か可能性を高める手段が欲しいな、二人とも感謝する、ではまたな」
メイの言葉にサラは良く分からないまま勢いに押され頷いた。
そのまま三人が共立ち上がった段階でリクが自分を取り戻した。
「いや、ちょっと待って!何の話をしてたの今の!?」
「え、何言ってんだ、そんなもん決まって……あれ、誰も説明してなかったか?」
リクとサラの思わぬシーンを見てしまい、話を聞くための台本が真っ白になっていた。
話が終わった時も、思わず議論に速発展し、その結果にテンションが上がってしまったりして、そもそも一体何のために今回の話を聞きに来たのか説明するのを省いてしまっていた。
「あ、そもそもなんで今回の話聞きに来たのか説明してないな」
「うん、気が付いてもらってよかった」
置いてけぼり食らう所だった、とリクは苦笑いする。
カザミはそんなリクに対し
「イヴさんを復活させたいんだ」
端的にリクとサラにすれば衝撃的な発言を投げつけた。
簡単に説明する発言をしてしまってから、カザミはまたも今までの自分のミスに気が付く。
「え、イヴさんって、えぇ!?」
「姉さんを!?」
「そうだ、いやー、今日は助かったぜ、じゃあ、またな」
カザミは二人を促して、足早に出ていこうとするが
「いや、だから待って!」
リクは衝撃を呑み込めないまま、再度引き留める。
彼はともかく口にせねばならない事があった。
「俺も手伝う!」
「私も!」
「もう手伝ってもらったぞ」
「「もっと手伝う!」」
「……気持ちだけでいいよ、今は」
リクの必死の声をカザミは冷たく切り捨てる。
パルは怪訝な面持ちでカザミを見ると
「カザミさん、そんな言い方しなくても」
「いや駄目だ、ヒロトが望むとは思えない」
そんな事あるだろうか?とパルは首を傾げた。
メイはカザミが頑なにリクからこれ以上の助力を拒む姿を見て、その理由を考えてハッとする。
そしてメイはパルの耳元に小声で
「ヒロトの過去が詳しく知られるぞ、そうすると二人はどうなる?」
「あ」
リクとサラは優しく良い人たちだ。それは接すれば自ずとわかることだし、助力に惜しみなく全力を注ぐだろう。
しかし、復活の案を考えるのであれば一から十まですべて情報を共有し、その上で試行錯誤しなければならない。
つまり、深く助力してもらうとなれば、ヒロトのあの記憶をもとにした文章はリクとサラの目に触れる、そうなれば確実に二人を打ちのめす事になる。
イヴはなぜ自分の身を投げたのか、その行動は何を生んだのか。
ヒロトに傷を残してしまった事実はあるだろう、だがGBNを守りそれが結果としていろんな素晴らしい出来事の礎となった事も紛れもない事実だ。
せめてもの救いはそこにしかない、ならばその一点は絶対に守らなければならない。
パルは遅く察した自分を恥じ、リクとサラに深く頭を下げる。
「ごめんなさい、お二人を迎える事は、どうしてもできません」
メイも同調して深く頭を下げた。
「姉さん、リク、気持ちは有り難いんだが分かってくれないか」
カザミも深く頭を下げる。
「すまん!さっきの俺の態度は悪すぎた、でも、無理なんだ、すまん」
どさくさ紛れに離れられたら二人に対して余計に波風を立てる事は無かったが、もうこうなってしまったら真摯に伝える他にない。
三人に頭を下げられてしまい、リクとサラは困惑する。
三人の態度は不可解な事ではあるが、ともかく三人には自分達の意思は強く伝わったように見える、それでも無理だという事は何か計り知れない事情があるのだろう。とリクとサラは感じ取った。
ここで自分たちが引かなければ、むしろ三人を傷つけかねない。
「分かりました、俺達はこれ以上踏み込みません、サラもそれでいいね?」
「うん……」
「ありがとう、気持ちは受け取ったから」
カザミはお礼を言うと再度頭を下げた。
リクは、必死で考える、まだ言える事は無いのか、と。
第一次有志連合戦の『奇跡』について話を聞きたがっていた、さっきの三人の話し合いは奇跡を起こす事でイヴを救い出すという明確な目的を持っていた。
自分だけが言える事、彼らが知らない事は何だ?
リクはこの状況で言える、必要な言葉を考え出した。
「奇跡にはリスクがあります、正直、偉そうに俺が言える事じゃないんだけど……」
「どういう事だ?」
メイは歯切れの悪いリクの言葉の意味を聞く。
「あの大きな奇跡の後バグは確かに押し返せた、でも押し返しただけで、結局またバグは溢れかえってしまった。そのバグはブレイクデカールとはまた別の種類の物だけど、ともかくそういう『反動』が起こる可能性があるんだ」
サラの手を軽く握りながら、リクはその後起きた事を掻い摘んで伝える。
別種類のバグとは、当時のサラの記憶や感情に起因して引き起こされた物だった。
「大事な情報だ、助かるぜ」
「リク、今回はきっと大丈夫だと思うの」
「え、サラ?」
カザミは表情を険しくせざる得なかったが、リスクに関しても考えていかなければならないのはどのみち避けられない事だった。
しかし、そのリクの言葉に対し反論したのは意外にもサラだった。
「だって、姉さんはGBNを守る為に自分の身を賭けたんだもの、姉さんがGBNを傷つけるような事、絶対しないっ!」
希望的観測ではあったが、サラの言葉は確信の響きを持っていた。
リクは確かに、と笑う。
「サラの言う通りかもしれない、万事丸く収まる可能性もあるよね」
「はは、まぁ、確かに的を得た意見ではあるよな。それも頭に入れておくぜ」
「今日はありがとうございました!」
「姉さん、リク、また会おう」
カザミも笑いながら、パルも改めてお礼をして、メイはいつも通りに挨拶をしてそれぞれに踵を返す。
三人が出ていこうとすると、リクは後ろから声をかける。
「頑張れ、BUILD DiVERS!いつでも手を貸すから!」
カザミが片腕だけ突き上げて返答し、三人と連れ合い船から出ていった。
船着き場に降りた三人は早速転移しようとするが、メニューを開いたカザミは緊迫した声を出した。
「今日早く帰らないとダメなんだった」
話が盛り上がりすぎて時間を見てなかった。
パルは転びそうになった。
「お、お疲れさまでした」
「俺ホント、もう自分が嫌だ、何一つスマートにできねぇ、だっせぇ俺……」
リクの善意からの言葉に対して冷たく返してしまうし、応援に対して格好つけて返したというのに早速この有様である。
ひたすらに自分が情けなく思えた。
「あ、あの、ヒロトさんの事を慮る事が出来たのは、本当にすごいと思いますよ。僕あの時ヒント無しじゃ気が付きませんでしたし!」
「……フォロー、ありがとよー……」
パルからの必死のフォローにカザミの肩がガクーンと下がった。
メイはカザミの背中をポンと叩くと
「その件に関しては私より判断が早かったぞ、やればできるじゃないか」
「お前はフォローする気あんの、ないの!?てか時間やべぇ!また次な!」
「ヒロトさんには僕の方から電話して様子を確認しますので、カザミさんは気を付けて帰ってくださいね」
「また声をかける、ではな」
「頼む!」
カザミは返事もそこそこ、速攻でログアウトする。
「大丈夫でしょうか」
「……まるで締まらんな」
「まぁ、それも僕たちの個性なんじゃないですかね……」
パルは遠い目をして、メイと別れるのであった。